ゲルショッカー

ハチ・ハエトリバチ11ハエトリバチMellinus arvensis obscurus。古い図鑑ではペレーキスジジガバチとかいう名前で載っていた。ハエを専門に狩る狩人蜂で、どっちかというと北方系の種らしい。ハエを狩る蜂は多いが、大概は空中を華麗に飛び回り猛禽のように空中で捕らえたり、上空から急降下して捕らえるのに対し、本種は待ち伏せ型の戦法をとる。
ウンコや死体など、ハエが集まる場所の地面で伏せており、ハエが来ると猫のように歩いて忍び寄る。射程まで寄ると、高速ジャンプで飛びかかる。

ハチ・ハエトリバチ12捕らえると、獲物の胸部に毒バリを打ち込んで仕留め、それを抱えてすぐ巣へ運び去る。幼虫の餌にするためにハエを狩るが、時に自分の腹の卵のタンパク源にでもするのか、自分でバリバリ囓って食ってしまうこともある。かつて層雲峡でそれを見て、撮影したことがある。

ググレカス先生でハエトリバチを検索すると、何故か仮面ライダーのページがやたらヒットする。これは、本種と同姓同名で本種とはまったく無関係の怪人が出てくることによる。

北海道にて。

IMG_7912.jpgクマバチXylocopa appendiculata circumvolans。長野にて。

ハチ・ナミコナフキベッコウナミコナフキベッコウPompilus cinereusの狩りの瞬間。上品な質感の狩人蜂。海浜に住み、徘徊性クモを狩る。その後巣穴を慌てて作り始めるが、作業中にアリなどに獲物を盗られないように、近くの地面に浅く埋めて隠す。
時々作業の手を休めては隠した獲物の所まで行き、地面から一度掘り出し無事を確認してまた埋めて隠すのがいじらしい。

ベッコウバチ科は、何故か最近唐突にクモバチ科と名前が変わった。理由は知らないが、長年なじんだものを今更変えられても困るので、これからも一生ベッコウバチと呼び続ける。クモバチなどとは決して呼ぶつもりはない。

三重にて。

バッタ・ヤマトマダラバッタ2

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コウチュウ・セダカオサムシ1セダカオサムシCychrus morawitzi。北国のオサムシで、長い首を使ってカタツムリを好んで食う。北海道にて。


今日、長い長い海外遠征から帰国した。とりあえず業務は好成績に終えることが出来たが、雨期のはしりだったためか全体的に虫が少なく、不完全燃焼の感は否めない。また、二つ出していた某公募のうち片方が落ちているのを始め、幾つかのよからぬ自体が舞い込み、帰宅早々うちひしがれている。

しかし、消沈してばかりも居られない。もう一つの公募に「?」の知らせがあった。そして、来月大きな昆虫関係の行事があって、それの講師として呼ばれることになったため、その準備を早急にせねばならなくなった。地味に名を売り、地味に業績を稼いでいく以外に、無名の若手研究者が生きていく術はない。

シジフォスの神話

P1330195.jpgアシナガタマオシコガネ一種Sisyphus sp.。小型種の糞転がしで、動物の糞を小さく切り取って丸く整え、転がしていく。逆立ちしながら軽快に糞球を転がしていく一般的な糞転がしと違って、動きがギクシャクしていてすごく苦しそうに運ぶ。
この小さな甲虫に、神のバチが当たって必死に巨岩を山の上に運んでいく神話の主人公の名を与えた学者のセンスに脱帽。

マレーにて。

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トフシシリアゲアリ一種Crematogaster(Decacrema) sp.。アリ植物としてしられるオオバギMacaranga bancanaの幹内に住み、植物が作り出す栄養の粒を餌として貰う代わりに、害虫を遠ざける用心棒を務める。マレーにて。

IMG_9232.jpgヒシバッタ一種。沢沿いの岩にいる大形種。日本の南西諸島にいるイボトゲヒシバッタPlatygavialidium formosanumと同属だろう。マレーにて。

IMG_8632.jpgおしゃれなトンボ。黒と透明の境目あたりにうっすら白い模様があるのがいい。東南アジア某所にて。

IMG_8690.jpgアツバコガネ一種Hybosoridae sp.。糞転がしの仲間だが、どちらかというと腐肉に集まることが多い。日本では南西諸島などに2種いるだけだが、熱帯には東南アジア・南米ともに種類がとても多い。上の個体は、つぶれたカタツムリに集まってきたもの。マレーにて。

アツバコガネは、シロアリの巣内にいる不思議な姿のマンマルコガネCeratocanthidaeに近いとされる。アジア産の種を見る限り、どう見ても両者は全然見た目が違うのに、これ分類した奴はバカじゃねえか、寝言は寝ても言うなと思っていた。しかし、南米でマンマルそっくりなアツバや、アツバそっくりなマンマルを見て以後、バカなのは俺だったと思い知らされた。

人の一生は重き荷を背負い

IMG_4945.jpgアリを専門に食うサシガメ一種Inara sp.。日本のクビアカサシガメReduvius humeralisに近縁(エンピコ様、ありがとうございます)。
ある種のカタアリDolichoderus sp.だけを襲い、中身を吸い尽くした後でその死骸を背負う奇習がある。吸い終わった獲物を、腹の下側に滑り込ますように前脚・中脚・後脚へと渡していく。そして左右の後脚で挟みながら粘着性の排泄物らしきものをなすりつけ、すぐに器用に背面に持ち上げてくっつけるという芸当を行う。

その瞬間を撮影しようと捕食中の個体を張っていたが、もうこれ以上背負えないらしい。吸い終わった獲物を、まるでデコピンのようにはじき飛ばしてしまった。

日本では、ハリサシガメAcanthaspis cincticrusが同じような習性を持っている。しかし、こちらの種はアリを背負うだけでなく全身に土くれも纏う。いずれにしても、こうしたサシガメ類がアリを背負うのは幼虫期に限られる。

マレーにて。

Gigas May Cry

IMG_8397.jpgある時の昼下がり、森の中で倒れているタケを踏み割った。倒れたタケの中には、本来樹上性でなかなか巣を暴けない種類のアリが巣を作っていることがあるからだ。この日割ったタケからは、珍しく数匹のギガスが飛び出してきた。夜行性のギガスは、時々数匹のチームで採餌に出る。そして、巣に帰る前に夜が明けてしまった場合、次の夜までこうした物陰に隠れてやり過ごすのである。

こういうシチュエーションで日中外へ叩き出されたギガスは、ひどく臆病な性格をしている。慌てふためいて逃げまどい、殆どの個体が近くの大きな落ち葉裏に身を寄せて隠れた。しかし、体サイズのひときわでかい一匹がそこに隠れ損ねてしまった。何とか隠れる場所を探すため右往左往しているのだが、このアリ、なにか様子がおかしい。急にダッシュしたかと思えば、その場で仁王立ちして虚勢をはるそぶりを見せたりする。よく目をこらすと、アリの周辺を小さなゴミみたいなものがまとわりついているように見えた。

IMG_8302.jpgとても小さいノミバエが、アリにまとわりついていたのだ。ノミバエには飛びながらアリの体内に産卵し、内側から食い荒らす捕食寄生性の種が多く知られる。様々な種類のアリで、その種専門に寄生するノミバエの仲間が存在する。アリより遙かに小さく、そして素早く飛び回るこの天敵はアリにとって非常にやっかいな存在。これに見込まれるとアリは逃走する以外に防衛の術がない。
見ていると次第にハエの数が増えていくようだった。アリはパニックを起こして、その場から走って逃げ出す。3センチクラスの巨大アリがゴマ粒よりも小さいハエに怯えて逃げる様は、滑稽であり奇妙でもある。

IMG_8116.jpg時々、顎を振りかざして怒り狂うのだが、ハエには何の威嚇にもならない。

IMG_8202.jpgハエはアリの体に止まり、口で刺すような舐めるようなそぶりを見せる。高速でアリに体当たりしてすぐ逃げるものもいて、何をしているのかよく分からない。見たところ、複数種のハエが来ている雰囲気で、それぞれアリに対して行うことが違うように思えた。
しばらく見ていると、逃げまどうアリの動きに変化が見られた。足取りがおぼつかなくなり、よたよた歩くようになった。そして・・・

IMG_9525.jpg何とあろうことか死んでしまった。ハエにまとわりつかれてからわずか30~40分後の出来事。屈強なアリが、ハエにまとわりつかれただけで死ぬとは思わなかった。アリを倒す程のことをハエがしたようには見えなかったのだが、ハエの行動が何らかの影響を与えた結果としか思えない。さっきまで元気で、目立った外傷もなかったのに。タケを割ったときに首尾よく逃げ隠れたアリの方は普通に皆元気だった。

このハエの存在は、少し前に「ant phorid」などとグーグルで画像検索していたときに、偶然出てきたflickrの写真で知った。きっと気にしていれば、そのうちジャングルで実際に見る機会があるだろうと思っていたら、本当に見ることが出来た。ギガスはマレー半島とボルネオに生息するが、ハエも双方に分布しているのか、いるなら種類は違わないのかなど、興味は尽きない。

マレーにて。

Gigas May Cry

IMG_4061.jpg東南アジアの密林に、ギガスオオアリ(オニオオアリ、モリオオアリ)Camponotus gigasというアリがいる。アジア最大級のこのアリは、ワーカーでさえ3センチクラスの超巨大アリで、初めて見たときのインパクトは計り知れない。森の地面を歩けばたった1匹でもガサガサと大きな音がする。大木の根元に、深い巣穴を掘って住んでいる。

IMG_2123.jpg雑食性だが大形ゆえに顎の力がすさまじく、人間の皮膚など簡単に咬み破ってしまう。巣を破壊しようとすればわらわらと地面から巨大アリが湧いて出て、手当たり次第に噛みついてくる。それに加えて、傷口になすりこんでくる蟻酸も大量かつ強力。1匹でも攻撃を受ければ消沈するため、このアリには容易に手を出せない。
まさに向かうところ敵無しに思えるこの巨大アリだが、このアリの生態には一つ不可解な点がある。昼間外を出歩くことがほとんどなく、夜にならないと姿を見せないのだ。まるで、何かに怯えるが如くである。

このアリが夜しか表に出てこないのには、幾つか理由があると思う(他種アリとの餌の競合など)。その中でも俺が一番の原因と考えているのは、天敵の存在である。このアリにはスペシャリストの天敵がおり、それが活発に活動する日中にアリ達はその襲撃を恐れて表を出歩けないのである。アリの中には、スペシャリスト捕食者の襲撃を避けるためにその捕食者の主要活動時間帯を避けて行動する種が他にもいくつか存在する。
最強の巨大アリすら外出を嫌がる程の天敵とは、どんな猛者なのだろうか。

続く。

渡る世間は赤鬼ばかり

P1340147.jpgすごく変な形のミツギリゾウムシCyphagogus sp.。バッタのように後脚が発達しているが、別に跳ねない。仲間同士の闘争に使いそうな気がする。キクイムシに食われまくった立ち枯れの木に多数来ていた。この手のミツギリは、見た目とは裏腹に獰猛な肉食昆虫。細い体でキクイムシの坑道に侵入してこれを食うという。

P1340375.jpg脚がべらぼうに長いやつとそうでもないやつが共にいたので、たぶん長い方が雄だろうと思っている。動きはものすごくギクシャクしている。昼ドラによくあるドロドロの三角関係くらいギクシャクしている。

タイにて。

ウスバ・ミズタマヘビトンボおしゃれな水玉模様のヘビトンボCorydalidae sp.。日本にいる種と異なり、昼間活動するようだ。飛ぶ姿は、有毒のマダラガに見えないこともない。タイにて。

カメムシ・ゴミアシナガサシたぶんゴミアシナガサシガメの近縁種Myiophanes sp.。ほっそりした体型で、竹馬のように長い脚にモジャモジャの毛が生える。これにいろんなゴミが勝手に付くのか、自分で付けるのか分からないが、とにかくカモフラージュの役に立っている。手近にくる弱小な虫をカマで捕らえて吸うようだ。タイにて。

ゴミアシナガサシガメは日本にも生息する。古い民家など身近な環境で見られるものらしく、かつては各地で普通だったらしい。今では環境省レッド入りする程希少になり、数年おきにしか見つからなくなってしまった珍種である。俺は数年前に、西日本にある某島の洞窟で見つけている。

菌・クモタケ一種1かつて、クモか何かだったであろうもののなれの果て。タイにて。