こけにしくさる

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「コケギス」。地衣類にそっくり。よく霧のかかる標高の高い山にいる。マレーにて。

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別の「コケギス」。地衣類でなく、コケに似た雰囲気。色彩はともかく、フォルムはほぼまるっきり上のと同じ。近縁種だろう。タイにて。

ガ・メイガ一種1、2
地衣類そっくりな模様のメイガだかハマキガだかの一種。山奥の雲霧林で見た。マレーにて。

こういう虫は、無条件に「コケの上に住んでいるからコケに擬態している」として図鑑などで紹介される。しかし、本当にこいつらの本来の住処はコケや地衣類の上なのだろうか。この手の虫はしばしば夜間灯火に集まるので、我々はそれを捕まえて、それらしい木やコケの上に乗せて嬉々として撮影する(それ以外の方法で、まずこういう虫を現地人以外の人間が見つけるのは無理)。上の写真もまさにそんな「やらせ」である。

東南アジアでは、変な虫を捕まえてはよその国から来た虫マニアに売ることで生計を立てている「取り子」の現地人が多くいる。彼らは灯火などという姑息な方法を使うまでもなく、実に的確にこういう虫を捕ってくる。彼らに聞けば分かりそうなものだが、彼らにしてみれば商売に関わる門外不出の極秘情報なので、絶対に教えてはくれない。

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アカガエル科の一種Rana sp.。マレーにて。

熱帯アジアのアリども。
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ナガフシアリTetraponera sp.。樹上性のアリで行動は素早い。そして刺す。ただ翅をむしっただけの蜂。マレーにて。

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オオアリCamponotus sp.。ほっそりした体型。森林に住む。マレーにて。

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ハリセンボンアリEchinopla sp.。全身トゲ状の毛で覆われるが、そんなにおっかない奴ではない。マレーにて。

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シワアリTetramorium sp.。いつも眉間にしわをよせた気むずかしい奴。マレーにて。

あめいろアメイロアリParatrechina sp.。
荒らされて乾燥した街中の公園にいる。なぜか全身虹色に輝く。マレーにて。

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ジュズフシアリProtanilla sp.。かなり珍しく、滅多に見れない。森林の腐葉土中にいて、蛇のようにぬるぬる動く。生態不明。マレーにて。

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リクガメの一種。たぶんムツアシガメManouria sp.?か。リクガメは世界中にいるが、どの種類もとにかく数が少ないので見かける機会は滅多にない。環境破壊と乱獲がたたっている。

とある熱帯の国立公園の森で、糞転がしを集めるために夕方人糞(誰のかはさておき)を置いといた。翌日の朝、胸を躍らせてそこに行ったら、糞転がしの代わりに40センチくらいの丸いものがウンコに来ていた。最初見たとき、40センチくらいの糞転がしが来たのかと思ったが、よく見たらカメだった。
カメが、一心不乱にウンコを食っていた。近づいても全く逃げる様子もない。しかも泣きながら。ウミガメは産卵時に涙を流すが、リクガメはウンコを食いながら涙を流すらしい。宿へ連れて帰って同行者に見せびらかそうとも思ったが、クソまみれのカメを触りたくないという気分がそれに勝ったため、やめといた。

このカメはちゃんと全身を撮影しているのだが、首から先はとても公共の電波に載せられない。

タイにて。

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アジアジムグリガエルKaloula pulchra。隙間にはまって出られないわけではない。タイにて。

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樹上性コオロギ一種。マレーにて。

ほそゆびホソユビヤモリ一種。この手のヤモリは種類が多いが、俺は全て「とかげもどき」と呼んでしまう。マレーにて。

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オオミツバチApis dorsataの分蜂群。巣分かれした新女王とその手下達が一時的に適当な場所に身を寄せ、散らばった斥候部隊がいい物件を見つけて帰ってくると、全員でそこへ引っ越してちゃんとした巣を作る。
この群れはたまたま通りかかった橋の一部に取り付いており、数日間この状態だった。マレーにて。

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見た目のインパクトと違い、分蜂状態のミツバチは一番おとなしくて安全。これが本当の巣だったらこうは行かない。オオミツバチは、極めて凶暴で危険な殺人蜂。ちゃちな日本のスズメバチより恐ろしい。巣に近づけば、何の警告も前触れもなしに突然大群で襲ってくるらしい。しかも、本気で怒らせると何キロも追っかけて来るとか来ないとか。
しかし、オオミツバチの方も人間その他に巣の周りをうろうろされるのは嫌なので、通常は地上数十メートルのべらぼうに高い木の枝や崖下に営巣する。東南アジアには、そんな高い所にロープ一本でよじ登り、この殺人蜂の巣を採ることで生計を立てているハニーハンターがいるという。甘い蜜がたっぷり詰まった巨大な巣は高く売れ、一個採れば当面は食うに困らないくらいの収入になるようだ。
マレーにて。

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恐怖の巣。高さ20-30メートルくらいの枝にぶら下がった巣板。幅1メートル以上あるだろうか。時々巣板をびっしり覆う無数の蜂が一斉に体を震わせ、さざ波が立つように見える。通常人間の行動圏内にあるものではないので、普通に生活している分には被害に遭うことはない。
タイにて。

隠蔽擬装の天才、カマキリ。
IMG_3870.jpg蔓に引っかかった小枝にしては不自然な感じがして、よく見たらカマキリだった。タイにて。

きのはだ「木の肌カマキリ」。動かなきゃ絶対気付かない。しかし、人が寄ると信じられない程の高速で走って逃げる。カマキリはゴキブリに近縁だが、何となくこいつを見るとそれが分かる。タイにて。

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形としては別段変わり映えしない種類。だが、背景の葉っぱと緑色の質感、テカり具合が全く同じ。偶然の産物だが、一見そこに虫がいるように見えなかった。葉にこびりついた糞や食い散らかしたカスから、しばらくここにいる個体だろう。マレーにて。

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枯れ木の樹皮下にいた扁平なカマキリの幼虫。最初、上の木の肌カマキリの仲間かと思った。しかし後で調べると、カマの形から見て成虫が全身金ピカなので有名なケンランカマキリ科Metallyticidae?のような気がする。持ち帰って育てれば分かるのだが、見つけたのは国立公園の保護地域内。自分の研究対象ではないので持ち出し許可は取れず、日本に連れて帰れなかった。
樹幹に住む木の皮風の姿をした扁平なカマキリは、概して行動が異常に素早い。この手のカマキリは、アリを好んで捕るようだ。ボルネオにて。

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「枯葉カマキリ」。巧みな隠蔽擬装も時に見破られる。すると、今度は一転こけおどしに出る。ボルネオにて。

こうやってカマキリの写真を並べると、熱帯にはカマキリが沢山見られるように錯覚されるかも知れない。しかし、実際の所日本の方が遙かにカマキリという虫を見る機会は多い。熱帯ではカマキリのような捕食動物は広範囲に散らばりすぎており、なおかつ隠蔽擬態の巧みさから、そうそう見つけられない。これら写真は過去6年くらいかけてようやく見つけたくらいの者共。

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たぶんアオバハゴロモ科Flatidae spp.?。植物の新芽と見分けがたい。マレーにて。

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ヒキガエル一種Bufo sp.。とても大きい種類で、川縁にしばしばいる。図体でかいくせに敏感で、人が来るとすぐ川に飛び込んで逃げる。下手に刺激すると水にバッチャーンと派手にいくので、水の跳ね返りをもろに食らう。カメラを濡らされないよう、こいつの後ろを通るときは慎重に。
マレーにて。

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セミの一種。かなり大型で、日本のクマゼミよりもでかかった。マレーにて。

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「巨人ツユムシ」。東南アジアには、常軌を逸脱した大きさのキリギリスが何種かいる。マレーにて。

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たぶんサシオコウモリ科の一種Emballonuridae spp.?。いつも行く熱帯のジャングル内にある、石造りのほこらに常にいる。敏感ですぐ飛んでっちゃうので撮影が極めて難しく、遠くから望遠で撮らねばならない。愛らしい顔つきだが、国内外を問わず野生コウモリとの過度の接触は自殺行為に等しい。
マレーにて。

ドラッ子

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トビトカゲ一種Draco sp.。膜の張った肋骨を翼のように広げ、紙飛行機のように飛ぶ樹上性トカゲ。生息地ではさほど珍しいものでない。翼はとても派手な色をしているが、通常はたたんでいるので飛ぶときくらいしか見せてくれない。逃げるときだけ派手な色を見せつける方法(フラッシング)は、多くの弱小な生物で見られる。

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元々目立たない体色なのに加え、周囲の環境によりある程度カメレオンのように体色を変えるようで、動かなければいることに気づけない。しかし、すぐ動く。突然幹から飛び立つので、それで大抵気づく。

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写真は、全てマレーにて。

首長ドッペルゲンガー

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ハネナシハンミョウ(キノボリハンミョウ)Tricondyla sp.。そこそこの大きさがあってかっこいい東南アジア特有の甲虫。樹上性の昆虫だが翅がない。不便じゃなかろうかと思うが、それでうまくやって行けているのだから問題ないのだろう。飛ばない上に木の上にいるものなので、生息地で探してもそんなに視界に入るものではない。行動は素早い。タイにて。

この他に、クビナガハンミョウNeocollyrisというこれそっくりな樹上性ハンミョウの仲間がいる(これは素早く飛び回る)。東南アジアにおいて、青黒い体、長い首、赤い脚は樹上性ハンミョウを象徴づけるデザインといっても過言でない。不思議なことに、これらハンミョウ類と同所的に生息する、これら特徴をもつ他の分類群の虫がけっこういる。

キリギリス・キリギリス一種
ツユムシ系のキリギリス一種幼虫。遠目に見ると、実にハンミョウそっくり。しかし成虫になると、ちょっと首が長い他は何の変わり映えのしない、ただの緑のキリギリスになるようだ。成虫は、ハンミョウよりはでかくなる。ハンミョウと同サイズの間だけ、ハンミョウらしい色彩でいる。マレーにて。

コウチュウ・ゴミムシダマシ
ゴミムシダマシ一種。最初見たとき、普通にハンミョウだと思った。しかし、近寄っても逃げないし様子が変だったので、偽物であることに気付いた。実にハンミョウにそっくり。初めてこれを見つけた時はさほど関心もなかったし、どうせまた見つけられると思って捕らずに通り過ぎた。しかし、この虫は割と珍しいものだったらしい。その後何度も東南アジアに赴いているが、2匹目に遭遇できない。マレーにて。

ハンミョウに似せる意味とは何だろうか。それと、地上性ハンミョウにおいてこれほどにまでハンミョウでない虫が似せる例を思いつかないが、なぜ樹上性ハンミョウばかりが似られるのだろうか。地上性ハンミョウに比べて形態と色彩のバリエーションが少なくて似やすいのか?

蝶の仇返し

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アリと一緒にツノゼミにたかるアシナガシジミ類。多分エビアシシジミ属Allotinus sp.。アシナガシジミ類は、他の蝶と違って花にも樹液にも果物にも来ない。半翅目(同翅亜目)の排泄する甘露だけが、彼らの唯一の食料である。大抵の種類がアブラムシやカイガラムシなど小型の半翅目に集まるが、大型のツノゼミに集まる種類も存在する。彼らは生活の全てをツノゼミに依存している。


ツノゼミの幼虫が取りついた木の葉の付け根に産卵するエビアシシジミ。アリがツノゼミをガードしているが、この蝶に対してはなぜか何もできない。

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孵化した幼虫は、葉っぱには一切口を付けずにツノゼミの傍らに常に寄り添う。そして、アリの目を盗んではツノゼミの甘露を盗み取る。アブラムシの出す甘露には多少なりともアミノ酸など栄養分が含まれているので、ツノゼミの甘露も似たようなものなのだろう。幼虫は、この新鮮な栄養ドリンクを日がな一日飲み続け、見る見るうちに成長する。

大きく育った幼虫。エビアシシジミの幼虫は、ある程度のサイズに成長すると予想外の行動に出る。

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今まで育ててくれたツノゼミに対し、突然襲いかかり、生きたまま頭からバリバリ食い荒らす。アシナガシジミ類は、幼虫期には完全に肉食。大抵の種類は小さくて無抵抗なアブラムシ、カイガラムシを食うのだが、ツノゼミを芋虫が食う光景はインパクトがありすぎる。ツノゼミは大きいし、活発に動くし、ジャンプして逃げる事ができる。だから、ツノゼミを丸ごと押さえ込める大きさに成長するまでは甘露だけを吸っておとなしく過ごし、成長後は本性を現す。
それにしたっておかしいのは、ツノゼミが全く抵抗する様子もなくあっさり芋虫に食われてしまうことだ。その気になれば、すぐに逃げる事は十分可能に見えるのに。

アブラムシを食うことで知られる日本のムモンアカシジミShirozua jonasiの場合、布団のようにアブラムシの上に覆い被さり、口から吐いた糸でアブラムシを縛り上げて完全に無抵抗にしてから食うことが知られている。しかし、このエビアシシジミを見る限りでは、そこまでもっさりツノゼミに覆い被さっている風ではないし、食われているツノゼミが糸で縛られている様にも見えない。何か別の特殊な方法でツノゼミの動きを封じてから食うのだと思う。
ちなみに、アシナガシジミ類はツノゼミ類が多様な南米には分布しない。代わりに、向こうで多様化したシジミタテハのある一群がツノゼミ食いに特化している。見事な収斂。しかし、アシナガシジミ。恩を仇で返して去る蝶。
写真は、すべてマレーにて。













以下、独り言だから読まないでいい。



2005年の学術雑誌Scienceに、ハワイに生息しカタツムリを糸で縛り上げて捕食する肉食性ガの論文がでた(Rubinoff & Haines 2005)。この中で、著者はこの発見の新規性として「カタツムリを食う鱗翅目が初めて見つかった!」と「糸をクモのように捕食の道具に使う鱗翅目が初めて見つかった!」をあげている。だが、後者の「糸をクモのように・・」に関して、上述のムモンアカシジミの例のように、こういう事をするチョウ・ガは既に見つかっている。しかも、このムモンアカの行動は、上のガの論文が出る20年近くも前に、複数の日本人観察者によって独立に見出されている知見だ(山口1988とか大倉1986など)。
惜しむらくは、こうした日本人達の知見が和文著書、しかも一般人がなかなか手にしづらい写真集上でしか記されなかったことだろう。当時まだ本格的に研究を始めたばかりだった俺は、どんなに常識を覆す発見をしようと、万人に向けた紙面に万人に向けた文字で書き起こさねばそれは何も発見していないのと同じだという当然のことを、この一件で思い知った次第。

それ以来、俺は野外で得た新知見は、それがどんな些細なことであろうと査読付き国際誌に出す姿勢を貫いている。俺が見たことを「見たこと」にするためである。そうして些細な業績ばかり無駄に重ねるのもどうかとは思っているが。

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ヨロイハブTropidolaemus wagleri。大型で恐ろしげだが、話せば分かるタイプ。マレーにて。

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メダカハンミョウ一種Therates sp.。草の葉の上に住み、次々に葉から葉へ飛び移る。敏感で近寄れないので撮影が困難。しかも、本当は全身綺麗なメタリックグリーンをしているのだが、強いストロボ光を浴びせると光を吸収してしまい真っ黒な虫に写ってしまう、写真家泣かせ。薄暗い森にしかいないので、ストロボは使わないわけにいかないし、困りものだ。
メダカハンミョウの仲間は日本の南西諸島にもいるが、ご多分に漏れず日本の種類は見たことがない。
マレーにて。

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カロテス一種Bronchocela cristatella?。美しい緑。マレーにて。

今週は海外の連中。

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たぶんヒメハルゼミEuterpnosia chibensis?。生息地内での個体数は概して多い。地中の穴で木の根っこに取りつく。こいつが空へ飛び立つのは何年後。鹿児島奄美にて。

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アシジロヒラフシアリTechnomyrmex brunneus。南西諸島の荒れた疎林地帯では、存在しない場所を探すのが不可能なくらいうじゃうじゃ居る。指で掴んだりコロニーを刺激するととなぜかココナッツミルクのような甘い香りがするが、試しに食った人曰くとても不味いらしい。3ミリ程度の小さいアリだが、腹部にしっかりダニがついている。鹿児島奄美にて。

不貞寝

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アマミアオガエルRhacophorus viridis amamiensis。地上のくぼみで鳴くオス。人間の接近により鳴くのをやめて身を伏せる。鹿児島奄美にて。

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アマミシリアゲPanorpa amamiensis。特産の希少種らしいが、生息地ではさほど珍しいものでもないらしい。いいことだ。鹿児島奄美にて。