1221.jpgヘリグロヒキガエルBufo melanostictus。台湾にて。

東南アジアでは最普通種のカエル。いかに都市化が進んで河川や沼が汚染されつくしても、これとアジアジムグリガエルだけは絶対に生き残る。歯垢のような悪臭を放つ脂ぎった汚水に満ちている側溝でも、平気で産卵している。
石起こししていたら、一個の石の下に何匹も固まって休んでいた。ヘリグロヒキガエルは石の下などでよく見られるが、ここまで集合することはあまりない。

そんなに大きくならず飼育も容易で、かつ人によく慣れる。本当は育ててみたいのだが、もうそれはできない。外国産ヒキガエルは特定外来生物法の関係で、生きた個体を日本に連れて帰れなくなったからだ。

七罪がchange

1225.jpgオオイクビと同時に灯火へ飛来した、大型カマキリモドキ。オレンジ色をしているが、サイズと斑紋パタンはオオイクビとそっくり。単なる色違いの可能性もある。

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1237.jpg
全身赤黒い、強そうな種。ただしサイズはオオイクビよりすこし小さめ。日本のオオカマキリモドキそっくりだが、オオイクビ同様に首が短い。現地の大学に収蔵されているコレらしき標本を見たが、オオイクビと同種に同定されていた。本種はものすごく色彩変異が多い種で、いろんなハチに擬態した型が存在するようである。様々な姿を持ち、天敵の目を欺いているのかもしれない。

同種内に、さまざまな有毒種に似せた複数の型を持つ蝶はいくつか知られているが、カマキリモドキにも似たようなことが起きていそうだ。しかし仮にそうだったとしても、何せカマキリモドキは原則として累代飼育できないので、これを用いて蝶でなされたような研究を行うのは相当難しいであろう。

1226.jpg全身オレンジで翅端だけ黒い種。ベッコウバチに似ている。これも猪首。もしかしたらこいつもオオイクビの色違いなんじゃないだろうか。この仲間の分類に関してまったく知らないので、実際にどうなのかは分からないが。

カマキリモドキは、普段は本物のカマキリほど繊細な動きをせず、あまり知性を感じさせない。しかし、同サイズの他個体が至近に出現すると、不思議な挙動を見せる。カマの内側を相手に見せつけるように広げて体をゆさぶり、なおかつ腹部を真横へひねるように曲げる。腹部の模様を相手に見せて、ディスプレイをする。
他の生物が近くに来たときには、こんな動きは見せない。求愛なのか威嚇なのかわからないが、この時だけは知性を感じる。

七罪をsearch

1219.jpgオオイクビカマキリモドキEuclimacia badia。台湾にて。

ずっと出会いたかった精霊。日本でも南西諸島にいるが、日本ではとてもじゃないが出会う見込みがなかったので嬉しい。どこからどう見てもアシナガバチにしか見えない。特に、八重山のキアシナガバチと究極にそっくり。

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猪首の名の通り、首が短い。ほぼ同サイズのオオカマキリモドキと比べればよくわかる。それだけに、オオイクビのほうがずっと体格ががっちりしている印象。
幼虫期の生態は、なんとなく予想がつくものの例によって一切不明。解明するためには、現地に住むことが必須である。

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島の南端近い森で、夜間灯火に飛来したもの。この日、外見の異なる4匹の大型カマキリモドキが一挙に飛来した。相当にカマキリモドキの生息密度が濃い場所だったらしい。しかし、いくら生息密度が濃かろうと、灯火採集以外の手段でこの虫を森の中から探し出すのは、人間には困難である。

1217.jpgベンガルルリジガバチChalybion bengalense。台湾にて。

日本にも南西諸島にいる。素早く飛び回っては民家脇の側溝に入り込み、クモを狩り集める。獲物は物陰の穴に作った巣へとどんどん詰め込んでいく。
日本本土のルリジガバチと一見似ているが、横から見たときに細い腰が顕著にS字を描かないことで区別可能。

ものすごくすばしっこい上、警戒心が相当に強い。まして気温が高くなる晴天の日中はほぼ接近不可能であるため、大してまともに写せなかった。台湾は狩人蜂のメッカで、すさまじい種数かつ日本では珍種の面々が普通にいるのだが、どれも稲妻のように素早いばかりか、エルフ族のように人間を下種な種族と見下し忌み嫌っているため、接近を決して許さない。
今回、日本では大珍種のタイワンハナダカバチを一度だけ見たのだが、撮影するまもなく飛び去ってもう戻らなかった。

1204.jpgトゲアシアメンボ一種Limnometra sp.。台湾にて。日本のものと近縁か同種。

トゲアシアメンボは、日本では与那国島にしか存在せず、なおかつそこが本種の分布北限。台湾では珍しくもないようだが、日本では絶滅危惧種。森内の薄暗い池や水たまりにいる。オスの中脚先端に、小さいトゲがある。

かなり大型のアメンボウだが、性格はすこぶるチキン。ビビらせると、天才バカボンの登場人物よろしくその場で水面からビヨーンと10cm以上も垂直跳びする。翅のある成虫だとそのまま羽ばたいて飛んでしまう。

1212.jpgたぶんナガヒメヘビCalamaria pavimentata。台湾にて。

ナガヒメヘビは、日本では与那国島にほんの僅かいるだけの大珍種かつ絶滅危惧種。ミヤラヒメヘビという亜種名が与えられている。恐らく台湾では、騒ぐほど珍しくない。
たまたま石起こししていたら、一匹出てきた。本当はもう少し粘着して撮影したかったのだが、この直後に本命の虫が出てきてしまったので、これ一枚しか撮ってない。

ヒメヘビの仲間は、なぜかしっぽが途中でぶつ切りになったように終わっていて、ぱっと見瞬時にどちらが頭かを判別しがたい。そして、頭部の鱗の数が異常に少ないので、あっさりした顔つき。

1372.jpg恐ろしく珍しいハチ。環境省の絶滅危惧種でもある。全国的に記録が極めて散発的で、生態がよく分かっていない。とにかく巨大(というほど巨大でもないが)。

偶然、コレクションの中に40年以上も前の標本が1体のみ混ざっていた。この分類群には明るい方ではないが、これだけは見た瞬間すぐそれと分かった。

恥ずかしながら、まだ生きた姿を見たことがない。「精霊図鑑」を完成させる上でどうしてもデレさせたい相手だが、40年以上も前にこの個体が得られた産地に今行って見られるかは、限りなく怪しい。

かつての職場に所用で立ち寄った際、在野の研究者の方から最近職場に寄贈されたというハチ類の標本を見せてもらった。いくつか、きわめてクリティカルな珍種も混ざっていた。

1374.jpgツヤクロスズメバチVespula rufa。これはさほどクリティカルではない種。

長野県のある地域では、野外でクロスズメバチ属のハチにコヨリ付きの魚肉を渡して追っかけ、その巣を暴いてハチの子を採る風習がある。また、そうやって見つけた巣を丸ごと持ち帰り、庭で大きく育てるようなこともする。
しかし、それらハチ類の中でもツヤクロスズメは、生きた昆虫を餌に好むため魚肉を渡しても受け取らないらしい。性格も神経質で飼育が困難らしく、人間の言うことに従わないということから、地域によりバカッパチなどとひどいあだ名を付けられている。容易に人間如きの手には堕ちないという面では、むしろ賢蜂ではないかと思うが。

1373.jpgヤドリホオナガスズメバチDolichovespula adulterina。同属他種のハチの巣に居候する。血尿が出るほどの珍種で、生息圏内に13年もいて一度も見ずに終わった。

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地蔵様。長野にて。

13年間で通算数千回ほど通った、温泉街脇の裏山の入口に立っている。地蔵様のそばには常時チョロチョロと温泉が流れ出ており、それを大きな石鉢が受けている。柄杓が用意されてて、これで温泉をすくって地蔵様のドタマにかけてから撫でると、学業成就の御利益があるとされる。
そのため、毎日ここへ来るたんびに地蔵様に湯をかけたものだった。もっとも、信心深いたちではないため、願が叶うのに数年も費やした。願が叶った後、この裏山の上にあるオヤシロサマに行き、向こう1ヶ月の生活が困窮する額の金を賽銭箱にねじ込んだのもいい思い出。

なお、ここから流れ出る温泉は飲むことも出来る。適量を飲むと、HPとMPのゲージを1/3回復させることが出来る。心労が祟ったときにはいつもこの命の泉を摂取して、レッドアリーマーⅡでいう「くだけちったからだをふっかつした」。

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クワゴBombyx mandarinaの繭。長野にて。

葉が完全に落ちた冬、桑の木のあちこちにぶら下がっているのを見る。白くてブラブラしているので、遠目に見てもよく目立つ。
クワゴはカイコの原種と言われている。繭は全体的に薄い質感で、人が育てているオカイコ様の繭とは似ても似つかないが、飼い慣らされていない質素な趣がある。人間のために余計に糸を紡いでやる義理などなく、自分が冬の風雪を防げる程度の強度さえあればいいのである。

・・と思いきや、実はクワゴは卵越冬だそうで、この時期の繭はカラなんだそうです。身近にいる虫のことなのに、ぜんぜん知りませんでした。まだまだ、修行が足りないようです。教えて下さった方、ありがとうございます。

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クワエダシャクPhthonandria atrilineata。長野にて。

1371.jpg桑の木にしがみついて一冬を越す、タフなヤツ。色彩といい質感といい、桑の小枝とそっくりで非常に発見困難に思える。しかし慣れてくると、割と根本近くで分岐している太枝からちょぼちょぼ出ている小枝に高頻度でいるのがわかり、容易く見つけられる。ただ、この産地では毎年少ない。

1362.jpg森の木から突き出た、釣り糸らしき物体。

冬の森で、そこかしこにある。誰もその存在を気に留めないが、じつは今回古巣に舞い戻った目的の一つはコレの調査である。おそらく、日本の昆虫学の歴史に激震を与える。訳あって5年も暖めていたネタだが、年内にはタネ明かしできるようにしたい。

長野にて。

アイスドーム タンゴ

1364.jpgトビムシ一種。長野にて。

積雪上に大量に発生している。ただ小さな雪の粒が積もっているだけだが、小さな生き物にとっては雪山の洞窟。

1361.jpgクモガタガガンボChionea sp.。長野にて。

久しぶりに見た。おそらく九州にもごく普通にいるはずだが、雪が降らない西の国では非常に生息を確認しづらい。そもそも九州でこの仲間は見つかっているのだろうか。
積雪なしにこれを効率よく見つけるには、ある野生動物を味方につける必要がある。北の僻地ではそれが容易かったが、新居の周辺ではきわめて困難で、やろうと思いつつ結局出来ぬまま冬が終わりそうだ。

1363.jpgとある知り合いの家に偶然あった、大昔の小学館の昆虫図鑑。とうの昔に絶版で、もはや古本屋ですら入手困難。よく今までここに存在したと思う。

「裏山の奇人」(東海大学出版部)の冒頭にも書いた、俺が2歳でアリヅカコオロギという虫を知るきっかけとなった図鑑がこれ。ここからすべてが始まった。あれからまもなく自宅にあった図鑑は処分してしまい、それ以後よそでさえ一度も見る機会がなかった。「奇人」の冒頭で書いたアリヅカコオロギの掲載ページの話は、約30年前の記憶のみを頼りに内容を書き起こしたもの。

今改めてこの本のアリヅカコオロギ掲載ページを見ながら「奇人」の冒頭を読むと、図版の配置からキャプションの内容に至るまで、当時見たそのページの様をほぼ正確に記憶していたことが見て取れる。これだけの情報を、しかも立派なカブトクワガタでも美麗なチョウのページでもなく、ゴキブリの親戚みたいのがひしめくだけのページの内容を、たかが1、2歳のクソガキが30年間ずっと忘れずに覚えていたのだ。見ていて泣きそうになった。

1360.jpg雪山となった裏山。雪の影は黒ではなく蒼い。長野にて。

少し前に、いくつかの用事があって古巣に戻ったのだが、ちょうど同じタイミングで大雪に見舞われた。最近、ちょっと遠くへ出かけると大雨か大風か大雪。普段の行いの報いであろう。
かつての職場で、いくつか有意義な研究計画を進める方向でまとまった。本当に、自分にはもったいないほど優秀な後輩を持ったものだと思う。

1359.jpgヒメドロムシ。種名は、なんだかよく分かりそうで分からない。今まで日本で唯一見たことのある、水底性の種。
しばらく台湾の写真で来ていたが、間違えて後で出すつもりだった日本の写真を挙げてしまった。
※ツブスジドロムシParamacronychus granulatusとのご教示をいただきました。Hamusi様、誠にありがとうございます。

裏山の斜面に発達した薄暗いスギの植林内には、地下から伏流した水が湧き出て小さな細流となっている。幅1mほどで水深はないに等しいが、年間を通じて絶対に枯れない。ここには、少なからぬ数のコレが生息している。妙に黒っぽいのと赤っぽいのがいるが、同種内の老齢かテネラルの差だろう。
今から何年も前、カタツムリトビケラを探して細流の水底の砂利を掴み取りバットに広げたとき、偶然これの生息に気づいた。この頃、ヒメドロなどという虫の存在自体を知らなかった。たまたま周囲の葉に付いていたゾウムシかハムシが水中に落っこちてもがいているだけだと思っていたが、何時までたっても水中から脱出しようとしないため、不思議に思ったものだった。
10年前に同じ場所でたった一度、ハバビロドロムシも見たのだが、なぜかそれ以後まったく発見できず現在に至る。おそらく周囲の石や水に浸かった材をバケツにぶち込んで徹底的に洗えば見つかるのだが、そこまでして探す気になれない。

ヒメドロムシは水生昆虫のくせにまったく泳げず、忍者が壁のぼりに使う鉄カギのような爪で水底の石にへばりついて生活している。種によってはクモのようにひょろ長い脚と長いツメを持っており、とてもカッコイイ。しかし、水生昆虫の常として、近年の河川改修や水質汚染その他の影響をもろに受け、絶滅が危ぶまれる種がとても多い。

年内に、少なくともヨコミゾドロムシの姿は拝みたい。

長野にて。

1240.jpgタイワンダイコク Catharsius molossus。台湾にて。

大形の糞転がし。東南アジアの広域に、似た種が多い。カッコイイといえばカッコイイのだが、日本のダイコクコガネほどではないと思う。

1242.jpgイラノキDendrocnide meyeniana。台湾にて。現地名は咬人狗。

一見、どこにでもあるようなタダの木。しかし、このイラクサ科の樹木には強力なミクロの毒針が無数に隠されていて、知らずに手で触るととんでもない事になる。死にはしないが、いっそ一思いに死んだほうがましな気分にさせられるという。
この植物には、外見上目立った毛もトゲも見当たらない。人畜無害そうに見える分、余計にたちが悪い。これが生えている場所にはしばしば警告の看板が立つし、現地の研究者からもコレにだけは絶対に触るなと言われた。

1241.jpgそこまで触るなと言われると触りたくなるのが人情で、本当は足の小指の甲とか、どうでもいいようなところにちょっとだけ押し当てて何が起きるか試そうとも思ったのだが、結局やめておいた。自分がやるより早く、傍にいたおじちゃんが生贄になる様を目の当たりにしたからだ。

トリニクィセブン

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ツダナナフシMegacrania tsudai。台湾にて。

海岸沿いに生えるアロエもどきの植物、アダンに依存した特異な昆虫。巨大かつ胴体がぶっといので、まるで子供向けの作り物のおもちゃのよう。アダンの葉は固くてトゲだらけで、下手に触ると傷を負う。しかし、この虫は全く気にせずこれをバリバリ食う。
ナナフシは、実際には体が7節以上ある。ここでいう7は特定の数字を表すのではなく、「とにかく多い数」の例えである。昔で言う「七代先まで祟ってやる」の文言も、八代目からは許すわけではなく、ずっと祟ってやるという意味であろう。

たまたま夜間海沿いの道を車で走っていたとき、同行者が生息地脇で停車して見せてくれた。出先だったため必殺・逆光ストロボを持っていなかったのだが、存分にエンジョイした。
強風吹き荒れる中、黙々と葉を食い続けていた。しかし、撮影のためにちょっと葉に手をかけた瞬間、奴は食事をやめて警戒態勢になった。人が葉を揺らすのと風が葉を揺らすのの区別ができているらしい。

1236.jpg
そこで同行者が警戒態勢のこの虫に手で触った瞬間、虫の体から下方に向かってシュパァッと霧状の液体が飛び散った。ツダナナフシは、身の危険を感じると刺激臭のある液体を数十センチ以上も噴射することで有名。ミントもしくはサロンパスの香りで、決して嫌な臭気ではない。ただし、目に入ると危険らしい。

1235.jpgツダナナフシは、太平洋に面したアジアのいくつかの島に分布している。いずれも海沿いに分布しているため、卵が海流によって運ばれる形で分散していると考えられている。日本では八重山のごく限られた範囲にしかおらず、その個体数も非常に少ないので、採集が推奨される生き物ではない。台湾でも同様で、法律により厳重に保護されており、連れて帰れない。



※イベント告知
2月14日、豊田ホタルの里ミュージアム(山口県下関市)にて特別講演会「消えゆく、どうでもいい虫」を行わせていただきます。絶滅危惧種の地味な虫への愛を語ります。 http://www.hotaru-museum.jp/index.html
さらに、3月7日、ジュンク堂書店福岡店(福岡市中央区天神)にて講演会「暴け!裏山の虫の謎」を行わせていただきます。昨年度好評を博した、ジュンク堂池袋本店での講演が、九州に帰ってきます。 http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=8102
詳細は、各ホームページをご確認下さい。

1239.jpgアトキリゴミムシ一種。台湾にて。

1cmほどの小型種で、よく飛び、夜間灯火に来る。小さいが、いじると酢酸を濃縮したような強烈な悪臭を放つので、あまり捕まえたくない。アトキリゴミムシの仲間は、みな同じような悪臭を放つ。


※イベント告知
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1230.jpg萱嶋蜘蛛。台湾にて。この仲間の分類に関する文献がなぜか恐ろしく入手困難なのでまったく種名がわからないが、たぶん無印のカヤシマグモFilistata marginataではなかろうか。

1231.jpg民家の壁面の隙間などにロウト状の巣をつくり、獲物を待ち伏せる小型のクモ。台湾では勇名とどろくド普通種だが、日本では大昔に南西諸島でほんのわずか得られてそれっきりの、幻のクモである。

1232.jpg巣はこれといって特徴のない雰囲気。しいて言うならば、例外なく汚らしい。獲物の食いカスをそのまま入り口に引っ掛けてある場合が多い。派手ではないし珍奇な生態を持つわけでもなし、別に取り立ててどうということのない、ほんとにしょうもないクモ。しかし、俺は以前からこれを見たいと切望していた。その理由は、日本で見られないからというのが一つだが、もう一つある。

ハラナガカヤシマグモ F. longiventrisという精霊がいる(環境省の出版したレッドデータブックでは、新旧版とも綴りがlongibentrisと誤記されている)。九州のとある洞窟から記載されたもので、原則熱帯・亜熱帯に分布するこの仲間のクモとしては最北に分布する種である。名前の通り、異常に腹部の長い奇怪なプロポーションで、ウナギイヌを思わせる。
しかもオリジナルのカヤシマグモと双璧をなす珍種で、模式産地以外からはいっさい見つかっていないばかりか、1960年代の記録を最後に誰も見ていない。環境省の絶滅危惧種(情報不足カテゴリ、2012年版)にも指定されているが、いかんせん地味でクソほどのありがたみもない小グモなので、わざわざ趣味でこれを辺鄙なその洞窟まで探しに行く人間がろくにいない。だから、存続の有無がまったく不明のまま現在に至る。

いずれこの精霊をデレさせる算段でいるため、カヤシマグモというのがどういうクモなのかをまず実際に見ておこうと思ったのである。幸い首尾よく見つけられたので、これでいつ洞窟で件の精霊と接触しても大丈夫そうだ。
しかし、先日そこへ行ってかなり執拗に探すも発見に至らなかったので、その霊力封印には相当難儀する様相を呈する。おそらく本来は洞窟にいない種である可能性が高い。



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必ず昔に勝ちに行く

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イエカ属Culex sp.。ネッタイイエカかもしれないが不明。眠れない夜の友。台湾にて。

どこの国に行っても、蚊は絶対に撮影する。人生初の海外遠征はマレーだったが、現地に着いて一番最初に撮影した写真は、人でも景色でもなくホテルの部屋にいた蚊だった。


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ヘビトンボ。台湾にて。

日本の南西諸島にいるモンヘビトンボNeochauliodes sinensisと近縁か、同種。オスは触角がクシ状になっている。かっこいいが、邪悪な雰囲気がある。


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〈鏖殺公(サンダルス)〉!

1218.jpgクシヒゲムシ一種Sandalus sp。台湾にて。

日本にも似た奴がいる。2cm前後の甲虫で、オスは扇子のように広がる立派な触角を持っている。しかし、メスは上のように大して変わり映えしない雰囲気。
本属は精霊のため、幼虫期の生態が謎。かろうじて北米の一種で、地中のセミの幼虫に寄生する珍奇な生態が知られるのみ。いずれセミの幼虫を掘りまくって、これの幼虫の寄生現場を押さえてやるつもりでいるが、実現していない。


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とろいですがはやいです

1233.jpgキシタアゲハTroides aeacus。台湾にて。

東南アジアではよく見かけるが、だいたい唐突に現れて唐突に去るので撮影できたためしがなかった。かなりスレた個体だったが、たまたま手の届くところに止まってくれたので、野外で初めてまともに写せた。

現在、キシタの仲間はどこの原産国でもそこの法律で保護されているうえ、全種ワシントン条約やらにひっかかっているので、勝手に採って持ち帰れない。しかし、昔の虫マニアの手記などを見れば、数十年前まではどこでも比較的自由に採れたらしい。
虫は未来へ向かうにつれ、物理的にも法的にも世論的にもどんどん採れなくなっていく。国内外を問わず虫の趣味以上に、後世に生まれる者ほど貧乏くじを引かされる道楽など存在しない。未来の昆虫学を背負って立つ後世の虫マニアに、今以上の貧乏くじを引かせないための努力は、惜しまないつもりでいる。


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1208.jpgメタルなザトウムシ。普通種。台湾にて。


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1305.jpg樹液に集まるスズメバチ。台湾にて。

日本のチャイロスズメバチそっくりな奴。小型種なのに、常軌を逸脱するほど理不尽に凶暴。台湾で毎年死人を出している、最も危険な種。
あくまで餌場に集まっている状態で近くに巣があるわけではないのに、あまりに凶暴すぎて至近まで寄れず、かなり遠くからの撮影を余儀なくされた。もっとも、そのかなり遠くの距離にいる段階で、すでにこちらの生命がとてもやばかった。餌場の占有性がスズメバチ中最強の種ではなかろうか。ハチ相手に命の危機を覚えたのなど、何年ぶり。


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琴里「この大ミイデラゴミムシ!」

1222.jpgオオミイデラゴミムシPheropsophus javanus。台湾にて。

南方系で、日本では南西諸島で見られる。日本本土のミイデラゴミムシよりも大柄で、全体的に黒っぽい。夜間活発に歩き回り、タンパク質を求める。当然ながら、強烈なガス銃を隠し持っている。
歩行は素早く、しかも一度歩き出すと止まってくれない。止まる際にはたいてい草陰に体のどこかしらを隠すため、全身をきちんと撮影するのが難しい。

芝生で走り回るゴミムシを後ろからずっと追いかけていたとき、たまたまゴミムシが地に伏せるヌマガエルの正面を通り過ぎようとし、カエルがガバッとゴミムシに飛びかかった。しかし、舌先がゴミムシに触れた瞬間、口を開けて舌を突き出したまま苦しそうに後ずさりした。これでもう、こいつは黄色と黒の甲虫を二度と食わないだろう。カエルのIQが上昇する瞬間を見た。