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タシロランEpipogium roseum。福岡にて。

日の光もろくに差さない、うっそうとした暗い照葉樹林に生える草。葉緑体がないので全身が血色の悪い色をしている。クスノキなどの大木の根に共生する菌類と自身の根を連絡させ、そこから栄養をもらって生きているらしい。だから、根こそぎむしり取って鉢植えにしても、絶対育たない。
※タシロランは、かつては樹木の菌根菌と関係すると見なされていたようですが、現在では腐朽菌と関係を持つ植物であることが分かっているそうです。ご教示くださった方々、誠にありがとうございます。

1010.jpg行きつけの裏山の一画に、まとまって数株生えているのを見つけた。しかし、少し時期が遅かったようだった。さらに、道脇だったせいで多くが踏まれていた。写真に撮ってしまうと異質で目立つ草だが、自然界では案外目立たない。

1012.jpgベニイトトンボCeriagrion nipponicum。福岡にて。

思わぬ場所で見つけた。近隣にいくつか生息地がとびとびあるので、そこから流れてきたらしい。どうせ最近やたら増えている近縁のド普通種リュウキュウベニC. auranticumとも思ったが、たぶんオリジナルのほうで間違いない。

環境省の絶滅危惧種。しかし、本来は生命力が強く、移動能力にも長けた種類らしい。最近、少しずつ勢力を巻き返しつつあるようで、レッドリストの掲載ランクもかつてよりは下がった。

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種類はしらないが冬虫夏草くさい菌。暗く湿った森の斜面から、たった一本。胞子をある程度飛ばし終えて役目を終えた頃、根本を掘り返してみようと思う。

福岡にて。

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ムラサキツバメNarathura bazalusの幼虫。アミメアリPristomyrmex punctatusが守る。福岡にて。

ムラサキツバメ族は、幼虫期に多かれ少なかれアリと関わる。大抵は食草上で適当な種類のアリをはべらすだけだが、熱帯にはアリに守られる「アリ植物」上でのみ生活し、特殊な方法で植物の用心棒たるアリをたぶらかし、葉を食い荒らす種がいる。また、ある種は特定アリ種の巣に侵入し、アリの幼虫を暴食する。

日本では最近増えている増えていると言われている蝶だが、個人的にはほとんど見たことがなかった。温暖な今の近所には腐るほどいるので嬉しい。
日本のムラサキシジミやムラサキツバメの幼虫は、シイやカシの若葉を好んで食う。こういう場所には普通アブラムシがたかっており、しばしばそれらの群れの上で定位するシジミチョウの幼虫を目にする。日本ではまだ確認されていないようだが、俺は絶対にこのシジミチョウの幼虫が、アブラムシを食っているに違いないと疑っている。

珈琲脅

980.jpgベルサイユのコヒオドシAglais urticae。日本にいるものとおそらく同種。日本の本州では珍しい高山蝶で、採集を禁じている地域もある。

ヨーロッパでは、日本じゃ高山蝶クラスの珍蝶がその辺の庭先にいる。時期が時期ならクモマツマキチョウもいるはずだが、見なかった。
日本で珍種と崇められている蝶が世界では如何に駄蝶か、逆に日本で駄蝶と下に見られている蝶が世界では如何に珍蝶か、思いをめぐらせた。こっちの虫マニアにしたら、日本の平地に普通にいる並アゲハやらツマキチョウのほうがずっと貴重な珍種のはずだ。世界的にはアジアの東のほうにしかいないから。

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帰る途中、エッフェル塔の前をタクシーで通りすがった。あくまで移動途中にそばを走っただけで、ここにわざわざ行ったわけではない。

一大観光地なだけあって、周辺にはものすごい数の人間がごった返していた。もちろん悪党どももわんさかいる。
乗っていたタクシーが、信号待ちのため塔の前で停まった。この時外を眺めていたら、ある方向から数人の若者が手に何か持って、同じ方向へ全速力で走り去るのを見た。タクシーの運転手曰く、無断で土産物商売していたところに警察が来たので、あわてて逃げる図らしい。

結局、フランスでは命を取られることなく生きて帰ることができた。住めば都なのかもしれないが、俺にとっては長居したいと思う空間ではなかった。

971.jpgベルサイユのマルハナバチ。おそらくセイヨウオオマルハナバチBombus terrestrisと思われる。日本では非難しかされない生き物になってしまったが、原産地ではそこ特有の草花と、きっと大切なポリネーションの契りを結んでいるのかも知れない。

969.jpgベルサイユのハエ。日本のマダラメバエMyopa buccataと近縁か同種。ずっと上ばかりみていた。

979.jpgベルサイユのカミキリモドキ。ヨーロッパの甲虫は、なぜか熱帯にいるもののように派手で煌びやかなものが多いような気がする。下手すれば、日本よりも遙かに高緯度なのに。

972.jpgベルサイユのゾウムシ。頭に「ベルサイユの」をつけると、どんなにしょうもないものでさえ途端にセレブ臭を装う。


2-3ヶ月前から、長らく使っていたストロボディフューザの仕組みを根本的に一新した。これは、光の質感を和らげるという点では申し分ない効力を発揮した。しかしその反面、やや逆光ぎみに光を浴びせる形になるため、どうしても被写体の手前に影ができたり、手前が暗くなってしまうのだった。被写体が小さく、レンズを極端に被写体に近づけねばならない状況では、なおのことこれが顕著にでてしまう。
かといって、レンズのすぐ手前に発光部を近づけすぎると、今度はディフューズの効果がなくなったり、レンズ内部に直接ストロボ光が入ってハレーションを起こしたりで、まったくの八方塞。

これをどうにか解決したくてこの2-3ヶ月というもの、わざわざ日帰りで都内まで出向いて詳しいその筋の人の話を聞きに行ったり、自分でいろんな小道具を作って試したりというのを散々やった。しかし、どれも根本的な解決にはならず、しばらくディフューザスランプに陥っていた。いっそ今まで使ってきたツインストロボをやめようかとさえ思いはじめていた。

そんな中、やぶれかぶれで試したある方法が、非常によろしいことがわかってきた。ディフューズの性能はもとより、光の回り方が今まで自分で試したどの方法よりも一番いい。上の写真も、そのシステムで撮ったものになる。
もっとも、この方法も実はかなり欠点があり、ツヤのある被写体を撮るときにそれが顕著に出てしまう。しかし、黙っていればおそらくあまり問題にはならない。ディフューザに関しては、いくら工夫してもし足りないので、もっといい妙案を思いつくまではコレでやってみようと思う。

973.jpgベルサイユのハナカミキリ。薄暗い森の下草にとまっていた。

970.jpgベルサイユのアワフキ。まったく人目を引かない。

987.jpgベルサイユ宮殿の裏手にある森。宮殿の所有で、市民に開放されている。

当初、フランスでは本当に必要な業務以外なにもせず、用務がない日は部屋で靴下全裸待機のつもりでいたが、一日だけ用心棒を雇ってパリの比較的安全な場所を選び、観光という体の虫探索をした。

なお、驚くべきことに本拠本元のベルサイユ宮殿にもちゃんと行った。しかし、一枚たりともその写真は撮ってない。あんな人間がうじゃうじゃいる場所にカメラなんか持って行ったら、確実にスリどもから総ロックオンされるから。ナントカの間も庭園も、立ち止まればポケットを漁られると思って秒速5mで駆け抜けたので、まともに何も見ていない。結局なんで行ったのか、自分でも分からない。

998.jpgベルサイユのエスカルゴ。リンゴマイマイHelix sp.の類と聞いた。

雨の後、森のいたるところに出てきている。日本の関東あたりで見るような普通のカタツムリよりも殻に立体感があってよい。小笠原のカタマイマイに通じる雰囲気がある。

フランス料理に出てくるエスカルゴは、普通はちゃんとした施設で養殖したものが使われる。基本的に野生のものは、推して知るべき理由で食用にされない。ちなみに、この森には犬を連れた市民がわんさか来て、そのシモの後始末はおしなべて悪い。

986.jpgフランス、パリ。ぬるま湯のチェコとは一転して緊張と緊迫に満ちた、ロボコップでいうデトロイト。

ここにしかないとある生物の干物について精査すべく、エライ人から「一人で行って来い!」と最初に命じられたのが半年前。その時からすでに、悪い噂以外の何も聞かされてなかったここへ来るのが鬱で鬱で仕方なく、どうにかして行かずに済ます方法がないかをさんざん模索したが、結局は来ざるを得なかった。
不幸中の幸いなのは、たまたまここでとった宿のある周辺は、例外的に比較的治安がましであったらしいこと。それでも、日没後から早朝にかけてはほぼ人間が外を出歩いていない。出歩いたら確実に賊に狩られるからなのだろう。夜中には表から奇声や怒号をしばしば聞いた。
上は日没近くの、人通りがまばらになってきた時間帯。逢魔が刻の始まり。

997.jpg滞在日数はたかだか3日ほどだったので、身の丈には合わない少しお高い宿を選んだ。下手に金をケチッてやたらな安宿に泊まり、結果夜中に夜盗に押し入られて持ち金全部盗られるよりはましである。

さあ、私たちの撮影(デート)を(ry

968.jpg精霊がデレた瞬間。どれだけこの瞬間を待ったことか。

今回のチェコ遠征は、はっきり言ってこれを撮影するためだけに行ったと言っても過言ではない。このシーンは、各種文献には文章としては古くから記されているし、その様のイラストも出回っているが、生態写真はおそらくこの世に存在しない。実際に見た人間もきわめて少ないと思う。

精霊は絶対に夜しか出歩かないので、観察するなら夜に森へ出かけねばならない。しかし、これが異常なまでに人工光を嫌がるため、観察しようとライトで照らすとたちまち逃げ去ってしまう。そうかと言ってライトを付けねば何も見えない。だから、ライトの光量を最弱に絞り、地べたに這いつくばるようにしがみついて観察せねばならない。それも、手に持った漬物石級に重たいカメラのモニター越しに。

無数に襲来する蚊の攻撃に耐え、マダニとナメクジまみれの地べたに伏し、夜中の一時二時まで背をかがめて冷え込む夜の森で耐え忍ぶ生活を続けたら、風邪が悪化した。咳が止まらず、喉が激痛なのだが、それでも毎日多少は無理をして観察を続けた。滅多に来られない場所で、夢にまで見た精霊をデレさせる千載一遇のチャンスを無碍にはできない。おかげで、滞在期間中に風邪がまったく治る兆しを見せなかった。

ホムトフでは毎晩観察を試みたが、結局ダメだった。失意の中、チェコ出国を前日にひかえてホムトフからプラハ市街に移り、そこで一泊した。プラハの宿の裏にはカラッカラに乾燥した、見るからに何も虫がいなそうな森があったので、やぶれかぶれの藁をもすがる気持ちで日中さまよったら、驚くことにたった一つだけ寄主アリコロニーがあった。そこで、最後の命運をかけてその夜張り込みをして、ついにそれを目の当たりにした。

観察途中、目の前を見たこともない全身群青色の、信じがたいまでに美麗な巨大オサムシが歩いてきた。でも無視した。精霊との「デート」に、浮気は絶対禁物。やれば必ず失敗する。

この写真はそうやって命のへさきをすり減らし、すべてをかなぐり捨ててようやく手にすることを許された勲章なので、おいそれとは出せない。いずれ何らかの機会に、公開できるようにしたい。

Highwayマン B盗る

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チェコでの最大の標的たるアリの巣の生き物。

米粒ほどの地味な生き物で、立派な角もキバもない。綺麗な模様もない。いきなりこれを見せられて、心躍る虫マニアなど絶対にいるはずがない。しかし、俺にとっては夢にまで見た精霊の一種だ。
日本にも同じ寄主アリはいて(いや、正確にはいない)、ハネカクシやら他の分類群の居候も共通しているのに、なぜかコレだけは分布していない。コレに会うためには、絶対にヨーロッパへ行かねばならない。

取り立てて特技も何もない雰囲気だが、その凡庸な外見は世をしのぶ巧妙な偽装でしかない。とても陰険かつ狡猾な奴で、きわめてずるがしこい。別名「追い剥ぎ甲虫」と呼ばれるその姑息なやり口は、アリの聖書「The Ants」(Hölldobler and Wilson 1990)を読んだ者ならば知らぬはずはない。
しかし、その鮮やかなまでの悪行三昧を実際に観察するのは、ものすごく難しい。最近成功した人間をほぼ知らない。本当に心から虫に信用してもらわない限り、絶対に撮影させてくれない。いくらこちらがフォースを有するとはいえ、相手がある程度心を開いていてくれなければ効果が無い。それを是が非でも撮影せねばならないのである。

994.jpgチェコのヒラタシデムシ。夜間路上にウンコを食いに出てきて、夜明け前に隠れ家に戻れず干涸らびたナメクジをよく食っていた。

996.jpgドルクス系に見えるチェコのクワガタ。名前を聞いたのに忘れてしまった。日本のコクワサイズだが、重厚でいい虫。

988.jpgマダニ。

近隣の森には、シカやらウサギやらが普通にいた。その関係で、当然ながらものすごい数のマダニが潜んでいた。ちょっと藪漕ぎすれば、必ずひっついてきた。

マダニは、北方のものほどおっかない伝染病を持つ傾向があり、刺されると非常に危険である。ライム病やダニ脳炎を貰った日にはまともな生活が二度とできなくなるので、毎晩風呂では徹底的に体の隅々を見て回った。それでも、知らないうちに脇の下を一カ所やられてしまった。

小学生のころ、テレビや雑誌で「ネイチャーフィーリング」という言葉がやたら流行ったことがあった。読んで字のごとく、自然と一体化して自然を感じるという道楽で、たとえば迷彩マントを着て木の枝を掲げながら何時間も野山で座り、その枝に野鳥がとまるのを待つといった遊びである。
その中で、森で落ち葉の積もった地面に穴を掘り、顔だけ出して体をうずめ、大地と同化するという遊びがあった。当時アウトドアのガイドブックにも載っていたし、当時放映されていた有名な栄養ドリンクのCMでもそれをやるシーンが出てきた。幼心にあれを見たとき、「マダニとツツガムシのドリンクバーになるだけじゃね?」と思った。
当時はどうか知らないが、少なくともシカが無秩序に増えまくった今の日本の野山で、危険なマダニが大発生している現状を鑑みれば、今あんなことやったら自殺行為である。北海道の森で、音も立てずにあんなことやってたら、ヒグマ襲撃の危険すらある。

最近のアウトドア関係の本をみると、どの本でもこの「土葬遊び」の話は見当たらない。おそらく、上に書いたような危険を指摘する専門家が増えたためだと思う。

983.jpg巨大ナメクジ。

ホムトフの森は、ものすごい数のナメクジがいた。しかも全部巨大で、10cm位は余裕であるものばかり。そして色彩も多彩で、茶色いやつからヒョウ柄、紫まで。これらは日中はどこにもいないが、日没後になると突然一斉に道路に出てくる。

いったい道路で何をしているのかと思ったら、こいつらは路上に落ちているウンコを食っているのだった。道路には鳥獣人を問わずいろんな生き物のウンコが落ちているので、これを一心不乱に暴食しているのである。陸貝は総じて、ウンコが好きな生き物だ。
アフリカマイマイに代表されるように、陸貝はしばしば重大かつ危険な寄生虫の中間宿主となるが、その理由の最たるものが彼らのウンコ食い遊びである。いくら貝の仲間といえど、うかつにナメクジを採って食べてはいけない所以だ。

ナメクジは、新しいもの好きなファッションリーダー。森に見慣れないものを置くとすぐ這い登ってきて、とりあえずそれが食えるものかを確かめようとする。だから、下手に地べたにカメラバッグなど置こうものなら、知らないうちに巨大ナメクジが何匹もやってきて、ウンコと寄生虫まみれの粘液をこれでもかというくらいなすりつけてくる。それを見ると、モチベーションが絶滅危惧になる。

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ヨーロッパの黒鶫、クロウタドリTurdus merula

市街地の公園に、いくらでもいる。見た目は地味だが、謡わせたら天下一品。日本のクロツグミは尋常でない人嫌いだが、これはまったく人間を恐れない。
朝方、芝生でミミズを漁っている。ウドンソバのように多量のミミズを口に並べてくわえ、巣で待つヒナの元へ急ぐ。

992.jpgカケスGarrulus glandariusも見た。日本のカケスに比べて、やっぱり人怖じしない。チェコにて。


ここ二ヶ月ほど続いた全国行脚が、やっと一段落した。しばらく、海外はもういい。

993.jpgクチナガオオアブラムシ一種Stomaphis quercus。ブナ科樹木の幹で、ヨーロッパクロクサアリの加護を受ける。場所の問題かも知れないが、日本のクヌギクチナガオオアブラムシS. japonicaほど一カ所にうじゃうじゃいない。

チェコにて。

982.jpgホムトフの宿のそばに、大きな泉があった。マスが放たれており、虫はたいしたものがまったくいない。余計なことをしなければ、ゲンゴロウやらミズスマシやらで賑わうだろうに。

今日からまたぞろ遠征。これが終わったら、しばらくはじっとしていたい。

963.jpgチェコのザトウムシ。目が飛び出ている。

駐在さんvs山下画伯

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チェコの地方都市ホムトフ。

今回滞在したこの田舎町は、信じがたいほどにのどかでいい場所だった。チェコはプラハの都市部の一部では治安が悪いらしいが、それでもヨーロッパ全体では相当に安全な国である。今回、絶対に夜しか出てこないある生き物を一人で観察せねばならず、夜中に一人で外を徘徊したのだが、まったく危険はなかった。

むしろ気をつけねばならないのは警察だった。ほぼチェコ語以外を解さないくせに、やたら外国人に職質を吹っかけたがるため、下手に見込まれると対応がとても面倒なことになる。そうした「仕事」のおかげでこの治安は守られているとはいえ、どこの国でも警察は奇人の天敵だ。

978.jpg一角鍬形Sinodendron sp.。

977.jpgヨーロッパが誇る珍奇なクワガタで、大きなアゴがない代わりに短い一本角を持つ。クワガタじゃなくて普通にカブトの仲間だろうと思いたくなるが、それでもあの「く」の字に曲がった触角はクワガタ以外の何物でもない。日本のチビクワガタの触角と、雰囲気が似ている気がする。
この仲間は何種類か似た種がいて、ロシアなどにもいるらしい。チェコでは割と普通のようで、ここ産の標本が多く世に出回っている。小型種で、サイズは2センチを越えない。

狙って採るのは難しいらしく、日本からクワガタマニアがわざわざ探しに行ってもしばしば手ぶらで帰るという。しかし、今回たった5日しかなかった調査日の中で、複数回こいつに遭遇する機会を得た。見た環境は二タイプに大別され、一つは大きな倒木の樹皮下から、もう一つは森内のヨーロッパクロクサアリLasius fuliginosusの行列に運悪く立ち入ってしまい、ギタギタに伸されて虫の息のやつ。

976.jpgどういうわけか、クサアリの行列では複数個所で複数個体のコレがアリに捕まっていた。まさか好蟻性のはずはないが、このアリの行列からは何か誘引するような匂いでも出ているのかもしれない。

出版のお知らせ

近日中に、本を出版することになりました。タイトルは
「裏山の奇人 野にたゆたう博物学」となります。

【書 名】フィールドの生物学14 裏山の奇人 野にたゆたう博物学
【著 者】小松 貴(九州大学熱帯農学研究センター)
【体 裁】B6判 288頁 並製
【定 価】2160円(税込)
【著者割引】1728円(税込)
・尚、送料は400円 (5冊以上は送料小会負担です)
【発 行】東海大学出版部 http://www.press.tokai.ac.jp
【発売日】2013年7月30日・発送は7月30日以降になります
【ISBN】ISBN978-4-486-01994-7

本書は、自身の専門である「アリの巣に共生する昆虫」に関して、これまで手がけた研究内容を解説したものです。しかしそれ以上に、長年住み着いた長野の山奥を舞台に、私が出会ったさまざまな生き物たちとの交流の話に大部分のページを割いています。
森の生き物たちとともに語らい、戦い、慰め合い、愛し合った日々を、一般常識の斜め右下視点からつづります。妖怪変化、死に神、精霊、二次元美少女も乱入してきます。本シリーズの本としては、相当に異質な内容となるでしょう。
われわれのすぐそばにある身近な裏山にいながら、誰からも存在を認められなかった数多の魑魅魍魎たちを次々と手なずけていきます。ついには地球の裏側の密林まで飛び出し、究極の人間嫌いとして知られる難攻不落の精霊を封印する冒険に出ます。

本書には、数々の人々による校閲をかいくぐったとはいえ、世の中に対してかなり挑戦的な内容も多分に含まれています。それに対して各方面からおそらく批判も受けそうですが、覚悟の上です。なぜなら、タイトルに「奇人」と銘打つ本を出しながら安穏無難なことだけ書いて終わるならば、そもそも本を出す意味がないから。そして何より、日本もとい世界を代表し、我が最も尊敬する大奇人、南方熊楠に対して申し訳が立たないからです。

本書の中で一貫して主張するのは、ただ「わからないことをわかりたい」、純粋な好奇心の大切さ。研究しても何の役にも立たないような小虫の中にこそ、現代人が忘れかけている「科学」の本質が隠されている。
たまには金、地位、名誉のことなど記憶の彼方に追いやって、野に混じりたゆたう。森の百鬼夜行が教えてくれた、21世紀の生き方の提案です。

995.jpgコレの意味する所がわからない人は、「裏山の奇人」で。

※しばらく、先頭に置きます。

fortissimo-the ultimate crisis-

967.jpgヨーロッパクロクサアリLasius fuliginosusの戦士。二度と外れないケアリL. brunneus?の頭は、守るべきもののためいつか戦って受けた勲章。これを掲げて、残りの短い一生を駆ける。

チェコにて。