魔獣召還

837.jpgメクラチビゴミムシの一種。

例によってピンポイントで産地を名乗る種名なのでここには書かないが、これまで世界でも九州のある一箇所でしか確認されていない。加えて、公式には数十年前の記録を最後に、今世紀に入ってからの記録がまったくない種類。近年、模式産地の洞窟内が観光化されて劣悪な環境となったため、発見がほぼ不可能な状況になっている。

838.jpg上翅に、わずかながらもはっきりしたスジスジが認められる。本種にはよく似た近似種がいるが、そっちにはこのスジスジがない。間違いなく、探していた種である。

839.jpg覚悟はしていたが、模式産地の洞窟で2時間くらい粘るもやはり見つけられなかった。そこで、そこから遠からぬ地にある別の洞窟で探したら、洞窟に入って1分で見つけた。その洞窟には長らく生息していないとされていたのだが・・。きっと、模式産地の洞窟とこっちの洞窟は同じ地下の水脈上に偶然あったから、どちらにも生息していたのだろう。近くの山で沢を掘れば、案外簡単に出てくるかも知れない。
前世紀からの時空を越えて、何とか現世に再び呼び戻すことが出来た。いずれ、きちんと然るべき所に報告する必要がある。


メクラチビゴミムシは、基本的に乾燥に対してものすごく弱い。だから、地下水脈にそった分布をしているようである。個々の種は、自分の住む地下水脈周辺から絶対に離れないから、この国にはきっと地下水脈の数だけメクラチビゴミムシの種類が存在するのだろう。かつてはこの仲間は洞窟内にしかいないと思われていたから、その種の産地だった洞窟が破壊されて消滅したら、すなわちその種の絶滅と判断されていた。
でも、その後消滅した洞窟の周辺の地下を掘ったら、その絶滅したと思われていた種が出てきたという話はちらほら耳にする。洞窟がなくなっても、その地中の水脈が無事ならば、メクラチビゴミムシはきっとどこかで人知れず生き続けるのだろう。逆に、外見上は一切環境改変がなされずとも、過剰に地下水をくみ上げて枯渇させたり、道路や建物を作る過程で地下水脈の流路を変えたりすれば、一発で絶滅することになる。

メクラチビゴミムシは日本だけでも400種近く存在しており、生物の種分化を考える上ではガラパゴスの生きもの以上に興味深い研究材料である。それなのに、そのあまりにもな名前から、世間で話題になるのはもっぱら「差別的な名前の生きもの」という側面からのみであるのは、実に悲しいことである。

840.jpgオオヤドリカニムシMegachernes ryugadensisらしき巨大カニムシ。コウモリがうじゃうじゃいる洞穴の奥で見た。

841.jpgロブスターのように重厚で、強靱。本種は小型哺乳動物の体に付着して暮らすらしい。

九州にて。

832.jpgセアカゴケグモLatrodectus hasseltii。九州にて。

数年前に関西の港湾近くで見つかって以後、日本各地に分布を広げている毒蜘蛛。九州でも、北部の港湾地域で定着しており、数年前にはかなりの個体数が見つかってニュースにもなった。
現在、役場などが指揮をとって定期的に駆除作戦が展開されている。それでも、役場が公開している駆除実績のある地域を調べ、そこに行ってよくよく探してみたら、このように駆除されそびれた個体が次々に見つかった。

833.jpgその地域の人々にとっては不謹慎な話かも知れないが、俺はこの毒蜘蛛がとても好きである。綺麗でカッコいいから。昔、一番始めに関西で見つかったというニュースがテレビに出たとき、どうしてもこれを一目見たくて苦手な関西の下町まで探しに行った覚えがある。当時はまだ今ほど個体数も少なく、正確な生息場所も分からなかったので、さんざん探すも発見できずに涙を飲んだものだった。
十数年の時空を超えて初めて出会った現物は、聞きしにまさる以上の美しい生きものだった。ピンセットでつっつくと脚を振り上げて威嚇し、それでもなおつっつくとピンセットに噛み付いてきた。体型と生態のよく似た大人しい在来のオオヒメグモみたいなものだと思っていたが、それなりに敵に対して反撃する術を持つらしい。日本のクモの感覚で接するのは危険に思えた。

834.jpgピンセットを引っ込めると、ゆっくり体を上下に揺らす動きを見せた。オオヒメグモはこんな動きをしない。どちらかというと、ユウレイグモの仕草に似ている。

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撮影後、見つけた個体は責任を持って皆殺しにした。国の定めた特定外来生物、しかも人命に関わる危険生物ともなれば、それを見つけておいて野放しにするのは国賊のそしりを受けかねない。
でも、本当のところ、こんなに美しくて、なおかつ大好きなこの生きものを殺したくはなかった。子供の頃からずっと憧れていた舶来の生きものを、出会い頭に殺さねばならない理不尽。俺の場合は特殊かつ異常なだけかもしれないが、かわいそうだから外来種のアライグマを殺すなと主張する人種の気持ちが、何となく分からなくもないような気がした。

これから暖かくなるにしたがい、毒蜘蛛は猛烈な勢いで繁殖し始める。根気強く駆除を続けていくしかない。

831.jpgハリブトシリアゲアリCrematogaster matsumurai。樹上性で、郊外にも街中の公園にも、どこにでもいる。福岡にて。

827.jpgオオクビキレガイRumina decollata。福岡にて。

近年、物資の移送に伴って西日本に侵入したらしい、外来カタツムリ。爆発的な繁殖力で増殖し、作物などを食い荒らす。肉食もするらしく、侵入先で土着の小型カタツムリが食い尽くされる恐れもあるという。
ある生物を探しに港湾へ行った際に、偶然うじゃうじゃいる場所を見つけた。海辺の近くだというのに、よくしおれてしまわないものだと思った。福岡では、場所により完全に普通種になってしまっている。外来種の常として、より人間に荒らされた環境ほど多い。

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殻の先端が取れたように欠けているのが特徴。そこにいた、見つかる限りの全員がそうだった。

828.jpg顔は普通のカタツムリ。

港湾は、いろんな場所からいろんな物が運ばれてくるため、よそから侵入した外来生物を真っ先に発見し観察できる場所である。近場の港湾地域では、これ以外にもさまざまなエイリアンが定着しているらしい。近日中に、港湾中をさまよってそれらを確認しに行こうと思う。どこにどういうものが定着しているかをだいたい把握しておけば、いつどこで見慣れないものに遭遇しても慌てず対処できるはずである。


たまには「環境の番人」としての役目をかねて、トレジャーハントの気分で港へ行って外来生物を探すのも一興かもしれない。



※大ウソ情報
830.jpg一番上の写真は、実はひっくり返した反転写真。本当の写真はこちら。画像処理の時に反転させ、そのまま載せていました。
殻の巻き方がこの種にあるべき巻き方でないことに、巻き貝の専門家の方が鋭く気付かれました。さすが、恐れ入ります。ご指摘、まことにありがとうございます。

召還魔法戦争

824.jpgナカオメクラチビゴミムシTrechiama nakaoi。地下性ゴミムシの一種。九州のある山塊にだけ住む珍種で、最近の記録は少ない。2日がかりでようやく捕らえた、たったの1匹。


メクラチビゴミムシ類は洞窟に住む虫として知られてきたが、最近になって種類によっては山の沢ぞいの崖などを崩しても比較的簡単に採れることが分かり(とはいえ熟練は必要)、多くの虫マニアを魅了してやまないグループである。「メクラチビゴミムシ」と呼ばれる甲虫の仲間は、複数の属や種群にまたがって存在し、新種もまだまだ出ている。
それらの中でもナガチビゴミムシ属Trechiamaは、日本各地から知られる一番の広域分布属だが、九州からはこのナカオメクラ1種類しか知られていない。

826.jpgメクラチビゴミムシ類は、種類によって目が完全に無かったり、痕跡程度にはあったりする。この種は前者のタイプらしく、エイリアンを思わせる表情。うっすら紫の光沢を帯びる。

825.jpg本種は顔だけ見ると、地下生活に相当適応した雰囲気に見える。しかし全体的な体型を見ると、飛翔可能な他分類群のゴミムシのようにやや肩が張っており、あまり典型的なメクラチビゴミムシっぽくない。木に竹をついだ感じの、へんな奴。生息環境もかなり地表浅く、条件がよければ石をひっくり返すだけで見つかるらしい。

メクラチビゴミムシ類は、どういう訳か西日本にものすごく種数が多い。新居から日帰りで行ける範囲にも、恐らく20種くらいは分布しているが、そのうちのいくつかは近年の発見例が途絶えている。コゾノメクラRakantrechus elegansのように、国から絶滅判定を出されたものさえいる。
この土地を出て行く前に、頑張って可能な限りのメクラチビゴミムシを黄泉の国から再召還したいと思う。



今まで関東周辺から脱出したことのない身としては、いろんな種類のメクラチビゴミムシが待つ西日本は夢の場所だ。エライ先生から「何いきなりチビゴミにかぶれてんだよ?」と言われたが、逆にこんな素晴らしい場所に住みながらチビゴミにかぶれない理由が聞きたいほどだ。

823.jpgオオコバネナガハネカクシ一種Lathrobium sp.。地下浅層の砂礫隙間に住む、わりと珍しい地下性甲虫。地域ごとに種分化しており、新種も今だにそこそこ出る、夢のあるグループ。いかにも地下性らしく、体色は薄い。

生まれて初めて地下浅層を自力で掘って引きずり出した、それらしい甲虫。この手の生物を掘り出すには、かなりの熟練と経験を要する。こいつを試金石として、メクラチビゴミムシや地下性のカニムシ・ワラジムシを掘り出せる技術を少しずつ磨きたい。


福岡にて。

818.jpgケダニ一種。福岡にて。

目の覚めるような赤。こいつといいイボトビムシといい、微少な土壌性物というのはどうして無駄に原色の派手なものが多いのだろうか。まるで暗黒の深海にすむ生物が、どれも示し合わせたかのように真っ赤な体色をしているのを連想させる。

817.jpgイボトビムシ一種。暗黒の石下にこのショッキングピンクを見つけて、ハッとしない人間がいるか。福岡にて。

想像以上に、山が遠い。

819.jpgヒメオオズアリPheidole pieli。福岡にて。

820.jpg普通種だが、温暖な地域にしかいないので個人的には見慣れない生物。かわいい。

816.jpg九つの国からなる大陸の河口。これから数百、数千回眺めることになる景色。

791.jpgハシブトガラスの水浴び。沢山の個体が水浴びに来ていた。都内にて。

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789.jpgどの個体も水の浴び方は決まっている。まず翼を垂直に立て、体を震わせつつ顔を左右にブルンブルン振る。その後翼をたたみ、翼の肩の部分を激しく水面を叩きつけるようにして羽ばたく。「カラスの行水」とは言うが、それなりに入念に水浴びはやる。

790.jpg三羽烏。偶然、全員白目。

明日から、しばらく音信不通。

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815.jpgアカネズミApodemus speciosus。長野にて。

虫の少ない冬限定で、毎日裏山のある決まった岩場でこいつと逢い引きする生活を、かれこれ6-7年も続けてきた。
出てくる個体はいつも一匹だけだが、毎日同一個体という訳ではない。ネズミは仲間同士で争ったり天敵に襲われたりするので、すぐ耳が欠けたり体毛が禿げる。そうした特徴により、ネズミの個体識別ができるのだ。毎日じっくりネズミの顔を見つめていると、外見上の特徴の違う数匹が入れ替わり立ち替わり来ているのが分かる。

813.jpgアカネズミの寿命はほぼ1年。野生では寿命が来る前に天敵に食われて死ぬはずだから、実際はもっと短い時間しかこの世に生きていない。今年見た個体とは、絶対に年をまたいで来冬に出会うことが出来ない。この個体も、もしかしたら明日には死んでいるかもしれない。一期一会。

803.jpgカギシロスジアオシャクGeometra dieckmanniの幼虫。長野にて。

クヌギの新芽で越冬する。令が進むにつれ、周囲の芽吹きにあわせて姿をどんどん変えていくことで有名。しかし、今年はその様を見られなさそうだ。

802.jpg知っているから見つけられたが、そうでなければ絶対に発見不可能な生物である。「知らないものは見えない」ことを、教えてくれる存在。

800.jpgクマタカSpizaetus nipalensis。長野にて。

裏山でリスを待っているときにふと上を見たら、はるか上空を旋回していた。春先にはよく見る。

801.jpg見慣れた常念、槍穂高の景色も、もうすぐ過去のものに。

797.jpgハイイロフユハマキKawabeia razowskii。長野にて。

798.jpg早春の短期間だけ姿を現す地味な蛾で、フユシャクモドキとも呼ばれる。南方の平地ほど多いらしいが、長野県松本市のような山地でも得られる、と日本蛾類図鑑に書いてあった。その通りである。
ただしここ数年間、通い慣れた裏山ではこの蛾の姿を確認できない状態が続いていた。最後の最後に見つけられてよかった。西日本に行けば普通にいるのだろうけど、今この場所で見ることに意味があるのだ。

799.jpgここ数年、春の到来が恐ろしく遠い。3月半ばにもなって、異常なほど低温状態の日が続くケースが多くなっている。10年前の3月に裏山で撮影した写真をハードディスクから発掘して見直すと、「この時期にこんなものがもう発生していたのか?!」という生きものをかなり写しているのが分かる。
蛾の中には、冬の終わりと春の初めの微妙な境の時期にしか出ないような種がいくつもいるが、その手の多くの蛾の発生をこの3,4年、裏山で確認できずにいる。気候が年々、真冬と真夏以外なくなってきているのを実感する。非常に気がかり。

792.jpgたぶんアオカワモズクBatrachospermum helminthosum。山奥に生える、不思議な海藻。

カワモズク類は、寒天の原料であるテングサと同じ海に生える赤い海藻「紅藻類」の仲間だが、淡水生。河川の源流近く、湧き水の出る清らかな流れにのみ育つ。紅藻なので多くの種類は赤っぽい褐色だが、これは緑が強い種。基本的に、寒冷期にのみ姿を現す。
まもなく山奥を追い出されるので、その前にこいつとはもう一度会っておこうと思って産地を訪れた。数年前に見に来たときと比べて異常に少なかったが、何とか見つかった。一見、その辺のドブの底に生える水ワタみたいな感じだが、その体がきめ細かい玉の数珠つながりになって出来ているのを見るにつけ、こいつがただならぬ高尚な存在であるのを実感する。

793.jpg一部を少しシャーレにとって見た姿。

794.jpg肉眼で玉に見えたのは、等間隔に並んだフサフサ(嚢果)。種類によって、この玉の形は異なる。日本のカワモズク類にはカワモズク属のほかユタカカワモズク属Sirodotiaがいて、これには玉がない。

カワモズク類は海藻なので、本物のモズクのように食用になる。しかし、昨今どこでもどの種類も希少種なので、畏れ多くて食えない。あと、あまりモズクは好きでないので食いたくない。

長野にて。

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犬の散歩でフンを持ち帰らないばかりか、必ずつながず放す人間が一定割合以上存在するおかげで、小鳥が見張り台確保に苦労せず済む、動物にとてもやさしい某国にて。

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ニホンリス。長野にて。

4ヶ月くらい前から毎日出勤前に会いに行き、顔を見せ続けた結果、ようやくこの程度の写真を撮れる距離まで接近を許されるようになった。でも、そんな生活もあと1週間で終わる。

昔、小学校の習字の授業で買わされた毛筆は、パッケージの原材料名に「動物毛:ブタ、リス等」と書いてあったのを覚えている。今の毛筆はどうか知らないが、当時はニホンリスが狩猟獣だったから、その毛も使われていたのだろう。

野生のニホンリスは(少なくとも長野では)、病的なまでに人間を忌み嫌う。人間に接近されるのはもちろん、姿を見られることさえ露骨に嫌がる。地面近くにいる時に運悪く人間に出くわすと、「キョキョーーッ!」と驚くほどでかい声で叫び、バリバリ音を立てつつ樹幹を一直線に登って逃げる。そして、幹の裏側にさっと回り込んで隠れ、2度3度横顔だけを覗かせてこちらを睨みつける。
その後顔を引っ込めると、不思議なことにいくら待ってももう二度と顔を出さないし、そもそも気配を感じなくなる。どうしたのかと思って木に近づき、裏側に回って見てみると、驚くべき事にもういなくなっているのだ。こちらの死角に巧みに回りながらそっと木を下りるか別の枝を伝って、音もなくそこから逃げてしまうのである。

写真で見ると、ニホンリスはそれなりに存在感のある動物に見える。しかし、野外では思いのほか小さく見えるし、色彩もとても地味で目立たない。そして、樹上にいる時に人間が来ると、太枝の付け根で石地蔵のように硬直して動かない。人間がいなくなるまで、時には数十分も動かずにいる事もあり、その存在に気付くのはとても難しい。リスがいる場所にこちらが接近するシチュエーションでは、まず満足に観察できないし発見もできない。あらかじめリスが高頻度で出没する場所を把握した上で、こちらがそこで先回りしてリスが向こうからやってくるのを待つのが基本である。

岡千波

766ホラアナゴマオカチグサPaludinella (Cavernacmella) kuzuuensis。洞窟性巻貝で、北海道を除く日本中の石灰岩洞の濡れた壁面に住む。

名前にゴマと付くが、ゴマ粒より遙かに小さい。各地の洞窟で封じ込められた状態で生きてきたものなので、きっと実際には洞窟ごとに違う種になっているのだと思う。産地によって目があったりなかったりするらしく、この産地の個体は全てないようだった。

765生きている時は体が半透明で、極小サイズなのも手伝ってとても見づらい。レントゲンのように、体内が透けて見える。いずれの個体も数珠のように糞を溜め込んでいたが、コケも生えない洞窟の壁面で何を栄養にしているのだろうか。
死ぬと胴体は溶けて無くなり、殻だけがいつまでも濡れた壁面にくっついたまま分解もされず、ずっと残り続ける。死殻は白く変色するため、生きた個体よりもよく目立つ。

洞窟が観光地化されると洞内の乾燥化が進んでしまい、ホラアナゴマオカチグサもいなくなっていく。

777.jpg洞窟性の、おそらくナガワラジムシ科の者(Hyloniscus属?)。目らしきものはない。

778.jpg全身透き通るような白色で、中身が透けて見える。地面を舐めるように這い回るが、驚くと岩や地面のくぼみにはまったまま動かなくなる。
日本の洞窟性ナガワラジムシに関しては、東北地方から2種、中国地方以西から2種の4種いることは把握しているが、こいつはそれらいずれの場所とも遠いある地方の洞窟で見た。種類を調べたいのだが文献が入手できない。いくら何でも新種ではないと思うが、ぱっと調べた限り洞窟性ナガワラジムシが見つかったという噂を全く聞かない地域のものなので、間違いなく記載以後発見例のほぼ途絶えている珍種である。

779.jpg東北で見つかっている洞窟性ナガワラジムシの一種に、ホンドワラジムシHondoniscus kitakamiensisというのがいる。岩手の岩泉にある龍泉洞という洞窟だけから発見されている珍種で、姿形は上の奴に似ているらしいが、体表はゴツゴツしておらず平滑らしい。かなり古い年代に発見・記載されたものだが、その後生息地の洞窟が観光地化されて劣悪な環境になったせいで、もうここ何十年も発見されていない。
現在、この生物の生きた姿を見られる場所がどこにもない状態で、生存しているかどうかもわからない。環境省の絶滅危惧種に指定されている。

俺はこの幻のワラジムシの生きた姿を、どうにかして見てみたい。生息地の観光洞は場所自体が天然記念物なうえ、そもそも環境がもうだめらしいので、洞窟内で虫を探すことは出来ない。でも、観光洞の裏手の山で枯れ沢を見つけて、メクラチビゴミムシを探す要領で地面を掘ったら、案外簡単に再発見できるんじゃないかと思っている。いずれ挑戦しに行きたい。

ネオ邪鬼王

773.jpg洞窟で見た、とても恐ろしい姿の動物。

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783.jpg長大なハサミを振りかざして歩く。口元にはさらに別の小さなハサミが付いている。これで、自分よりも弱小な生物を無慈悲に惨殺する。

775.jpg目がない。

776.jpg以前、別の洞窟でこれにとてもよく似た生物を見ている。しかし、今回の奴を見た洞窟は、以前の奴を見た洞窟とは地理的に完全に隔たった場所にあり、地質的にも何ら関連性がない。だから、完全に別種である。今のところ、この洞窟でこの動物の仲間が過去に見つかったという記録を確認できていない。発見当時は、当然既知種だろうと思ってサンプルを採集せず、そのままサヨナラしてしまった。


目測で体長3mm以上、下手をすれば4mm前後はある、この動物が属する科全体を見渡しても破格級の巨大種。

784.jpg石灰岩洞で見た、純白の洞窟性トゲトビムシ。目がない。

785.jpgコウモリのクソが今日の馳走。

洞窟内には本来、生き物の餌になるような有機物がほとんどない。しかし、洞窟に住むコウモリは毎日外へ出て餌を採り、ふたたび洞窟に戻ってきて糞という形で有機物をもたらすため、これが洞窟内の微生虫どもの貴重な栄養源になる。コウモリが微生虫どもを養ってやっているようなものである。
同じような洞窟でもコウモリが住んでいるのといないのとでは、生息する微生虫どもの種類と個体数が格段に違う。


何となく、洞窟の小虫に対しては「微生虫」という言葉を使いたい気分なのである。

781.jpgベニゴマオカタニシGeorissa shikokuensis。秘密の場所にて。

780.jpg日本だけに住む陸貝で、石灰岩地帯に固執した分布様式を示す。いる場所には佃煮にするほどいるが、いない場所には絶対にいない。岩壁にへばりつき、微細な藻類などを食うらしい。
天気がいい日に行ったので、みんなやる気がない感じだった。顔を見せて欲しかったのだが。

782.jpgしばしば群生する。

赤い「タニシ」を見ると、対照的に青い沖縄のアオミオカタニシを連想してしまう。しかし、ベニゴマは名前の通りものすごく小さいゴマ粒サイズ。ベニゴマとアオミは、名前が似ている割には親戚同士ではないし、両方とも本当のタニシですらない。

769.jpgたぶんカントクレスドクチョウHeliconius xanthocles?。ペルーにて。

ドクチョウは中南米特有で、種類が多い。そして、しばしば種の区別が非常に困難である。

767.jpgペルーのゴミムシダマシ。いぶし銀の趣がある。