アントリオワーム

1752.jpgウスバカゲロウの幼虫。吸血を好む。

1751.jpg宿舎周辺の、乾いた砂地に多い。蟻地獄は、いかなる地の果てへ行こうとも、どこの国のものも全く変わり映えしない。いや、本当は変わり映えするのだが、少なくとも適当にほっつき歩いている分には、変わり映えしない種しか発見できない。

カメルーンにて。

強襲するワーム

1915.jpgツノトンボの幼虫。カメルーンにて。

日本産ツノトンボ類の幼虫はおおむね地表性で、草の根際などに隠れて獲物を襲う。しかし、南米やアフリカ産種の幼虫には、樹上に生息するものがいる。葉の表面にへばりつき、顎をめいっぱい開いて獲物を待つ。獲物が通りかかって頭を踏みつけると、瞬時にトラバサミが閉じる。
体は扁平なうえ、体のこばには毛が密生している。体色がコケっぽいのもあいまって、そこにいても生き物がいるという感じが全くしない。

1886.jpgハキダメギクGalinsoga quadriradiata。カメルーンにて。

日本でも道端でおなじみの雑草。いくら地球を半周した地の果てと言えど、人の居住区周辺に見られる動植物は、日本のそれと大差ない。

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1759.jpgカメルーンのカメムシ。とは言っても、民家周辺の畑にいるようなものは、日本の畑周辺で見かけるようなものばかり。まるで変わり映えしない。

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1758.jpgカメルーンのバッタ。とは言っても、民家周辺の畑にいるようなものは、日本の畑周辺で見かけるようなものばかり。まるで変わり映えしない。

1894.jpgカメルーン中部にある村。調査拠点のひとつ。

1928.jpgこの村への道のりはとても険しい。舗装道路は軒並み陥没している。舗装していない道路は土がえぐれて深い溝だらけで、何度も車のタイヤがはまりそうになる。到着後は村長のところへ挨拶に行き、しばらく調査で滞在する旨を伝える。こういうことをしておくだけで、我々余所者に対する村人たちの心象は全然変わる。
村人たちは貧しいながらも楽しくつつましく生活しており、平穏を好む人々がほとんどだった。前情報から、もっとすさんで危険な国だと思って警戒していた身としては、大いに拍子抜けだった。もっとも、中にはがめつい年寄りもいたりするので、手放しで気を抜ける訳ではなかった。

地元のガイドを雇い、村周辺のジャングルに入る。そこで朝から夕方まで重たい調査道具を背負い込み、延々何時間も果てしなく歩く。目的のアリはあちこちを放浪しており、いつどこに出現するか分からない。少しでも遭遇する機会を増やすには、ひたすら歩き続けるしかない。

1895.jpgカメルーン到着初日に泊まった、地方都市の宿。名峰カメルーン山が見える。

空港から車で西へ一時間強。人間の密集する都市部はとにかく治安が悪く、筆舌に尽くしがたいほど危険なため、飛行機到着後はさっさと逃げるように離れねばならない。深夜着だったが、車で移動する際も道をちゃんと選ばないと拳銃強盗に遭って殺される。現地での運転に明るい専属ドライバーを雇い、安全な道を走ってもらった。
田舎町は首都よりかは遥かに安全だが、それでも外国人が表をフラフラ徘徊できる雰囲気の場所ではない。外出は常に車を使い、それ以外の時はずっと部屋に籠もっていなければならない。カメルーンは法律で同性愛が禁止されている関係で、一部屋に男複数人泊まることが歓迎されない。今回、同行者は男複数人だったため、各人が部屋に一人ずつ入ることに。

1684.jpgなぜか部屋の中に花壇だか畑がある斬新な間取り。この畑のコンクリート枠が朽ちており、床に容赦なく土がバラバラ落ちてきた。
カーテンは常に閉め切っていた。下手に外国人が中に泊まっていることを外の通行人に気取られると、いろんなトラブルの要因になるから。実際にはそこまで危険な地域ではないことがやがて分かったが、人柄も風習も分からぬ所に初めて行くときは、とにかくあらゆる事態を想定して振る舞わねばならない。

1685.jpg何もすることがないので、部屋のベッドの下を覗いたりタンスの引き出しを全部引き出したりして小虫を探した。ユウレイグモと、カンザイシロアリの糞しか見つからなかった。
次の日、車で丸一日の悪路を行き、ようやくジャングルの入口へ。

夏麦論

カメルーン調査の写真整理が、ようやく一段落した。自身の研究の核心に触れる部分はまだ明かせないが、クリティカルでないところから少しずつ調査成果を公開していこうと思う。

1683.jpg経由地トルコ、イスタンブール。東京から気が遠くなるほどの時間飛行機に乗って、ようやくたどり着く。機内でサマーウォーズを初めから終いまで3周くらい見てしまったが、サマーウォーズ2,3周程度では全然つぶせないくらいの時間がかかる。しかし、それだけ時間がかかってもここが終着ではないのがつらい。ここからさらに何時間もかかって、カメルーンの主要都市ドゥアラまで行かねばならない。そのため、今度はベイマックスを2,3周する苦行が始まるのだ。


すこし前に、日本であれほどバカみたいに騒いでいたトルコ風アイスは、なぜ消えてしまったのだろう。

Invisible Date

1899.jpgフシボソクサアリLasius nipponensisが護るクヌギクチナガオオアブラムシStomaphis japonica。長い口吻を、これから樹幹に突き刺す。

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1902.jpg適地を見つけると、まず脚を踏ん張る。そして、それまで股ぐらに収めていた長い口吻を前方へ苦労して伸ばす。腕立て伏せするように上体をそらし、少しずつ伸ばす。
アリの加護があるとはいえ一番無防備な瞬間なので、少しでも異変を感じると以後の作業はやめる。

1903.jpg完全に口吻を真っ直ぐ前に伸ばすと、先端部分を聴診器のごとく幹表面に数回あてがう。そして、ある一点に口吻先端を固定すると、ゆっくり穿孔し始める。しなしなの口吻で、よく硬い樹幹に穴を穿つものである。もちろん、途方もない時間を要する。

1904.jpg二時間後。手前の地衣類の位置関係から、最初よりも前進しているのがわかる。

1905.jpg三時間後。これだけかかって、まだやっと口吻全体のうち三分の二が刺さった状態。完全に口吻の根本まで埋めるのに、最終的に5時間くらいかかった。

クチナガオオアブラムシは、民家周辺の公園や裏山でごく普通に見られる。しかし、日本に数多いる昆虫学者の中で、この超弩級普通種の虫が自分の体長より長い口吻を硬い樹幹に突き刺す様を、初めから終いまで見届けたことのある者が何人いるのか。

大学学部時代、天文学の教授が「流れ星は、理論上2時間に一個は必ず夜空を流れる。生まれて今まで一度も流れ星を見たことのない奴は、生まれて今まで一度も夜空を2時間眺めたことすらない奴だ」と言っていた。小さな油虫に、流れ星を思った。

こうもり猫

カワラゴミムシのいる河原を夜歩くと、あちこちで白く光る目がこちらを監視している。野良猫がとても多く生息するため。
猫は嫌いなので、あまり相手にせず先を進むと、数十m前方の地べたに奇妙な猫の目が光っているのに気づいた。他の猫どもと違い、白ではなく真っ赤に目が光るのだ。しかも、その正体を見定めるべく近寄ろうとしたら、その赤い目が突然垂直跳びし、そのまま闇夜の空へと消えてしまったのである。


今のは何だったんだろうか。羽の生えた猫だったんだろうか。そう思いつつ更に先を進むと、また数十m前方の地べたにさっきの赤い瞳が煌々と輝くのを認めた。
今度は慎重に足音を忍ばせてそっと近づき、ギリギリの所でヘッドライトをパッと照らしたら、猫の正体が分かった。
















1897.jpg妖怪・胡瓜刻みだった。

1735.jpgカワラゴミムシOmophron aequalis。長野にて。

まん丸い体にクモのようなひょろ長い脚を持つ、国内で他に似たものがない甲虫。テントウムシくらいの大きさ。あまり人の手で荒らされていない、一定以上の広さを持つ河川敷に住む。昼間は砂に潜って隠れており、日没後に出てくる。素晴らしい脚力で、暗闇の砂地を疾走する。
近年、生息に適した河川敷が開発や防災工事で失われており、全国的に減っている。各地都道府県レッドに名を連ねる程の減りようなのに、なぜか環境省版には未だハブられている。

10年前、長野県内のとある河原で偶然これを一匹だけ見つけて狂喜した。生まれて初めてのカワラゴミムシだったが、その後全く発見出来なくなり、存続が危ぶまれた。今年、あの発見場所から数百m下流の狭い砂地を意味もなく夜中徘徊した際、驚くことに発見に成功した。しかも、うじゃうじゃいた。
この川の流域沿いには、関東の平地に昔は多かったが今は壊滅状態の虫が90年代にまとまって何種も記録されている。しかし、今世紀以降は誰も調査しておらず、それら全てが消息不明になったまま。カワラゴミムシもその一員だ。

1896.jpg意外にラブルベニアが付いた個体が多い。

1703.jpgマガタマハンミョウCicindela ovipennis。長野にて。

翅が退化して飛べなくなった種。冬季に豪雪地帯となるような地域に限って分布する。飛びはしないが歩行は素早く、撮影には時間を要する。

1704.jpgアカスジオオカスミカメGigantomiris jupiter。長野にて。

世界最大のカスミカメムシ。といってもせいぜい12-13mm程度。鋭い口吻で、他の虫を刺し殺して吸う。手づかみすれば人間も刺される。

1738.jpgツヤハダクワガタCeruchus ligunarius。灯火に飛来したメス。長野にて。

1705.jpgコブヤハズカミキリMesechthistatus binodosus。長野にて。

秋口に枯れた下草や低木の丸まった葉の中に隠れていると言われるが、そんな場所にいるのを今まで一度でも見た試しがない。いつも偶然道端を歩いている個体しか見つけられない。

※マヤサンコブヤハズカミキリMesechthistatus furciferusのようでした。らな・ぽろさ様、ご指摘ありがとうございました。

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ハクサンチドリDactylorhiza aristata。長野にて。

1739.jpgキンスジコガネMimela holosericea。本州の涼しい地域では騒ぐほどの珍種ではないが、九州では相当まれ。

長野にて。

1740.jpgツヤドロムシZaitzevia nitida。灯火に飛来した。長野にて。

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ミヤマクワガタLucanus maculifemoratus。長野にて。

1730.jpgゴマダラチビゲンゴロウOreodytes natrix。長野にて。

河川中流の浅い淀みにいる、3mmほどの微小種。体に白いゴミが付いてて落ちないと思っていたが、よく見たらラブルベニア。ゲンゴロウの体表にしばしばこびりついている通称「白い水カビ」は、ラブルベニアであることが多いようだ。

ゲンゴロウの成虫体表にはラブルベニアが付く。虫体にはおそらく致死的ではないが、見た目がよくないので飼育する際には塩浴で取り除かれてしまうことが多い。しかし、ラブルベニアが種特異的な寄生生物であることを考えれば、絶滅危惧種たるゲンゴロウ体表のラブルベニアを駆除するのは、寄主と同等の絶滅危惧種を殺傷しているに等しいと言える。

現在、絶滅寸前のゲンゴロウ類を系統保存のため飼育する施設が方々にある。それらでのラブルベニアの扱いは、どうなっているのだろうか。

1743.jpgオオマルハナバチBombus hypocrita。長野にて。

大形で美麗なハチ。涼しい地域に多い。舌が短いため、ラッパ状に長い花から蜜を吸う際には花の横っ腹に穴を空けて蜜だけ盗む。

1711.jpgタカハシトゲゾウムシDinorhopala takahashii。長野にて。

初夏に桜の葉裏に時々いる。全身金平糖のようにゴツゴツしており、ガニ股のぶっとい後脚という、他に見間違えようのない風貌。なぜか後脚腿節の裏側に小さなノコギリがある。割と珍しく、見つかれば昆虫同好会誌に載るような種。

かつて根城にしていた裏山には、少ないながらもシーズン中に行けば百発百中採れる発生木があった。

1724.jpgナガマルハナバチBombus consobrinus。長野にて。

長い舌で、ツリフネソウなどの距が長い花から蜜を吸う。国内では、本州中部の亜高山帯以上にのみ生息。近年、ひどく減っており、環境省の絶滅危惧種(情報不足、2012年版)。

環境省の絶滅危惧カテゴリのうち、下層に位置する「情報不足」と「準絶滅危惧」というのは、正確には絶滅危惧種とは見なされていない。あくまで前者は「情報がなくて、滅びそうかどうかわからないもの」、後者は「絶滅危惧に準ずるもの」だからだ。しかし、情報がないならばなおのこと多くの人々に関心を持ってもらい、情報を集める努力がなされるべきであろう。絶滅危惧に準ずるということは、あと少しで絶滅危惧になることが分かっているわけだから、上位ランクのものにも増して注目されるべきものであろう、と思う。

虫に限って言えば、「情報不足」と「準絶滅危惧」カテゴリのものは「どうせすぐさま消えてなくなるほどではない」と舐められている雰囲気が往々にして感じられる。しかし、もともと「まだ普通にいる」と思われていたものが、気づけばこの世から消えていたなどという例は、ニホンオオカミにせよリョコウバトにせよ挙げればきりがないではないか。虫ならばヨツボシカミキリとかキベリマルクビゴミムシ辺りが、まさにその轍を踏んでいる。
だから、そうした怠慢と油断を己の中に作らないため、レッドリストに載ったものは敢えて全て絶滅危惧種と呼ぶことにしている。ただの言葉遊びにすぎないが。

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オオツノトンボProtidricerus japonicus。長野にて。

夜間灯火に来た。人工光源に飛来したこの虫の動きほど、ぎこちなく見苦しいものはない。周囲に全く街灯のない闇夜の中では、見惚れるほどに素晴らしい機動性をもって飛翔する。

1719.jpgヒラスベザトウムシLeiobunum manubriatum。長野にて。

本州以北、北海道まで分布するド普通種で、山間地に多い。基本的に全身オレンジ色の体色をしているが、多少の色彩変異があるようだ。この個体は、白馬岳の猿倉荘すぐ上のブナ林で見られた。この仲間はとても種数が多く、外見で種判別は難しい。解剖して生殖器を見るのが確実だが(アルコールで〆ると、解剖するまでもなく生殖器を突き出したまま事切れる場合が多いが)、オスならば口元に付いているlabrumという突起の形状でもある程度は同定可能。
ヒラスベのオスのlabrumはL字方で、まるで理科実験室のガス元栓コックを思わせる。日本産の近似種で、こういう形状の種は他にほとんどいない。

1720.jpg白馬岳で同所的に生息するとされる固有種シロウマスベザトウムシは、labrumが短い突起状であり、ヒラスベとは容易に区別できる。しかし、猿倉から森林限界下部の間で、目線の高さの樹幹や下草上に見られたオレンジ色のザトウムシは、全部ヒラスベだった。かつてその筋の専門家が集中的に探索したようだが、その時もヒラスベ以外発見できなかったらしい。もしかしたら、普通のヒラスベとは全く異なる微環境に生息するものなのではないかと考えられている(Tsurusaki 1985)。
それを踏まえ、一般的なスベザトウがまずいないような倒木下、湿った石垣の狭い隙間などもみたが、そういう場所には関係ない別分類群のザトウムシがいてだめだった。残る候補ハビタットと言ったら、高さ数メートル以上の林冠部くらいしかない。比較的小型種らしいので、軽量な体を生かして樹上の高所で生活している可能性も考えられる。
ゼフを採集するような長竿網で山中の木をなぎ払っていけば採れるかもしれないが、あそこでそれをやるには相応の許可が必要となる。

シロウマスベザトウムシは、1960年代を最後に記録がない。環境省の絶滅危惧種に指定されている(情報不足カテゴリ、2012年版)。きっと夏に5回くらい白馬へ通えば、すぐ再発見できると思うのだが・・・。今の俺にはあまりにも遠い場所になってしまった。かの地に在住中、こんな不思議な生き物に興味を持っていなかったのを、今更後悔している。



Tsurusaki, N. (1985). Taxonomic revision of the Leiobunum curvipalpe-group (Arachnida, Opiliones, Phalangiidae). I. hikocola-, hiasai-, kohyai-, and platypenis-subgroups. J. Fac. Sci. Hokkaido Univ., Ser. VI, Zool, 25, 1-42.

1714.jpg白馬の山々。精霊シロウマスベザトウムシLeiobunum simplumが眠る。

1718.jpg夕刻のジャンプ台。長野オリンピック開催時に作られたもので、日の丸飛行隊とやらが活躍した場所。今では地元を象徴する一大モニュメントとなっている。
しかし俺のように、この建造物の存在を快く思わない虫マニアは、決して少なくないと思う。

結局、余所に移したというあれとそれはその後どうなったのだろうか。続報がまったく聞こえてこない。

1721.jpgエゾアカヤマアリFormica yessensisが護るミヤママルツノゼミGargara rhodendrona幼虫。長野にて。

北方系のツノのないツノゼミ。詳しい資料がないが、恐らく日本では本州中部以北に分布する。ハギ類に特異的に付き、集合性がとても強い。幼虫期を中心に必ずアリをまとう。北海道では割とどんなアリでも随伴するが、本州では原則としてエゾアカヤマアリだけがパートナーとなる。例外を未だ見ない。ハギとエゾアカの大規模な巣が近接して存在する条件下でのみ、この虫は生息可能。

乗鞍方面のある道路沿いの法面に、ヤマハギが密生して生えている区画がわずかにある。そこには同所的にエゾアカがコロニーを構えていて、かつてはものすごい数のミヤママルツノがいた。その様は、「アリの巣の生きもの図鑑」にも掲載されている。
ところが、「アリの巣・・図鑑」の掲載写真を撮影した翌年、この道路法面で市の役人の命により大規模な草刈りが行われた。それまで、こんな場所で草刈り自体が行われたことなどなかったのに、この年だけなぜかやられた。悪いことに、それがなされた時期が7月頭、ツノゼミ達がまだ若例幼虫の時だった。ハギは幼虫が取り付いた状態で、そこに生えていた株の全てが根元から刈り飛ばされた。飛んでよそへ移動できない幼虫たちは全滅し、その年からこの法面でミヤママルツノの発生がまったく確認できなくなってしまった。

今年、あの法面のヤマハギ群落から数十m離れた場所に生える、貧弱なヤマハギの株で、久々にわずかなミヤママルツノを確認した。去年以前はここにもいなかったので、どこか別の場所から流れてきて居着いたのだろう。しかし、どこから来たのだろうか。周囲に、発生源とおぼしき場所は見つけられないのだが。
かつての多産地だった方のヤマハギ群落には、相変わらず一匹も付いていなかった。こういう特殊な生態に加え移動能力の低い虫は、一度その土地から絶えると容易に復活しないのである。

草刈り作業はやり方ややる時期によっては、そこに生息する数多の生物にとって多大な益にも害にもなりうる。

1725.jpgクロヤマアリFormica japonicaに保護されるミヤマシジミ幼虫Lycaeides argyrognomom。アリは脳内物質をいじられているのだろうか。長野にて。

アリと言えば、遅ればせながらあかね書房から2本同時に出版された「アリのくらしに大接近」「アリの巣のお客さん」(丸山宗利著、小松貴・島田拓写真)が、好評発売中である。日本はもちろんのこと、遠い海外に住む多彩なアリや好蟻性昆虫の生き様を写真で紹介している。児童書ではあるが、大人にとっても楽しめる内容構成になっていると思う。
特に「アリの巣のお客さん」では、本邦初の海外産好蟻性昆虫の生態写真を少しだけ公開している。これを、近未来に出版される予定の「アリの巣の生き物図鑑・世界編」の布石としたい。

1731.jpgホンシュウハイイロマルハナバチBombus deuteronymus maruhanabachi。長野にて。

北海道に分布するハイイロマルハナバチの本州個体群。おそらく、氷河期の終わりに依存的に取り残されたものの末裔であろう。中部地方の低山から亜高山帯に、きわめて局地的に分布する(東北にもわずかにいるとの噂)。開けた草原環境が、生息に必須。

ワーカーは一見、ヒメマルハナバチのそれと区別しがたい。特にすり切れた個体は、毎回種の判別に悩む。今までマルハナバチの識別図鑑がいくつか出ているが、ヒメマルとホンシュウハイイロのワーカーを野外で一見して区別する点を明記したものは見あたらない。専門家は、この2種を間違えないんだろうか。

もともと少なかったが、近年輪をかけて激減している。長野県レッドデータブックでは絶滅危惧種に指定されているが、なぜか環境省版にはいまだ載らない。キオビホオナガスズメバチ本州個体群は載ってるのに。

1742.jpgクロヤガEuxoa nigrata。長野にて。

消し炭のように真っ黒で小汚い蛾。しかし、亜高山帯以上にのみ分布する珍しい高山蛾の一種。蝶のように日中も活発に飛びまわり、花を訪れる。アザミに来る事が多い。

いつか北アルプスの一番天辺で灯火をたいて、高山蛾を採りたい。大雪山でのみ見つかっているオーロラヨトウという、名前だけは奇麗なドブ色の蛾が絶対いると思うのだが。