シャボン玉せっけん

3072.jpg宙を舞うサボン程度の写真も撮れずして、飛んでいる虫の写真など撮れない。そう思っていたが、実のところ飛んでいる虫よりも撮影が困難であった。

3071.jpg精霊。

平地の水田やヨシ原など、湿っていて開けた環境に特異的に現界する。最初、関西地方から見出されたらしいが、その後盤石な産地は関東平野くらいである。
やっとのことで見つけた。この手の仲間の中では際立って美麗なので、虫マニアの間では有名。これ見たさに、かなりあちこち時間と金をかけて探し回ったものだった。実のところ、思いのほか足元にいた。灯台下暗しとはこのこと。そこそこ数もいるようなので、定期的に顔出しに行こう。

多くの虫マニアは、普通これを夏ではなく冬に探す。この手の虫は、夏は各個体が散り散りになって活動するので見つけにくい。さらに、その生息地たるヨシ原などの湿地は夏に草ぼうぼうとなるため、地面の虫を探すのが極めて難しい状況となる。が、冬になると水田脇の土手の土中でしばしば多数個体が集まって越冬するため、運よく掘り当てれば一度に効率よく集められるのだ。しかし、このやり方はたまたま同じ場所で越冬している多くの無関係の生き物まで、寒空の下に引きずり出し放置することになるため、倫理上多大に問題がある。
また、越冬環境に対し不可逆的なダメージを与えるので、翌年以降その場での虫の生息状況に、著しい悪影響を成しかねない。一度にごっそり採れてしまうので、みだりな乱獲にもつながる。かつてこの手の仲間の有名産地だった、某県のメールサーペントレイクも、明らかに先人どものそうした行為により、もはや湿地性種が比較的環境的負荷に強く普通種のコキべリとヒメキベリとオオトックリしかいない世界になってしまった(自然の成り行きだけが原因で、あそこまで普通種ばかり生き残り、人気種のみ特異的にいなくなる状況は考えにくい)。
だから、俺は極力産地の環境を温存したいのと、後世の虫マニアから老害扱いされないように、あえて活動期の見つけにくい個体を目視で探す方法にこだわっている。虫様に、こちらから逃げ延びる余地を与える採集法を心がけている。

ゴミムシの仲間は、甲虫としてはものすごくマニアが多い人気の分類群である。加えてこの仲間は、上述のように一度に効率よく多数個体をごっそり採り尽くす方法がいくつかあるため、非常に乱獲しやすい。そのため、上の種のようにそこそこ美麗かつ珍しい種となると、多くのゴミムシマニアは自分の知っている産地を秘匿し、口外しない傾向が顕著だ。他の奴に来られて場を荒らされるのが嫌だし、自分以外の人間がそれの標本を持っているのが気にくわないのだ。
こうした事情により、ゴミムシの珍種に関しては、虫マニア同好会誌を漁っても「これがここで採れる」などという情報が(特に最新のもの程)そう簡単には得られず、初心者にはとても探索の敷居が高い。ただでさえ産地開拓には苦労しているので、なおさらゴミムシマニアは苦労して自力で発見した産地を他人には教えたがらない。環境省レッドには、かれこれウン十年も発見例が公式に報じられていないゴミムシが数種リストアップされているが、実際には最近も見つけている者は見つけているらしいとの噂は常々聞く。彼らが公的な紙面上でそれを記録として発表しないので、見つかっていないものとして扱うほかないのである。

そうした人間らの轍を踏むように、俺もこの場所を秘匿するわけである。しかし、生息情報を公表しなければ他のマニアに場を荒らされることはないかも知れないが、その代わりそんな珍しい絶滅危惧種がそこに生息しているなどつゆ知らぬ行政などの手で、場所が潰されてメガソーラーやら道路やらになってしまった、という事になりやすい。
珍しい生き物の生息地を最初に知ってしまった者は、必ず情報の公開か秘匿かの板挟みに苛まれることになる。

3036.jpg例のアレ。

干潟にいて、干潮時のみ地表に現れて活動する。本当は、これと同所的にいて一回り大きい奴が見たかったのだが・・・。あっちは今も生き残っているのだろうか。


以下、分かる人間向けの業務連絡。

一体、大きい奴が見つかったのは、あの流域のうちのどこの岸辺なんだろうか。少なくとも、大潮の夜干潮に二度探しに行ったが、橋の下には小さいのがいただけだった。その小さいのも、橋の下以外のどこの下流の岸辺にもいなかった。
間違いなく環境は最適なので、大きいのがいるとしたら、あそこ以外考えられないのだが、どうにもいる気配がない。やはり、再び幻と化してしまったか。

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2989.jpg従来知られていた地域とは何の脈絡もないエリアから出した、とだけ。

2992.jpg
精霊。

夏季に特定種のヨモギにだけ見られる。同属近縁種が軒並み樹木を食うのに対し、こいつのみなぜか草を食う点で生態的にきわめて特異。珍しい上に産地が局限され、しかも虫マニアに人気のグループのため、地味で目立たない割にはみだりに採られやすい。そのため、出遅れると産地に行ってもすでに採り尽くされており、一匹も見られない。
これを探しに行ったときもかなり時期遅めだったのだが、幸い採りこぼしをたった一匹だけ見つけることが出来た。