CRユニット/ホワイト・リコリス

2207.jpg失敗写真ならば、こよりんの完品個体をタダで晒しても惜しくはない。完全な個体の尾節末端には、白い曼珠沙華が花開く。

2238.jpg赤いマスクをかぶせて、スカーレット・リコリスも作ってやった。特に意味はない。

この動物が何を食って生きているかは、よく分かっていない。近縁筋のクモガタ共の生態から考えて捕食性と見る向きが優勢だが、誰も直に見て確かめたわけではない。他方、洞窟性のこれの消化管内からシアノバクテリアが出たという報告例もある。

フレンチギアナの写真、終焉。

我が名はこよりん

クモガタ全目制覇するとは宣言したが、まさか最大の壁であろうこれを仕留める日が来ようとは…
2208.jpgコヨリムシPalpigradi。

残念ながらこいつは切れているが、名前の如くコヨリ状の長い尾を持つ、極めて微小なクモガタ類。現存する最大種ですら、たった2mm強しかない。この個体のように、通常は1mm前後。
世界中の熱帯亜熱帯から数十種程度知られるだけの、小さな分類群。湿った土壌中や石下、洞窟に住む。どの種も分布は著しく局所的で、クモの専門家でも生きたこれを野外で見た者は少ない。余りにも稀かつ小さ過ぎるので、基本的に狙って見つけ採りするものでなく、ツルグレンなどにより偶然土壌中から抽出されるもののようだ。俺は狙って見つけ採りしたが。

今でこそ画像検索すれば、俺みたいな世界の変態兄貴共が撮影したこれの生態写真がいくつか引っかかるが、10年近く前、ネット上にはコヨリムシの画像など写真はおろかイラストですらそう引っかかるものではなかった。
当時ヒットした数少ない画像の中に、植物の根が張る暗黒土中に佇むコヨリムシが、劇画調に描かれた絵があった。その美しさ、異形のカッコ良さにすっかりやられ、これの生きた奴だけは何とかして見たいと思い続けてきた。

フレンチギアナにこれがいるという情報自体は知らない。しかし、前に論文でブラジルにいるとの情報を見ており、いるだろうとは踏んでいた。
てっきり今回持参したウインクラーで落ちるかと思ってたが、見つけたのは洞窟の入り口。赤土にやや深めにはまった石の裏にいた。かつて見たイラストのイメージから、この生物は血色の悪いサソリモドキみたいなものと思っていた。実際には、尾を着けたヤイトムシに近い。極めて微小な上、亜光速でジグザグ走りし、立ち止まる瞬間がほぼない。これ一枚撮るのに、どれほど苦労したか。

この生物のコヨリは、極めて脆く脱落しやすい。だから、完全な個体を得るのが筆舌に尽くし難いほど難しい。
実のところ、上のとは別かつド完品の個体も、血尿を絞り出す思いで見つけ出し、撮影している。しかし、あまりに勿体無さすぎて、こんな所にタダで晒せる訳がない。

コヨリムシは、日本では大昔に石垣島にて、上のようなコヨリの切れた種名不明の個体がただ一匹見つかっただけとされる。しかし、ネットで調べると明らかに近年、非公式ながら他に記録が出ている。
ギアナでの修行により、大体こんな環境にいるという雰囲気は掴めた。これからは今まで以上に国内でコヨリムシを意識的に探してやろう。この仲間の分布中心は熱帯にあるが、他方ヨーロッパの洞窟にもいるため、洞窟環境を中心に日本のどこでも理論上は見つかっていいはずのものである。

今回のフレンチギアナで、一番見つけて嬉しかったもの。替えの服も何のその、これだけのために土砂降りのスコールの中、雨でベチャベチャのヤブをこいで2度もあの洞窟に行った。午前中から見続けて、気づいたら夕方だったほど。この数日後、我々は灯火に飛来した世界最大級の甲虫を目の当たりにするのだが、それを初めて見たときでさえ、俺はこよりんを最初に見つけたときほどの胸の高鳴り、心のときめきを感じられなかった。

2232.jpg白いカニムシ。オッドなスペシメンの一人。

体長2mm程の小型種。眼らしきものは見当たらない。赤土の地面に半分埋まった石裏にときどきいる。日本で洞窟から見つかる血色の悪いカニムシは大抵ツチカニムシ科だが、これは明らかにそれとは異なる仲間。

2231.jpgケダニ類らしき異形のダニ。オッドなスペシメンの一人。

体長2mm程度。最初、洞内の石をめくって見つけた際、カメムシか何かだと思った。

2276.jpg超小型のクモ。体長1mmもない。オッドなスペシメンの一人。

洞窟内の石をめくって、一番多く見られた生物。肉眼で見るとほぼ白一色に見えるが、ある程度黄色がかった生物。生態的にはマシラグモに似ており、薄いシート網を張ってそこにいた。脚の表面がストロボ光反射により燐光を放つところもマシラグモそっくりだが、眼の配置は明らかにマシラグモのそれとは異なる。分類群不明。