1450.jpgアメイロオオアリ一種Tanaemyrmex sp.を捕らえたホウシグモ一種。マレーにて。

一般に徘徊性クモ類は、どんな分類群でも餌としてアリ(特に働きアリ)を好まない。しかしホウシグモ科Zodariidaeは、非常に高頻度でアリを捕ることで、海外ではよく知られる。種によっては明らかにアリのみ特異的に襲い、そうした種は行動的に非常に洗練された戦法で相手の息の根を止める(Pekár 2004) 。

すなわち、待ち伏せ奇襲をかけてアリの体に一瞬噛み付き、すぐ逃がすのである。普通の徘徊性クモ類は、獲物に飛びついて噛み付くと、逃げられないように決して離さない。しかし、アリのスペシャリスト捕食クモは、そのまま逃げられるリスクを負ってまで、捕らえた獲物を一時手放す。アリのスペシャリスト捕食クモは、概して体格が小柄で、なおかつ頑丈でない。アリは非常に反撃能力が高い生物なので、ずっと食いついたままだと断末魔の反撃を受けてこちらが致命傷を負いかねない。だから、反撃を避けるために、一方的に殴ってから逃げる卑怯技を使う。
解放された獲物はパニックと怒りで暴れまわるが、速やかに毒が回って、大抵は遠くへ逃げることなくその場で事切れる。少し離れてその様を見守っていたクモは、獲物が完全に沈黙したのを見計らって近づき、とどめを刺してから吸収する。ホウシグモ科のほか、カニグモ科とハエトリグモ科、さらに造網性との境目が曖昧だがミジングモの仲間も、アリ専の種ならこれをやる。

この大型種は、大きなオオアリのワーカーを好んで襲うようだった。しかし、何回か狩りの瞬間を見るも、一度食いついたらずっとそのままで、手放そうとしなかった。アリ捕食に熟練していない、比較的何でも食うジェネラリスト性の高い種だったのかもしれない。そのためか、このクモはフィールドで見る個体見る個体、脚の欠けたものが多かった。

日本のドウシ・・いやなんでもない

Pekár, S. (2004). Predatory behavior of two European ant-eating spiders (Araneae, Zodariidae). Journal of Arachnology, 32(1), 31-41.



1469.jpgジャングルのゴキ。1cmほどの小型種。

1470.jpg日本のアミメヒラタゴキブリOnychostyus notulatusに似た2cmほどの種。ガラス細工のように繊細で美しい。普通種ながら、この世で一番美しいゴキを選ぶなら絶対に5位以内には入れたい奴。

マレーにて。

1464.jpgサビクワガタ一種。マレーにて。

種名を聞いたのに忘れた。樹液の出ている場所では見ず、たいてい朽ち木の隙間に挟まっているのしか見かけない。

Gnaphaloryx opacusでした。ご教示くださった方、ありがとうございます。

1449.jpg小型ミツギリゾウムシ。倒木上にいるが、小さすぎて目立たない。マレーにて。

1458.jpgセミ塔。マレーにて。

羽化をひかえたセミ幼虫が、地中から土砂を運び出して積み上げたもの。日本ではツクツクボウシなどが作る場合があるが、せいぜい数cmの高さである。これは太さ2-3cm、高さ15cm以上もある大きなもので、周囲に何本も立っていた。巨大なテイオウゼミのものと思われる。

1410_2015033023281897e.jpgシマカ属。好む好まざるに関わらず、東南アジアのフィールドでは皆が世話になる相棒。

今回の遠征は、恐ろしく蚊が多かったので少々用心した。数が多いのに加えて、活動パタンもいつもとは異なっているのが気になった。通常、熱帯でのジャングルでシマカが一番活動するのは日中で、特に夕方は一番激しく人間を襲う。反面、日没後はパッタリと攻撃が止み、虫除けなしでもまったく蚊に刺されないほどである。熱帯は夜になると気温が下がって涼しくなるため、活動しにくくなるのかもしれない。
しかし、今回の遠征では日が落ちても変に蒸し暑い日が続いた。そのせいか、夜中でも平気でシマカが活動しており、油断していて何カ所も食われてしまった。

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夜間灯火に飛来した、緑のセミDundubia sp.。マレーにて。

日本のヒグラシと同大の普通種。日没直前、「ギーーーヨ、ギーーーヨ・・」と、面白みの欠片もない声で延々鳴き続ける。美しい体色は生きている時だけのもので、死ぬとたちまち汚らしく変色してしまうようだ。全身緑のセミは世界中にいるが、それらは互いに近縁という訳ではない。

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1413_201503302328219bb.jpgクビレハリアリ一種Cerapachys sp.。マレーにて。

崖を掘りくずしていたら、たまたま出た。体型といい外見の質感といい、一目見て珍種ハナナガアリProbolomyrmexと思ったが、よく見たら違った。眼があるのかないのかよく分からない顔をしている。
クビレハリアリ亜科は放浪性のアリで、他種のアリの巣を襲撃して餌とするものが多い。この仲間は、今ではグンタイアリの祖先筋のように考えられている。

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ヤジリコメツキPachyderes sp.。マレーにて。

1447.jpgポケモン風。この仲間は似た種が同所的にいくつか生息する。

1451.jpgテングサシガメ一種。鼻っ面が突き出ている。マレーにて。

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ヒラタツユムシ一種。野菜のような薄くて大きな翅をもち、通称「キャベツ太郎」。

日本のクツワムシを遙かにしのぐ巨大種。夜間低木の葉裏に止まり、「フーン、フーン」と適当に相づちを打つような声で鳴く。こいつの隣で「ついにソ連がなくなるんだってさあ」などのボケをかませば、即席で漫才ユニットを結成できる。
普通、キリギリスの仲間は鳴くときに翅を立てない。しかし、こいつはスズムシのように翅を立てる。結果、音が共鳴して増幅されるため、鬱蒼としたジャングルの中でも非常によく声が通る。なお、昼間は翅を閉じ葉裏にピッタリ張り付いて休む。ほぼ広葉樹の葉と同じ外見を呈するため、動かない限り人間には発見できない。

熱帯のジャングルの夜は様々な生き物の声に満ち、静寂になる瞬間がない。その声の主の多くは虫とカエルである。こういう生き物は、原則として自分と同種の仲間が発する声の音域以外がよく聞こえていない。だから、彼らは人間が思っているよりは遥かに静かな夜を過ごしているであろう。

1448.jpgハエトリ一種。モヒカン頭。マレーにて。

サイクロップスゴミ

1399.jpgヒトツメアオゴミムシChlaenius deliciolus。マレーにて。

ジャングル脇の開けた草地に転がっていた、朽木の裏にいた。日本にも同種がいるが、(俺の中では)理不尽に珍種でまず発見できない。見た試しがない。日本の個体群は、胸部全体がオレンジになる場合が多く、より美麗。
背面の「一つ目」は、よく見ればハート型をしている。間違っても2月14日にアンアンとかノンノンとかで特集されない種類のハート型だ。

熱帯アジアでは、より南に行くほど地表性の大型ゴミムシは少なくなる。樹上性の細かい種は多く、夜間樹幹やキノコのはびこる倒木にたくさんいる。

1428.jpgヤミスズメバチProvespa sp.。マレーにて。

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夜行性なので目が巨大。複眼ばかりか単眼まででかい。

1414_20150330232823498.jpgエンマコガネ一種。マレーにて。

目がパッチリしていて特に可愛い。「トリコ」のカカさんを思い出した。

なお、こういう糞転がしの仲間が植物の葉上にいると、たいてい数時間後に土砂降りのスコールが来る。そのメカニズムをちゃんと調べればイグノーベル賞間違いなしなのだが、俺を含め誰一人調べない。

1408_2015033023270007d.jpgアリモドキゾウムシCylas formicarius。マレーにて。

悪名高きサツマイモの大害虫。日本にはもともといなかったが、沖縄の各島や小笠原に侵入し帰化している。一度侵入を許してしまうと根絶は難しいらしい。こういった虫のせいで、沖縄から生のサツマイモを本土に持ち帰ることが禁止されている。東南アジアでは普通におり、雑草のヒルガオ類から発生している。

1409_20150330232701edb.jpg害虫なのはさておき、虫そのものは物凄く綺麗でかっこいい。

1412_2015033023282037d.jpgミツギリゾウムシ一種。マレーにて。

日本のホソミツギリCyphagogus signipesに似た種で、夜間倒木上に現れる。パーツを組み違えたプラモデル感がすさまじい。その朴訥な雰囲気に似合わず獰猛な性格で、木材に穿孔したキクイムシを襲って食う。
日本にもこいつみたいな小型のミツギリ類がかなりの種数生息するが、なぜかどれも滅多に見られない珍種。


関係ないが、ここ数日季節外れの寒さが続いている。長野では今になって雪が降ったらしい。最近3-4年、4月に入ってからの気温が異常に低く、どこの初音島かというほど桜がいつまでも散らない年があった。
一昨年などは満開の桜の上に雪が積もり、その光景はテレビやネット上では「素晴らしい」「幻想的で美しい」などと賞賛されていた。しかし、俺にとってはあんなの迷惑以外の何物でもないクソなさまだ。4-5月の異常低温は、その後の年内の虫の発生時期を盛大に狂わせるから。おかげで、ここ10年間に自身で蓄積した情報に基づく各種昆虫の発生時期予測が、まるであてにならなくなってきた。

1420.jpgザトウムシ一種。マレーにて。

地面より高い所で見ることが多い種。脚が短く、どちらかというとダニに見える。ザトウムシがダニに近縁な生き物であるのが、よく分かる。
日本にいないグループなので、和名はない。ついダニザトウムシと呼んでしまうが、既にこれとはまったくの別分類群でさらにダニライクな仲間に付いている名前なので、もっといい名前がないか考え中。ザトウムシの研究者でもないのに。

1418.jpgゾウムシ一種。マレーにて。短足で可愛い小型種。一瞬シュロゾウムシあたりの仲間かと思ったが、てんで違う模様。

1427.jpgルリオビクチバ一種Ischyja sp.。

この仲間は日本には恐らく元々分布しないが、南方からしばしば飛ばされてくる。東南アジアでは普通種で、夜間灯火によく飛来する。汚いものにたかる性質が強く、夜間ジャングルを歩くと地面に落ちている腐れ果実やウンコに止まり、吸っているのを見かける。
この時に下手に刺激すると突然空へ飛び上がり、その直後ヘッドライトの灯りに惹きつけられてこちらの顔面めがけ突撃してくる。ウンコをなでくり回した脚でこちらの顔に掴み掛かってくるので、その時は全てをかなぐり捨てて逃げる。

1429.jpgアリそっくりなキリギリスの幼虫。マレーにて。

アリじみているのは幼虫の時だけ。攻撃的かつ味の悪いアリに、ただ外見を似せて身を守っているだけなので、アリとは生態的に一切関係ない。
おびただしい種数のいる直翅目昆虫の中で好蟻性を獲得したのは、アリヅカコオロギの仲間だけ。考えたら、それも妙な話だ。

1414.jpgオバボタル系のホタル。マレーにて。

昼行性で、日中さかんに飛ぶ。この手のホタルはどうせ光らないと思っていたが、捕らえてみると申し訳程度の小さな発光器がちゃんと付いている。嫌がらせを受けた時などに、仕方なく光るようである。

1406.jpgザトウムシ。マレーにて。なぜか背負う仏舎利塔。

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マレーシアのジャングル。いつもマレー遠征では訪れる現地の大学演習林だが、一年半ほど空けていたのでとても懐かしい。

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フタバガキなどが優占する典型的な熱帯林で、かなりの大木もある。時折、理由もなく巨大な太枝が折れて落ちてくることがあるため、それなりに危険。今回も滞在末期にでかいのが落ちてきて、ジャングル内にある宿泊施設の一部が損傷した。

1417.jpg場合によっては大木そのものが根本から傾いて倒れてくるため、下手をすると潰されて死ぬ。特に大雨の時に倒木は発生しやすい。発生すると、たとえ潰されなくても道路が塞がって通行止めになったりして大変だ。熱帯の土壌はやせているため、大木に見えても根は貧弱で簡単に倒れてしまう。
車で遠方に日帰りで出かける場合、午前中は晴れていて普通に通れた山道が午後には激しい夕立に遭い、倒木が発生して道を塞ぎ、帰れなくなることがある。特に、調査最終日で空港まで戻らねばならないときにこういうことがあると、かなり肝を冷やす。