477.jpgマレーシア、キャメロンハイランドの耕作地では至る所にみられるイエバエ科のハエ。同地では、どこもかしこもこの黒いハエだらけ。

キャメロンはマレーシア随一の農作物の生産地で、マレーシアの台所と言っても過言ではない。台のような形の高原なのだが、天辺の平らな部分は軒並み畑地として耕作されている。しかし、それだけ多くの農作物を育てるとなれば、当然物凄い量の肥料が必要になる。その肥料の一つとして使われるのが、エビの殻だ(篠永 2004)。

マレーシアを始めとして東南アジアでは、海沿いのマングローブ林を伐採して大規模なエビの養殖池を作っている。そこで育てられたエビは、日本などに多量に食用として輸出されている。しかし、むきエビの状態で輸出すると、外した多量の殻が産廃として出ることになる。そこで、それらを肥料として使うのだ。
キャメロンの畑地を車で走ると、何とも言えぬ腐臭が漂ってくることがよくある。それは大抵、畑に撒いたエビ殻の腐った臭いであろう。このエビ殻から、おぞましく大量のハエが発生することになる。直接まだ見たことはないが、ひどい場合は畑の畦そのものがハエのウジの群れになって、畦がモコモコ動くほどらしい(篠永 2004)。

キャメロンの畑がハエだらけなのには、日本人も少なからず原因の一端を担っていると言える。

参考文献:
篠永哲 (2004)ハエ 人と蠅の関係を追う。八坂書房、pp.209.

風もないのに

550.jpg
灯火に飛来した、ミノムシそっくりの蛾。無風でも体を揺らし、これでもかというほどにミノムシ加減を主張していた。

灯火に来たから見つけられるようなもので、自然の状態じゃこれは絶対に発見できないと思う。近くにいたおじちゃんに、「これミノムシそっくりだと思いますよね?」と聞いたら、「思わねぇよカス!」と一蹴された。
こっそり自然の茂みに乗り移らせて「やらせ写真」を撮ろうと画策したが、生暖かい目で「いつやるか?いつ意地汚いやらせをやるか?」と見つめるおじちゃんの視線を背後に感じ、やめた。

同じ人間同士でさえ、同じ物が全然違って見えるのだから、他の生き物にはこれが想像だにつかない別のものに見えているかも知れない。だからこそ擬態の研究は難しいし、面白くもある。

人間の脳は、見たことのない生き物を突然目にしたとき、それがかつて見た別の生き物に著しく似ていると判断すると、すぐ「擬態だ!」と思いこんでしまうように出来ているのだろう。巨大な蛾の一種ヨナクニサンは、前翅の縁の模様が鎌首をもたげたヘビの横顔そっくり。だから、しばしば「ヘビに擬態して身を守っている」なんて言われるが、あれはただの人間側の思いこみのように思う。

「擬態か思いこみか、それが問題だ。」と、個人的にはミノムシ擬態と思いたいこの蛾に諭されたように感じた。

マレーにて。

432.jpgエダアリCladomyrma sp.。特定の植物の茎内にのみ住み着くアリ。働き蟻には大きいのと小さいのがいて、常に腹部を上げ気味にしたスタイルで枝上を巡回する。幹内の巣には、甘露目的でカイガラムシも養う。

433.jpgアリは、自身の住処である植物をとても大切にする。害虫が来れば、みんなで力を合わせて撃退する。こいつは、風かなにかでクモの巣が枝に引っかかってきたのが気にくわないらしく、死にものぐるいで取り除こうとしていた。
エダアリは体型と振る舞いがフタフシアリ亜科のシリアゲアリ属によく似ているが、実際は親戚でもなんでもないヤマアリ亜科のアリ。

マレーにて。

431.jpgオオカ一種Toxorhinchites sp.。成虫は吸血しない蚊の一種で、ボーフラは吸血性であるヤブ蚊のボーフラを多量に捕食する。人間にとっては益虫だが、これがいたからといってその地域からヤブ蚊がいなくなるわけではない。

マレーにて。


※痛恨の綴り間違いです。属名は、正しくはToxorhynchitesでした。ご指摘を下さった方、誠にありがとうございました。

429.jpgツケオグモ一種Phrynarachne sp.。鳥糞に擬態するので有名なクモ。マレーにて。

遠目に見たとき、当然のように鳥の糞だと思った。自身の周囲に薄汚く糸を引き回し、餌の食いカスまで置いておく念の入れよう。「食べた虫が未消化のまま排泄されて葉っぱにこびりついた鳥の糞」に、見事に変化(へんげ)する。
ツケオグモの仲間はたいてい、単体で葉上に止まっているのを見ることが多い。しかし、こういう小細工をする種類もいるとは。

428.jpgクワズイモカスミカメ属一種Ernestinus sp.。サトイモ科植物の葉裏に、幼虫から成虫までさまざまな成長段階のものが集まって過ごす。キャメロンハイランドの麓の集落で、たくさん見かけた。

マレーにて。

539.jpg
キバネツノトンボAscalaphus ramburiの幼虫。ツノトンボ類の幼虫はいわゆるアリジゴクなのだが、すり鉢状の巣を作らずに適当にどこかに紛れて獲物を待ち伏せているだけなので、とにかく発見が難しい。
しかし、今年の初夏にたまたま行きつけの草原で、幼虫が孵化している卵塊を草上に見つけた。ならばその周辺に幼虫がまだいるに違いないと思って、秋口になったら大きく成長した姿を拝もうと考えていた。その計画をつい先日遂行したのだった。

537.jpg数ヶ月前、たしかこの辺に卵塊があったとおぼろげに記憶していた区画に行き、地面の雑草の根際をかき分けてみた。すると、ほぼ一発で2匹の幼虫を発見できた。体長4mmほどと、思っていたほど大きくなっていなかった。翌春くらいならもっと立派に成長しているだろうか。周囲の石などの下では見つからなかったので、草の根際が好きな隠れ家らしい。
一番最初に標的を見つけて気をよくしたが、その後が続かない。いくら周りを探しても、追加個体が見つからない。やはり、こいつはかなりの難敵だ。この産地は、ちょぼちょぼとススキの株が生えるだけの裸地なので、それでもある程度狙いを付けて探せるだけ楽である。これが全面草の生えた芝生のような場所だったら、もう発見は不可能である。

538.jpg体に土砂がまみれており、周囲の土塊と本当に紛らわしい。探そうという意志に加え、数ヶ月前にそこに確実にいたという前情報がなかったら、存在に絶対気づけない。

540.jpg全国的に珍しい種とされるが、本州中部ではその限りでない。ちょっとした空き地に行けば、シーズンには群れ飛ぶ成虫の姿を見ることが出来る。しかし、ちょっとした空き地というのは、すぐに駐車場になったり家が建ったりしやすい。この空き地は10年間無事で居続けている場所だが、今後も安泰である保証はない。
俺はいずれこの土地を離れるが、何かのおりにふらっと戻って来たときに、ここが住宅地か駐車場になっていないことを祈る。


長野にて。

542.jpgヒゲボソムシヒキ一種Gyrpoctonus sp.。秋の終わりの短い間だけ姿を現す、肉食アブの一種。毛むくじゃらな体は、寒冷期に活動するための適応だろう。日だまりで獲物を待ち伏せ、飛んでくる弱小な虫を空中でキャッチして食う。ぬいぐるみのようで愛らしいが、精悍なハンターでもある。

543.jpg求愛。オスとメスが互いの頭をタコ殴る。基本的にメスは常時乗り気ではない。

長野にて。

536.jpgフンコバエ一種Sphaeroceridae sp.。2mm程度の極小のハエで、獣糞の上で交尾していた。しかし、撮影したのはハエでなく、その背中から生えた黄色い突起である。昆虫寄生菌、ラブルベニアLaboulbenialesだ。

ラブルベニアは、生きた昆虫の体表にしか生えないカビの仲間。冬虫夏草と違って宿主を殺さず、生かしたまま少しずつ栄養を拝借するらしい。物凄い種数が存在し、そのそれぞれが特定種の昆虫にだけ寄生するという。昆虫の種の多様さが、そのままラブルベニアの種の多様さを作り出していると言っていいだろう。
甲虫やハエで高頻度に見出されるほか、様々な分類群の昆虫で確認されている。

あまりにも小さい菌のため、野外ではそうそう気付けるものではない。普通は別目的で捕らえた微少昆虫を、実態顕微鏡下で観察中に偶然見つけることが多いようだ。だが、あえてそれを野外で生きている微少昆虫の体表から見出すことに、意味がある。

長野にて。

555.jpgウエダエンマコガネOnthophagus (Palaeonthophagus) olsoufieffi。糞転がしの一種で、日本では信越地域の限られた河川敷周辺にしかいない、奇妙な分布様式をしめす。人為が絡んでいるとの説もある。秋と春の、比較的寒い時期にだけ見られる。

かつて一回探しに行ったことがあったが、そのときは時期が悪くてメスを一匹見ただけだった。文明の僻地を出て行く前に、どうしてもオスを一目見たくて、わざわざ出かけた。産地では決して珍しいものではなく、公園に放置された飼い犬の糞をほじくると見つかる。かつては牛馬が飼われていた地域なので、そういうものの糞が餌になっていたのかも知れない。しかし、今では犬の糞に相当に依存して生きていると思う。

556.jpg日本のエンマコガネとしては、破格の小ささ。特にオスは信じられないほどに小さい。そして、オスにはほんの申し訳程度ながらも二又のツノが生えている。メスにも痕跡程度のツノがあるが、オスの方がツノの体を成している。ツノがメスになくてオスにあるということは、このツノはオス同士の闘争に使う武器なのだろうという予想はすぐに付く。
しかし、たかだか1mmちょっとしかないこんなツノで、果たしてオス同士の力比べが出来るのかは相当に疑わしい。本種にとって、ツノは進化の過程の中で偶然残ってしまった「名残」で、特に意味のないものなのかもしれない。とはいっても、こいつの祖先筋にあたる種がどんな姿をしたものなのかは、まったく知らないのだが。


長野にて。

554.jpgカメノコテントウAiolocaria hexaspilota。長野にて。

秋の終わりになると、山沿いの電柱に越冬をひかえたテントウムシが大集結する。下手に電柱に近寄ると、無数のテントウムシが襲来し、服の中にじゃんじゃか入ってくるほど。その大部分はナミテントウだが、ときどき思い出したように巨大なカメノコテントウも出現する。普通種のはずだが、どういう訳か夏に見ることはほとんどない。

カメノコテントウを指でつまむと、脚の関節から血のように真っ赤な汁を出すのでびびる。これは、本当にカメノコテントウの血である。

557.jpgメスアカフキバッタのセアカ型。研究者によってはメスアカとは別の種として扱うとの噂がある。フキバッタ類は、しばしば種の境界がよくわからない。

メスアカのセアカ型は、見た目が翅をむしったイナゴに似ている。大学学部時代、サークルの出し物の一環でイナゴの佃煮を作った事があった。その際、一匹だけメスアカも佃煮にして食ってみたのだが、草の風味が強すぎて美味いとは思えなかった。どちらかというと雑草の佃煮を食っている感じだった。同様に、イナゴと同じ場所に生息するオナガササキリも不味かった。
俺はそれまで、イナゴが食えるならば他のどの種類のバッタも佃煮で美味しく頂けるんじゃないかと思っていた。しかし、先人達がフキバッタやオンブバッタの佃煮を世に残さなかったことを思うと、イナゴ以外は推奨しないということなのかもしれない。

長野にて。

541.jpgメスアカフキバッタParapodisma tenryuensis。本州中部を中心にスポット的に生息する美しいバッタ。メスは名前の通り、赤ないしピンク色をしており、オスもメスほどではないがやや赤みがかった緑色をして見える。

メスアカフキバッタには、地域により色違いの個体群が見られる。例えばある文献上では、長野県松本市のある地域にセアカ型というのが存在するとある。これは、メスが背面だけ赤く、他の部位が緑色に置き換わっているタイプである。実際にはセアカ型の分布域は松本市内を越えた相当な広域に及んでおり、俺の居住域はセアカ型の分布域のほぼど真ん中に位置する。なので、本当の「メスアカ」フキバッタを見るためには、かなり遠出しないといけない。

長野にて。



今日から、某国へお遣い。

君の後ろに黒い影が

510.jpgカメムシ一種。小さな種類だったが、よく見たら背中に悪魔の微笑み。タイにて。

アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の最後の次回予告では、いつも後ろを振り返った。

546.jpgイエガラスCorvus splendens。東南アジアの街ではおなじみ。ハシボソガラスの声質で、ハシブトガラスの鳴き方をする。マレーにて。

ピカッ柱

552.jpgヤジリコメツキPachyderes sp.。何種類かいるらしい。最近は、生息地に行っても以前ほど見かけない気がする。マレーにて。

467.jpg雲霧林のザトウムシ。全身トゲで厳つい風貌だが、性格は臆病。マレーにて。

544.jpg
雲霧林のセミ。ヒグラシに近い雰囲気で、形はあまり変わっていないが模様はコケそっくり。苔むした樹幹に止まると、体の輪郭がはっきりしなくなってしまう。鳴き声は日本のヒグラシ同様、至近で聞くと耳障りでやかましい。

幼い頃読んだ子供向けのセミに関する本に、「日本のセミは、外国のセミ研究者の間では小鳥のように美しい声で鳴くセミとして人気が高い」と書いてあったのを覚えている。それを見た当時、外国のセミの研究者は総じて耳がおかしいのかと思っていたが、実際に外国のセミの声を聞く立場になって、その意味が分かった。
外国のセミは、ほとんどの種類がチーとかジーとか単調でつまらない声で鳴く種類ばかり。ミンミンとかシャーシャーとかツクツクボーシとか、個性的な声の種類が非常に少ない。ジーと鳴くアブラゼミでさえ、ちゃんと前奏と間奏があって音楽性がある。日本という国は、世界的にも稀な音楽家のセミ達が住まう国だったのだ。

なお、熱帯諸国ではセミの声は雑音として聞き流されており、セミの声に耳を傾けて感慨にふける現地人に出会った試しがない。そういう感性を持っていることは、日本人が世界に誇れる数少ない美徳の一つだと思う。

マレーにて。

545.jpg雲霧林のカミキリ。日本のセダカコブヤハズカミキリを思わせる、ヒョウタン型の種。低木の枝にしがみついて動かなかったが、夜には活発に動くのだと思う。

決して飛べない。マレーにて。

551.jpg雲霧林のカミキリ。1センチほどの小型種で、明け方まだ暗い道路脇で見た。朝露にぬれた、苔むした地面を歩き回っていた。今思うと、よくこんなのを見つけたと思う。

飛べない。雲霧林のカミキリ類には、近縁でない複数属において飛べないカミキリが存在するらしい。マレーにて。

472.jpg雲霧林のカミキリ。地面の落ち葉にいる小型種で、丹念に落ち葉を目で見て探す以外に採集手段は存在しない。もちろん飛べない。マレーにて。

473.jpg雲霧林でみた「苔ゾウムシ」。全身が苔むした雰囲気に見える顕著な種類。最初に見たとき、当たり前のように苔が生えているのだと思ったが、それにしては模様が綺麗に左右対称に見える。苔っぽい体毛のようにも思えるが、よくわからない。

当然飛べないだろう。マレーにて。

469.jpg雲霧林のゾウムシ。きっと飛べない。マレーにて。

468.jpgコーカサスオオカブトになりたかった運霧林のゴミムシダマシ。なれなかったばかりか翅まで失い、今では人っ子一人来ない山の上から下界の街を見下ろす隠居生活。体長2cmと、翅なし甲虫としては破格の巨大種。上翅は中心で融合しているようで、翅を開くことがたぶんできない。マレーにて。

466.jpg雲霧林の地面にいた、体長2mmのよくわからない甲虫。おそらく飛べない。マルドロムシかマルトゲムシのどっちかに思えるが・・。マレーにて。


※ドロムシ科Dryopidaeの一種とのご教示を頂きました。基本的に水生昆虫として知られるグループですが、この種のような陸生種も存在するようです。hamusi様、KUWAKIRA様、ありがとうございました。

470.jpg雲霧林で見たゴミムシダマシ。たぶん飛べないだろう。マレーにて。

ドドリア

465.jpg雲霧林のゴミムシダマシ。全身コブコブの出で立ち。体がヒョウタン型にくびれたナデ肩の甲虫は、飛翔筋が退化しているため飛べない。マレーにて。

430.jpgマレーシア、標高1600mの雲霧林からみた夕日。

熱帯の高標高地は頻繁に霧が発生し、木の幹にはコケがよく生い茂る独特の景観を形作る。そして、その雲霧林の中には、想像を絶する種数と個体数の「翅なし甲虫」が潜んでいる。気温が低い高標高地では少しでも体表面積を減らしたほうが体温を奪われずにすむとか、餌が少ない環境なので余計なエネルギー消費を減らすため飛ぶのをやめたとか、いくつか説があるらしい。

面白いことに、雲霧林に住む甲虫は、分類群にかかわらず翅なしになってしまう。コガネムシ、ゴミムシダマシ、カミキリ、ゾウムシその他いろんな甲虫たちが、まるで相談して示し合わせたかのように翅なしの出で立ちでいるのは、不思議でもあり異様でもある。

雲霧林の翅なし甲虫は小型種ばかりなのにくわえ、何しろ翅がなくて飛ばないため、通常の甲虫のように夜間灯火でおびき寄せられない。だから、採集の難しい種類が多い。「ある2つのコツ」を知っていなければ、たとえ多産地に赴いて探そうとも、おそらくそこに潜在的に生息するうちの1劾分の1も発見できないと思う。しかし、それにひとたび気が付けば、もはや森を歩くのも畏れ多いほどに周囲が虫だらけである現実を知ることになる。虫探しは本当に奥が深い。

523.jpgケブカツヤオオアリCamponotus nipponensis。アブラムシをやさしくいたわり、甘露を貰う。長野にて。

来春から、長年住み慣れた文明の僻地を離れる事になった。そうなるべきだったし自らそうなるよう動いた結果なのだが、いざそう決まったら、果たして振り向いても裏山がない環境で正気を保って生きていけるか不安になってきた。俺にとってこの場所はあまりに居心地がよすぎた。そして、ここにはあまりにも長居しすぎた。
何だかんだ理由を付けて定期的に様子を見に帰って来ればいいだけなのかもしれないが、今までのようにじっくり腰を据えて一つのものを観察する事はもうできなくなるだろう。なるべく悔いを残さないように、今のうちに裏山の仲間の面を拝んでおきたい。

514.jpgタカネクロヤマアリFormica gagatoides。本州中部の森林限界以上の高標高にしかいない、高山アリ。日本のアリの中には一定の標高より上でしか見られない種がいくつかおり、一部のアリ研究者はまとめて高山アリと呼ぶ。その中でも、タカネクロヤマは真に高山にしかいない種である。
なお、高山蝶とよばれる蝶にしたって、本州では10種をそう呼んでいるが、本当に高山帯にのみ分布が限られるのはタカネヒカゲとミヤマモンキチョウ(タカネキマダラセセリも?)くらいである。

515.jpgネット上の「アリ画像データベース」で見ると、少し低標高にいるヤマクロヤマアリF.lemaniとどこがどう違うのか、よくわからない。しかし、生息地に行って生きたものを見ると、理屈でなく何となく違うのが分かる。

511.jpg「アリ画像データベース」には、胸部が赤みを帯びるのが特徴のように書いてある。確かに、胸部に赤みをさした個体は多い。まるで赤いチョッキを着たような雰囲気で、シックな格好良さがある。でも、全身黒い個体も同じくらい多い。

513.jpg高山植物の上に遊ぶ。本当は遊んでなんかいない。食うものの少なく、気温変化の激しい過酷な環境下で、必死に餌を探し回らねばならない。こいつらがまともに地表で活動できるのは、晴天時のみに限られる。

512.jpgハイマツに付くアワフキの死骸を運良く拾った。日が陰る前に、死にものぐるいでダッシュして巣へ急ぐ。高山蝶の舞う高山地帯では、小さきもののドラマが人知れず展開されている。

長野にて。