アマゾンの甲虫。

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別段変わりばえのないハンミョウ。

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別段変わりばえのないクロツヤムシ。

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カブトムシの一種?

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糞転がしの類。上の四角いのは、新大陸固有のカクガタタマオシコガネ族。

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ニジダイコクコガネ族Phanaeini。ウンコしか食わないのに物凄く美しい。俺は本当はこれを採りたくて、ずっと森内に転がった人糞(誰のかはさておき)の前で体育座りして、飛んでくるのを待っていた。しかし、この個体は何の前触れもなく森の奥から高速で飛来し、黄金の山に直に突き刺さる形で着弾したため、採る気が失せた。

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でかいゴミムシダマシ。

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渋い美しさのゴミムシダマシ。

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ジンガサハムシの類。

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カミキリ。そこそこ大型なので最初は見つけたとき嬉しかったが、道脇の倒木という倒木にうんざりするほどいることをやがて知る。

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たぶんオオキノコムシ。南米ではしばしばオオキノコムシとテントウダマシの区別が分からなくなる。

そろそろ南米の写真が尽きてきた。

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カメラバッグから吸血を試みるカの一種。今回、南米でとある理由によりPsorophoraという属の蚊を探しまくったのだが、出会えなかった。
世界中どこに行っても、俺は蚊の写真を撮ってしまう。探さなくとも向こうから自動的にやってくる数少ない生物の一つだから、というのもある。それ以上に、他のどの生物にも似ていないあの形状に、言いしれぬ美しさを覚えるのである。生まれて初めて海外旅行でマレーシアに行ったとき、現地到着後真っ先に撮影したのは、景色でも人でもなく蚊だった。
かつては、海外でも平気で腕にじかに蚊を止まらせ、吸血する様を撮影したものだった。しかし、数年前にデング出血熱で死にかけて以後、そういうことはやめた。熱帯諸国で、みだりに蚊に刺されるのは自殺行為に他ならないことを思い知り、今は服の上から撮影するようにしている。
一昔前に山本正之の歌で、フビライハンが元寇を博多に攻め込ませたものの神風で撃退され、そのまま南方に流されて蚊に生まれ変わり、それが再び台風に乗って日本に仕返しにくるというのがあった。大好きな歌なのに、俺の周辺に誰一人知っている奴がいないのは残念。ペルーにて。

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巨眼の、とびきりかわいい蛇。南米でずっと出会いたいと思っていたオオグチヘビ(パロットスネーク)Leptophis sp.?だと思いたい。頭と眼のでかい蛇は、毒があろうがなかろうが全部好き。ペルーにて。

有りっ丈の

アリに寄生する冬虫夏草の一種、アリタケ。バッカクキン科に含まれるCordycepsなど、いくつかの分類群に含まれる菌類の中には、生きたアリを苗床に育つものがいる。彼らは生きたアリに知らないうちに感染し、呪うがごとく殺し、遂にはその姿を現す。
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オオアリ属Camponotus sp.に取り憑いたアリタケ。この手のアリタケにやられたアリは、例外なく自分が止まっている枝葉をしっかり咬んだ状態で事切れている。
アリタケは、アリの生前時に感染する。感染に成功した菌は、アリの神経系に作用してその行動を操るらしい。そして、胞子を飛ばしやすい風通しの良い草木の上までアリを歩かせ誘導すると、キノコが十分成長するまでアリが地面に落ちないようにしっかりと枝葉に噛みつかせてから、死ぬように仕向ける。
菌類による、こうした寄主操作に関する研究は、どこまで進んでいるのだろうか。ペルーにて。

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じめじめした石下で、沢山のオオアリがアリタケに感染して死んでいた。誰かが胞子を持ち帰ってしまい、コロニーごと全滅させられたのだろう。ペルーにて。

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オソレアリDinoponera sp.に寄生したアリタケ。オソレアリは体長3-4センチ、強力な毒バリを持つ大型種。小型脊椎動物すら単身で倒す、名実ともに恐ろしいアリ。でも、見えない敵には勝てなかった。ペルーにて。

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オオアリの両肩から生えた、奇怪なアリタケ。まるでガンキャノン。首の後ろから細いのが出るタイプのアリタケは、アジアでもよく見かける。しかし、この手のものは未だアジアで見たことがない。ペルーにて。

アマゾンの蝶。
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ギンモンコノハタテハCoenophlebia archidona。本当に木の葉。

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ニシキアオツバメガUranus sloanus。100人に見せれば100人がチョウと言ってはばからないであろう、美麗な昼行性ガ。しかし絶望的なほどに普通種なので、誰も乱獲しない。

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セセリの一種。日本のチャマダラセセリに雰囲気が似ていた。実際、南米にはチャマダラセセリの仲間は多い。

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アサギタテハSiproeta stelenes。よく懐く。

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アミドンミイロタテハAgrias amydon。南米のチョウの花形。しかしウンコに集まる。

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ベニモンスカシジャノメの一種Haetera sp.。鱗粉がない透明なチョウ。ストロボを炊かなければ、全く姿が写真に映らない。飛んでいる姿も目で追いづらい。

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たぶんナンベイホソチョウActinote sp.?。汗を吸いに来る。

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ウォーレスドクチョウHeliconius wallacei。体内に毒を持つ。でも翅脈にヌカカが食いついて吸血している。

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ベーツタテハBatesia hypochlora。何かの毒チョウと瓜二つなので有名。もう少しちゃんと撮影したかったのに、後ろから森林伐採の重機が迫ってきたので退散せざるを得なかった。

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シャクガモドキMacrosoma sp.。一見どこにもチョウらしさの片鱗すら見出せないが、現行の分類体系ではチョウの一種。夜、灯火にくる。

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アキレスモルフォMorpho achilles。南米の花形その2。普通種だが美しい。飛んでくると、いつも「あっ」と声を上げて見とれてしまう。そして、姿が見えなくなるまで仕事の手を止めてしまうことになる。美人は三日で飽きると言うが、生きたモルフォの飛ぶ姿は百億回見ようと飽きない。

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タスキアゲハPapilio thoas。普通種だし煌びやかでもないが、綺麗。チョウの美しさは珍しさではない。

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綺麗なセセリ。

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シジミタテハの皆様。南米は本当にこの仲間が多い。シジミタテハの仲間は、人によってシジミチョウ科に含めたり含めなかったりする。南米で、ぱっと見何の仲間かわからないチョウは、とりあえずシジミタテハの仲間と言っておけば大抵あっている。一方、南米で本当のシジミチョウの仲間はあまり見かけない。

双想ノ唄ネオトロピクス・諸々

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トフシアリ一種Solenopsis sp.の巣にいたハガヤスデ科一種Pyrgodesmidae spp.。日本のアリの巣にも似た種類がいる。ペルーにて。

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トフシアリ一種の巣にいた、恐らくハガヤスデ科一種。平べったい変わった姿。他にオオズアリPheidoleやハキリアリAttaの巣にも、これと見た目遜色変わらないものがいた。ペルーにて。

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ミツバアリAcropyga sp.とアリノタカラカイガラムシEumyrmococcus sp.?。ミツバアリは、究極の牧畜アリ。地表にはいっさい採餌に出ず、地中で特殊なカイガラムシを養っている。これが出す甘露が、彼らの唯一の食料。カイガラムシの方も、このアリに養われる以外に生きる術を持たない。敵襲の際には、アリは我が子同然にカイガラムシをくわえて避難する。
ミツバアリとアリノタカラは、ともに世界中に分布しており種数も多い。しかし、共生関係を結ぶ双方の種の組み合わせは厳密に決まっている。ペルーにて。

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ミツバアリの結婚飛行。巣別れの時、翅の生えたオスと新女王が空へ飛び立ち、空中で交尾する。新女王は、地中の巣から飛び立つ前に必ず一匹のアリノタカラをくわえていく。交尾後オスはさっさと死ぬが、新女王は地上に降りて翅を落とし、地中に巣を作る。そして連れてきた家畜と一緒に、新しい国を築きあげるのだ。
交尾を終えて地下に潜るまで、新女王は死んでも家畜を放さない。アルコール漬け標本にされてもまだくわえたまま。ペルーにて。

ハエ・アリスアブ一種1、1
アリスアブ一種Microdon sp.。日本のヒメルリイロアリスアブM. caeruleusにそっくり。エクアドルにて。

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アリヤドリコバチEucharitidae spp.が、植物に産卵管を突き立てる。メスは、いろんな植物にランダムかつ多量に産卵する。やがて孵った幼虫は、偶然通りかかったある種類のアリに付着して、アリの巣内にまんまと進入する。ペルーにて。

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アリヤドリコバチの仲間は、いずれの種も金属光沢が美しい。奇妙な角を生やしたものもいる。ペルーにて。

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ナベブタアリCephalotes atratus。平べったい特徴的な姿。樹上に住み、滑空するアリとして知られる。ペルーにて。

クモ・クモ一種5、1

クモ・クモ一種2、1
ナベブタカニグモ(仮名)Aphantochilus sp.。ナベブタアリにぱっと見の姿や肌の質感がそっくり。アリを専門に食うらしく、そのメニューの中にはナベブタアリも入っている。エクアドルにて。

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アリ庭園。アリと共生関係を結ぶ植物は世界中にあるが、このタイプのものは中南米特有。オオアリ属のある種Camponotus sp.は、樹上の枝に木くずを集めて丸い巣を作る。そして、その外壁にいろんな種類の植物の種を集めてきて植えるのだ。これまで十数属の植物で、この「庭園」でしか見つかっていないものがあるという。アリも、これら植物からいろんな恩恵を受けているらしく、とても大切に育てている。
敵が来れば、アリ達は集団で巣から飛び出して戦う。さらに、アリ達はその辺から動物の糞を集めてきて、肥料のように巣の表面に撒きさえするという。ペルーにて。

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誰のモノかはさておき、人糞を運ぶ糞転がし。Canthonという属のもの。糞転がしというとファーブル昆虫記を思い出すが、あれに出てくるスカラベScarabeusとこいつらは、全然違う仲間。ペルーにて。

双想ノ唄ネオトロピクス・諸々

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ハキリアリAtta sp.が木の葉を切り取って、巣に運ぶ。これを加工して、キノコを育てる畑の材料にするためだ。ハキリアリを含むハキリアリ族Attiniのアリは新大陸固有で、キノコを巣内で育てて餌にすることで有名。ペルーにて。

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地下20センチ位の所にあるキノコ畑、菌園。綿ぼこりのような質感で、さわるとすぐつぶれる。白いのが菌糸。放っておけば立派な傘のキノコに成長するが、その前に収穫してしまう。排泄物を肥料代わりに撒き、関係ない菌がはびこれば除く。ペルーにて。

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もう一つのハキリアリ、トガリハキリアリ(ヒメハキリアリ)Acromyrmex sp.。ハキリアリ族に含まれる13属のアリの内、本当に生きた緑の葉を切るのはハキリアリ属とこの属だけ。他の属は、枯葉や虫の糞を菌の苗床にする。種類により、栽培する菌の種類も決まっているらしい。菌とアリは、互いに依存しあって生きている。
古くなって菌が育ちにくくなった菌園は、崩された後に地中のゴミ捨て部屋にまとめて棄てられる。菌園、そしてこのゴミ捨て部屋は、様々な居候昆虫の住処になっている。ペルーにて。

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ハキリアリの菌園だけに住む可愛らしいゴキブリAttaphila sp.。属名はそのまま「ハキリアリ好き」。素早く走り回り、恐らくキノコや菌園そのものを食べているのだろう。アリの巣別れ=結婚飛行の時には、翅の生えた新女王の頭にこれが乗り、一緒に飛んでいくらしい。ペルーにて。

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ハキリアリの巣にいるアリヅカムシAttapsenius sp.。よく見ると、アリヅカムシとしてはかなり変わった形をしている。小型の働き蟻の背に乗る。大型の働き蟻の場合は、頭に乗る。観察例はないが、こいつもきっとゴキブリのように女王蟻の頭に乗って飛んで行くに違いない。ペルーにて。

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アリノスマグソコガネの一種Euparixia sp.。元々は糞転がしの仲間。新大陸には、好蟻性になったマグソコガネ類がとても多く、なぜかそれらは皆ハキリアリやファイヤーアント(トフシアリ属Solenopsis)と関係を持つ。夜間、アリの巣の入り口近くにとても多かった。ペルーにて。

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すらっと長い脚と、瓢箪のようにくびれた姿が特徴。ハキリアリと共生するマグソコガネ類は他にも沢山いて、それらは大抵地中の菌園とかゴミ捨て部屋にいる。特にゴミ捨て部屋は、他にダイコクコガネやクロツヤムシなど、大型の好蟻性甲虫がわんさかいるらしい。がんばって掘ろうとしたが、相当深いところにあるらしくて無理だった。ペルーにて。

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ハキリアリの巣口にいた、素早いハネカクシ。弱ったアリを襲い、物陰に引きずり込んで殺す。ペルーにて。

ハエ・ノミバエ一種1、6(
ノミバエ一種。ハキリアリの行列に沿って飛び回る。この手のノミバエの種類は多いらしい。彼らの目的は、アリの運ぶ葉に卵を産み付けて巣内に運ばせ、ゆくゆくは菌園を食い荒らすこと。あるいは、アリそのものを攻撃するためとも言われる。葉を運ぶ最中のアリは、ハエに対して一切の防御策を持たない。なので、大抵葉っぱの上には小型のアリ(リーフライダー)が常駐して、この面倒な敵を遠ざける。
また、ノミバエが高密度で生息する地域では、ハキリアリはハエの飛ばない夜中だけ外勤に出る傾向がある。エクアドルにて。

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ムシクソツノゼミBolbonota sp.を守るシリアゲアリCrematogaster sp.。シジミタテハの一種幼虫が割り込んで、ツノゼミの甘露を盗む。ペルーにて。


今日も昨日ほどではないものの、すごい勢いでアクセスカウンターが動く。何かの間違いじゃなかろうか。
発端は、たった二人の知人がツイッターとかでここを宣伝したのが始まりだったはず。もともと内に閉じたブログだったし、せいぜい広まっても身内10人程度だろうと思い、身内10人に読ませるつもりで気軽に駄文を並べていた。しかし、このアクセス数。どう考えても、10人ぽっちの工作員の仕業じゃなさそうだ。
ブログはやっていれば自然と広まっていくのだろうが、もう少し段階を踏んでいくものとばかり思っていた。ネットの力、恐るべし。

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毒を持つ南米のベニボタルの仲間。食べると不味いらしい。なので、南米の虫食い動物たちはこのオレンジと黒の模様の甲虫を避けるという。その威を借りるかのように、このベニボタルと同大で毒を持っていない虫の中にも、この色彩パタンのものが多い。ペルーにて。

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ハムシの仲間。かつてトゲナシトゲトゲと呼ばれていたグループに含まれるようだ。ペルーにて。

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現地でベニボタルのつもりで撮影したが、あとで見たら違かった。顔つきからみてカッコウムシの仲間に見える。ペルーにて。


先日、このブログにひっそりアクセスカウンターというのを仕掛けておいた。それを解析してみたら、こちらの想像を絶する数の人間が常時ここに出入りしてて、正直びっくりした。戦慄した。まさか、ついちょっと前まで月に2人出入りしているかも怪しかったこの過疎地に、これほどの閲覧者が急激に押しかけていたとは。心の準備が全くできていなかった。
ツイッターやらを見れば、顔も名前も知らない、会ったことすらない人々がここを紹介して下すっている。どうも噂では、名の知れたどこぞの偉いセンセイとかも見ておられるらしい。ちょっと嬉しいと思った。同時に、あまり年甲斐もなく野放図なことも書けなくなってしまったと自戒。

双想ノ唄ネオトロピクス・永遠のチェリオ

新熱帯にすむグンタイアリは大きく5グループいて、グンタイアリ属、ヒメグンタイアリ属、マルセグンタイアリ属、ショウヨウアリ属まで出した。残る一人はだれか。それは、ヒトフシグンタイアリ属Cheliomyrmexだ。以下チェリオと略。



チェリオは、幻のグンタイアリと呼ばれている。理由はただ一つ、見つからないからだ。このアリはグンタイアリの仲間では最も地下性の傾向が強く、滅多に地表に出てこない。オスの翅アリは時々灯火に飛来するらしいので、恐らく実際にはけっこう普通にいるのかもしれない。しかし仮にそうだとして、生物の世界において普通にいることと見つけやすいことは、等価ではない。とにかく人間の目に触れる場所に姿を頑なに見せないこの生物の隠遁性は、彼らに関わるあらゆる研究調査を阻む要因として横たわり続けている。

ネットの画像検索でCheliomyrmexを調べても、Antwebなどのアリ分類サイトなどにあるいくつか標本写真がでてくるだけで、野外でこの生物の生きた姿を納めた写真が全然出てこない。他4属のグンタイアリの生きた写真はそれなりに出てくるのをみると、いかに世の中の人間がこの生物に出会ったことがないかがうかがい知れる。きっとどんな高名な世界中のアリ学者とて、こいつに遭遇する幸運に恵まれた奴なぞ地球上に10人もいるまい(と信じている)。美しいアリの生態写真を撮ることで知られている写真家兼研究者のAlex wildですら、南米でさんざん探してついに見つけられなかったと、彼のブログに記している。

数年前、某テレビ局の自然番組で南米のグンタイアリに関する特集を組むことになり、そのアドバイザーとしてエクアドルに出かける機会を得た。これが初めての南米遠征となる。この頃、大学研究室で居場所のない俺は、昼休みに部屋のすみっこでヘルドブラー・ウィルソンの名著「The Ants」を読むのが習慣だった。もう20年くらい前の本だが、枕のように分厚いこの本には、生態・遺伝・好蟻性生物に至るまで当時のアリに関する文字通りありとあらゆる事が書いてある。その中でも、グンタイアリに関する章の中にあるチェリオの記述は、俺にとって何度読み返しても読み足りない部分だった。

チェリオは南米にいる他のどのグンタイアリと異なり、腹柄節が一つしかない(腹と胸の継ぎ目の節。チェリオ以外はみな二節ある。ヒトフシグンタイの和名の由来)。これはむしろアフリカのサスライアリ属に近い特徴で、系統進化的にとても興味があるが、あまりに珍しすぎて研究が全然進んでいない、という趣旨の説明。その脇に、まるで農作業用フォークのような凶悪なギジャギジャの並んだ鋭いキバと、目があるのかないのか分からないような凶悪な風貌のアリの絵が描いてある。俺は、昼食のカ○リーメ○トを囓りつつこれの生きた姿をどうしても見たいと思いながら、いつもため息ばかりついてこの絵を眺めていた(これが恋患いか)。その研究に血筋をあげているような連中さえ滅多に見られないようなものを、初めて南米に行く素人ごときが見つけられるはずもないからだ。
ちなみに当たり前のことだが、アリそのものが幻なのでこれにどんな好蟻性生物が付くのか、いやそもそもそんなものがこのアリに付くのかどうかさえ、人類史上誰も調べたわけがない。

番組取材の主要目的は、立派なバーチェルグンタイアリだった。エクアドル入りしてからは、すぐさま首都キトから車で片道丸一日かかるアマゾンの奥地へ行き、ひたすらジャングルを歩いて目的のグンタイアリの行列を探し求めた。それからだいたい2週間程度たった頃だろうか。

その日も、いつもの様に林内に通した車用の砂利道をとぼとぼ俯きながら歩いては、行列を求めていた。その時、俺は前方に何か赤い帯状のものが横たわっているのに気付いた。幅10センチ程のそれは、道の端から端までに及ぶ長大なもので、まるで血流のようだった。最初何かが轢かれた跡かとさえ思った。近くに寄って、戦慄した。
アリだ。赤く見えたものは全部おぞましい数のアリの群れだった。

アリ・Cheliomyrmex-sp.1、
遠景。数枚撮ったが後でみたら全部ブレブレのボケボケだった。発見時、興奮のあまり過呼吸を起こす寸前でアル中のごとく全身が痙攣していたからだ。

アリ・Cheliomyrmex-sp.1、1
アリを見て愕然とした。一見、割と普通種なマルセグンタイアリの地下性傾向の強いある種に似ていたが、行列の規模があまりに違いすぎたからだ。アリはどれもが凶悪な刃のついた鋭いキバを持ち、目はあるのかないのか分からない。そして、腹柄節はひとつ。紛れもないチェリオだった。チェリオが引っ越しをしていたのだった。恐らく地下を進んでいたその最中に、偶然この砂利道にさしかかったのだろう。砂利道は堅く踏みしめられていたため地中を掘り進めず、やむなく特例で地表を進むことにしたのだ。それが証拠に、この砂利道からはずれるともう行列の所在は辿りようがなかった。なんという天文学的な偶然に出くわしたのだと思った。

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アリ・Cheliomyrmex-sp.1、6

アリだけを見てすっかり有頂天になったが、他に探すものがある。好蟻性生物だ。遭遇すら困難な特殊なグンタイアリのこと、こいつらから好蟻性生物を発見すればすなわち新種に決まっている。行列脇に座って観察した。

コウチュウ・ハネカクシ一種1

コウチュウ・ハネカクシ一種1
ムクゲキノコ。体長3ミリ程度のやつと1ミリちょっとのかなり小型のやつが歩いてきた。かなり個体数は多い。

コウチュウ・ハネカクシ一種
謎のハネカクシ。たった一匹だけ、ものすごいスピードで走ってきた。ろくな写真が撮れず、ピンボケ写真1枚だけが残った。他に、行列上をなぞるように飛ぶノミバエも多かった。予想できたことだったが、やはり幻のグンタイアリにも居候はいた。いや、きっとこのアリが本当は幻でないからこそ、このアリに依存した居候が存在するのだろう。しかし、奇跡はこれに留まらなかった。

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アリ・Cheliomyrmex-sp.1、2
行列中を歩いてきた巨大な生物。このグンタイアリの脱翅したオスだ。グンタイアリはオスだけ翅をもち、夕刻に空を飛び回って同種他コロニーの行列に飛び込み、そこへ受け入れられる。そのコロニーで新女王が誕生したらそれと交尾するのだ。しかし、野外でその出待ち状態のオスが見つかることは極めて希だ。幻のグンタイアリともなれば史上初だろう。残念ながら女王はもう通り過ぎた後だったらしく、待てどもこなかった。このアリの女王は発見されていないので、見つければ快挙だったのだが、柳の下にそう何匹もドジョウはいない。

これだけ奇跡の発見をしたわけだが、現在この時に見つけたこれら新種の証拠標本は存在しない。
現地滞在中に採集許可が下りなかったせいで、せっかく新種を目の前で発見しても捕まえることを許されなかったからだ。なので、上に示した写真は、全て存在実態のない幽霊の写真。名実ともに心霊写真だ。

昨年名古屋で行われたCOP10でも議題になり、ニュースで報道されたが、近年熱帯諸国では外国人研究者に対し、野生生物の研究に関して厳しい制約を課すようになってきた。それは自然保護、動物愛護とともに、遺伝子資源の流出や搾取を防ぐという理由があってのこと。いまやどんな他愛もない小虫やカビに至るまで、その国の財産と見なされていて、勝手に持ち出せなくなっている。中南米では、植民地時代の搾取などの影響もあるのか、特に厳しい。エクアドルは、その厳しさでは上位に食い込む国の一つだろう(一番厳しいのはブラジルで、周囲の研究者は口をそろえて「あの国で外国人研究者はムシの研究なんてできない」という。地域によっては採集どころか撮影のため虫を追いかけることすら禁止しているらしい)。今回のペルーは、比較的許可は取りやすい国だった。

恐らく現地に在住したり、現地の研究者と共同でやれば状況はまた違うのだろう。しかし、これら一連の許可申請の煩雑さ・そもそも許可の下りなさが手伝い、日本人で南米の虫を新種記載した人は殆ど存在しないのではなかろうか。甲虫分類の雑誌Elytraには、毎号沢山の熱帯産甲虫の記載論文が載るけど、それらはみんな採集・国外持ち出しの手続きが楽な東南アジアのいくつかの国のものばかりだ。他分類群の生物の研究でも、状況は大同小異だろう。
しかし、これだけ厳しい条件を外国人に課す他方で、現地の人々は平気で生活のために熱帯雨林を伐採し、焼き払っているのが現実だ。今回行ったペルーでも、野放図かつ無計画な伐採により毎日数十本のペースで大木が切られて重機で運ばれていくのを見た。遺伝子資源の確保とはいうけれど、いまの状況が今後まかり通っていけば、必ずみんなが不幸な結末を迎えるような気がする。生物も、現地の人も、外国人も全て。熱帯雨林は生物多様性の宝庫だと、マスコミは日常的に言う。しかし、その生物多様性の概要は未だその全体のうちの何割も解明されていない。その解明を一番阻んでいるのが、他ならぬ現地の国という皮肉な状況だ。

あのエクアドルの調査で俺が見た幽霊を実体化させるためには、標本を得て場合により新種記載がなされねばなるまい。そのためには、まず天文学的に取るのが難しい現地の国の生物採集・持ち出し許可を取り、その上で天文学的に出会うのが難しいあのアリに偶然遭遇し、さらに天文学的に出会うのが難しいあの居候の虫たちを採集する必要がある。こんな奇跡に、次に人類が巡り会えるのは果たして何十年、いや何百年先だろうか。そして、そのころまでアマゾンの森はいまの状態で残っているのだろうか。

きっと俺はこの時運を使いすぎたせいで、ここ数年あまりいいことがないのかも知れない。

双想ノ唄ネオトロピクス・フォース

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ショウヨウアリNomamyrmex sp.。ヒメグンタイアリNeivamyrmexをより大型にし、装甲を強固した武装タイプの戦士。つや消しの感じがかっこいい。他種のアリを襲って糧としている。彼らは、巨大な巣を構え鉄壁の防御力をほこるハキリアリAttaの巣にけんかを売りに行ける、おそらく唯一の天敵。ペルーにて。

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ショウヨウアリの行列にいた小型のハネカクシ。すばしっこい。あまり変わった姿ではない。ペルーにて。

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アリじみた不思議なハネカクシ。Ecitocryptus sp.?か。最初見たとき、なぜかハートの形を連想した。どこにもそんな形はないのだが。ペルーにて。

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別のアリ型ハネカクシ。腹部の形が上のと違う。そして脚つきががっちりしている。ペルーにて。

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また違うハネカクシ。頭の形が長細い印象。アリと一緒に歩いていく。左端に、例によって謎の翅なしノミバエが写り込んでいた。ペルーにて。

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小さい雫型のハネカクシもいた。早い。アリの行列をたどる様は火の玉が流れていくように見える。ペルーにて。

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ムクゲキノコLimulodes sp.とハネカクシが偶然並んだ瞬間。上のハネカクシにそっくりな平たい奴だが、つや消しなのと目が付いてない(ように見える)ので区別できる。ペルーにて。

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必殺・ノミバエ。アリの腹に止まり、肛門に産卵管を打ち込んで寄生するようだ。例によって、その瞬間は撮れない。ペルーにて。

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「志村後ろ」状態。鋭いカマ状の産卵管を振りかざし、今、襲う。ペルーにて。

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行列の脇をガードする働き蟻たち。歩いてないアリ達は、例外なく腹を前方に向けて曲げている。ずっと観察していて、理由が分かった。天敵のノミバエに後ろをとられないようにするためだったのだ。ハエは、止まっていて一見狙いやすそうなアリには決して攻撃せず、腹を後ろに伸ばして歩いている最中のアリだけを特異的に攻撃していた。ペルーにて。

双想ノ唄ネオトロピクス・サード

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マルセグンタイアリLabidus praedatorLabidusの仲間は半地下性のグンタイアリ。地下を行進し、餌を狩るときに地表に現れるようだ。夜間に姿を見せる傾向があるように思う。動物植物関係なく、かなりいろんなものを食う。しかし、比較的小型なのと地上にそんなに出てこないのとで、あまり危険視されない。大型のグンタイアリでさえ、地元の人間はそんなに恐れないが。
地上を行進するときは、行列の両脇を護衛役が固める。ペルーにて。

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このグループは、グンタイアリというより東南アジアのヨコヅナアリPheidologetonに見た目が似ている。食性も同じ。しかし、ものすごく走るスピードが速く、なかなか動きを止めて撮影できない。さらに悪いことに、これに共生する腰巾着どもは、それに輪をかけてさらに高速。ペルーにて。

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行列上をホバリングするノミバエ。地上すれすれを飛び、アリを直接攻撃する。頭を狙っているように見えるが、早すぎてよく分からない。一瞬体当たりされたアリはその場で身をよじって悶絶するので、これの攻撃を受けるのはアリにとって相当苦痛に違いない。これが集結し始めると、アリはものすごく怒り狂いはじめ、行列の両脇ガードがすさまじくなる。ペルーにて。

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行列中を超音速で瞬間移動するアリシミ。アリに比べてかなり大型。その身が妖しく放つ幻光は何のため。ペルーにて。

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アリ型のハネカクシ。たぶんMimeciton sp.?。かなりスピードが早い。この手のアリ型ハネカクシには珍しく、色彩はアリに似ていない。夜間アリと一緒に出てくることが多いから、アリ鳥の攻撃を気にしなくていいからなのか、元々かなり小型種なのでアリ鳥に狙われること自体がないからなのか。ペルーにて。

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シリホソハネカクシ一種Vatesus sp.。Ecitonの行列に見られる種の三分の一程度の小型種。絶望的に動きが素早い。沢山のアリ達の間を軽々と追い越していく。ペルーにて。

双想ノ唄ネオトロピクス・セカンド

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ヒメグンタイアリNeivamyrmex sp.。他種のアリを専門に狩る小型のグンタイアリ。東南アジアのヒメサスライアリAenictusに生態も見た目も瓜二つだが、こいつは小さい目があるので区別できる。新大陸のみに分布するが種数はすさまじく、分類も進まないため、未だ何種類いるか正確には分からない。そして、そのそれぞれの種には恐らく最低一種類、その種にだけ専門に寄生する好蟻性昆虫がいる(と俺は信じて疑わない)。残念ながら、今回これに寄生する生物は殆ど撮影できていない。ペルーにて。

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ヒメグンタイアリの行列にいた奇妙なノミバエ。赤塚不二夫の漫画に出てくるケムンパスを彷彿とさせる。翅はない。撮影しようと思って撮影したわけでなく、アリを撮影したら偶然写り込んでいただけ。グンタイアリの行列をランダムに撮影して後でよく見ると、思いもしなかったような生物が亡霊のごとく写り込んでいるのにしばしば気付く。ペルーにて。

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ヒメグンタイアリの後脚に取り付いた微少甲虫、ムクゲキノコParalimulodes sp.。この甲虫の仲間には名前の通りキノコに集まるグループもいるが、ある系統は好蟻性に特化した。そして、その好蟻性のグループは殆ど全てが新大陸とオーストラリアにしかいないらしい。アリの巣どころか、アリそのものに住み着くという大した居候。体表面の油を舐めているという、妖怪アカナメみたいな奴。
4ミリそこそこの、小さい上に高速で走り回るアリの体表にこびりつくさらに小さな甲虫を、野外で探し出すのは殆ど不可能に近い。なので、とりあえずひたすら行列脇でカメラをセットし、通過する数千匹のアリを一匹一匹撮影してあとで写真を見て探すしかない。ペルーにて。

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行列上をホバリングするノミバエ。生きたアリに直接攻撃し、卵を産み付ける捕食寄生者。残念ながら寄生の瞬間を撮影できなかったが、同行者曰く、アリの肛門に取り付いて産卵するらしい。ペルーにて。

グンタイアリはしばしば無敵の軍団のように、ネット界隈で紹介される。確かに、コロニーそのものを壊滅させることができる生物など、事実上存在しないと思う(あえて言うなら人間か。生息地の森が破壊されれば、毎日多量の餌動物を要求するグンタイアリのコロニーは生きていけない)。しかし、個々のアリを攻撃し、直接食い殺したり内側から蝕んでいくことに特殊化した天敵は、ハネカクシやノミバエなど、ちゃんと存在する。

一昔前、今は亡きテレビの某動物番組で、動物に関する視聴者からの質問コーナーが設けられていた。その中の質問「グンタイアリに天敵はいるか?」に対して、偶然グンタイアリの行列脇にあったアリジゴクにアリが捕らえられた映像を流して、「グンタイアリの天敵はアリジゴクだった!ズバッと解決!」と結論づけていたのを見て、飯を吹いたのはいい思い出。比較的影響力のある番組だったようで、今でもネット界隈を見ると「グンタイアリの天敵はアリジゴク」などの記述が散見される。今はどうか知らんがウィキペディアにさえそう書いてあった時期があった。もう少しまともな文献でリサーチしようよ。

双想ノ唄ネオトロピクス

今回のペルー調査では、俺は殆どツノゼミばかり探していた。そのせいで、本職の好蟻性昆虫の探索が恐ろしくおろそかになってしまった。同行者ばかりがビギナーズラックでそれらを発見しまくり、俺はタッチ一秒の差でそれを見られず出し抜かれることばかりだった。「くやしいのうwwwくやしいのうwww」状態である。
なので、以前調査に行ったエクアドルの写真もまぜこぜに出すことにした。俺が写真家として大成するかどうかも分からぬ中、これらをハードディスクの肥やしにし続けることに意義を見出せないからだ。
今回の好蟻性関連の写真は、こっちの方が遙かに充実している。まさに好蟻性生物写真家の名折れだ。
http://blog.livedoor.jp/antroom/

コウチュウ・ハネカクシ一種

コウチュウ・ハネカクシ一種
バーチェルグンタイアリの行列脇にうろうろしているハネカクシTetradonia sp.。ちっこいくせにものすごく力強く、凶暴。死臭をかぎつけることに長けているようで、傷ついたアリをめざとく見つけ出す。そして、獲物の触角や脚にかじりつくとズルズル引きずり、他のアリが邪魔しにこないように行列から離す。その後暗がりにアリを連れ込んで、首を掻き切って殺す。ピラニアのように数匹の集団で、徒党を組んでアリにリンチを加える事も多い。しかし、ひとたび獲物を倒したあとは、仲間内でみにくくそれを奪い合う。エクアドルにて。

ダニ・ダニ一種2、4
バーチェルグンタイアリの兵隊アリの大顎にくっついたダニ一種Circocylliba sp.。特殊な分類群のものだが、大雑把にはイトダニの類らしい。このアリの兵隊のこの部分に好んで付く。兵隊は顎が巨大すぎて自分で身なりを整えられないため、小型働き蟻にやらせる。目が見えない彼らは、においと手触りで仲間の体表に付いた異物を除こうとする。そのため、この兵隊の大顎の内側に細かい毛が生えているのに合わせて、ダニは背中に毛を生やしている。エクアドルにて。

ハエ・ノミバエ一種2、6(Ec
バーチェルグンタイアリの行列にいたノミバエPhoridae spp.。翅が退化している。すごいスピードで移動する。似た姿の複数種が同居しているようだ。この手のハエは、ゴミあさりかアリの幼虫に寄生しようとしているのだろう。エクアドルにて。

シミ・アリシミ一種1、6(E
ハマタグンタイアリの行列を行くアリシミの仲間Trichatelura manni。アリと共生するシミとしてはかなり大型。高速でアリの傍らを走り去っていく。エクアドルにて。

コウチュウ・アリヅカエンマ

コウチュウ・アリヅカエンマ
ハマタグンタイアリの行列を行くアリヅカエンマムシEuxenister sp.。アリヅカエンマムシの仲間は世界中にいるが、殆どが新大陸にいる。そして、その殆どがグンタイアリと関係しているらしい。クモのような長い脚で素早く走る。エクアドルにて。

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バーチェルグンタイアリの捕食行列の脇でじっとそれを見つめるノミバエ。最初何を目的に行列を見ているのか分からなかった。ペルーにて。

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このノミバエは、白い色をした他種のアリの蛹や幼虫を狩って運ぶアリが来たときだけ飛び立つ。そして素早くその運ぶ獲物に止まり、数秒一緒に運ばれた後にまた飛び立ち、傍らに舞い降りるという行動を繰り返した。恐らく獲物に産卵することで獲物と一緒にアリに卵を運ばせ、巣内の餌を盗むなどするのかもしれない。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行くアリヅカエンマムシ一種。分類群不明。1コロニー内に生息するエンマムシの個体数はとても少ない。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行くシリホソハネカクシ一種Vatesus sp.。雫型の大型ハネカクシ。あまり化学的に防御していない居候らしく、ときどきアリにこづかれる。しかし、ツルッツルの木魚頭とつかみ所のない体型により、アリの攻撃は彼らにとって脅威たり得ない。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行く大型ハネカクシ。たぶんTermitoquediusの一種か。極めて大型の居候。頭の幅の広さからみて、顎がかなり頑丈であろうと予想される。つまり、巣内で大型の生きたアリを襲っている捕食者である可能性を示唆させる。しかし、アリの行列の中にアリとは姿形も大きさも違う生き物が平然といる様は、いつ見ても異様だ。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行くアリに似たハネカクシ。たぶんEcitomorphaの一種。アリに似た姿と肌の質感で、周囲の目の見えないアリどもを偽る。サイズの大きめの個体と小さめの個体とがいて、形態も少し違う。別種だろうか。ペルーにて。

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このハネカクシのすごいのは、形だけでなく色彩もアリそっくりなこと。目の見えないアリをだますのに色彩は関係ないと思うのだが、これはアリでなく鳥をだますためだという説がある。グンタイアリの行列周辺には、彼らの進軍に驚いて逃げ出す虫をついばむ「アリ鳥」という連中がうろつく場合がある。いわば混乱に乗じてアリの獲物を奪い取る火事場ドロ。アリ鳥はアリそのものは食いたがらない。視覚でアリとそれ以外の虫を見分ける鳥に食われないためには、姿形だけでなく色も似せないといけないというわけだ。ペルーにて。

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行列を歩くだけでなく、小型の個体はアリの運ぶ荷物に取り付き、運んでもらうこともある。ペルーにて。

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オイアリヤドリバエ(仮名)Calodexia sp.。グンタイアリの行列脇でよく見つかる彼らは、しかしアリに直接の用はない。本来ゴキブリの寄生蝿である彼らは、グンタイアリに追い立てられて地中から逃げ出すゴキブリを攻撃する火事場ドロである。大型のゴキブリはたいてい夜行性で、昼間は落ち葉の下やらに隠れているが、このハエは恐らく日中しか活動しない。非力な彼らにとって、夜行性のゴキブリを自力で探し出すよりはアリの力を借りた方が遙かに楽なのだろう。
しかし、せっかくそうやって寄生しても、その後ほとんどのゴキブリがアリに捕らわれ、ハエの卵ごと食われるであろうことを考えれば、この戦略がどれほど効率的かは大いに議論の余地がある。ペルーにて。

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ハラボソメバエStylogaster sp.。火事場ドロ二号。上のヤドリバエと同じ事をするが、こいつらは同類であるそのヤドリバエにすら攻撃を仕掛ける。また、上のヤドリバエと違ってアリの捕食行軍の先頭にしかいない。華麗に宙を舞い、地上の惨劇を眼下に見下ろす。地面には降りない。
余談。俺は数あるグンタイアリの腰巾着どものなかでも、特にこいつを撮影したかった。しかし、十日近くの調査日の中でこいつに会ったのはたった一度。しかも、公共交通機関を使わねば行けない山奥。帰りの便がくる数分前に見つけてしまったため、ろくな写真も撮れぬうちに帰らねばならなかった。もう行けない場所かも知れないのに。ペルーにて。

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グンタイアリの巣に居候するハエヤドリクロバチ一種Mimopria sp.。ハエヤドリクロバチ科はとても種数の多い寄生蜂の一群で、なぜかかなりの種類がアリやシロアリの巣に居候することで知られる。中にはその居候生活にかなり特化した種も知られ、これもその一つだろう。最初は翅をもち飛び回るが、グンタイアリの行列を見つけるとそこへ飛び込み、翅を落として同居生活に入る。翅を落とした姿はアリそのもので、アリと一緒に行列を走るという。残念ながらその様を俺だけは観察できなかったが、偶然現地で「変わった翅アリ」程度に撮影したものが、どうやら翅を落とす前のそいつらしいことに後で気付いた。彼らがアリの巣にいる理由は、アリそのものに寄生するためとも、アリの巣にわくハエに寄生するためとも言われる。ペルーにて。

もうひとつのグンタイアリ、ハマタグンタイアリEciton hamatumEcitonには他にももっといろんな種がいるのだが、これとバーチェルグンタイアリの2種が、この属では見かける頻度が高い。兵隊は全体的に光沢が強く、脚は黒くない。小型の働き蟻は、全身オレンジ。
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バーチェルに比べて、コロニーサイズは小さい。捕食行軍の規模も、バーチェルほどではない。しかし、獲物達にとっては恐るるに足る襲撃隊。
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この種は、殆ど他種のアリやハチの巣ばかりを狙う。恐怖の肉食集団と揶揄されるグンタイアリだが、多くの種は他種のアリを狩ることに特化している。何でも見境なく食い殺す種の方が少数派だし、これらとて本当に生物なら何でもかまわず食うわけではない。
グンタイアリに、ヒトのような大型脊椎動物が生きたまま食われて骨だけにされる、などということが起きるのは、本当に特殊な場合に限られると思う。

写真は、全てペルーにて。

バーチェルグンタイアリの仮の巣。ビバークと呼ばれる。黒いのは全部アリ。案外近づいても平気だが、手を突っ込む度胸はない。高さ1.5メートルくらいだったと記憶している。
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無数のアリ達が文字通り手と手をつなぎあい、アリ達自身がアリの巣になる。昔「アントニオ猪木自身がパチスロ機」というCMが、テレビでほんの一時だけやってたのを何となく思い出した。
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グンタイアリは、移住に関して周期性を持つ。だいたい二週間おきに、「毎日移住する」と「一時的に1カ所に巣の拠点を固定する」を交互に繰り返す。女王の産卵周期や幼虫の成長と関連のある生活スタイルだという。

写真は、全てペルーにて。

ジャングル最強と謳われる生物。軍隊アリ。
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バーチェルグンタイアリEciton burchellii。世間でグンタイアリという場合、大抵これのことを指す。コロニー構成要員は100万匹以上。

南米に生息する軍隊アリには、大きく5つの分類群が含まれている。中でも大型で目立つのが、この種を含む正真正銘のグンタイアリ属Ecitonだ。決まった巣を持たず、定期的に移住を繰り返す。その道すがら、大規模な捕食行軍を森中に繰り出して、様々な生物を殺しまくる。
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グンタイアリ属は、コロニー内に様々なサイズのワーカーがいる。そして、彼らはその体サイズに合わせて分業を行っている。小さい個体は獲物を倒して解体する。少し大きめの個体は獲物を運搬することが多い。一番大きな個体は、マンモスのような巨大な牙を持ち、行列脇で睨みをきかせ警戒に当たる。しかし、間の抜けたつぶらな目。
実のところ、この巨大な牙は見かけ倒し。大きすぎて力が入らないらしく、人間にとっては咬まれること自体には特にダメージはない。しかし、先端が鋭いため、咬まれると皮膚に食い込む。この時、あわてて外そうと引っ張ると、ものの見事に皮膚がスパッと切れる。
昔、「珍虫と奇虫」という図鑑のグンタイアリが載っているページで、グンタイアリに咬まれた指が切れて出血した写真があった。実際に指を咬ませたときに、「なんだ、全然どうってことないじゃないか。こんなのでどうやって人間の指が切れるんだ」と思ったが、外すときに全てを思い知った。

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コオロギを群れで取り押さえる。グンタイアリはバッタ系の虫を好んで狩るが、派手な色をしたバッタ類は毒があるのか狩りたがらない。枝そっくりのナナフシのような虫も狩らずに無視する。同じく枝に似たシャクトリムシでは、植物を食べることで植物のにおいを獲得して体から発散するらしいので、ナナフシも似たようなことをしているのかも知れない。グンタイアリが攻め込んだ跡地は、あらゆる生物が狩られたり逃げ出すために閑散とすると言われるが、こうしたチート技でスルーされる生物もそれなりにいるため、決して死と無の世界にはならない。
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歩きにくい場所では、アリ達が固まりになって自在に足場を組む。こういう指令を一体いつ誰が出すのだろう。

写真は、全てペルーにて。

パラポネラのこと

そろそろ南米の写真を、当たり障りのないところから晒す。先陣を切るのは、今回の南米の調査でも一二を争うほどに印象深かった、こいつ。パラポネラParaponera clavataだ。

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和名をサシハリアリという、2センチ以上ある大型アリ。このアリは世界的には中南米の森林地帯に分布が限られるが、アリの中でも知名度は高いらしい。その最大の理由が、刺すこと。ハチのように毒バリを持ち、それで刺す。

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夜の森、月光浴びてパラポネラ。浴びているのはキャノンのツインストロボだが。

本来毒バリで刺すアリなぞ珍しくも何ともないが、こいつは極めて強力な猛毒を持ち、刺されると激痛、下手をすれば数日寝込む事になると目下有名である。生息地のアマゾン川流域の村では、二十歳を迎える若者の背中だか腕だかにこいつを数十匹押し当てて耐えさせるという儀式を行うらしい。日本でやったら事件だ。

ときに僻地の獣が、そのうわべだけから来る威圧感、表面的な恐ろしさだけがいたずらに大げさに強調され、遠い異国でモンスターのように祭り上げられることは昔からあることだ。昔日本ではゴリラは凶暴で猛悪な野獣だと思われていたが、実際には草食で温厚な動物であると、昨今のテレビの動物番組でよく言われている。パラポネラは、まさに今日本でモンスター化されている生物の一つだと思う。

ググレカス先生で「パラポネラ」を検索すると、ネタ系のサイトがザラザラと出てきて、まともなサイトがろくにヒットしない。それらサイトに書かれていることは一貫して、「刺されると激痛とともに腫れ上がり、24時間痛み続ける」とか、やたらこの生物を恐怖の大王のように大げさに、そして所々に茶化しを混ぜつつ危険生物としてわめき散らす内容だけ。そしてなぜかグンタイアリとの絡みが多い(グンタイアリに関してもパラポネラと同じような取り上げ方をするサイトばかりで、正しいことなんかどこにも書いてない)。「パラポネラは猛毒を持つ最強アリなので、殺戮集団と恐れられているグンタイアリすら避けて通る」らしい。俺は思う。
お前らは実際にアマゾンの森でパラポネラを見たのか。そして刺されてみたのかと。

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強力なあごで、それでも優しく自分の幼虫を挟んで運ぶ。

俺はパラポネラじゃないからパラポネラの事は分からないが、実際に会って、そして刺されたから、その範囲のことでこいつらの事は語れる。俺はジャングルで、このアリにへその脇を思いっきり刺された。地面に置いたカメラバッグを持ち上げたとき、密かに這い上っていたこのアリに気付かず、バッグと自分の腹の間で知らぬうちに挟んでしまったらしく、服の生地越しにやられた。
確かに痛かったが、ネット上でわめく程の痛みではなく、最初「あっ、やられたか??」という程度の痛みから、数十秒でしだいにジンジンと痛みが増していく感じ。このあと腫れ上がって、痛みのあまり数日寝込むのを覚悟したが、あろう事か5分程度で痛みは引き、腫れも残らなかった。なお、同行していた仲間二人も同様に刺されたが、予後は似たようなものだった。

人によっては、確かにこいつに刺されることでかなり重症になる場合もあると現地在住の人から聞いたが、少なくとも万人がネットで言われているような状況に陥るわけでないことを、身を以て思い知った。
はっきり言って、こんなのより日本のベッコウバチの方が痛い。あと採血の下手くそな看護婦。デング出血熱で入院したときの検査はちょっとした拷問タイムだった。何が白衣の天使だ。本物の天使見る所だったわ(個人の感想です)。

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バーチェルグンタイアリEciton burchelliiの移住行軍に近づきすぎて制裁を受ける。本当はもっと沢山たかられていたが撮影の準備をしている間に散った。

「パラポネラが恐ろしくてグンタイアリが避ける」なんて、まさに見てきたような嘘っぱちだ。普通に必要とあればグンタイアリはパラポネラを攻撃する。恐れてなんかいない。しかし、野外で見る限り互いに積極的にけんかを売るようにも見えない。そして、グンタイアリに群れで取り巻かれ攻撃されたパラポネラは、その場で縮こまって半死半生の状態になるが、暫くするとグンタイアリはなぜか攻撃をやめて離れていく。そして、パラポネラは再び息を吹き返して歩き去る、という場面を2,3度見た。あれは何だったのだろう。

遠い国にいるすごい生き物は、我々の好奇心と想像力をかき立ててやまない。幼き日に見たヒーローのような面影をどこかしらに見ているのかも知れない。でも、生き物に関する根拠もなく見たわけでもないようなことを、受けねらいと知ったかぶりと自己顕示欲のために、あることないことネット上に書き散らかすような人間を俺は軽蔑する。それは、実際にその生き物を研究している人々、そして何よりその生き物そのものに対するただの冒涜でしかないと、俺は思うからだ。

写真はすべて、ペルーにて。

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ツシマサンショウウオHynobius tsuensis。対馬にて。

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メクラチビゴミムシ一種。世界でとある洞窟とその周辺地域にのみ住む。名前は分かっているのだが、ピンポイントで生息する洞窟名を冠しているので、うかつにネット上に書けない。東日本にて。

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ホソツヤルリクワガタPlatycerus kawadai。長野にて。


ダイコクコガネCopris ochus。この国に実在しているとは思わなかった。どこで見たかなんて書けるわけがない。

双想ノ唄オリエンタリス・フォース

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オニオオアリCampontous gigasを捕らえたトラフカニグモTmarus sp.。両方とも巨大。トラフカニグモの仲間はアリを嗜好する。マレーにて。

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テングシロアリNasutitermes sp.巣にいたアリシミ。マレーにて。

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イエシロアリCoptotermes sp.巣にいた淫猥な形状のハネカクシ。マレーにて。

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イエシロアリ巣にいたマンマルコガネ。マレーにて。
※種名はMadrasostes clypealeとさる方からご教示いただきました。Thank you very much!

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別種の青く輝くマンマルコガネ。マレーにて。
※種名はMadrasostes cfr. agostiiとさる方からご教示いただきました。Thank you very much!

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ゴキブリゴミムシOrthogonius sp.。夜間樹幹をすばやく駆け回り、人が近づくとすぐ飛ぶ。幼虫は白く太った異様な芋虫で、何かのシロアリの巣にいてシロアリを暴食するらしい。マレーにて。

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ベンガルバエBengalia sp.。汚物にたかるキンバエの親戚筋にあって、汚物には見向きもしない。妖しい幻光をたたえたその瞳が映すのは、何かの理由で幼虫を地上に運び出すアリ。もしくはシロアリ。タイにて。

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ツムギアリOecophylla smaragdinaから幼虫を強奪するベンガルバエ。アリが持つ白っぽいものは何でも奪わないと気が済まない。力づくで取り上げた獲物は、安全圏に運んでから吸収する。数秒で獲物の中身を吸い尽くすとこれを無造作に棄て、次の犠牲者にねらいを定める。多くの種がいるが、種ごとに狙うアリ種が大雑把に決まっているような気がする。タイにて。

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アシナガキアリAnoplolepis gracilipes巣内のクビナガカメムシ。ボルネオでは、アシナガキアリの巣からこのカメムシが得られることが知られている。生態は不明。これはマレーにいた。

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アシナガキアリ巣内のアリスアブ幼虫Microdon sp.。マレーにて。

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アリスアブ一種。この仲間としては標準的な姿形。マレーにて。

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見慣れないアリスアブ一種。同所的に生息するドロバチ類に似ていると、同行のハチ専門家から伺った。タイにて。

no.25小カメあり

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オオバギ一種Macaranga bancana。この仲間の植物のいくつかはアリ植物と呼ばれ、特定亜属のシリアゲアリCrematogaster sp.とカイガラムシCoccus sp.を幹内に養う。植物は葉や茎から栄養体と呼ばれる粒子を分泌し、アリに餌として与える。カイガラムシの出す甘露と、この栄養体を餌に、アリはオオバギ上に常駐し、害虫を遠ざける用心棒として働く。マレーにて。

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用心棒に守られたはずのオオバギも、時に害虫にやられる。犯人はムラサキシジミの一種Arhopala amphimuta。好蟻性器官を持つ彼らはアリを懐柔し、植物を公然と蹂躙する権利を得る。マレーにて。

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別種のオオバギM.hypoleucaに取り付いた別のムラサキシジミA.zylda。オオバギの葉どころか、アリのために植物が用意した栄養体まで盗み食う。マレーにて。

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ムラサキシジミA.zyldaの成虫。翅表は息をのむほどに深い青紫。でも頑なに見せようとしない。マレーにて。

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熱帯雨林の高木樹冠の枝にのみ着生するビカクシダPlaticerium colonarium。この内部に、シリアゲアリの一種Crematogaster difformisとともにある種のゴキブリが共生することが近年明らかにされた。ボルネオにて。

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着生シダ内にアリと共生するタカミアリゴキブリ(仮名)Pseudoanacreptinia yumotoi。アリは極めて攻撃的だが、ゴキブリには特に被害はない。本種はアジアに生息する唯一の、確実な好蟻性のゴキブリ。生態は不明。
タカミアリゴキブリの名は俺が勝手に付けたもの。記載後もうかなり経つのに和名が未だ付かず、この興味深い虫の存在自体が一般に知られていないのを憂いて。由来は、地上数十メートルの高木枝上にしかいないのと、北杜夫の小説「高みの見物」(ゴキブリが主人公)から。ボルネオにて。

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オツネントンボSympecma paedisca。毎年池の近くの木製杭の裂け目に入って冬を越す。長野にて。


クモガタガガンボChionea sp.。昔は高山地帯の雪渓とかにしかいない珍虫と謳われたようだが、積雪後の森に夜行けば平地でもたぶん普通に見られる。長野にて。

ペルーの土産

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こんなポストカードがリマの空港の店で売られている、はずがない。

南米はツノゼミの宝庫。本当にこいつらは同じ分類群の生物なのかと疑うくらい色彩も形態も多様に過ぎる。南米といえばツノゼミ、いやツノゼミは南米の代名詞と言ってはばからない虫ヲタも日本にいるくらいだ。
しかし、当の南米に住む現地人達は、昆虫の標本商など除けばこんな虫がいる事さえ知らずに一生を終えているだろう。ペルーの空港には、生物多様性を保護しようなどの美辞麗句とともにアマゾンの蝶の写真が載ったパズルやポストカードが売られていた。ツノゼミこそこういうものの題材にふさわしいと思うのだが、いかんせん小さすぎて一般人の気を引かない。これからもこの奇怪な生物群は、生息地から遠く離れた国のごく一部の好事家たちの内輪でのみ持てはやされるに留まるのかも知れない。

今回の調査では、殆ど俺はこいつらの撮影に時間を費やした。しかし、その成果はここではこれ以上出さない。近い将来、何らかの形で表に出すことになると思う。