370.jpgニホンアマガエルHyla japonicaの色彩異常個体。見た者には幸運が訪れる、「幸せの空色アマガエル」と呼んでいる。先天的に、皮膚に黄色い色素を持たないためにこういう色になるらしい。まだ子ガエルだったが、とにかく遠くからでも目立つので親になるまで生き残るのは難しいと思う。

空色のアマガエルは、色彩異常としてはさほど珍しいものではないようだが、それでも実際に野外で遭遇できる確率は低い。

長野にて。

383.jpgケヨソイカ(フサカ)一種Chaoborus sp.。毛装いの名の通り全身がフサフサした毛で覆われた、ぬいぐるみのような可愛い蚊。特にオスは触角がモフモフしていてよい。これのぬいぐるみがあったら絶対に買う。基本的に血は吸わない仲間だが、種類によっては吸う(宮城 1974)。蚊のくせに異様に警戒心が強く、撮影しがたい。

ボーフラは、広さと深さがそこそこある大きな池で育つ。細長く透明な体を横たえて、水中の中層をゆっくり漂って過ごしている。そして、近寄ってくるミジンコなどを、目にも止まらぬ早さで捕食する。
この蚊のボーフラは、個体発生や天敵が引き起こす被食者の防衛形質誘導など、いろんな生物学的実験に利用されている。こういう研究分野においては、この蚊はフサカという名前で馴染まれているが、分類学的にはケヨソイカの名が通用しているように思える。

長野にて。

参考文献
宮城一郎(1974)本邦産の吸血性ケヨソイカ(Chaoboridae)の1種Corethrella sp.について。熱帯医学 Tropical medicine 16:89-93.

かの山

249.jpgノウサギLepus brachyurus。糞や足跡から生息していることは分かるのだが、姿そのものは滅多に見ない動物。クソ田舎に13年住んでいて、初めて遭遇した。独り立ちした直後くらいの若いやつで、山道にひょっこり出てきた。ノウサギは本来夜行性なので、ふつう昼間はまず姿を見られない。
幼いノウサギは、なぜか額に白い星マークがある。成長とともに、それは消えていく。

250.jpg撮影したあとは追った。

長野にて。

373.jpg鳥キンバエProtocalliphora or Trypocalliphora sp.。長野にて。

珍しい鳥類寄生バエの一種で、小鳥の巣から発生する。メスは巣やその周辺に産卵し、孵ったウジはひな鳥の体表に齧り付いて吸血する。まるまると飽血した終令幼虫はひな鳥から離れ、巣材の底で蛹になる。成虫のハエが羽化して巣からはい出すのは、ひな鳥が全員巣立ったころと思われる。
中でもヤドリトリキンバエT. braueriという種は、ウジがひな鳥の皮膚下に潜り込んで吸血するというおぞましい生態を持つ。しかし、ひな鳥にとってこれら蝿の寄生は、思いの外生命に別状ないらしい。むしろないように手加減しないと、ひな鳥に死なれてハエ自身が困るだろう。
Protocalliphoraで画像検索すると、ウジが鳥のひなに寄生している様子が確認できる。苦手な人は見ない方が良い。

372.jpg今年の春先に裏山で鳥の巣箱を仕掛け、シジュウカラに営巣させた。それが巣立ったあとで巣内を調べ、数個の蛹を得ることが出来た。写真の個体は、これから羽化させたもの。キンバエとはいっても煌びやかさはなく、ワカメのような深緑の体色。そして、日本の普通の大形クロバエ類と違って、左右の翅をハサミのように重ねてとまるようだ。
狭くて暗い所に入り込もうとする性質がやたら強い。そうかと思えば、突然這いだして飛んで逃げたりするため、動きが読めず撮影が難しい。立ち振る舞いが他の一般的なクロバエ類とはかなり異なり、見ていて不気味だった。これら異質な印象は、先人たる昔のハエ学者も感じていたらしい(内川 1966)。

374.jpg上の個体が羽化した蛹の殻。不思議なことに、鳥の中でも種類によってこの蝿のウジに対する反応が違うらしい。カラ類のヒナはウジに食われるがままにするのに、ニュウナイスズメのヒナはすぐに気付いてウジをむしり取り、逆に食ってしまうらしい。

鳥キンバエ類は日本に3-4種いて、おそらく生息地では珍しくはない。だが、鳥の巣に縛られた生活をしているうえに腐れものに集まりたがらないようで、普通の蝿をおびき寄せる方法では得難い。結果として、すべての種が採集記録の少ない珍種として扱われている。生きた姿が撮影されるのは、きわめて異例だと思う。

参考文献:
篠永哲, 嶌洪(2001)ハエ学―多様な生活と謎を探る。東海大学出版会、369pp.
内川公人 (1966) トリキンバエの宿主鳥類の記録。衛生動物 17, 168

332.jpg
ツツシンクイ一種Lymexylonidae sp.。棒のような大形の甲虫で、朽ち木から発生するらしい。夜間、灯火にしばしば飛来する。前翅が退化してほとんど後翅しかない種もおり、飛ぶ姿は一見してハチに見えるという。

タイにて。

371_20130723235006.jpg上半身だけ美しすぎるゴミムシ。この色は、写真では再現できない。これでも相当頑張ったほうだが、実際に自然光で見たのとは全然違う色になってしまった。全身がこの色だったら、絶対に世界で一番凄いゴミムシになっただろう。そして乱獲の憂き目に遭っただろう。
漫画とかでは「このゴミムシ野郎!」という罵倒文句がしばしば出てくるが、実際のゴミムシ類は、甲虫としてはかなり人気の高い分類群。

タイにて。

338.jpg
339.jpgシロアリモドキ一種Embioptera sp.。膨らんだ前脚から糸を紡ぐ変わった虫で、樹皮にクモの巣のような住居を糸で造る。無翅の個体が多い一方、ときどき翅のある個体が見られる。日本にも南方に少しいるが、目立たないのでまったくなじみがない。

シロアリモドキなどと名前がついているが、虫そのものは一見してぜんぜんシロアリに似ていない。翅がシロアリの翅アリのそれに似ていることが名の由来らしい。たしかに有翅型のシロアリモドキを遠目に見ると、シロアリの翅アリに見えなくもない。

タイにて。

326.jpg灯火に飛来した、人相の悪いカメムシ。行動はおそろしく素早かった。カスミカメ系と思ったが、よく見たら単眼がある。タイにて。

333.jpg
テングビワハゴロモ一種Pyrops pyrorhyncha。木に取り付いて汁を吸う。色彩の異なる複数種が同所的に見つかり、それはそれは面白い。しかし、出現時期がわりと限られているようで、外すと悲しいほどにこれを見ない。この個体は、その時期はずれの時に奇跡的に見つけた一匹。脅かすと、ジャンプ式のカサが突然開くようにポーンと跳ね、飛んでいく。

自慢の鼻っ柱は内部が空洞になっており、木から吸い上げた汁に含まれる糖分が入っているらしい。ライチか何かの木にいる奴を捕らえ、鼻を根本からボッキリ折って吸うと美味いという信じがたい話を、現地で聞いた。ライチの害虫になるそうだ。

タイにて。

266.jpgコノハバッタSystella sp.。葉の上にいた。擬態系の虫を自然下で見るのは困難で、大抵は夜間灯火に偶然飛んできた奴をそれっぽい場所にのせて撮る「やらせ」写真になる。しかし、この種は何回か林内の下草の上で見ているので、本来そういう場所にいるものと思われる。
見た目は違うが、顔つきから日本のオンブバッタAtractomorphaとさほど遠くない種と思う。タイにて。

328.jpgハナカマキリHymenopus coronatusのオス。有名な割に姿を見るのが困難な生物で、ごく最近になってようやく見た。自然状態でなく、夜間灯火に飛来したやつをその辺の草に乗せて撮った。オスの成虫は身軽で、非常に活発に飛び回る。幼虫期は、もっと花っぽい姿をしている。

329.jpg
昔の外国の昆虫図鑑(最近でも、テレビの不思議な動物を紹介する番組など)を見ると、ハナカマキリはランの花の上に止まっている姿で登場すると相場が決まっている。しかし、最近いろんな人が野外でハナカマキリを見つけているが、彼ら曰くハナカマキリは自然状態では花の上で見つからないらしい。ただの緑の葉の上にいるだけだそうだ。
考えれば、彼らは見た目がすでに花なのでわざわざ花の茂みに紛れる必要はなく、自身が一輪の花として座して待てば獲物が勝手に寄ってくるのである。

タイにて。

334.jpg
コミミズク一種Petalocephala sp.。日本のコミミズクP. discolorとほぼ同大の種類。上から見ると、何となく緑色のイルカに見える。タイにて。

371.jpgカマキリモドキ一種Mantispidae sp.。小型種で、日本のヒメカマキリモドキMantispa japonicaとほぼ同大。夜間に灯りをたくと、毎日のように数匹やってきた。通常は世界中どこでも少ない生き物。タイにて。

337.jpgハキリバチ一種Megachilidae sp.。生乾きの干しズボンにまとわりついていた。慌てて撮ったため、ストロボがきつすぎた。タイにて。

269.jpgアシナシトカゲ一種。石の下にいた。ものすごく素早く、あっという間にいなくなる。ヘビそっくりだがヘビほど体が柔らかくないので、とぐろを巻けない。タイにて。

271.jpgムツアシガメらしきリクガメManouria sp.?。珍しく、白昼に道ばたに出てきた。

272.jpgリクガメの存在は、その土地に人間が如何に入っていないかを見る尺度になると思われる。道路が出来てしまうと、こういう生き物はみんな轢かれていなくなってしまう。タイにて。

※エロンガータリクガメIndotestudo elongataであろうとのご指摘を頂きました。ご教示くださった方、ありがとうございます。

369.jpgトビイロケアリLasius japonicusを攻撃する瞬間の、正体不明の好蟻性ノミバエ一種。カマ状の鋭い産卵管をむき出して、アリの腹節の継ぎ目を狙い襲いかかる。
今年の7月上旬に初めて国内で生息を確認したばかりの、まったくの未知の種。見つけたのは裏山。少なくとも、従来国内で知られていたケアリ属寄生のナマクビノミバエPseudacteon sp.とは完全に別種。国内の他の好蟻性ノミバエ類と比べても、似たものに見覚えがない。種どころか属レベルで、国内初記録の可能性が高いもの。

368.jpgノミバエの種同定には、オス個体の交尾器形態を精査することが絶対必須だが、日本の好蟻性ノミバエ類はその生態上、オスを野外で得るのが極めて難しい。だから、日本で知られている種のうちほとんどでまだ種名が判明していない。新種なのかどうかもわからない。しかし今回、この種に関しては奇跡的にオスを捕獲することに成功した。時間はかかるが、これで正体が調べられる。




裏山でたった今見つけた未知なる生き物の写真を、瞬時にして全世界に発信できるブログというのは、本当にすごいツールだと思います。それ故、だからこそその扱いには十分すぎるほどの慎重さが求められるのだと痛感しております。
考えれば、大した理由もなく唐突にこの日記を付け始めたのが2年とちょっと前。当初は適当なところでさっさと閉じるつもりでしたが、知らず知らずのうちに瞬く間にいろんな人々に知られるようになり、「これはすごい、面白い」と、名前も知らない会ったこともない多くの人々から、個人的に感想を頂くようになりました。それが次第に面白くなり、やがてこの日記を付けることが自分にとっても日々のささやかな楽しみの一つになりました。

この日記への一日のアクセス数を見ると、だいたい平均して150件前後と、決して余所様のブログと比べて多いわけではありませんが、その中には本当にいろんな身分・職業の方々がおられるようです。授業の教材として写真を使ってくださっている小学校の先生、ご家族の介護の合間の楽しみとして見ておられる人、はてはまったく別分野の研究をなさっている、まったく面識のない大学教授の方までご覧になられていると、つい最近になって知りました。そんな風に、私の活躍を陰ながらも応援してくださっていた方のうちの一人を辱めてしまった、自分の言葉の軽さをいくら呪っても足りない思いです。

その性質上、様々な理由でこの日記を好かない人々は一定の割合以上でかならず存在すると思います。しかし、それと恐らく同じくらいの割合で、この日記を面白い、ためになったと言ってくださる人々がいるのも事実です。大学で学位を取得した直後に、私の尊敬するとある研究者が、

「これからは人からものを教わるんではない、お前が人にものを教えるのだ。それが研究者の、本当の仕事だ」

と言っていたのを今更のように思い出しました。厚かましいものの考え方かもしれませんが、もしこの日記を続けることにより、いろんな人々が「ためになった」と思ってくださるなら、かの人の言う「研究者の本当の仕事」というものを遂行できているのならば、もう少しこの場所に居続けることに意義はあるのかもしれないと思っています。

しかし、あれほどの事をしでかしながら何食わぬ顔でこの日記を続けたのでは、ご迷惑をお掛けした人々に対して申し訳が立ちません。そこで考えた結果、さしあたり「上の正体不明のノミバエの正体が判明するまで」は、現状を維持しようという結論に達しました。
国民の支援あって生きさせて貰っている立場上、研究者には未知なる新知見を一般に周知させる形で、国民に還元する責務があります。あの未確認生物の正体を暴き、その結果をいずれこの場にて公表し、その時に改めてこの日記が皆様にとって本当に役に立つ場だったのか、本当に残しておくほどの価値があるものなのか、真意を問いたいと思います。

私は頭でっかちなだけで、人間としてはまったくの未熟者です。もしも私が再び暴れ始めたときには、ぜひぶん殴ってでも引き止め、叱り飛ばしていただきたく存じます。ここに訪れる全ての人々が、畸人たる私の育ての親です。何卒、よろしくお願い致します。

唐突ながら本日から一週間、ブログから距離を置いてみます。自身がここで世の中へ何を伝えようとしているのか、何を伝えるべきなのかを、今一度考えてみようと思います。いつもご愛顧頂いている方々には恐縮ですが、しばらくお待ち頂ければ幸いです。何卒よろしくお願い致します。

323.jpgシズオカオサムシCarabus esakii。静岡のオサムシ。ただし、静岡県内では東側に分布が限られており、西の方だとミカワオサムシC. arrowianusと入れ替わるようだ。静岡のほか、近接する神奈川や山梨にも分布する。
オサムシは本来夜行性だが、春から初夏にかけては昼間もよく出歩いているのを見る。冬眠明けで腹が減っているのだろうか。

静岡にて。

364.jpg
ハルゼミTerpnosia vacua。松林に依存するので、松があれば多いが松がなければ絶対いない。5月から鳴き始めるが、名前と違って7月いっぱいは余裕で鳴いている。

長野にて。


※本記事内において、ある方の尊厳を著しく汚す内容の文章をしたためてしまいました。出来心とはいえ、このような事を証左もなく万人に開かれた場所に書くことは、社会人として決して容認されることではありません。公共の場所であるという自覚が足りず、このような愚行に及んだことは恥ずべきことで、申し開く言葉もございません。
該当箇所を削除するとともに、関係者の方には深くお詫び申し上げます。誠にすみませんでした。

283.jpgヤマクロヤマアリFormica lemani。山地でみられる。平地にいる普通のクロヤマアリF. japonicaに比べて胴体の色が黒ずんでおり、脚の色が薄い。上品な雰囲気がある。長野にて。

300.jpgヒメタイコウチNepa hoffmanni。本州のいくつかの場所に飛び地的に分布する、奇妙な虫。湿原のような環境に住み、他の虫を捕らえて吸い殺す。水生昆虫なのに水の中は苦手なので、たいてい岸に上がって過ごしている。尻から突き出た、申し訳程度の呼吸管がかわいらしい。愛知にて。

353.jpgアカムネハナカミキリMacropidonia ruficollis。一見どうということのない虫に見えるが、本州(と四国?)で散発的にしか発見されない相当な珍種で、日本固有種。これまで記録のある地点のほとんどで、その後発見されていない。午前中、クロツバラの葉上に止まっている様子が見られるが、生態に関してはよくわからない面が多い。

現在このカミキリを確実に見られるのは、世界でも本州中部の某山ただ一カ所だけと言われており、シーズンには各地からマニアが殺到するという。もちろん、写真の個体もその有名産地で見つけた・・・・・・・・・・・・・・・・・・わけがない。墓場まで持っていく所存。

299.jpgホソミオツネントンボIndolestes peregrinus。美しい青い種。日本では数少ない、成虫の姿で越冬するトンボの一つ。もっと大柄でガッチリした種類のトンボが全て卵や幼虫で越冬するのに、この種をはじめとするナヨっちい糸トンボが、ちゃんとしたトンボの姿で雪に埋もれながら冬を越せるのは、なんだかおかしな話だ。

長野にて。