478.jpg蛾に取り付いた冬虫夏草。マレーにて。

高温多湿のジャングルは冬虫夏草の楽園。しかし、アリやハチに付くものを除けば、実際に見つける機会は本当に少ない。子実体が、次々と生えてくる。

来年度も、こんな風にいいことが続々あらんことを。

562_20131210175423c4a.jpg美麗な小型蛾。ニセマイコガ科らしい。インドネシアにて。

573.jpgハマキモドキ一種。開長1cmもない小型の蛾だが、美麗。インドネシアにて。

690.jpg
691.jpgナナフシ一種。熱帯のナナフシには、体がへんな部分で著しく曲がるものがいる。マレーにて。

692.jpg巣穴を掘るジガバチ一種。警戒心が強く、人間が近寄ろうとするとすぐに逃げ出してしまう。だから、穴を掘るために顔を穴に突っ込んでいる間に素早く駆け寄る「だるまさんが転んだ」戦法を使って撮影せねばならない。マレーにて。

586.jpg
587.jpgオオメダカナガカメムシ一種Malcus sp.。道ばたのクズの仲間の葉裏に、いくらでもいた。
出目金のように目が飛び出ているのが特徴。インドネシアにて。

584.jpgへんなヨコバイの幼虫。何となく、成長につれて大した形の姿じゃなくなるような気がする。インドネシアにて。

571.jpgベニボタル一種。体内に毒を持っており、味が悪いので敵に食われにくい。そのため、この甲虫の仲間を模倣した姿形の虫は多い。

572.jpgベニボタルのつもりで撮影したが、後から見直したらどう見てもベニボではない甲虫。顔つきからみてジョウカイボン科に思えるが、不明。

インドネシアにて。

667.jpgイガ一種Tinea sp.。泊まったホテルのシャワー室の壁にくっついているのを見つけた。インドネシアにて。

屋内性の害虫で、衣類などに穴を空ける。基本的に動物質の物ならば、食わない物はないと思われる。部屋にはヤモリがたくさんいたので、これの糞が主な餌であろう。
不思議な形のミノを作るが、これは両端から顔を出せる作りになっている。ミノの中で体を反転させるようだ。材質は自分の糞を基本に、その辺の砂粒やゴミを糸でつづり合わせている。かなり硬く、近くにいたヤモリは一瞬食おうと近づくも、手前まで寄ってすぐに回れ右してしまった。

668.jpgいかにも肉を食らいそうな雰囲気。

本種を含むヒロズコガ科Tineidaeは、肉食傾向の強い種が多い。中にはアリやシロアリの巣内で、アリの幼虫や巣内のゴミを食う仲間もいる。

662.jpgへんなダニ。公園の池のボートにありがちな形をしている。イトダニ科であろう。アシナガキアリの巣内から見つかったが、たまたま外から紛れた土壌性種のような気がする。インドネシアにて。

560_20131210175415ecd.jpgシダの葉上にいた、よくわからない甲虫。一瞬タマムシかとも思ったが、触角がぜんぜんタマムシのそれではなかった。毛で覆われた体は恐ろしく滑りやすく、摘もうとしたら指間をすり抜けて落下し、行方を知らない。インドネシアにて。

665.jpg細身のバッタ。熱帯アジアではよく見るタイプ。インドネシアにて。
※ChorotypidaeのErianthusの一種とのご指摘をいただきました。教えてくださった方、ありがとうございます。

666.jpgヒシバッタ一種。写真に写すとあまり気にならないが、野外でみると顔がピンク色に映えて、よく目立った。インドネシアにて。

663.jpg奇妙なチャタテムシの幼虫。クサカゲロウの幼虫みたいに、ゴミを背中に背負う。

大木の樹皮をめくったら、こんなのが複数見つかった。チャタテムシでゴミを背負う習性の奴がいるとは知らなかった。

664.jpg一匹を素っ裸にしてやった。姿形はチャタテムシとしては丸い体型で、物を乗せやすくなっているようだ。あとでまた背負い直してくれ。インドネシアにて。

連日寒いので、気分だけでも暖かく。
585.jpgイラガ一種。この仲間は色や形が多様で、撮影の被写体としてはコレクション性が高い仲間に思う。ウミウシに通じるものがある。インドネシアにて。

561_2013121017541930f.jpgシルビアシジミ一種Zizina sp.。

しょっちゅう行くマレー半島のクアラルンプール近郊で見る奴は、沖縄のヒメシルビアZ.otisに似た雰囲気の小型種。でも、こいつは日本の本土で見られる奴とほぼ同大かつ同じような斑紋をしていた。インドネシアにて。

ある饂飩の国 旅立つはマニア 

♪林道駆け抜け 目指すはトレキアマ・・・
1293.jpg香川のあの場所にいる、知る人ぞ知るあの精霊。

古い時代にたった一匹採れて以後、全く発見例が途絶えていたもの。ほんの数年前、専門家チームによってやっと数匹再発見されたほど。

この精霊に関して、ここで多くは語るまい。しかし、土地の所有者に撮影許可を貰った際、「あーあの虫?探すのはいいけど絶対見つかんないよ。前に専門家の先生が三日かかってようやく三匹採ったくらいだから。」と言われた一時間以内に二匹見つけた事くらいは、自慢していいはずだ。
本当は、この県の市街地にある山で、メクラチビゴミムシを掘るつもりだったのだが、これはかすりもせず。現地の沢が始めから終いまで三面総岩盤造りで、掘れる箇所がどこにもなかった。一体あの山のどこに掘れる場所があるというのだろうか。

また、香川のほか足を伸ばして隣県にも行った。ここのとある山中の「空間震発生現場」で、目の玉が飛び出るような別の巨大な精霊を掘り出し、手に取りまでしたのに、一瞬よそ見した刹那、指間から抜け落ちた。
すぐに地表の裂け目に入り込まれ、隣界に逃げられた。下手したら、大昔に模式産地が破壊され消滅して以来の再発見になったろうに、死ぬほど悔しい。日本で虫に逃げられて、ここまで悔しいのなど何年ぶりだろう。近年、もういい年した知り合いが外国でちっさい虫に逃げられて、一時日常生活に支障を来たすほどの虚無状態になったのを見て、内心鼻で嗤っていたが、今度は自分がそれになりそうだ。だから、今回の戦争は、俺の中では惨敗。

ペインエレメンタル アラクノトロン

1289.jpgイトグモLoxosceles rufescens。香川にて。

日本では本州より南の各地で見られる。屋内性とされるが、野外でまとまって見つけた。身近な環境に住んでいると言われる割に、とても少なくて見る機会がなかなかない。ネットで検索しても、日本のサイトでこれの生きた姿を載せている所が原則皆無である。俺自身、生まれて初めて見たほど。国内で、この種がどの程度普遍的に見られるのかを知りたい。
イトグモの仲間はとても種類が多いが、そのほとんどが新大陸に分布している。日本唯一の種たる上の種は、それら地域からの移入であって在来種ではないと考えられている。乾き気味の所に好んで住むようで、巣は作ったり作らなかったりするらしい。クモ図鑑には弱弱しい感じのクモと書いてあったが、ユウレイグモなどと比べれば遥かに強靭な印象。

苦痛の精霊イトグモの仲間には、きわめて毒性の強い種がいくつか知られている。その特徴的な体色から「ヴァイオリン・スパイダー」の厨二名で呼ばれる北米のドクイトグモL. reclusaは、人間の皮膚を壊死させるほどの毒を持つことで悪名高い。
日本で見られるイトグモに関して、日本で毒性が問題になったことはないらしいが、海外では寝ている人の瞼に噛みついてかなり深刻な被害を与えた例がわずかに知られる(Bajin et al. 2011)。そうそう目にするクモではないのだが、多少気をつけた方がいいかもしれない。
もっとも、人への自発的な攻撃性はまったくなく、指でつついた程度では噛みついてこない。直接体を圧迫しない限りは、ただのクモ。

1290.jpg普通のクモと異なり、目は6個しかない。

DOOM64・・・

Bajin MS, et al. (2011) Necrotic arachnidism of the eyelid due to Loxosceles rufescens spider bite, Cutaneous and Ocular Toxicology, Cutaneous and ocular toxicology, Vol. 30, No. 4 , Pages 302-305

1315.jpgサトアリヅカコオロギMyrmecophilus tetramorii。香川にて。

野外ではトビイロシワアリTetramorium tsushimaeの巣内から高率で得られる、準スペシャリスト好蟻性昆虫。通常、寄主特異性の強い好蟻性昆虫は、その寄主アリ種と親密な関係を築くことが多い。だが、本種は寄主特異性の強さの割に、行動生態的にはまったくトビイロシワアリと協調せず、むしろ物理接触を避けて過ごしていることが、飼育実験により分かっている(Komatsu et al. 2013)。

彼らは同じくスペシャリストであるシロオビアリヅカと違って、アリから口移しで餌をもらうことはなく、アリ巣内でアリの幼虫や卵、昆虫死骸など固形物を拾い食うのに終始する。すなわち、サトアリヅカはトビイロシワアリのスペシャリストではあるが、親密のスペシャリストではなくアリの上前をはねるスペシャリストなのである。
なお、トビイロシワアリ巣内にはサトアリヅカのほか、クボタアリヅカM. kubotaiのある型が特異的に寄生する。こちらはサトアリヅカとは打って変わって寄主への親密性が非常に高く、常時アリと物理接触しつつ口移しで餌をもらえる。この辺に関しては「裏山の奇人」(東海大学出版部)に詳細に書いたほか、「アリの巣の生きもの図鑑」にはサト・クボタ両者の外見上の区別法を記したので、確認されたい。というガチマ。

サトアリヅカはアリそのものとは生存上、直接相互作用を必要としないので、アリなしでの長期間飼育が可能。肉食性が非常に強く、何匹も飼育している容器内に弱った小さい虫を放り込むと、ピラニアのように群がって襲い殺してしまう。アリヅカコオロギが他の生物を捕食するさまは凄絶である。

四国の海沿いには、このコオロギが局所的に多産する。とある自身の研究遂行上、このコオロギが多量に必要になったので、先日採りに出かけた。出かければこんな虫はいくらでも採れるので、すぐさま必要分は確保した。
もちろんこんな地の果てまで来た以上、このまま大人しく帰らない。精霊をデレさせるという重要な仕事が残っている。


Komatsu, T., Maruyama, M., & Itino, T. (2013). Nonintegrated Host Association of Myrmecophilus tetramorii, a Specialist Myrmecophilous Ant Cricket (Orthoptera: Myrmecophilidae). Psyche: A Journal of Entomology, 2013.

1121.jpgマツムシXenogryllus marmoratus。福岡にて。

秋口に撮ったやつ。クツワムシもそうだが、裏山にはマツムシもうじゃうじゃいるのには驚かされた。これまでの人生で基本的に見慣れていないので、とても嬉しい。市街地近くの、道路脇のちょっとしたのり面でさえいる。とはいっても、広範囲にだーっといる感じでなく、ピンポイントで多産する感じ。

金属製の輪っかをコンクリの地面に叩きつけたような、耳に刺さるような高音で鳴く。声は大きいが、かなり草深い所にいるため姿を見つけがたい。まして撮影は至難を極める。まっとうに撮影するのに、5晩は通った。

1120.jpg
比較的気に入っている一枚。なぜなら左右の翅が広がっているから。翅が重なっているときにシャッターを切ると、それが本当に今まさに発音している瞬間を撮ったのか、警戒して翅を立てた状態で硬直しているのを撮ったに過ぎないのか、判断できない。

1294.jpg
タテジマカミキリAulaconotus pachypezoides。福岡にて。

成虫で越冬する。カクレミノやヤツデの枝にしがみついて一冬越すので有名な奴。ただしがみつくのではなく、あらかじめ自分の体がちょうどスッポリはまるくらいの窪みを、枝表面に削って作ったうえでそこにおさまる。ただし、寒冷地ではこういう越冬態をとらないらしい。
九州では都市部に点々と「保全林」と称して、開発し損ねた小さい森が残されている。こういう森の中に分け入ると、たいてい多くのカクレミノが生えているため、この虫が生息している。

しかし、この虫は決して珍しいものではないにも関わらず、そう簡単に見つからない。体を直にさらして枝にしがみついているだけだから、簡単に見つかりそうなものだが、これが野外ではけっこう難しい。色彩が樹皮そっくりなのに加え、へこみを作ってそこにはまっている関係で、虫の体が立体的に見えないのだ。
また、場所の問題かもしれないが、この個体を探した近辺の森にはおびただしい本数のカクレミノが生えていて、その枝の随所に虫が越冬用に削った跡も多いのに、虫だけがなぜかいない。冬場にも採れる数少ない虫なので、結構虫マニアが入って採っていくようだ。出遅れた。

1295.jpg
住宅街に囲まれたわずか100m四方ほどの森で、上の個体ただ1匹を見つけるのに、1時間半もかかってしまった。気づいたら、もう夕方。

スパイダーマスターマインド

1284.jpg
ハイイロゴケグモLatrodectus geometricus。屋久島にて。

島を脱出する間際に見つけた。ざっと調べた限り、屋久島における本種の記録が見あたらない。鹿児島県のHPによれば、となりの種子島には入っているらしいが・・。

外来種の毒蜘蛛。セアカゴケグモが日本に初めて侵入してまもなく、横浜の港湾で最初に確認されたと記憶している。その後、日本の西南部の各所で次々に見つかり、今や国内では完全に定着している。地味でぱっとしない見た目で、セアカに比べて全く恐ろしげに見えない。侵入当時、一番最初にそれを報じた夕方の民放ニュースでも「セアカと違って毒性は弱いそうです」と報じていたのを、はっきり覚えている。
しかしその後の研究で、ハイイロは実際にはきわめて毒性が強いクモであることが明らかとなった。とはいえ、セアカにせよハイイロにせよ、直に触れない限りはそんなに騒ぐほど危険な生き物ではない。
最初に横浜陥落のニュースをテレビで見た中学生の頃、このクモ見たさにそのニュースが放送された週末、わざわざ埼玉から電車を乗り継いで探しに行ったほど。残念ながら幸いそのときは遭遇ならなかった。

1285.jpg金平糖ともスギ花粉ともインフルエンザウイルスとも付かぬ、独特の形をした卵嚢を巣にかける。世界遺産になった屋久島でも、外来種の猛威は容赦なく続く。


1182.jpg或美島。嘘。


1277.jpgヤクシマキムラグモHeptathela yakushimaensis。屋久島にて。

キムラグモは生きた化石と呼ばれる原始的なクモで、昆虫のような腹節構造を残している。九州以南から複数種が知られ、それぞれが地域ごとに住み分ける。外見での種同定は原則不可能だが、見つけた地域でおおよそ見当がつく。上のは屋久島で見たからヤクシマキムラグモとしたに過ぎない。

薄暗い赤土の斜面に深さ10数センチ位の穴を掘って住み、入口に扉を付ける。夜間、これを少し開けて獲物が通りかかるのを待ち伏せる。トタテグモとまったく同じ生態だが、トタテグモに比べて扉を開ける隙間が大きい気がする。また、理由は知らないがキムラグモはトタテグモと違い、巣の内壁を入り口から2-3cm位のところまでしか糸で裏打ちしない。

キムラグモの仲間は、全種が環境省の絶滅危惧種。生きた化石という肩書きもあることから、滅びそうなクモゲジゲジ類としては比較的人間共から注目され、配慮されている部類といえる。しかしそれでも、同じ絶滅危惧種のチョウやトンボが享受している配慮の3分の1ほども受けていないように思う。

1272.jpgクロヤマアリFormica japonica。屋久島にて。

北方系。日本では屋久島が南限で、これ以南の南西諸島では姿を消す。ただし、台湾には高標高地に限り見られる。北方系とはいえ、屋久島では平地から亜高山帯まで広く分布する。
後になって、これまでの屋久島におけるクロヤマの記録はハヤシクロヤマアリF. hayashiの誤同定である可能性が高い、との情報があることを知った。でも、コレはどう見たって普通のクロヤマだ。少なくとも、本土で見たら迷うことなくただのクロヤマと判断するようなものしか見かけなかった。事前に知っていればもう少しちゃんと調べたのに、惜しいことをした。
※どうやら、ハヤシクロヤマだったようです。腹部2節目背面中央に、立毛が出るのが普通のクロヤマ、ないのがハヤシクロヤマでした。外見は本土、特に本州のハヤシクロヤマとはかなり違った雰囲気ですが、どうやら西南部のものほど少し変わるようです。教えて下さった方、ありがとうございました。


本土のクロヤマアリの巣には、アリヅカコオロギが高頻度で寄生する。「アリの巣の生きもの図鑑」(東海大学出版部)には詳細を記したが、日本のアリヅカコオロギ属は、本土と南西諸島とで種組成が根本的に違う。しかし、その分布が入れ替わる境目がどこかはよくわかっていない。恐らく、北と南の要素が混ざる屋久島ではなかろうかという目論見があり、執拗にクロヤマアリを中心とする種々のアリの巣を暴いた。

ところが、いくら探してもアリヅカコオロギは一匹たりとも見つからなかった(アリシミはいた)。さまざまな標高で、相当数のコロニーを開けたのにもかかわらず。寒い時期だから地下深くに引っ込んでるのかとも思ったが、アリは普通に石裏の浅いところで集まっていた。それに、極寒の2月の長野ですら石裏でよくアリヅカコオロギは見つかるから、寒さの問題ではない。そもそもいないのだと思う。
不在証明の愚かさは、すでに釣りキチ三平が言及しているところだが、それでも相当な数の、しかもかなりの大コロニーのクロヤマの巣を暴いて一匹もコオロギが採れないというのは、本土ならば普通では考えられない。どんな生物種でも、分布の端というのは貧弱になるものだ。南のコオロギも北のコオロギも、長い歴史の中でうまくこの島に到達できなかったか、できてもここの特殊なアリの種組成に耐えられなかったのかもしれない(島の麓は、全域に渡りコオロギが絶対寄生できないアシジロヒラフシアリが席巻している。また、ヤマアリと並び本土ではコオロギの主要寄主たるトビイロケアリがきわめて少ない)。
生物地理的に絶対面白い地域なので、本当はうまく見つかればよかったのだが、いなければいないで一つの発見ではある。もし屋久島でアリヅカコオロギを見たことがある人がおりましたら、ご一報ください。

屋久島ではそのほか、本土でクロヤマの巣を二つ三つも暴けば絶対出てくるオカメワラジムシも全く出なかった。代わりに、本土ではアリの巣でまず見かけないニセヒメワラジムシが高頻度で見られたのは異様だった。ハガヤスデもほとんど見かけなかったし、ここのアリの巣界隈ではかなりおかしなことが起きている印象を持った。温暖な時期に再訪する必要がある。

水陸両用じょうじ

1275.jpgサツマゴキブリOpisthoplatia orientalis。屋久島にて。

翅がない大形ゴキブリで、森にいる。ゴキブリというよりゲンゴロウに近い姿をしている。本来は四国あたりより西日本にいたはずだが、苗木の土などに紛れてより北方の様々なところに持ち込まれ、定着している。静岡のある場所には、かなり高密度でいるのを知っている。

たまたま泊まった宿近くの裏山にあった神社は、夜になるとおびただしい数のサツマゴキブリとヤンバルトサカヤスデが這い出し、境内を行進していた。それ以外の生き物がまったく見あたらないほどだった。実写版テラフォーマーズだった。

1273.jpg幼虫は茶色。ある図鑑に、幼虫は水棲という怪情報が載っている。実際、水中から採った人間もいるようなので事実らしいのだが、コレが水中にいるというのは想像が付かない。

氷結傀儡(ザドキエル)

1280.jpgシワクシケアリMyrmica kotokui。屋久島にて。

クシケアリ属は、北方系アリの最たるもの。本来、亜熱帯の南西諸島にいることなど考えられないが、洋上アルプスたる冷涼な山岳地帯が、このアリを現代まで屋久島の地に生かした。屋久島が本種の分布南限となっており、標高900mあたりより上部でしか見られない。これより低標高には、絶対にいない。また、標高900m以上の場所であっても、島内での生息域は極限される。

ハイビスカス咲き乱れる南の楽園で、この氷の申し子にたった1コロニー出会うまでには、比喩表現なしに血尿搾り出し血反吐を吐くほどの紆余曲折、波瀾万丈があった。長野ならちょっと山手に足を延ばせば掃いて捨てるほどいるこいつに出会って、思わず声を上げて膝をつき、嬉しさのあまり涙を流したのは、後にも先にもこの時だけ。

エクシード黒ギルス

1181.jpgヤクシマクロギリスPaterdecolyus genetrix

黒塗りで重厚な、キリギリスとカマドウマの中間みたいな風貌の虫。実態はそのいずれでもない、クロギリス科という分類群の一員。日本には3種いて、それぞれが南西諸島の別々の島に住み分ける。昼間は樹洞などに隠れていて、夜に出歩く。秋に成虫になるらしい。

1180.jpg
脅かすと、連続ジャンプしてたちまち茂みの中へ消えてしまう。

1179.jpg日本でクロギリスが最初に見つかったのは1980年代、沖縄本島の北部だった。ちょっと夜の森をうろつけばすぐ見つかる、しかもそこそこの大きさの虫が、20世紀末まで発見されていなかったというのも妙な話だと思う。存在だけは昔から知られていて、だれも学術的に調べていなかっただけかもしれないが。
その後八重山、屋久島で発見されるに至ったクロギリスの仲間だが、なぜか間の奄美・徳之島で見つかっておらず、分布が中ぬけになっている。理由は謎。

1274.jpgヤンバルトサカヤスデChamberlinius hualinensis。屋久島にて。

もともとこの島にいなかった、台湾からの外来種。沖縄のヤンバルで最初に定着が認められ、その後すぐ周辺の複数の島嶼へ飛び火した。繁殖力がきわめて強く、天敵もいないため、すさまじい勢いで増殖して問題になっている。
人に噛みついたり、農作物を荒らすわけではないが、とにかく数が多いので快く思う者はいない。夜間地表を大群で練り歩き、民家にもうじゃうじゃ平気で上がり込んでくるので非常に嫌がられている。そして、臭い。危険を感じると毒ガスを発し、これを吸い込みすぎると健康を害する。だから、熱湯をかけるなどの苦痛を与える殺傷方法を使わず、即効性の薬剤での駆除が推奨されているらしい。

1276.jpg目らしきものが見あたらない。実は顔つきは可愛らしかった、を狙っていたのだが、そんなに可愛いげはなかった。

1278.jpg
夜間、民家の壁におびただしい数が這い上がってくる。しかし、こんなのはまだまだ全然大量のうちに入らない。全然本気を出しておらず、余裕でまだあと3回の変身を残すレベル。

夜が来る!

1268.jpg♪壊れた窓からのぞく摩天楼

屋久島にて。

(∵)(∵)(∵)(∵)(∵) ヲー

1267.jpg屋久島の浜。たまたま道すがら立ち寄った。

遠目に綺麗な砂浜に見えた。これは、波打ち際に精巧な二人組の砂像を造ってそれを無慈悲に踏みにじり、「消えるのは砂浜だけじゃない」の字幕とともにニラニラヲチする「公共広告機構責め」をするか、それとも砂の平面に無数の円を描きまくり、その全ての円の内側に点3つ∵を打ってニラニラヲチする「NHK教育アエイオウ問い」をする好機かと思ったが、近寄って見ると砂の粒がかなり大きく、どちらも出来なかった。

アエイオウは、キャラデザの異常なゆるさと、登場人物の使う意味不明な言葉が魅力のアニメだった。これをこよなく愛するあまり、昔これをビデオに録画して毎日発狂寸前まで繰り返し見続けた。おかげで、第9話「まほうつかい」の回で登場する人物のセリフは一字一句違わず全て覚えていて、声帯模写できる。動作の振り付けもできる。

1178.jpg
ルリシャクジョウBurmannia itoana。屋久島にて。

葉緑体を持たない、かつて「腐生植物」と呼ばれていたものの一員。何らかの菌類と根っこで連絡し、栄養のやり取りをしているらしい。

1177.jpg
偶然シロアリの巣くった朽木を裏返そうとしゃがんだら、その朽木のすぐ数十cm向こうに生えているのを見つけた。小さいが、色が色なのでよく目立つ。図鑑でしか見たことがなく、いつか現物を拝みたく思っていた。右も左も分からない素人が、森を適当にほっつき歩いてすぐ見つけられるということは、この島ではさほど珍しくないのかもしれない。素晴らしい。

1265.jpg猿と鹿ほどに違う動物が、至近で争うこともなく共存している様は、何度見ても異様だ。

屋久島にて。

1279.jpgヤマトアシナガアリAphaenogaster japonica

北方系で、屋久島が国内分布の南限。本土では比較的涼しい地域に見られるが、屋久島でも一定の標高より上でないと見ない。それより下の標高には、普通のアシナガアリA. famelicaが優占する。

1282.jpgヌカウロコアリPyramica mutica

南方系で、熱帯アジアに広くいるらしい。日本では本州より南の全域で見られるが、どこでも多くない。動きは鈍く、大人しそうなそぶりだが、生粋の殺戮者。この仲間は、生きたものの血肉以外を受け付けない。

屋久島にて。

1270.jpgアギトアリOdontomachus monticola。屋久島にて。

南方系で、熱帯アジアで繁栄している仲間。日本では鹿児島と屋久島周辺の島におり、沖縄本島には近縁の別種が住む。ただし、最近になって本州各地で人が持ち込んだらしい複数個体群が新たに出現し、勢力を増してきている。
眉間に皺の寄った恐ろしい顔つきで、強力なキバを持つ。これを高速で打ち付けるように閉じ、他の小動物を捕獲する。

仮面ライダーアギトのモデルは断じてアギトアリではない。どちらかというとアリより龍に近縁。

1271.jpgミツバアリAcropyga sauteri

南方系で、南西諸島ほど多い。屋久島では海沿いの低地でよく見られる。巣内に共生者アリノタカラを例外なく養うが、このときはまったくそれを見なかった。寒い時期だったので、地下深くに仕舞い込んだのかもしれない。

1281.jpgヒメキイロケアリLasius talpa

北方系。西日本を中心に分布する種だが、それでも屋久島・口永良部島より南の島には存在しない。屋久島でも平地では見ず、標高1000m前後あたりからでないと出現しない。
一見ミツバアリと似ているが、全然仲間が違う。やる仕事の内容も違う。

屋久島にて。

1269.jpgアシジロヒラフシアリTechnomyrmex brunneus。屋久島にて。

南方系で、低地帯では優占する。あらゆる有機物に集団でたかり、特にカイガラムシなどの甘露が好物に思える。

屋久島はカテゴリー的には南西諸島だが、かたや標高1900m以上の山がそびえている。その起伏に富む地形ゆえに、ハイビスカスと高山植物が共存する奇妙な島として知られる。
アリとてそれは変わらず、低地には沖縄で見るような南方系のアリが、山地帯以上には本州山岳地帯で見るような北方系のアリが見られる。熱いアリと冷たいアリ、相反する二つのアリの思いが交錯する地。