告死鳥の娘

1746.jpgキリギリスを狩った巨大アナバチ。カメルーンにて。

日本のキンモウアナバチとほぼタメサイズ。獲物は毒針で神経を打たれ「ギアス」を施されているので、生きてはいるが動けない。獲物は地中の巣穴へと運ばれ、ハチの卵とともに封印される。やがて孵ったハチの幼虫は、新鮮な獲物の体を、その生存に関わらない部分から食っていく。獲物はおそらく最後の最後まで意識を保った状態で食われていき、そして死ぬ。

1747.jpg半ヤラセでハチをだまし、麻酔行動を再現させた。首の下に毒針を打つ。

国粋主義

1773.jpg偶然カメルーンの国旗と同じ色をした、カメルーンのバッタ。

ド普通種で、現地ではジャングルに入ると至るところに見られる。たぶん有毒で、サスライアリに食われない。南米やアフリカの暗いジャングル内にいる、変に青々とした色調のバッタは、毒がある印象。

スペクタ

「全くすごい敵です。これぞ、あなたが探し求めていた相手ではありませんか?姿の見えない(こともありませんが)モンスターです。」と、ニンテンドー64版DOOM64の取り扱い説明書に書いてあったのを覚えている。


1882.jpgアリ擬態キリギリス。カメルーンにて。

まだ幼虫。東南アジアにもこういうキリギリスはいるが、カメルーンで見たこいつはすごかった。体型そのものは、さほどアリじみていない。しかし、胴体の背面側だけ黒い。黒い部分だけなぞると、アリのフォルム。
常に緑葉上で過ごしているから、遠目に見ると腹側の緑の部分が消え、黒いアリの姿のみ浮き上がって見えるのだ。すぐそばに、これと肌の質感とサイズが瓜二つのオオアリがいて、非常に紛らわしかった。

1757.jpgなお、例によってアリとは一切関係ない生活をしている。成虫がどんな奴か知らないが、きっと何の面白みもない平々凡々な外形のツユムシになるだろう。

1926.jpgハゴロモ。雰囲気的に、日本のアミガサハゴロモを思わす大形種。

1989.jpg透け翅の種。

1768.jpgやたら目力のすさまじいハゴロモ。見つめられると石になる。カメルーンにて。

1929.jpgヤマカメレオンChamaeleo montium。カメルーンにて。

生まれて初めて見た野生のカメレオン。近所のジャリンコがその辺の草むらで捕ってきた。その辺の草むらにカメレオンがいるというのがすごい。カメレオンはアフリカや中東にしかいないため、東南アジアばかり行っていた俺には長らく縁のなかった生き物。
少しやせ気味で元気がなさげの個体。顔からは2本のツノが突き出していて、カッコイイ。しかし、ジャクソンカメレオンはもっとカッコイイ。

カメレオンは、幼い頃家で育ててみたい生き物の一つだった。しかし、カメレオンは当時飼育法がほとんど確立されておらず、ペット屋で安易に買っても1年も生きないようなものと言われていた。水を飲ませるのが困難、同じ餌ばかりやると食わなくなる、ケージに閉じ込められるストレスに弱いなど、普通のトカゲのように飼いやすい点が何一つない。
くわえて、昔は人工繁殖もほぼされておらず、野生のものを乱獲して売っている状態だった。現在カメレオンはどの種も個体数を減じているが、その理由の最たるもののひとつがペット用の乱獲だという。だから、カメレオンをペットとして飼うのは国際的なカメレオンの絶滅に加担する行為だと思い、決して飼うまいと幼心に誓ったものだった。

ごく最近になって、いくつかの種ではブリーディング可能になってきたし、飼育法も確立されて長期飼育できるようにはなった。しかし、それでもいまだにカメレオンを個人の趣味で飼育するという行為に対して、拒否感が拭い去れない。

なお、当然だがこんなものを日本に連れて帰ってはいない。現在カメレオンの仲間は、ほぼ全種がワシントン条約の規制にかかっており、個人で勝手に他所の国から日本に連れて帰ると捕まる。カメレオンを家に連れて帰ってはならない。

1991.jpg冬虫夏草。元が何だったのかすら不明。カメルーンにて。

鳶一デビル

1931.jpgニシトビMilvus migrans。カメルーンにて。

山奥から市街地まで、どこでもいた。嘴が黄色い以外、日本のトビと外見は何も変わらない。生意気にもちゃんと「ピーヒョロロ」と鳴くので、頭上を飛んでいると異国の魔境にいる緊張感がどうしても薄れてしまう。

今回、身の回りでいろんな種の鳥を見たが、バズーカ砲レンズを持参しなかったため、ろくに撮影できなかった。夜盗や山賊の襲撃を受けた際、素早く走って逃げられるよう、荷物は必要最小限に絞って身軽にせねばならなかったのだ。

1963.jpgザトウムシ。カメルーンにて。

赤い種で、林床にかなりの数がいた。拡大すると非常に面白い形をしている種だが、素早いのとアリ探しで常に歩き続けねばならない状況だったため、大してじっくり撮影できず。
なお、まったく偶然ながら本種を撮影した地域のすぐ近くの地域名が、ザトゥムシ(Zatoumsi)。

セイレン

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1965.jpg薄暗いジャングルのぬかるみに襲来した、タテハやらシジミやらの類。にわかにはシジミとタテハの区別もあやしいようなのがいた。
熱帯の水辺は、蝶がつきもの。

カメルーンにて。

闇水乙女

1953.jpgゲンゴロウ一種。カメルーンにて。

日本のオオイチモンジシマゲンに似た雰囲気で、昼なお暗いジャングル内のぬかるみに生息する。きつい性格で、すぐ落ち葉下に隠れようとする。あまり干渉しすぎると、水から素早く這い上がって飛び立ってしまう。

ウンディーネ

1964.jpgアメンボ一種。カメルーンにて。

ジャングル内の小さな水溜りにいる。こういうものを撮影するとき、とにかく淡水に直に触らないよう細心の注意を払った。触れば最後、水精の魅了(チャーム)にかかり、黄泉の国まで連れていかれる。

端的に言えば、寄生虫にやられるということである。

1941.jpgある朝、宿舎のドアを開けたら玄関の前に立っていた人。

1942.jpg体長10cm。これがタガメかタガメ似のコオイムシかを巡って、同行者と殴り合いの大喧嘩に発展。嘘。

カメルーンにて。

1938.jpgカメルーンのセミ。

灯火に飛来した。日本はおろかアジア地域でついぞ見ない、独特の雰囲気。アブラゼミより少し大きいくらいだが、これでニイニイゼミの親戚筋らしいというから驚き。

1946.jpgヤンマ。カメルーンにて。

1945.jpg夜間灯火に飛来する。ほぼ夜行性に近い種で、日没後ヘッドライトがないと周囲が見えないギリギリの暗さの闇を素早く飛ぶ。

灯火に飛来した甲虫。
1975.jpgコイチャコガネ系。小さい。

1974.jpgゴミムシダマシ。大型で、下手に手づかみすると強烈な臭気を放つ。

1973.jpg大型のカミキリ。咬まれたら指などちょん切られそう。

改めて見直すと、どれも体にクモの巣やらゴミが付いて汚い。綺麗に掃除してから撮影すれば良かったのだが、あの過酷な現場でそこまでする精神的余裕はなかった。

カメルーンにて。

ドリュアス

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コバネツツシンクイ。カメルーンにて。

木材穿孔性。夜間灯火に飛来した。これが甲虫に見えるか。

1909.jpgカッコいいドロバチ。カメルーンにて。

灯火に飛来した。これに似て、牙が左右二対ある怪獣みたいな種が理論上いるはずなので探したが、ついに発見できず。

吸魂霊

1968.jpg Ormiini族のヤドリバエ一種。カメルーンにて。

夜間灯火に飛来した。この仲間のハエは夜行性で、単眼を持たない。聴力が発達しており、闇の中で鳴くキリギリスやケラの声を探知する。獲物のそばに産み落とされた幼虫は、自力で獲物までたどり着いて寄生すると語り継がれている。

1920.jpgドクガ一種。カメルーンにて。

日本のシロオビドクガの体色を、白黒反転させた感じの種。この手のドクガは体表に毒を持たず、触っても全く問題ない。同様に、体内にも毒はないものだと思っていたが、そうではなかった。

夜間灯火をたくと、朝に野良ニワトリが徒党を組んでやってきて、床や壁に付いている蛾を片っ端から食い漁っていく。しかし、どういうわけかこの白いドクガだけは決して食わなかった。目の前にいても、必ず見て見ぬふりをする。
本当に食わないのか確かめるため、ある日ニワトリの目の前にいろんな種の蛾を立て続けに投げてみた。ニワトリは半狂乱になって蛾を食っていくが、すかさずドクガを投げたところ、ついばんでしばらく考えた後に捨てた。しかもその後地面に嘴を何度もこすりつけ、汁をぬぐいさえした。ドクガは体内にも毒があることを、初めて知った。

毒と言ったって、死ぬような毒ではなく食欲をなくすような味の成分な訳だが(敵に死なれたら、自分を不味いと学習させる意味がない)、しかしニワトリという生物は本来すさまじく悪食だ。かつてフィリピンに行ったとき、この世で最も硬い昆虫カタゾウムシを平気で食うのを見たほど。そんなニワトリすら食わないという事は、よほど不味い味の蛾なのだろう。

1962.jpgイボタガ一種Dactyloceras sp.。カメルーンにて。

不気味な模様の巨大蛾。翅の差し渡しが、日本のイボタガの倍近くある。アフリカはイボタガの国で、何種もいる。

1934.jpgヤガ系かシャチホコ系と思われる、折れ枝そっくりの蛾。カメルーンにて。

灯火をたくと、非常にたくさん飛来する。止まっている時は翅を畳み、細い枝のきれっぱしのようになる。模様も枝の表面の質感をよく再現しているため、枝に擬態しているのは間違いない。と、人間は信じて疑わない。しかし、ニワトリはこれを蛾としっかり認識しており、迷わず食う。

灯火採集は、毎晩宿舎の玄関先で白布を広げて行い、深夜寝る前に灯りを消す。しかし、布は広げたままにしておくため、飛来した虫たちはそのまま布に止まった状態で朝を迎える。
朝方になると、近所の野良ニワトリどもが徒党を組んでやってきて、まだ白布に止まっている、自分の背が届く範囲の虫を片っ端から全部食らい尽くしていく。見ていると、この枝蛾は特に好物らしく、白い布やコンクリの壁面についているものは決して残さず皆殺しにする。

面白いことに、たまたま周囲の落ち葉・落ち枝溜まりに止まっている蛾には、ニワトリも気づかないで素通りしていく。つまり、ちゃんと場所を選んで止まってさえいれば、一応この蛾の姿は隠蔽の効果があるらしいのだ。しかし、蛾本人は明らかに自分が止まる場所の背景に無頓着なので、結果としてかなりの個体がニワトリに食われてしまう。

1933.jpg日中ジャングルを歩いていると、道脇の青々とした草上で頻繁にこの枝蛾が止まっているのを見る。枯れ枝や枯れ葉に止まっていれば気づかれずにすむものを。だから、この蛾が枝っぽく見えるのは単に人間の側がそう思い込みたいだけで、蛾本人は自分が枝に似ていることを自覚していないと思われる。

日本でしばしばムラサキシャチホコという、枯葉がしおれてカールしたような模様の翅を持つ蛾が話題にされる。擬態だ擬態だと当たり前に言われているが、あれも相当あやしい。日中、青い樹木の葉に無造作に止まっているのがしばしば見つかるから。それに、あれの発生時期は青葉の茂る初夏から盛夏である。

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1888.jpgヤママユ。カメルーンにて。

夜間、灯火にみだりに飛来する。そして、翌朝ニワトリにみだりに食われる運命。

国家tris

1922.jpg野良ニワトリ。カメルーンにて。

カメルーンの村落では、いたるところでニワトリが放し飼いにされている。放任されているもので、村人の誰がどの個体を管理しているのか余所者には全く分からない。柵もなんにもない路上や草むらを、自由に闊歩して餌を探す。
現地で人がわざわざニワトリ用の配合飼料を買い与えているさまを、一度も見なかった。恐らく、ニワトリたちは自力でその辺の虫やミミズやトカゲを捕まえて生きている。朝になると、宿舎玄関の灯火下に毎日群れで来て、そこに溜まっている蛾を喜んで食う。「ニワトリは三歩歩くと・・・」というが、民家の玄関が毎日確実に餌を入手できる場所だということは決して忘れない。

現地滞在中、一度だけ村人からニワトリを一羽購入し、つぶして夕食に出してもらった。肉は固めだったが、噛めば噛むほど旨みが滲み出して本当に美味かった。日本のニワトリではついぞ味わったことのない芳醇な味に、同行者一同無言で肉に齧りついていた。野生の餌だけで育った、野生の肉の味だ。
もっとも、単に連日肉なし、しかも全く同じメニューばかりで肉に飢えていたせいで、単なる普通の鶏肉の味がそう感じられたのかもしれない。でも、とにかく物凄く美味かった。このニワトリの味を知って以来、俺は現地滞在中ニワトリのためにいろんな虫を取ってきて食わすようになった。

村のニワトリにはハーレムがあるようで、一羽のオスの周りをいつも数羽のメスが取り巻いていた。街灯にきていた蛾をオスに渡すと、すぐについばむものの自分はそれを食わない。蛾をくわえながら低い声で「コッコッコッ・・」と、普段出さない声質のうなりを出し始める。その途端、周囲のメスが猛ダッシュでオスのもとへ駆けつけ、オスから蛾を受け取って食ってしまう。
至近にメスたちがいる間、オスは常に自分の入手した餌をメスに譲り渡していた。ニワトリのオス、やさしい。

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1764.jpgヤスデ。体長5cmほど。カメルーンにて。

1914.jpg美しすぎるジョウカイモドキ。日本のツマキアオジョウカイモドキの倍サイズ。カメルーンにて。

木人

1960.jpgべらぼうに細いコメツキ。カメルーンにて。

粘体の攻め手

1763.jpgハリナシバチ。カメルーンにて。

建物のわずかな隙間の奥に営巣し、出入り口からは植物のヤニでこしらえた煙突を伸ばす。アリなどが入ってこないようにするため。ハリナシバチほどヤニを上手に使いこなす虫は、そうそういない。

1930.jpg伐採地で、枯れ木からにじみ出すヤニを採取する。ヤニはベタベタしており、手にこびりつくと容易に落ちない。でも、ハリナシバチはトラップされることなくヤニを扱える。

刺さないため無害に思えるが、汗を吸うために大群で人の顔に飛来して目や耳に飛び込んでくるため、状況次第では危険。

1940.jpgオナシアゲハの類。カメルーンにて。

アフリカでは、ろくに蝶を撮影できなかった。恐ろしく敏感な奴か、飛び続けたまま永遠に降りない奴ばかりだったから。特にアゲハの類など、あの時さっと日が陰らなかったら、こいつとて撮影できずに終わっていただろう。

1932.jpgナガフシアリTetraponera sp.。カメルーンにて。

体長1cm以上、この仲間としては大形で重厚な体格。幹内が中空の構造をとる、特定の生きた植物上にだけ営巣する。強力な毒バリを持ち、刺されると息が詰まるほど悶絶する。

1913.jpg日本のヤスマツケシタマムシそっくりなやつ、スゲだかイネだかの葉に何匹も取り付き、舐めるように特徴的な食痕を残す。体長3mm。

遥か地の果ての魔境といえど、いる虫の顔ぶれはどことなく日本のものの気配がする。こういう連中と邂逅するたび、遠い日本を思い出した。

カメルーンにて。