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4383.jpgミゾカクシLobelia chinensis。栃木にて。

池や沼の岸辺に繁茂する雑草。雑草とは言っても、意外と見られる場所は限られると思う。特筆して話題にもならないような草だが、あるジャンルの虫マニアにとっては獲物を探すうえで一つの指標となるもの。

以下、分かる奴だけ分かればいい話。

首の長い奴が、本当に見つからない。国内では犬型県で一番多くの公式な文献記録が出ており、「今も確実に生息する」と書かれた文献さえ存在する。大ウソ甚だしい。
この数年間というもの、過去に得られたとされる場所の殆どに出向いたが、その全てにおいて全く発見できない。昔は多産地だったらしい「ミゾカクシが水辺ギリギリまで繁茂している」池は、今どこを探してもミゾカクシがない。もちろん、奴もいない。
去年など、70-80年代辺りに「一晩で灯火に3ケタ飛来した」という場所周辺の湿地を徹底的に調べ、わざわざ大枚はたいて夜中にタクシーを使って山中の湿地にまで乗り込んだが、一匹もいなかった。いるのは、外見の酷似した腹黒のド普通種のみ。もしかしたら、この中に一匹くらい混ざってるんでは?と思い、とりあえず目につくそれっぽい奴を片っ端から取り押さえて透明なプラ容器に放り込み、数十匹集まったところで下から覗いたが、全部黒かった。

今世紀以降に記録がある、広大な田園にも度重ねて出向いた。今から10数年前、そこでは粉もんの奴とかサンドフィールドの奴など、今や各地で希少種となった数々のダストインセクトが記録されており、それらは今もしっかり生息している。ただ、首の長い奴だけが、いない。今の所、当方が確認している犬型県での最新の公式記録は2010年だが、正直そこにも現時点で存在するのか、限りなく怪しい。

恐らく、今世紀以後生きたアレを見た人間など存在しないのではないか。大体、虫マニアなどという連中は自己顕示欲と承認要求の煮凝りみたいな救いようもない生物なので、こんな珍しい種を採ったとなれば絶対すぐさまSNSに画像を載せて、これ見よがしにイキるに違いないのだが、今なおそれが観測されないからだ。何としても、俺がそのイキり第一号として降臨せねばならない。

アレを発見するのは、本当にハードルが高い。そもそも数少なくて珍しいうえ、あの腹黒と同所的に混在しているのが、まったくもってタチが悪すぎる。背面側からは一見して腹黒と区別できないため、わざわざ一度取り押さえて裏返すプロセスを経ねばならないのが、殺人級に面倒なのだ。

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カゴメランGoodyera hachijoensis。石垣にて。

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ナガボノシロワレモコウSanguisorba tenuifolia。青森にて。

その辺の道ばたにいくらでも生えている。

3809.jpgカタクリの種子。茨城にて。

エライオソームでアリを誘引し、運ばせることで知られる。

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ナルトサワギクSenecio madagascariensis。和歌山にて。

いかにも日本の野草じみた名前ながら、マダガスカル原産の外来植物。国内では徳島で見つかったのが最初で、以後各地に分布を拡大した。
繁殖力がきわめて旺盛なうえ、アレロパシーにより他の植物を生えにくくするため、在来植生の破壊を引き起こす恐れがある。また、強い毒性を持つので、家畜が誤食して健康を損ねる被害も出す。そのため、現在では特定外来生物に指定されており、移動も栽培もできない。また、各自治体においては積極的な引き抜き駆除を奨励しているところが多い。

わざわざ遠出してメクラチビゴミムシを探しに行くもボウズで、イラつきながら帰る道すがら路傍に群落を発見。怒りに任せて、よほど花を蹴っ飛ばしてやろうかと思ったがやめた。こういう生命力の強い外来植物は、下手に根を残したまま痛め付けると、かえって勢いが激しくなる場合があるから。

このナルトサワギクという和名の命名者が誰かは知らないが、本当にろくでもない名をつけてくれたと思う。植物に明るくない人間が初めて聞いたら、十人が十人みな在来種と勘違いするぞ。現に俺が勘違いした。徳島特産の、希少な野草の赴きすらあるではないか。
ウチダザリガニもそうだが、外来生物、しかも侵略的で生態系や人間の経済活動に被害をなすことが分かっている種に対し、いかにも日本の生物っぽい標準和名を与える行為は、不適切を通り越してもはや反社会的ですらあると思う。マダガスカル原産なのが分かってるんだから、マダガスカルサワギクでいいだろうに。