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たぶんツツガムシ系と思われるケダニ亜科Prostigmata sp.。長野にて。

びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛

女芸能人のブログよろしく、食い物の写真を乗せるのはもう永久にないと思う。

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ヒレナマズClarias sp.の、変わり果てた無残な姿。東南アジアではこの魚を食える場所がいくつかあるが、マレーシアの空港レストランで出るから揚げが最高に美味。調査期間中は山篭りなので、こんな豪勢なものは食えない(別に高級な食い物ではないが)。帰国前の最後の楽しみ。数週間ダニとヒルと蚊だらけの森で、毎日インスタント麺とふえるワカメだけみたいな貧相な食生活を強いられるんだから、最後にナマズの一匹くらい食べさせてください。

ヒレナマズは日本にも沖縄にいるが、これは人為分布。たぶん食用や観賞用のため持って来たのが養殖池から逃げたか、意図的に棄てられたものの成れの果てらしい。最近、本土の琵琶湖にまで投げ込まれたようでニュースにもなった。いずれも、まだ生態系に影響を与えるような事態にまではなってないと思う。ヒレナマズの仲間はアフリカや東南アジア原産だが、各地に食用、観賞用として輸出されている。肉食性のため野外に逸脱した際の影響が懸念され、世界の侵略的外来種ワースト100にも数えられている種もいる。

日本で今問題になっている外来の淡水魚は、多くのものが食う目的でよそから持ってきたはずである。食材として定着せず放流という体で棄てられた種も多いと思う。でも、調理法次第ではいくらでも化ける潜在性を持っている魚ばかりなのだから、もっと乱獲して食えばいいと思う。
大学時代、同じ研究室の後輩で猟師(=漁師)をしてた奴の家で、その辺の池で突いてきたブラックバスのムニエルを食ったけど、涙が出るほどうまかった。正直、そのとき一緒に出された天然大イワナのムニエルと同等以上だった。

もちろん、駆除の一環として外来魚の食材利用を進めるやり方には気をつけるべき点もある。「外来魚うまいよ!もっと外来魚を食べよう!」ということをあまり喧伝しすぎると、「そんなに有用な水産物ならもっと日本中で増やせばいいじゃないか」という本末転倒な世論を助長しかねないからである。
でも個人的な意見としては、天然ウナギが日本で採れなくなったからと言ってよその国からウナギを乱獲して持ってくるよりは、今日本にいる外来魚を食材として消費したほうが賢いんじゃなかろうか。

沖縄に住んでる人が心底うらやましい。その辺の川でヒレナマズがタダで採れるんだから。沖縄の川にいっぱいいる外来のティラピアも、マレーシアで丸ごと揚げたのを頼めば結構いい値段である。もし俺が沖縄に住んだら、沖縄中全てのヒレナマズを採りつくし食い尽くすつもりでいる。夢の毎日ヒレナマズ全席。

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クマバチ一種Xylocopa sp.。近年日本に侵入したタイワンタケクマバチX. tranquebarorumに似て、より大形。マレーにて。

たらこたっぷり

IMG_7473.jpgハダニ一種Tetranychidae sp.。植物の汁を吸う害虫。クワズイモAlocasia sp.に大発生していた。

IMG_7470.jpgハダニはクモのように糸を出す。糸はダニ自身が風に乗って移動分散したり、巣を作って天敵の攻撃を防ぐのに使われる。

IMG_7449.jpg害虫がはびこれば、必ず捕食者が鎮圧しに来る。ハダニを専食するヒメテントウ一種Scymninae sp.が沢山来ていた。とても小さく、1ミリちょっと位しかない。ヒメテントウの仲間は、比較的有力なハダニの天敵らしい。

IMG_7466.jpgヒメテントウの幼虫がハダニを食いまくる。天敵の増加と、あとダニがよそへ移動分散したためか、多量にいたハダニは4日くらいで殆ど消えてしまった。後にはダニが出した糸くずの固まりと、多数のヒメテントウの蛹が残るのみ。

マレーにて。

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ハッカチョウAcridotheres cristatellus。広い意味での九官鳥で、仕込めば人語を操るらしい。暑い昼下がり、水浴びしたくてドブをのぞき込む。汚いからやめとけ。マレーにて。

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たぶんスナハキバチ一種Bembecinus sp.?。いつも泊まるマレーシアの宿舎床下の地面は乾燥してサラサラしているが、ここにこの蜂がたくさん巣穴を掘っている。半翅目を専門に狩る狩人蜂で、見ていると次々に獲物を抱えて戻ってくる。不思議なことに、どの個体も獲物としてアリヅカウンカ科Tettigometridaeのみを持ってくる。

スナハキバチは変わった生態を持つ。一般にこの手のアナバチ系狩人蜂は、巣穴に自分の卵とそれが孵ったとき用の餌をぶち込むと巣をふさぎ、二度とその巣には帰らない。残された幼虫は、親が用意した餌を食って勝手に成長するというパターンだ。
しかし、スナハキバチの親は巣穴を掘ると中に卵だけを残してふさぎ、どこかへ姿を消す。中の卵が孵化する頃になると、親は餌を狩って戻ってくる。そして一度ふさいだ巣をまた開けて中に入り、獲物を幼虫に供給する。まるで給食を運ぶがごとくである。アナバチ系狩人蜂では、スナハキバチ属の他に近縁のハナダカバチ属Bembixでもこうした習性が見られる。

このような給餌を介した母子の接触が高じて、やがて社会性の蜂が誕生したのだという見方がある。

郵政省の回し者

IMG_9427.jpgチョボグチガエルの幼体Kalophrynus sp.。この仲間は似た種がいくつかいる。鼻先が短い独特の顔つきのためこんな名前がついたようだが、実際は言うほどおちょぼ口でもない。

IMG_9938.jpg鳴く成体。「ふぇん、ふぇん、・・」と気の抜けたカモメとも猫とも付かないへんな声。森林内の地面で鳴き、ちょっとした水たまりに産卵する。不思議な習性があって、一匹鳴くと必ずその近辺にいる別の一匹が交互に鳴き交わすようにデュエットする。個体毎に声のトーンが違うので、ただでさえへんな声のデュエットが余計におかしくて、森で聞くといつも笑ってしまう。

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この仲間のカエルは、英語でSticky Frogと呼ばれる。敵に襲われると、恐ろしく粘着性の強い汁を全身から分泌して身を守る。まるで瞬間強力接着剤のようで、手に付くと指と指が離れなくなりそうなくらいだという噂。いつも試そうと思っているが、何となくやらずに済ませてしまっている。

郵便局に一匹置いとけば重宝しそうな一品。

マレーにて。

15の昼

ジャングルの愉快な仲間達。

IMG_9659.jpgヒル。東南アジアの森には吸血ヒルが多い。日本のヤマビルHaemadipsa zeylanicaに色もサイズもそっくりな種と、やや大きめで黄色い線のある種がいて、後者はタイガーリーチと呼ばれている。雨の後には特に多く、森に入れば足下にわらわら寄ってくる。人間の体から出る二酸化炭素などを感知するため、多少よけても正確に軌道修正してこっちにくる。シャクトリムシのような見た目と動きの生物が、人間の後をひたひた追ってくる光景はシュール。

ヒルは人間を感知すると樹上から人間目がけて落ちてくると言われるが、その瞬間を見たことがなかった。たまたま低木の葉にいたヒルを傍でじっと見てみたところ、奴は細い頭を振り回してこちらのいる方向を確認するや、軽くお辞儀した直後ピンと体を伸ばし、バネを聞かせて飛び降りたのだった。

IMG_0310.jpgヒルは吸盤状の腹端で体を支えながら気付かないうちに人間の体に這い登り、服の中へ入る。体を人間の肌に固定すると、それまで細かった頭をラッパ状に広げて吸い付く。そして、隠していた鋭い歯で皮膚を切り裂き、血液凝固を防ぐ成分を注射してからゆっくり吸血し始める。血中の余計な塩分と水を排泄しながら、1時間ほどかけて吸血する。咬まれた時の痛みで気付くこともあるが、最後まで気付かない場合も多い。また、伝染病などはうつさないものの、でかい奴にやられると3時間くらいは血が止まらず、服や靴下を血染めにすることになる。ドバドバ出続けるのではなく、じくじくと少しずつ出続ける。

咬まれた跡はやがて痒くなり、水疱になる場合もある。また、数日後に再び出血し出すこともあり、ひどい時には数ヶ月経って突然出血する。風邪を引くなど体調を崩したときにそうなりやすい。蜂刺されのように回数を重ねると抗体価が上がり、体質によっては次第に咬まれた際の症状が重くなる。俺は抗体価が上がっているらしく、かなり咬まれた跡の予後が悪い。足首を数カ所咬まれた時には足全体が腫れ、靴を履くのも億劫だった。健康を考えればこれ以上咬まれる訳にいかないのだが、熱帯の森で一匹のヒルにも咬まれずに数週間過ごすのは不可能だ。

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ひどい水ぶくれになっていたが、2週間くらい経ってようやく引いてきた。

ヒルは雌雄同体なので、飽血した成体は交尾をすませていればその後高確率で卵を作ることになる。公衆衛生の観点からも、余計なヒルを増やすことは許されないため、現行犯を押さえられたヒルは即刻処刑される。人によって方法は様々で、火あぶり・ハサミで一刀両断・コンクリの地面に飽血したヒルを置いて、水風船のように靴底で破裂させるなど。俺は時間をかけていたぶるのが好きなので、宿泊施設へ持ち帰って床下の乾燥した砂の地面に置く。ヒルは砂の上では体を支えられず、どこへも逃げられない。しかも体に乾いた砂がまとわりつき、どんどん水分が奪われる。1時間くらいその場でのたうち回り、やがて干涸らびる。

吸血ヒルの中には、ちぎれた指の縫合手術など医療目的に使用できる種がいる。その種は乱獲されすぎて絶滅の危機に瀕しているらしい。山ほどいるヤマビルをどうにか有効利用できるようにならないものだろうか。

ダウナー系

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ヒメワモン一種Faunis sp.。東南アジアに広く分布するワモンチョウ族Amathusiiniは、美麗な南米のモルフォチョウ族Morphiniと親戚筋にある。実際、ワモンチョウの仲間にはモルフォのように青く輝く美しい種もいる。しかし、茶色系の種類の方が多い上に、日も差さない真っ暗な森にしかいないので、陰気さがどうしても拭えない。

マレーにて。

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たぶんヨコバイバチ一種Pseninae sp.。アオバハゴロモ科Flatidae sp.の幼虫を捕らえて運ぶ最中。こういう蜂は突然目の前に現れて突然消えるので、ろくな写真が撮れない。マレーにて。

IMG_9697.jpgオサゾウムシ一種Rhynchophoridae sp.。マレーにて。

この種類はどうだか知らないけど、オサゾウムシ科には農作物などの害虫になる種が多い。米に食い入るコクゾウムシSitophilusもこの仲間。今や日本では米びつティーチャー等の台頭により滅多に見なくなったコクゾウムシだが、海外では相変わらず健在である。

調査でよく行くマレーシア山中の宿泊施設は自炊のため、あらかじめ麓のスーパーマーケットで食料を買い込んでから行くことになる。その際に米を買うのだが、ここで買う米の袋の中にはかなりの確率で生きたコクゾウムシも一緒にパッキングされている。ある特定メーカーの米に集中してコクゾウムシが混入している傾向があり、袋の中で暢気に交尾している個体さえ見られる。このスーパーに行くと「トレジャーハント」と称して米売り場のコクゾウムシを探すのが、俺の向こうでの恒例行事。滅多に見ないがノコギリヒラタムシOryzaephilus sp.が混入していることもあり、発見すると高得点。景品はなし。

害虫の生態写真は意外に方々で需要があるため、自称写真家としては日本でもはや発見しがたいこのゾウムシの写真を撮っておきたい。しかし店内は撮影禁止のうえ、万引き防止とやらで荷物を持って入場すること自体が禁止されており、未だに撮影できていない。ならば米を買って店外で撮影すればいいだろうと言われそうだが、たかだか袋の中にいる虫の写真を数枚撮るためだけに虫害で汚染された米を1キロ買う気にもなれない。

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たぶんヒメセナガアナバチ一種Dolichurus sp.?。ゴキブリを狩る狩人蜂の一種。一度だけゴキブリを捕らえる瞬間を目撃したが、追う方も逃げる方も肉眼で軌跡を追えないスピードだった。マレーにて。

他の虫を毒バリで麻痺させて仕留めるこの手の蜂類は、かつては「狩人蜂」と漢字で表記するのが普通だった。しかし、近年では「蜂は人じゃないから、狩人と呼ぶのはおかしい」といった理由で、各種文献上では「カリバチ」とカタカナで表記するのが一般的になっている。

俺は昔からファーブル昆虫記その他で慣れ親しんだ「狩人蜂」という表記に、並々ならぬ思い入れがあるため、今更変えられない。今後も「狩人蜂」、百歩譲って「カリウドバチ」を使うことにこだわりたい。

パワポの達人

IMG_8601.jpgハラビロトンボ一種Lyriothemis sp.?。昼なお暗いジャングルの小径でテリトリーを張る。マレーにて。

鬱蒼としたジャングルに住むトンボには、分類群にかかわらず体が鮮血の如く深紅の種類が多い。背景が常に深緑の場所で、素早く動く濃い赤色の棒を目で追うのは非常にしんどい。色覚の盲点を巧みについた擬態だと思う(実際のトンボの捕食者が人間と同じ色覚を持っているかどうかは知らないが)。
かつて小笠原でハナダカトンボRhinocypha ogasawarensisを追い回したときも、上述の理由により幾度となく見失った。

学会発表などのスライドを作る際、緑の背景に赤の文字を使うなど言語道断である理由が、ジャングルのトンボを見るとよくわかる。

同じ阿呆でも踊らにゃ損

IMG_7729.jpgヨコヅナアリ一種Pheidologeton affinis。ヨコヅナアリ属は、東南アジアには普遍的に見られるアリの一群で、巨大なコロニーをもち、軍隊蟻のように隊列を組んで行進する。定期的に引っ越しするが、本当の軍隊蟻ほど頻繁にはやらない。

この仲間の特徴は、同種・同コロニー内のワーカーサイズに顕著な連続的多型があること。小さいワーカー(マイナー)は3ミリ程度なのに、でかいワーカー(メジャー)は2センチ近くもある。ぱっと見、女王とその子供のように見間違えそうな位だが、これは幼虫期に与えられた餌の量や質の違いの結果である。ワーカーはサイズ毎にかなりはっきり分業していて、マイナーは餌をバラバラにしたり、敵と戦う。メジャーは、行列の行く手を阻む障害物をどけるブルドーザーになる。
メジャーは顎の力も強力なので戦えばかなり強いのだが、非常に小心なのでよほどのことがない限り戦いの最前線には現れない。そもそも日の光が嫌いで、夜にならないと表に出てこない。図体ばかりでかいチキン野郎。

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IMG_1871.jpg別種のヨコヅナアリP. diversus。ヨコヅナアリは雑食性で、生死を問わない生物の肉体の他に植物質のものも好んで餌にする。食性の広さに加え、コロニー規模のでかさから見て、万が一日本に定着してしまうと面倒なことになりそうだ。ヨコヅナアリは、過去に数回日本に侵入した記録があるが、幸いいずれも定着まで至らなかった。

IMG_0629.jpg凶悪なヨコヅナアリP. pygmaeus。俺が勝手に「阿波踊らせ」と呼んで恐れているこのアリは、マイナーが1ミリ程度、メジャーでも3-4ミリ程しかない小型種。なのに、ビックリするほど強力な毒バリを隠していて、刺された人間は誰もが恥も外見もなくその場で地べたをのたうち回って悶絶する。服の中に入られようものなら、ガトリング銃で撃たれるがごとくダンサーのような踊りを披露することになる。ヨコヅナアリの仲間は全て刺すが、この超ミニサイズの種類以外ならば「あ、刺したな?」程度の違和感があるぐらいで済む。しかしどういう訳かこの超ミニサイズの種類は、筆舌に尽くしがたいほどの激痛を伴うのである。でも生命には大して影響ない。

中学校でダンスが必修になったがダンスができないという体育の先生方にはうってつけのアイテム。もしくは罰ゲームのお供に。

マレーにて。

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コウトウシランSpathoglottis sp.。きれいな花だが、ただの雑草。道ばたのつまらない場所に生える。

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眼前に採石場が迫る。マレーにて。

凛呼で蒸す

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陸生プラナリア、リンコデムスRhynchodemidae sp.。倒木下にいて、ほかの小動物を捕食するハンター。これは小型の在来種だが、沖縄や小笠原ではこれに近いニューギニアヤリガタリクウズムシPlatydemus manokwariが外来種として侵入し、土着の固有巻貝類を食い荒らして問題になっている。腹側が口になっていて、これで獲物を取り込むように飲んでしまう。

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ヒルのように無機質で不気味な生物と思いきや、顔はかわいい点目。長野にて。

怪人

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ハヤシクロヤマアリFormica hayashi。長野にて。

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アリヅカムシ一種Pselaphinae sp.。芥子粒くらいの微小な種類。土壌中に見られ、アリとは共生しないグループの種。この個体は森林内のただの石下に見られた。静岡にて。

※某掲示板から、ハナダカアリヅカムシStipesa rudisであるとのご指摘を貰いました。穴倉さま、ありがとうございます。

孤独の竜

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カッコウCuculus canorus。夏鳥の一種。うちの近所では何故か山間部で全然見かけなくて、むしろ住宅街に多い。意外に人んちの植え込みにモズLanius bucephalusが多く営巣しているらしく、これへの托卵を狙っているようだ。今までの経験上、住宅街で望遠レンズを取り出すのは勇気がいるが、どうしてもやらねばならない時はある。

托卵鳥は自分の親の顔も子供の顔も知らないまま死んでいく、天涯孤独の鳥。他の夏鳥に一足遅れて日本にやってきて、さっさと用をすませて一足早く日本を去っていく。

長野にて。

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コムクドリSturnus philippensis。夏鳥の一種。愛らしく、色彩も美しい。さえずりは少々やかましいが、それでも普通のムクドリSturnus cineraceusのわめき声に比べれば遙かにいい声。長野にて。

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トゲアリPolyrhachis lamellidens。雑木林に住むトゲだらけの大型アリ。創設期の女王は自力で巣を作り上げることができず、オオアリ属Camponotusの巣を乗っ取って自分の巣に仕立て上げる。しかし乗っ取りの成功率は高くなく、必然的にこのアリもあまり全国的に普通に見られない。恥ずかしながら、俺はアリを研究対象にしているくせに大学に入る年までトゲアリというアリを見たことがなかった。

トゲアリ属は、熱帯地域に沢山の種類がいる。変わった姿の種も少なからずいる。でも正直なところ、日本のトゲアリが世界で一番かっこいいと思う。

長野にて。

IMG_2013.jpgカジカガエルBuergeria buergeri。夕刻に姿を現した雌。

IMG_2028.jpg美しい声で縄張りを主張する雄。

IMG_2045.jpgヌカカCeratopogonidae sp.に吸血される。かゆくないのだろうか。長野にて。

麻弓タイム

IMG_1855.jpg新緑の時期をやや過ぎたマユミEuonymus hamiltonianusの森。その木の若い枝を見ると、ある虫の幼虫が見られる。

IMG_1841.jpgニトベツノゼミCentrotus nitobeiの幼虫。日本最大のツノゼミで、山間部の限られた地域にしか見られない。取り付く樹種も比較的限られていて、マユミはその限られたレパートリのひとつ。若令期にはある程度の集合性があるようで、一箇所に数匹が見られることが多い。非常に扁平だが、成長するにしたがって背中が盛り上がってくる。

IMG_1847.jpgツノゼミ類の幼虫には、普通ならアリが集まる。これはツノゼミが排泄する甘露をなめるためで、成長のために多量に植物の汁を吸う幼虫にはことさらアリが集まりやすいようだ。ましてそれが集団になればアリが来ないはずはないのだが、不思議なことにニトベツノゼミの幼虫集団にはアリの姿が見当たらない。この種は日本産ツノゼミ類の中では一番アリとの関係が希薄のようで、「ニトベにはアリが来ない」とほぼ断言している文献もある。

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IMG_1862.jpgよくよく調べてみると、全くアリが来ないわけではないことがわかる。ある幼虫集団にはシワクシケアリMyrmica kotokuiが多少随伴しており、甘露をちゃんともらっているのを観察できた。しかしこのようにアリの随伴が認められたのは、発見できた数十の幼虫集団のうち1つだけだった。なぜニトベはアリに人気がないのだろうか。それ以上に、なぜニトベはアリがいなくて平気なのだろうか。

ツノゼミにとってアリに随伴されるメリットとしては、天敵からの防衛のほかに自分の排泄物である甘露が自分の体にかかってこびり付き、カビや病気になるのを防いでもらうことが挙げられる。ニトベは抗菌成分を持ってて体を掃除してもらわなくても病気になりにくい仕組みがあるのかと思ったが、前年度の秋にこの場所に来たときに、非常に多数の成虫がカビに冒されて死んでいるのを見ている。全然平気じゃないじゃないか。

ニトベもある程度は甘露を処理してもらわないと健康を損ねると思う。なのになぜアリが来ないのか。ニトベは比較的限られた植物にしかつかないが、それに原因があるような気もする。ニトベの体内を通過したマユミの樹液は、アリの好みの味でないのかもしれない。

長野にて。

タコ八郎

ザトウムシ・スズキダニザト
スズキダニザトウムシSuzukielus sauteri。小型種で一見赤いダニに見えるが、ザトウムシの仲間。胴体にはっきり見える腹節と、上半身に一対ある出ベソのような突起=臭腺丘がその証。湿潤な森林の腐葉土中や石下に見られる。

本種はダニザトウムシ科Sironidaeでは日本唯一の種。関東西部にのみ局在するが、伊豆半島に特に多い。世界的に見ても本科は普遍的に分布しているわけではないようだ。

静岡にて。

強龍来る

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キビタキFicedula narcissina。初夏に日本にやってくる。キビタキに代表される夏鳥は、遠く東南アジアから渡ってくる鳥達。日本の山野の昆虫にとっては、存在そのものが忌まわしいであろう敵。長野にて。

冬の渡り鳥・冬鳥は、カモ、ハクチョウ、ツル、カモメなど比較的大型なものが多く、海や川など開けた場所に集まるためよく目に付く。なのに夏鳥は、ツバメ以外は一般人には殆ど認知されていない。本当は夏に日本に渡ってくる鳥はいろんな種類が居るのだが、殆どが小型種な上に渡来後すぐ森林へ隠れてしまうので目に付かないのだ。

そんな影の薄い夏鳥たちだが、彼らの働きは極めて重要だ。子育てのために日本にやってくる彼らは、多くが虫食性。子育てのためには多量の虫を消費するため、一夏の間に彼らが乱獲する虫の数や天文学的な量になるだろう。ちょうど夏鳥が渡ってくる新緑の時期、日本の野山は虫で溢れかえる。その数をコントロールする意味で、夏鳥の存在は日本の夏山の安寧維持に多大に貢献している。

近年、夏鳥はどの種類も日本への渡来数が減ってきているらしい。越冬地である東南アジアの熱帯林がどんどん無くなってきているのが原因とも言われる。夏鳥の数がこのまま減り続ければ、夏季に日本で害虫の異常発生が起きやすくなるのではないかと懸念する声もある。

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コガネコメツキSelatosomus puncticollis。山地に住む美麗種。長野にて。

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ミヤマドウボソカミキリPseudocalamobius montanus。山地のスグリ類にくる。長野にて。

死のアフロ

IMG_1753.jpgコブガタアリタケTorrubiella sp.。冬虫夏草の種同定は、本来なら胞子の形態を顕微鏡で精査する必要があるのだが、日本では恐らくこれに似たものが他にないのでコブガタアリタケとしておく。

IMG_1740.jpg日本のアリに寄生する冬虫夏草としては極めて珍しい種。寄生されたアリは、周囲の植物の茎にガッチリ噛みついた状態で息絶える。すると、アリの後頭部からアフロのように瘤状のキノコがムクムクと出てきて胞子を飛ばす。局所的に多く発生する傾向があるようで、ここに示した写真の個体はアリの巣の周辺で10個程度がまとまって発見されたその一部。いずれもやや古い個体ばかりで、アリの胴体がみな破損していた。秋口に来れば新鮮な個体が見られるかもしれない。

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コブガタアリタケの寄主としてはムネアカオオアリCamponotus obscuripesが記録されているが、俺が見つけた個体の寄主アリはやや特殊な環境に生息する特殊な種。多分寄主としては日本初記録だと思うので、ここでは詳細は秘密。

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ドクガArtaxa subflava。毎年、初夏のフィールドでは悩みの種。触れば皮膚がただれてかぶれ上がるが、触らなくても近づいただけでかぶれる場合がある。非常にやっかい。
しかし、世界中どこであろうと、ドクガもカもダニもいないようなフィールドにろくな場所があった試しはない。

長野にて。

入ってくるな

ハチ・タイワンタケクマバチ2
タイワンタケクマバチXylocopa (Biluna) tranquebarorum。帰る巣を間違えたよそ者を激しく糾弾する。長野にて。

最近、中国だか台湾だかから侵入した外来種で、急速に分布を拡大しているという。全身真っ黒のでかい蜂で、翅は禍々しいほど虹色に輝く。タケを囓って綺麗な丸い穴を開けて巣にするが、ゴムホースを囓ることもある。日本在来のクマバチXylocopa appendiculataと資源を巡って競合する可能性が高く、また双方の胸部に取り付く共生ダニとの相互作用も懸念材料。

文献上では愛知県と岐阜県に定着しているとあるが、長野県中部にも普通にいる場所がある。認知されてるんだろうか。