ゴーレム

1048.jpgテントウハラボソコマユバチDinocampus coccinellaeにやられたナナホシテントウCoccinella septempunctata。福岡にて。

図鑑で昔から見て知っていたが、現物を拝むのは初めて。テントウムシの寄生バチで、メスは硬い甲羅に覆われた獲物のウィークポイントを巧みに突いて、鋭い針状の産卵管を突き刺す。一匹のテントウにつき一個産卵する。
やがて孵化したハチの幼虫は、テントウムシの体内を食い荒らして成長し、ついにはテントウムシの土手っ腹に穴を空けて外へ出る。脱出後の幼虫はすみやかに繭を作ってしまうのだが、この時に不思議なことが起きる。土手っ腹を破られたテントウが何故か死なず、それどころかハチの繭を脚でガッチリと挟み込んで動かなくなるのだ。まるで、ハチの繭を守るかのように。
上のテントウも、実は生きている。つつくと僅かに動いた。テントウは、生存に最低限必要な部分だけは食われずに残されているので、体内の大部分を食われた状態でも当分生きていられるのである。

ハチは、脱出する際にテントウの体を部分的に麻痺させる成分を残していくようで、これによりテントウはハチの繭に覆いかぶさる体勢を無理やりとらされる。結果として、ハチの繭はアリなどの天敵に持ち去られたりする危険性を下げられる。繭からハチが羽化して出て行ったあと、テントウは死ぬこともあれば麻酔が切れてふたたび自由な生活に戻ることもあるらしい。

しばしば、寄生虫が寄主の行動を操作し、寄主にボディーガードとしてふるまうよう強いる例がある。そうした場合、「寄主をゾンビ化する」と表現されることが多いが、このハチのような場合はゾンビよりゴーレムのほうがしっくりくる気がする。

この生き物に関しては、以下が詳しい。
Maure F et al. (2011) The cost of a bodyguard. Biology letters 7, 843–846.

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クロスズメバチVespula flaviceps。福岡にて。

裏山の登山道脇に、巣を見つけた。あまり普通の登山客は通らないルートなので、駆除されずに残ったようだ。このまま誰もこの道を通るなよ、人とハチ双方の平和のためにも。
長野だと、こういう巣は有害駆除というよりも、食用目的であっという間に採られてしまう。かくいう俺も、かつて薫製用のスモークウッド一本と霧吹きで戦いを挑んだことがある。からくも勝利したが、普通の人間は絶対真似してはならない。無理だから。

クロスズメバチ類はとても小さいハチで、下手すればミツバチより小さく、恐怖感はない。しかし、仮にもスズメバチなので、刺された痛みは激烈だし、怒らせるととても危険。蜂の子採り文化のある長野・岐阜界隈でさえ、過去に巣を採ろうとした人間が逆襲にあって死ぬ事故が起きている。