1678.jpgシイノトモシビタケMycena lux-coeli。伊豆大島にて。

雨がしばらく降っていなかったそうで、元気がない。もっといい時期に来れば、群生してそれは明るいらしい。暗闇でもデートアライブ12巻が余裕で読めるほど明るいらしい。

猫足の墓

1676.jpgエゴノネコアシアブラムシCeratovacuna nekoashiかカンシャワタムシC. lanigeraのどっちか。後者かもしれない。三宅島にて。

ススキの葉裏にびっしりたかっていた。この仲間のアブラムシは、天敵と戦うために作られる「兵隊」と呼ばれるカーストを持つ。兵隊は幼虫のまま成長が止まってしまった状態の個体で、敵が来ると強靱な前脚で組み付いたり、額のツノや口吻を突き刺して殺す。戦いだけでなく、コロニー内の排泄物の片づけもやる。
エゴノネコアシは、季節によりエゴノキに寄主転換する。その際に作る虫コブの形が、ネコの手足に似ている。

猫足といえば、古いアニメ「ハイスクールミステリー学園七不思議」は恐ろしかった。何が恐ろしいかって、本編ではなく次回予告がものすごく恐ろしいのである。知らずに夜中一人であれを見たら、10人が10人必ず漏らす。

で、でたーw黒丸奴www

1687.jpgまさか、クロマルハナバチBombus ignitus程度のものを見て声が詰まるほど感激する日が来ようなど、20年前くらいの俺には想像も出来なかった。

コマルハナバチと凄まじくそっくりで、慣れないとまったく区別できない。腹部の毛並みが刈りそろえたようになだらかか、ボサボサしてるかで区別する。前者がクロマルで後者がコマル。
また、コマルは基本的に盛夏前にはコロニーを解散して姿を消すため、平地で盛夏以後黒いマルハナを見たならば、ほぼクロマル認定してよい。ネット上でクロマルハナバチを画像検索して出るハチの写真の半分くらいは、コマルの同定間違い。

かつては日本の本土産マルハナの代表格だったはずだが、近年よくわからない原因で全国的に激減し、今では一夏をかけて探さねば見つけられない程。シカの食害に伴う蜜源植物の減少や気温上昇など、幾つか考えられる原因はあるが、似たような生態を持つであろうトラマルやコマルがそこまで不可解な減り方をしていないので、謎。

野生個体が減る一方で、最近クロマルはハウス栽培作物の受粉をさせる目的で、コロニーが市販されている。それまで受粉目的で飼育されていた外来のセイヨウオオマルが、逃げ出して野生化するとあまりに有害なため、在来種としてクロマルの使用が推奨されているのである。
しかしこのクロマルにしても、北海道など国内でも元々分布しない地域がある。そんな場所で逃げ出して野生化したら、セイヨウと同じ事になってしまう。また、クロマルは本州から九州の各地において、多少とも遺伝的に分かれた個体群になっているらしい。販売用に養殖されているのは特定地域の個体群由来のもののはずなので、本州でも下手に飼育個体を逃がせば在来個体群に何らかの悪影響が及びかねない。使用には、細心の注意が求められる。

四国にて。

アッー→ アッー↑ アッ→

1680.jpgエエエ、イイイ、オオオ、アアア、エエエ、ウウウ、アエイオウ

「ンッンフッウフッウククフッ」キキキ♪「オップェー」

パッパパッパパッ マンママンママッ・・・

1679.jpgクロマルイソウロウグモSpheropistha melanosoma。三宅島にて。

他種のクモの巣に勝手に侵入して、餌を盗み取る泥棒グモの一種。日本だけでも数種いて、種によりそのふるまいは多少とも変わる。寄主の巣にかかった他の虫を盗むもの、糸を食うもの、はては居候とは名ばかりで寄主そのものを暗殺して食うものまで。
クロマルは、寄主が巣で守り孵化させた子グモを好んで食い漁る。その寄主としては、オオヒメグモParasteatoda tepidariorumが選ばれる事が多い。

このクモは原則として珍種だが、三宅島では多かった。海岸の切り立った崖の、風化岩の隙間にオオヒメグモが多く営巣していたため。

1674.jpgイソアシナガアリAphaenogaster osimensis。三宅島にて。

1677.jpg本州以南の太平洋側の海岸ぱたに限って生息する奇妙なアリ。海岸沿いならどこにでもいるというものではなく、割と珍しいものに思える。岩礁と浜辺が混ざったようなところで見かける。波間に打ちあがった動物の死骸が主な餌であろう。
先日、短期で出向いた伊豆諸島では比較的普通に見た。しかし、これに特異的に寄生する好蟻性生物は知られておらず、今後も見つからないと思う。

1675.jpg伊豆諸島には、驚くことにアリヅカコオロギがいる。おそらく主要な島にはもれなく分布し、今のところ南限は青ヶ島とされる。翅のないあの虫が、どうやってこれら島々に満遍なく分布を広げられたのかは興味深い。ただし、それらの種は同定されていない。
この遠征では、本土ではまず寄生を受けないような少し変わったアリの巣から、立て続けにコオロギが採れた。火山性地質に加え、貧弱なアリ種組成という特殊な条件化で、コオロギはそのような暮らしをせざるを得ないのかもしれない。


1681.jpg三宅島の海岸は切り立っており、場所によっては真水が染み出て海へと流れ出ている。この島のこういう環境に特異的に生息する、絶滅寸前のハエがいるというので探したが、全然見つからない。2000年代初頭の噴火によってまるきり生息環境が変わってしまい、以後見つかっておらず、生息調査すらなされていない。たかだかハエなので、どこかには絶対生き残っているはずだが・・。少なくとも、もう一つの産地である能登の浜よりはずっと確率が高そうに思える。
海岸に湧き水が出ていることが、それの生息に絶対必要だという。今回、手違いで半日しかこの島にいられなかった。なおかつ海岸沿いのどこに湧き水が出ているなんて全然知らず、行き当たりばったりで行ったので、仮にいたとて見つからないのも無理はない。また来シーズン出直したい。

1682.jpg
カニミジングモPhycosoma mustelium。福岡にて。

アリを専門に食うが、アリの範疇であれば標的種は問わない。小型のアメイロアリから大型のオオアリ類まで、何でも食う。日没後、樹冠に張り付き待ち伏せする。アリが寄ってくると、瞬間的に糸束を投げつけて拘束する。
本来、仕留めた獲物を吸収する際には、周囲のアリどもが干渉してこないよう、糸で宙吊りになる。しかし、この日は強風だったため、止むを得ず樹皮下に獲物を引き込んで食事するそうだ。

1670.jpgオス。何故か頭が陥没するのが特徴。しかし、本種をしてカニとはどういう意味なのか。

今の居住区周辺は、宅地化があまりに進み過ぎていて、好蟻性類がさほど身近にいない。アリヅカコオロギさえ非常に採りづらい。いかに長野が、その手の生物の豊富な場所だったかを、身にしみて実感する。初夏ならば、半日裏山を徘徊するだけで40種くらいの居候は余裕で採って来られたのに。

1666.jpgササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica。葉裏にびっしりとたかる。九州にて。

1665.jpgササにつくアブラムシ。「兵隊」という、外敵との戦闘に特化したカーストを持つことで知られる。長野ではよく見たが、九州では初めて見た。

1667.jpg案の定、ゴイシシジミTaraka hamadaの幼虫がいた。ゴイシシジミは、兵隊を持つアブラムシに高度に依存した蝶。小さいながら幼虫期は生きたアブラムシしか食べない、獰猛な奴だ。日本産蝶類中、幼虫期の全てを生肉のみで過ごす種は、少なくとも在来種ではこれだけ。
兵隊持ちアブラムシは日本に何種かいるが、どれも年により発生消長が激しい。ある年ある場所にいきなり出現し、翌年は絶えるということがしょっちゅうある。だから、それに伴いゴイシシジミも突然現れたり消滅したりする。ゴイシシジミは、兵隊持ちアブラムシの追っかけを永遠に続けていく。

九州にはササではなく竹につくタケツノアブラムシというのがいて、一度でいいから見てみたい。ものすごく巨大かつ兵隊がカッコいいのである。
しかも、竹の葉じゃなくて幹にびっしりたかるらしい。あんなに硬い竹の幹から、よく汁が吸えるものだ。

空間震発生現場候補地

1668.jpgオオコバネナガハネカクシ一種Lathrobium sp.。九州にて。

地下性昆虫。ある場所の地下約50cmの砂礫空隙から出てきた。九州ではあちこちから出るものの分類が遅れているため、九州で見つければ基本的に新種である可能性が高い。この個体もきっとそう。

国がとうの昔に結論付けた「ある摂理」が、根本から覆りかねない可能性を我々人類に突きつけた存在。もしかしたら、半世紀前にロストした精霊を現世に呼び戻せる日がくるかもしれない。要精査。

1673.jpgケムネチビゴミムシ一種Epaphiopsis sp.。九州にて。

メクラチビゴミムシの親戚筋で、結構種数の多い属。しかし、種によっては眼がないものの、大半の種はちゃんと眼が付いている。沢で土木作業していると、わりと浅い地中から出てくる。そして、出るときは多数の個体が一度に出る。

ころころしてて可愛らしい虫ではあるが、本命のメクラチビゴミムシを求めているときに次から次へ出てこられると、正直邪魔な奴。

1669.jpgギンボシザトウムシPseudogagrella amamiana。九州にて。

南方系。沖縄に行くと、もっと金属光沢が強くて美麗になる。

1671.jpgクサアリモドキLasius spathepusの新女王。福岡にて。

結婚飛行後、翅を落としてトビイロケアリL. japonicusの行列を探し、そこにしれっと紛れる。そのまま行列を辿って巣内に侵入し、そこの女王を亡き者にしてコロニーごと乗っ取るのが最終目的。
詳細は不明ながら、ケアリ系の社会寄生種の新女王は、自らが宿主女王と一騎打ちして倒すのではなく、そこの巣のワーカーを懐柔した末に自分の生みの親を殺すよう仕向けるらしい。自分は手を汚さない卑怯者。

1672.jpgクサアリモドキの新女王は、トビイロケアリの行列に踏み込むと当然ながら攻撃を受ける。しかし、決して反撃しない。
特有の幅広く強靭な脚は、宿主ワーカーに噛まれても容易に食いちぎられない。また、体表はスベスベで噛みつき攻撃を無効化する鉄壁の鎧。うまいこと門番どもの攻撃を受け流しつつ、新女王は敵地への侵入を果たす。

しかし、その後首尾よくコロニー乗っ取りに成功する確率は、恐ろしく低い。

精霊conference

1662.jpg16631664今年、上半期でデレさせた精霊の、まだどこにも公開していない写真。すべて国がレッドリストに載せた(には載せたが、事実上載せっぱなしの)希少動物。

興味ない人間にとっては単にキモい上ぱっとしない虫の凝集体だが、分かる人間ならば必ず二度見するラインナップではある。問題は、如何にして興味ない人間にもこいつらの素晴らしさを伝えるかだ。
撮影地は北から南まで、対象分類群は基本的に節足動物すべて(蝶とトンボと大型甲虫以外)。自力で野外から見つけ出したものが大半だが、幾人もの協力者の力を借りてようやく出会えたものも決して少なくない。協力者はいずれも、その分類群に関して並々ならぬ知識と経験を持つ、ラタトスクのクルー達である。

現時点で既に数十種を撮影し、中には史上初めて生きた姿が撮影されるものも含む。しかし、環境省レッド掲載種は蝶とトンボと大型甲虫を大雑把に差し引いても700種近くいる。全部は不可能でも、可能な限りそれらをより広くカバーし、一種でも増やす努力をしなければならない。
精霊の探索は、自分の本業たるアリの巣いじりの一環でなされることが多いため、あまりにもアリと関係ないハビタットにいるもの、アリ探しに使う道具設備を転用して探せないものに関しては、ほぼ探索ができていない。地表性の甲虫や土壌性のクモゲジは比較的充実しそうだが、水生昆虫がほぼ手を付けられていないのでどうにかする必要がある。

また、蛾の仲間もほとんど仕留められていない。現在、蝶には及ばないまでも蛾はかなりの種数がレッド入りしている。しかし、蛾はただでさえ出会いに偶発的要素が大きい仲間だ。まして希少種なら、いる場所に行って探したとてそうそう見つけられない。灯火をたく必要もあるため、そういう設備なしに見つけ採りで何でも探すスタイルの俺には分が悪い。さらに悪いことに、希少種の蛾の多くは外見による種の識別が殺人的に困難なため、仮に野外で見つけても本当にそれが目的の種なのか判断できない。
結果、樹液の出てる木に必ず来るコシロシタバと、昼間飛び回って嫌でも目に付くベニモンマダラくらいしか仕留められていない。水中に生えるアレを食うあいつとか、湿地にいて鼻っつらが仰け反ったあいつとか見つけられたら、どれほど幸せだろう。

これから、さらにいろんな人々の助力を得なければおそらく目的は達成できそうにない。しかし、だからといってあまり簡単に精霊を見つけ出したくもない。ただ探して見つける行為をベルトコンベア式作業にせず、一種一種ごとに出会いへ思い入れを込めたい。

1550.jpgキオビベッコウBatozonellus annulatus。福岡にて。

地面に巣穴を掘り、大形の造網性クモを蓄える。かつては普通種だったが全国的に激減しており、今では一夏をかけて探さねば見つからなくなったと言われる。
しかしそもそも、かつての頃もこれをそんなに普通に見た覚えはない。元々いるところにしかいない生き物だったと思う。

1558.jpgハラクロコモリグモLycosa coelestisを狩ったアカゴシベッコウAnoplius reflexus

海浜でよく見かける種。徘徊性クモを狩った後、地中に巣を掘ってそこに蓄える。必ず狩猟が営巣に先立つ。

1559.jpg半ヤラセで麻酔行動を再現させた。クモの背面から取り付き、前から一番目と二番目の脚の間に毒バリを打ち込む。クモ狩りバチの面々は、この部分に強制(ギアス)を施す種が多いように思える。
半ヤラセと言っても、やらせるのは結構難しい。ハチはバカじゃないので、その獲物が生きて動く様をきちんと再現しないと、うまくだまされてくれない。本種の場合、徘徊グモ特有の突然ピッとダッシュして小刻みに立ち止まる動きを見せねばならない。しかし、ハチが運んでいるときにピンセットでクモを摘んで動かしても、ただ草に獲物が引っかかっているだけと判断するらしく、やってくれない。進む方角を確かめるため、一時的に獲物を放して周囲をうろつく瞬間があるため、その偵察から戻ってくる時にやってみせるとうまくいく。

1660.jpgこのハチは地面に穴を掘るが、ものぐさなので一から自力で穴掘りしたくない。大抵、すでに地面に空いている深いくぼみやへこみを利用し、そこへ獲物を引き込んだ上でさらに穴を掘り下げて巣とする。ここでは、同所的に生息する別種のハチが苦労して掘った巣穴を、主の留守中にパクッて勝手に営巣した。
地中営巣性のベッコウ類は、穴掘り中は近くの草葉に獲物を引っかけておくことが多いが、アカゴシは営巣するくぼみにとりあえず引き込んでしまう。アリなどに獲物を横取りされたくないので、地表にむき出しのまま置いておきたくないのだ。

このハチがクモを引きずって歩くとき、ごくまれにトンデモナイお荷物が後ろから一緒についてくる場合があるという。九州ではたぶん記録はないが、あまりにもアカゴシベッコウの生息密度が濃い場所なので、案外いるんじゃないかと思っている。おそらく日本で、そのお荷物がついてくるさまを野外で見たものは、史上一人か二人しかいない。

福岡にて。

1497.jpgツシマナガゴミムシPterostichus symmetricus。対馬にて。

対馬の固有種。日没後、枯れ沢にイヤと言うほど出てくる。オスはケツの先端に、二股に分かれたごく小さな突起をもつ。

1661.jpgツシマミフシヒゲブトアリヅカムシTriartiger reductus。対馬にて。

対馬に固有の好蟻性昆虫としては、おそらく唯一のもの。土壌から偶然採れた個体によって新種記載された種のようである。その珍奇な形態に加え、近縁属の生態から間違いなく本来アリの巣内に住むものであることが明らかだったが、何のアリの巣にいるのかずっと不明だった。
数年前に対馬を初めて訪れた際、偶然という名の必然によりその謎を暴くことに成功した。それに関しては、「アリの巣の生きもの図鑑」(東海大学出版会)を参照されたい。

好蟻性関連で、近日に児童書出版社の老舗「あかね書房」から、二冊の新しい本「アリのくらしに大接近」と「アリの巣のお客さん」が出版されることになった。当方、著者ではないながらも多数の写真を提供しており、まだどこにも出していない写真も少なからず掲載していただいた。詳細が分かり次第、随時情報を流したい。

1498.jpgツシマカブリモドキCarabus fruhstorferi。対馬にて。

地球上で対馬に固有の、大形美麗オサムシ。しかし生息地では珍しくも何ともない。夜に住宅街の裏山を徘徊すれば、一匹も見ずに帰ることなどあり得ない。日没後、林内ににしゃがんでいれば、どこからともなくカサカサ音がする。それは8割方、こいつかツシマオサムシが落ち葉を踏む音。

1499.jpg
肉食で、特にカタツムリが好物。食らいついて消化液を口から出し、肉を溶かしてすする。小さなカタツムリならば、強力な大アゴで殻を噛み潰す。

1501.jpgツシマサンショウウオHynobius tsuensis。対馬にて。

幼体を見るのは容易いが、親を見るのは時期を選ばないと厄介。

1527.jpg
ミカドアゲハGraphium doson。福岡にて。

ずっと会いたかったものに、やっと会うことが出来た。何のことはない、毎日出入りしている場所のすぐ脇にいた。長らく東日本から脱出したことのなかった身としては、昔から図鑑でしか見たことのない架空の概念であった。はっきり言って、こいつのために九州に来たと行っても過言ではないほどに出逢いを切望していた。

しかし、この産地は2,3年以内に焦土と化すことが決まっている。

1551.jpg九州にて。

いきなり見つけて、ひっくり返るほどびびった。既知産地だったのだが、そこが既知産地であるという前情報一切なしに別目的で出かけて、たまたま見た。
九州では、意外に広く薄く生き残っているものらしい。全都道府県中、蝶の土着種数が最多である長野でさえ、今いるのかいないのか分からないくらいの減りようなものが、あんな適当な所にまだ普通にいるというのが信じられない。

情けないことに、野外で生きたものをほとんど見たことがない。あんなに飛ぶとき羽音がうるさい生き物だとは知らなかった。

1528.jpgモンゼンイスアブラムシNipponaphis monzeni。福岡にて。

イスノキに取り付くアブラムシの一種。初夏に一匹の女王アブラムシが、枝先に大きな袋状の虫コブを形成し、その内部でどんどん幼虫を産む。虫コブの表面に事故で風穴が空くと、幼虫が穴の周囲に集まり、ドバドバ体液を放出してそれで穴を塞ぐという壮絶な習性を持つ。

1549.jpg
ガガンボモドキ一種。福岡にて。

婚姻贈呈が見たくてわざわざ夜中遠出して行ったが、完全に無駄足だった。あれは無理だ。日中は鬱蒼とした森林内にまとまって隠れているのに、日没と同時に突然ヤブを飛び出して広範囲に散ってしまい、まったく追跡できない。しかも、とろくさい日中とは比べものにならないほど異常に俊敏で、ものすごい長距離を疾風のごとく駆け抜ける。林内で強めの灯火をたいて、人為的に狩りをさせないと絶対に観察不可能に思える。

この場所は「星がある種」の記録があるのに、どんなに探しても星のないコレしか見つからなかった。どうしても星のある奴を見つけねばならず、近年確実に記録のある東海の産地も徹底的に探したのに、そこでもこいつしか発見できない。
ここ数年、星のある奴を誰かが見たという話を一切聞かない。既に日本から絶滅しているような気がする。

1548_20150623232309d74.jpgヒメキベリアオゴミムシChlaenius inops。福岡にて。

日没後、水田で見る。最近、ようやくアオゴミの良さが分かってきた。今更ながら、目が一つの奴と、粉もの民国の奴と、ツヤのある奴が見たくてたまらない。

1556.jpgムネアカセンチコガネBolbocerosoma nigroplagiatum

日没後、芝生に潜り込もうとしていたのを引きとめた。糞転がしの仲間だが、ほとんど糞に来ない。これの生態に関しては諸説あって、結局よくわからない。

1557.jpg
ムラクモヒシガタグモEpisinus nubilus

地面や樹幹と枝葉の間に、特徴的なX字型の網を張り、その交点に定位する。ものすごく疲れそうな体制で獲物を待つ。網の接地部にのみ粘性があり、たまたま歩いてきてこれに触れた獲物を吊り上げて殺す。
高頻度でアリが餌食になると言われているが、このクモは罠にかかった生物なら何でも食うため、ミジングモ類のようなアリのスペシャリスト捕食者とは呼べない。

都内にて。

1553.jpgウエノオビヤスデEpanerchodus sulcatus

1555.jpg本州の限られた石灰岩洞窟にだけいる、地下性ヤスデ。産地では多く、洞内の床に堆積したコウモリのクソの山におびただしい数がたかる。体の色素は残っているが薄く、洞の深部にいる個体ほどその傾向が顕著。

1554.jpg配偶。ヤスデは昆虫などと違ってチンコ(いわゆるペニス)がなく、代わりに上半身の腹面にある特有の生殖器官を使い、交接と呼ばれる配偶行動を行う。オスは腹面にあるゴノポッドという小さな脚みたいなものを、メスの腹面の生殖孔に挿入する。互いの上半身を密着させる必然性から、交接中の雌雄は向かい合って抱き合う体制となる。
ゴノポッドの形態は種特異的で、基本的にヤスデの種分類や同定はオス成体の形態によりなされている。逆に言えば、オス成体を採らないことには、ヤスデの正確な種同定はできないと思っていいだろう(Takashima and Haga 1956)。

小中学校の頃、当時のある教員が「向かい合って交尾する動物は、人間しかいない」と言っていたのを覚えている(小中学校で教える事なのか否かは別として)。しかし、残念だが少なくともヤスデとカニに関してはその限りではない。



Haruo Takashima, Akiharu Haga (1956) A Contribution towards the Japanese Cave-dwelling Species of the Class Diplopoda. 山階鳥類研究所研究報告, 1(8), 329-343.

1552.jpg無眼ガロアムシ。

本州のとある石灰岩洞窟内でしばしば見かける。日本中どこでも、洞窟で見つかるガロアムシはたいてい眼を欠く傾向がみられるが、そういう種なのか地表に生息する眼あり種の地下バージョンに過ぎないのか、わからない。
これは幼虫だが、そのすぐそばに信じがたいほど巨大なメス成虫がいた。すぐ隙間に入られて逃げられたが、明らかにそいつにも眼はなかった。

本土ニスクス

いた・・!!
1514.jpg

と思ったが、よく見るとおかしい。明らかに体表が顆粒に覆われてゴツゴツしている。目的の精霊は、文献記述によれば平滑だという。つまり、これは別物であって、目的のアレではないということになる。

しかし、最近出た「日本産土壌動物第二版」を紐解くと、どうにもうまくいかないのである。ナガワラジムシ科なのは絶対間違いないのだが、その先の検索表に該当する雰囲気のものがない。ナガワラジムシ科内以降の検索表は、胸部背面に縦の突起があるか、突起がないかで分かれており、あるものは問答無用で普通の地表性種になってしまう。検索表に従えば、目の退化した地下性種はすべて「突起がない」になる。この程度の顆粒は、突起のうちに入らないのか、それともまったく得体の知れない未知のものを採ったのか。
地下性種ツノホラワラジムシは、検索表では「突起がない」に該当する種だが、後ろの図版を見ると明らかに体表に顆粒をもつ。あの検索表において、顆粒が突起の範疇に入るか入らないかにより、今回この生物を見つけたことの意味合いは全然変わってくる。

この生物は、「あの穴」からせいぜい1キロ程度しか離れていない同じ山の沢から出したものだが、もしこいつがアレでないとするならば、同所的に複数種の地下性ナガワラジが分布するということになる。いや、近接しながらもおそらく分布は重複せず、住み分けて生息しているであろう。

結局、散々沢を掘るもこの突起まみれの奴が2匹出ただけだった。こいつの正体は何だ?ちゃんと精霊をデレさせることができたのか、今もよく分からず悶々としている。違うならば、またあそこに行って探さねばならなくなる。
しかし、また行くにしたってあの山はとにかく遠すぎる。次に行けるのがいつのことになるやら分からないし、行ったところで採れるかどうかという問題もある。「あの穴」の至近には2本の山沢があるが、どちらも源流部の雰囲気があまり良くない。掘れば簡単に再発見できる算段でいたのに、同所的に複数種が住み分けて分布しているとなれば、難易度は格段に上昇する。この件は、しばらく保留にするしかない。

なお、あの図鑑のP1005 「ナガワラジムシ科の属・種への検索」の上方、「腹部は胸部と比べ明らかに細い」と「腹部は胸部と比べわずかに細い」のキャプションは、絶対あべこべだと思うのだが・・・正誤表は出ているのだろうか。

イーハトーヴ邪鬼王

1515.jpgとても恐ろしい姿の生物。眼がない。

岩手の、「あの穴」を抱する山の沢を地下50cmほど掘り、砂礫空隙から出した。この手の動物はこれまでも本州中部から九州にかけて見つけており、いずれも洞窟から出していた。理論上、地下浅層から出るのは当然なのだが、こうした採れ方をしたことがほとんどない。
「あの穴」がまだ死んでいなかった頃は、きっとそこでも発見できたのだろう。こいつが出ると言うことは、近くに必ずアイツがいるに違いないということである。

1541.jpgフクドジョウBarbatula barbatula。水の綺麗な池や小川に住む。ジェット機のように高速でスパーッと水底を疾走する。何がどう違うのか知らないが、ドジョウとは別分類群の生物。北海道にて。


1543.jpg
今回の北海道遠征では、帰る途中に岩手経由でひとり寄り道した。調査がてら、この地で過去50年近くにわたり消息を絶っている、かの純白の精霊をデレさせねばならないからである。ずっと前からやろうと思っていたことを、ついにやる時。