1397.jpgノミバッタ一種。マレーにて。

空港すぐ脇の地面に、佃煮にするほどいるが、道行く人間は誰も気付いていない。小さな砂粒でカマクラ状の隠れ家を造って隠れる。ビビると、隠れ家を突き破ってジャンプし、どこかに吹っ飛んでしまう。

1398.jpgヒゲナガアメイロアリParatrechina longicornis。マレーにて。

空港そばの空き地で、死んだトンボに群がる。熱帯アジアに広域分布するが、地域によって明らかに体色の濃淡や体表のツヤ加減が違う。

クアラルンプールの空港施設内には、やたらトンボの干からびた死骸が落ちている。大きな生きたヤンマが、コンコースの天井でジタバタしてるのも見た。あんな開発された場所でも、トンボが磐石に発生できる水場が多いらしい。

1396.jpgコウライウグイスOriolus chinensis。マレーにて。

空港周辺の緑地帯によくいる、美麗な恐竜。日本では何かの間違いでたまに飛んでくる程度の珍種だが、東南アジアでは概して駄鳥の極み。日本で言うムクドリと同じくらいその辺にいる。そして、ジャングルにはおらず、人の荒らした市街地でしか見ない。

名前とは異なり、色もサイズも鳴き声も、分類的な位置づけも本物のウグイスとはあまりにもかけ離れている。いろんな種類の声を発するが、基本的にその外見から想像するほどの美声とは思えない。この時も、ひたすらムクドリの出すようなしゃがれ声で延々何か言っていた。

1395.jpg先日出向いたマレーシア遠征。

今回の遠征では、日本人の同行者は全員先にジャングルに行ってしまい、俺だけがクアラルンプールの空港に残された。翌日、遠い国から今回の遠征に参加するため来る客人を待ち、彼らを空港からジャングルまで導く命を負ったからである。そのため、この日の夜は一人で空港内のホテルに泊まることになった。

普段絶対に泊まらないような、お高いホテルであった。部屋は徹底的に清掃されており、隙間がなく、出入りする蚊も蜘蛛もヤモリもいない。快適だが、全く面白くない。

綴る!

1394.jpg先ごろ入手した、精霊の攻略にどうしても必要な文献2冊。片方は最近信奉している宗教への布施。重要なのは赤い方である。先に入手していた「クモ形類・甲殻類他」は、正直なところ門外漢の人間には非常に難解で敷居が高すぎる内容だった。それゆえ、昆虫版がどれだけ分かりやすく書かれているか、そしてどれだけ最新の知見を得られるか非常に期待していた。

現物は想像以上に分厚く、すさまじい情報量に圧倒された。意外にも、チョウやトンボ、大形甲虫以外のマイナーな種に関しても、思っていたよりかなり細かい知見が載っていたのに驚かされた。俺は勝手に、地味小虫はおしなべて誰にも関心を持たれず研究もされていないように思っていたが、その考えを多少は改める必要がありそうだ。特に水生の小型甲虫の健闘は目を見張るものがある。
内容的にも比較的難しい用語は少なく、読みやすかった。もっとも、それなりに昆虫学をたしなんだ上で読んでの感想なので、こういうものに特に関心のない一般人にとっても同様かは分からない。

しかし、やっぱり不満もある。どうしても現状を知りたかったいくつかのハチアリ、ハエカブユの多くに関して、現在把握している以上の情報は得られなかった。相変わらずみんな「詳細は不明」のオンパレード。きっとこれは、先人からの「ここから先はお前が綴れ」のメッセージなのだと解釈した。

やはり、お上とは別に「精霊図鑑」を自分で作らなければいけないようである。

1368.jpgアワメクラチビゴミムシ一種Awatrechus sp.。

さる方のご厚意により、初めて生きたものを見ることが出来た。名前は分かっているが、ピンポイントで生息する洞名を冠するため、こんな所に書けない。

四国は余所に比べて独立した地下水脈がものすごく多いためか、メクラチビゴミムシ類の種分化の程度が筆舌に尽くしがたいほど激しい。四国だけで日本の既知種のうち相当な種数が見られ、種どころか属レベルで固有のものも多い。
アワメクラチビゴミムシ属も四国の一部地域にのみ見られる属で、未記載種を含む多数種が知られる。原則として同所的に複数種が共存せず、またそれぞれの種の生息範囲はとても狭い。だから、石灰岩採掘などで今の生息地がだめになると、その種の絶滅に直結する。



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1316.jpgオキツハネグモOrchestina okitsui。福岡にて。

屋内性で、極小の徘徊グモ。ダニを食っているらしい。脚力がとても強く、指でつつくと瞬時に1cmほど前方にテレポートする。風呂場にいた。


どうやらクモの写真を載せると、その日のこの日記へのアクセス数が露骨に減るらしい傾向があるのに、いまさら気付いた。俺はクモという生物が、昔やってたNHK教育の砂アニメの次くらいには好きなのだが、どうやらその感覚は世間一般からは多分にずれているようである。
手塚治虫は、世の中の人間はヘビ嫌いかクモ嫌いのどちらかに分類できると言ったらしい。ヘビもクモも好きな奴は人ですらないのか。

外は危険だ人がいる

1393.jpgメクラチビゴミムシのいる洞窟内に多かったワラジムシ。

その辺の石の下でよく見る普通のワラジにくらべて、体色が薄く、体が幅広い。しかし、目はしっかりあるし、洞窟のあまり奥のほうでは見つからないため、洞窟性というわけではない。
この洞窟のある石灰岩の岩山からほんの少し離れると、普通のワラジばかり見つかるようになる。単に、石灰岩地帯に依存した種かもしれない。

石灰岩地帯には、そこ特有の陸生貝類が生息することが多い。同様にダンゴムシやワラジムシにも、しばしばそこ特有の種が見られる。でも、その多くは微小かつ地下性のため、簡単には見つけられない。潜在的にまだ国内には相当数の新種が眠っているはずだし、既知種でさえ原記載以後見つかっていないものがざらにいる。あの北の洞窟の白いアレとか。

1392.jpgホラヒメグモ一種Nesticus sp.。メクラチビゴミムシのいる洞窟にいた。おそらくこの地域の固有種。

1391.jpg
洞窟の入口付近に多く、地下帝国を訪れる者を真っ先に歓迎してくれる。虫マニアも大して相手にしないが、よく見れば実はとても美しくて繊細な生物である事が分かる。

1390.jpgメクラチビゴミムシ。ピンポイントで生息する洞名を冠するので、名前を書けない。

ちょうど一年前、ココノツノクニに移住して日も浅いうちに会いに行った生物の筆頭。近年の発見例がほぼ途絶えている種で、去年発見した1個体が、ウン十年ぶりに再発見された記録となる、はず。どこかに正式に報告しようと思いつつ、未だにできていないのが心苦しい。
今年、ある必要にかられて産地の洞窟を再訪し、新たに5個体を確認した。とにかく小型で、ココノツノクニから知られる30種前後のメクラチビゴミムシ中最小クラス。メクラチビゴミムシの大半の種は、実際には他のゴミムシと比べて言うほどチビではない。でもこいつは、本当にチビ。
サイズの割に体高が高くて円筒に近い体型、わずかながらも明らかに上翅にスジが出るのが、本種最大の特徴である。


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1318.jpgクッソ小さいトビムシの子。アヤトビムシ科。福岡にて。

海外遠征から戻ってきた。いくつかのクリティカルな発見の他は、季節の関係であまり奮わなかった。

1327.jpgミサゴPandion haliaetus。海にダイブして魚を狩る恐竜。福岡にて。

1326.jpg西日本ほどミサゴは普通にいると話には聞いていたが、ここまでアホみたいに多いとは思ってもいなかった。近所の海岸に出れば、視界のどこかしらにミサゴを入れないのが不可能なくらいいる。数こそトンビほど多くはないが、トンビ程度には普通に見る。住宅街でもしばしば頭上をよぎるのを見るほど。

1325.jpg同業者にメンチを切る。幼少期、これがコンドルと同じくらい巨大な怪鳥だと思っていたため、実際にはトンビサイズであることを知ったときには大層がっかりした。
顔つきとカギ爪がほとんど怪獣並にヤバいくせに、声はまるで生まれたてのヒヨコのように柔らかく愛くるしいのが謎。

「みさご鮨」という名前の鮨屋が、日本各地にある。言い伝えによれば、海際に好んで営巣するミサゴは、波しぶきのかかる岸壁に捕った魚を蓄える習性があり、それが海水を被り続けるうちに天然の塩漬けになったまま発酵する。それをたまたま人が拾って食ったら美味かったというので、それをヒントに鮨(いわゆるナレ鮨)という料理が誕生したらしい。そうした伝承から、ミサゴと鮨はやたら結びつけられることが多い。
実際にはミサゴに貯食の習性がないことから、この伝承は表向き否定されている。しかし、俺はあながち嘘八百でもないように思う。猛禽は捕ってきた獲物を巣へ搬入する際、まちがって獲物を下に落とすことがある。そして、落とした獲物はしばしばそのまま見捨てられる。ミサゴの場合、たまたま海の断崖にかけた巣に魚を搬入しようとして落とし、それが波のかかる岩陰に引っかかって放置された場合、意図せず結果としてそれが伝承の「みさご鮨」らしきものになる可能性だってあるはずだ。


今日から、ひさびさの海外遠征。とりあえず死なないで帰るのが目標。

1388.jpgウチダツノマユブユの成虫。メス。

1389.jpg蛹を連れて帰り、家で羽化させた。いくらド普通種とはいえ、下甑まで行って一匹のブユも採らずに帰るのが忍びなかった。
特徴的な形状の蛹ゆえ、蛹の時なら種同定は容易い。下甑のブユに関しては、既によい文献が出ているのも一助となっている。しかし、野外でいきなりこの成虫を見たら、絶対に同定できない。成虫は、思っていたよりずっと小さい。

1387.jpgオスは顔が全く別の生き物のように違う。


ツノマユブユの仲間は、基本的に人間を吸血しない。そのため、人間にとって重要な害虫たる吸血種ほどは熱心に研究されていない面があるらしい。さすれば、サツマツノマユも実は下甑島内の別の水系で発見されずにひっそり生き残っている可能性も、なくはないということになる。しかしもし本当に生息しているなら、こちらの好む好まざるとに関わらず、どのみち害虫調査の過程で見つかるはずである。見つからないということは、やはりもう存在しないのか。

下甑は、とにかく平坦な場所が少ない。手打集落以外にそこそこな広さで平坦な地形で、なおかつ護岸されていなそうな水路が流れる場所はどこにあるかと調べてみた。国土地理院の地形図を閲覧すると、やや狭いがたった一か所だけそれらしき場所がある。グーグルマップで一番その場所の近くまで行って見てみたら、なるほどいかにもよさそうに見える。でも、実際に行って見ないと本当によい場所かはわからない。少なくとも高岡(1976)は、その場所でブユを採っていない。環境から見て、いなくて採れなかったというはずのない場所なので、調査の目から抜けている可能性は高い。
また、生息に適しているか否かは別にして、島の西側に細流が直接海へ流れ込んでいる箇所がいくつかある。それらは周囲に人の居住区がまったくないため、まず護岸はされていまい。ほぼ垂直な崖を数十メートル下りなければ到達できない、とても過酷な場所にあるが、確実に未調査の場所である。時期を改め、もう少し悪あがきしに行く価値はあるかもしれない。

別にブユの研究者でもないのに、なぜここまでブユに執心しているのか自分でも分からない。これが恋か。

1380.jpg下甑、手打の水田地帯。かつて精霊が「現界」した地。稲作できるような平坦な場所は、海辺に程近いごく狭い範囲のみ。すぐ背後に急峻な山がそびえる。

1386.jpg
一般に下甑島はひなびた田舎のように見なされているが、環境は部分的に相当人為改変されている。少なくともこの手打集落の場合、水田地帯を流れる川は、例外なく全部コンクリ三面張りになっているし、上流にはダムが作られている。さらにその上にある山の源流域まで行けばようやく自然の沢になるが、おそらくそこで探しても精霊はいない。
ツノマユブユの仲間は、生息環境として平坦な土地を流れる、極力護岸されていない緩流を好む。一番生息に適した立地のここで生息する気配が一切ないので、サツマツノマユの生息は絶望的である。ウチダツノマユは、例外的に護岸河川でも問題なく生存できる強い種なので、日本中あちこちに普通に見られる。

俺は条件反射的に「衛生害虫の生息調査は、各地で徹底的になされている」と思っている。しかし、高岡(1976)以後少なくとも下甑のブユ生息調査に関して、一般人が手に取れるような論文・報告書は出ているのだろうか。正直なところ、近年どの程度あの島内で徹底的に調査がなされた上で、あの精霊がいなくなったことにされているのかを知りたい。

なお、沢の源流とくればメクラチビゴミムシがいるに違いないと思って土木作業をしたが、何も出なかった。地面が花崗岩地質でサラサラしすぎてて、そういうものがいそうな気配がなかった。花崗岩地質の土地は、地下浅層に餌となる有機物が溜まりにくいらしく、地下性生物の種組成が著しく貧弱であると言われている。

同じ場所でアリの巣の居候も探すし、ブユも探すし、メクラチビゴミムシも探す。全然違ういろんなものに興味を持っていれば、同じフィールドを同時に2度も3度も楽しむことが出来る。そのぶん成果が何もなかった場合、2倍3倍余計にダメージを受けることになるが。

高岡宏行 (1976) 南西諸島におけるブユ科の研究 : I. ツノマユブユ亜属の種類について。衞生動物 27(2), 163-180

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1385.jpgウチダツノマユブユSimulium uchidaiの蛹。全国的にド普通種。下甑にて。

よほどの研究上の理由もなしに、今日び下甑でブユを探す人間などいないと思うが、今回の遠征で密かに楽しみにしていたもの。ただし、こちらの戦績はまるで奮わなかった。
海沿いにある水田地帯を横切る用水路には、中州のように土砂が溜まっており、雑草が茂る。その雑草が水に浸かっているところを探しだし、草を引き上げてみると、凄い数のブユの幼虫がたかっている。所々に、蛹になったものも見られる。

1384.jpgブユの蛹は、平べったいカプセル状のケースに入っている。この種の場合、カプセルは背面から見るとカブトガニのような幅広い形をしており、何となく勇者が腕に装着するガントレットを思わせる。横から見ると背面に突き出た角があるのがわかる。ツノマユブユという言いづらい名の由来は、ツノのある繭を作ることから。ただし、ツノマユブユの仲間は何種かいて、種によっては繭にツノを持たない。
細いフィラメントは、呼吸のための器官。これの長さ、分岐の仕方はブユの分類・同定においてきわめて重要な特徴となる。割と根元近くで4本分岐し、それぞれのフィラメントがほぼ同長なのが本種の特徴らしい。

1381.jpg幼虫。ウチダツノマユブユの蛹しか見つからない場所で見たので、必然的にウチダの幼虫であろう。しかし角度の問題か、下半身にツノマユブユならあるはずの乳嘴突起が確認できない。


下甑には、かつてサツマツノマユブユS. satsumenseという精霊がいた。地球上で、この島内にある手打という集落でしか見つかっていない固有種。ここの水田地帯を流れる湧き水由来の、ある一本の用水路だけに生息していたらしい。しかし、近代に行われた水路の大規模な改良事業以後、生息していた水系が壊滅して姿を消し、以後誰も見ていない。ブユなのに環境省の絶滅危惧種ⅠB類(2012年版)という、極めて絶滅の危険が高い種として見なされている。
今回、この精霊をどうにか見つけ出したいと思い、かつての産地だったその水田地帯をかけずり回り、時間の許す限り片っ端から用水路に水没した雑草を掴み上げて調べた。もちろん、一匹も発見できなかった。ウチダ以外のブユの生息する証拠が、欠片ほども見出せなかった。

正直、水路自体は島中あちこちに走っているのに、飛んで移動できるブユが湧水一水系にしかいないというのが理解しがたい。現にウチダはうじゃうじゃいるのに、精霊だけがいなくなるはずがない。しかし、こういう衛生害虫系の虫というのは、専門の研究者が相当入念かつ執拗に調べているものであり、その上で発見できていないというのだから本当に存在しないのだと思う(実際いなかったし)。ツノマユブユの仲間は通年発生しており、この時期にしか見つからないという類のものではない。いれば必ず蛹の殻なり何なりがどこかにある。それさえもなかった。
絶滅したといわれるコゾノメクラチビゴミムシは、探す人口がほぼ皆無だし、目に見えない場所にいるものなので、ちゃんと手はずを踏んで探せば余裕で再発見できる気がする。でもこの精霊だけは、今後別の時期に訪れたとしても再発見できる気が全然しない。今の生息地に人為の影響が強すぎること、既に徹底的な生息調査がなされた上で存在しない事実を突きつけられていること、さらに自分自身の目で産地の現状を見てしまったことが、こちらの戦意を尽く剥いでいった。残念ながら、高岡(2002)の言うように、サツマツノマユブユはもうこの世から消えている。次のレッドリストの改訂では、きっと絶滅種になる。そして、そんなものが存在したことも絶滅したことも、今後多くの人間は知らないし気にしないままだ。

環境省のレッドリストにはもう一種、ヨナクニウォレスブユ(ヨナクニムナケブユ)S. yonakuniensisというのが載っている。サツマツノマユと同じ絶滅危惧種ⅠB類で、日本では与那国島のある山沢の、ただ一つの湧水源周辺にしかいない(国外では台湾のある一か所)。しかもその沢は、湧水源から10m下流にダムが作られてしまい、結果その10mの流域だけが国内唯一の生息地になってしまった(ブユの幼虫は流水中でしか生存できず、ダムのような止水がいくらあっても住めない)。この種は国内で似た種が他におらず、生物地理学的にかなり貴重な種であるが、当然、そんなこと言った所でたかがブユなので保護もされない。
与那国島も現在環境の悪化が進行しつつあり、いずれ自衛隊基地が作られるという話もある。大きなヨナグニサンやマルバネクワガタは、それでも法律や条令でどうにか保護しようという動きがある。しかし、ヨナクニウォレスブユの事が話題になった試しはないし、今後もならないので、この虫も遠からぬ未来にサツマツノマユの後を追うだろう。
だから、せめてこいつだけは、滅ぶ前に生きた姿を写真に残しておきたいと常々思っている。国の絶滅危惧種なのに、いまだ生態写真すら存在しないのである。仮にこの先この虫が滅んだとして、体をバラバラに分解したパーツのみ描かれた記載文以外にこの虫の生時の姿をしのぶ術がないのは、あまりにも悲しい。


高岡宏行 (2002) 南西諸島におけるブユの分類, 分布および生態 : ブユの採集, 標本作製, 形態観察, 同定ガイド。衞生動物 53(Supplement2), 55-80

1382.jpgアキヤマアカザトウムシIdzubius akiyamae。下甑にて。

ものすごく奇怪な生物だが、暖地の森では別に珍しくない。しかし、見つかるのは例外なく石の裏に剥製のように張り付いて動かない姿。普段はいったいどのように活動して、どんなものを食っているのか全く分からない。

1379.jpgたぶんテングサシガメ一種。下甑にて。

じめじめした森の倒木裏にいる。とにかく地味で、ありがたみもないような風貌。

1375.jpgオオシワアリTetramorium bicarinatum。下甑にて。

開けた乾燥地に営巣し、特に人間の荒らした場所を好む。人に近しい場所に住むため、物資に紛れて世界のあちこちに運ばれ、定着してしまっている。

遭遇頻度とコロニーサイズの割に、めぼしい好蟻性生物がろくにつかない。アリヅカコオロギすら採らせてくれない役立たず。本土にいる同属のトビイロシワアリT. tsushimaeが、巣内に多様な居候を有するのとは大違い。
なお、いないはずはないが、下甑でトビイロシワアリはまったく見かけなかった。

1376.jpg先日、ほんの一瞬だけ行った下甑島。人生初めて到達した、暗雲渦巻く島。

売店や飲食店が恐ろしく少ない。いつもみたいに「宿を食事つきで取らず、その辺で適当に粗食を買い食いしてしのぐ」やり方が通用しない、過酷な旅だった。
そんな島にやってきたのには理由がある。アリの巣をほじるため、そして例によって精霊をデレさせるためである。

1238.jpgキノカワハゴロモ一種Atracis sp.。台湾にて。

似たものは日本にもいる。成虫は樹皮にそっくりな姿で樹皮に張り付き、なおかつ影を作らないので発見しにくい。この仲間の幼虫は地下で木の根に食いついており、ほぼ必ずアリをともなうようである。

1210.jpgヤエヤマエボシハゴロモTonga yaeyamanaかその近縁種。台湾にて。

日本では南西諸島で見られ、各種の樹木につく。とんがり鼻が奴の自慢。日本本土で見かけるアオバハゴロモよりずっと大型。

1245.jpgしかしそれをはるかに凌駕する超巨大ヤエヤマエボシハゴロモが、台湾の桃園空港に生息する。この空港のコンコースの一角に、現地の大学だか博物館だかの協力で、台湾を代表する昆虫の巨大模型が何体も並べて展示してあるのだ。その中にたまたま本種がいた。展示されていた模型の中で、唯一今回現物を見た奴なので、写真を撮った。

なお、この空港コンコースは常時観光客でごった返していたが、なぜか巨大昆虫軍団の正面にかぎり人はまばらだった。