DEMインダストリ

893.jpgココノツノクニにある、広大な岩石砂漠。かつて人間が、ある精霊を滅した現場。その生物は地球上でも、日本のこのエリアにしか存在しない貴重なものだった。

実際のところ、それはまだ滅んでいるはずがない。不在証明など不可能であるし、実際現地に行けば、周囲にまだいそうな場所がなくもないからだ。いずれ、遠からぬうちに生存が確認されるだろう。
しかし、仮に本当にそれを再発見してしまった場合、果たしてそれをそのまま公表してしまっていいのかという別の問題が生じる。恐らく、まだ生きているとすればピンポイントのある一地点でのみ現存しているはずなので、間違いなく全国から名うての土木作業員がこぞって荒らしに来て、かえって生息地の荒廃を招きかねない。それに、もしそれを保護しようという話になれば、確実にこの土地の経済を滞らせることになる。この特殊な生物を温存することと、その生息地を破壊することで経済が回っているこの町の成り立ちは、絶対に相容れないからだ。この生物の再発見を境に、おそらくこの町を取り巻く様々な事柄が激変するであろう。

まあ、まだ見つけないうちからうだうだ言っても始まらない。見つけた後のことは、見つけた後で考えよう。というわけで、来年中に必ず奴を現世に連れ戻す。

2113.jpg有翅カマバチ。シンガポールにて。

遠目にはアオバアリガタハネカクシと瓜二つ。一瞬でどこかへ飛び移り、捕まえる間もなかった。

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トビヘビ。シンガポールにて。

飛ぶ種と飛ばない種がいて、これはどっちか知らない。近寄ったら、バネ仕掛けのおもちゃのようにぴょんぴょん枝から枝へ飛び移り、一瞬で消えた。

2111.jpg Cryptothele sp.。シンガポールにて。

東南アジアにのみ分布する小規模な分類群で、湿ったジャングルのリター中に住む。全身を泥で覆って変装しているため、動かない限りは発見至難。この個体も、たまたま同行した専門家がいなかったら発見できなかった。

外見からは想像つかないが、これでホウシグモ科だというんだから恐れ入る。

2104.jpgヒゲブトアリRhopalomastix sp.。シンガポールにて。

非常に小型で、常に生木の樹皮下にのみ営巣する。枯死した木からは決して採れない。東南アジアでは実のところさほど珍しくないが、生息環境が特殊なため普通に探したのでは発見できず、世間では珍種として認知されている。このアリの巣には詳細不明ながらとある共生生物が同居しているらしく、それがこのアリが生木樹皮下からしか得られないことと関係している、と予想している。

ヒゲブトアリは、日本ではとある場所で古い時代にほんの1-2匹得られただけ。日本産アリ類の中でも指折りの希少種に含まれる。近年の生息状況はまったく誰も把握しておらず、生態も不明。巣内に共生生物がいるのかどうかなど、早急に調べるべきことが山積している。
だが、最近よりによってこのアリの生息域で、自然保護を建前に極めて問題の多い条例が理不尽な経緯で強行施行され、文字通りアリ一匹持ち出せなくなったそうなので、上記の謎が解明される日は当分来ない。

2115.jpgアシナガキアリを食う、おそらくヒラタヒメグモ。シンガポールにて。

ヒラタヒメグモ属Euryopisは、アリ専食のミジングモに近い仲間で、やはりアリを専門に食う。東南アジアの各地で、アシナガキアリに似た体色のこのクモが、アシナガキアリを食っているのを見る。どういう訳か、他種のアリを食っているのを一度でも見た試しがない。

2107.jpgカタアリを捕らえたハエトリ。シンガポールにて。

全身黒く、腹部の付け根近くが広く黄色がかっている種。このハエトリは、アリ植物オオバギ上でしばしば共生シリアゲアリを食ってる様が見つかる。東南アジアのアリ植物オオバギ分布域では広域に分布しているらしく、マレー半島の複数地点、ボルネオ、インドネシアのスマトラでもオオバギ上でシリアゲアリを食ってるのを見ている。最近出たアリ植物オオバギ関連の論文にも、種名不詳ながら生態写真が掲載されている。
当初、これはアリ植物オオバギやその共生アリと密接に関係する生物なのかと思っていたが、やがて他の植物上で全く別分類群のアリを食っていることもわかり、どうやらオオバギ絡みの関係者ではなさそうだというのが個人的な見解。上の個体も、オオバギではない植物上で、オオバギと関係ないアリを食っていた。ただ、アリのスペシャリスト捕食者であるのは確実であろう。

SHIMIZU-KAYA, U., KISHIMOTO-YAMADA, K., & ITIOKA, T. (2015). Biological notes on herbivorous insects feeding on myrmecophytic Macaranga trees in the Lambir Hills National Park, Borneo. Contributions from the Biological Laboratory Kyoto University 30:85-125.

2108.jpgフクラミシリアゲアリの一種Crematogaster sewardi。シンガポールにて。

東南アジアではド普通種。樹上性だが、積極的に地上へも採餌行列を伸ばす。酷似した別種がいて、分類が混乱していた。フクラミシリアゲアリの仲間は、胸部の後方が膨らんで盛り上がっている。

2166.jpgトゲだらけのザトウムシ。トゲアカザトウムシ科Podoctidae。シンガポールにて。

2168.jpgダニっぽいザトウムシ。日本のダニザトウムシ科Sironidaeとは関係なく、日本に存在しない科Sandokanidaeの者。シンガポールにて。

2078.jpgアホみたいな形のヒョウタンカスミカメ。シンガポールにて。

この仲間は大抵アリに似せた姿の種が多いが、これは胸部が首のように長くなっており、遠目にはアリよりもジョウカイボンやカミキリモドキのような外見をしていた。味の悪い甲虫のふりをして、食われないようにしているのか。

2109.jpgトゲオオハリアリDiacamma sp.。シンガポールにて。

大型で、強力な毒針を持つため素手で触れない。体表面のウネウネ模様が、古代の土偶を思わせる。東南アジア地域を中心に明らかに多数種存在するが、分類や同定が非常に難しいようで、たいていどの論文にも種小名まで書かれないことが多い。

個人的に知っているあるエライ先生が、いつもこれをオオトゲハリアリと言い間違える。でも、個人的にはこのアリの和名はオオトゲハリアリにしたほうがいいんじゃないかと思う。トゲオオハリアリだと、これに外見も似てないし類縁も遠いオオハリアリBrachyponera chinensisに近縁なように、知らない人は誤解する。

2167.jpgマルゴキブリの類。シンガポールにて。

ダンゴムシそっくりな奴で、実際ダンゴムシのように丸くなる。似た種がいくつかいて、丸くならないものもいる。また、ダンゴムシ風なのはメスだけで、オスは芸もへったくれもないただのゴキの姿。

2105.jpgアリバチ。シンガポールにて。

素早い上に立ち止まらないため、撮影は至難。ハチなので、掴むと容赦なく刺す。そのため、これと同大のクモや甲虫などで、このハチと似たような色彩パタンのものが少なからず知られる。

スリランカの仕事の後、その足でシンガポールへ飛んだ。シンガポールも初めて侵入したが、やはり全体的に開発されている国ゆえ野外調査は場所を選ぶ必要がある。

2145.jpgゴキブリヤセバチEvania appendigaster。スリランカにて。

現地の安宿の便所にいた。スリランカには初めて出向いたが、現地の土を踏んで最初に撮った写真がコレ。

2160.jpgウデムシ。スリランカにて。

かなり巨大で、なおかつ変わった形をしていた。背甲がこんなに横に張り出した種など、アジアはおろかアフリカ南米でも見たことがない。これから全身を撮影すべくレンズを交換する刹那、遠くの人から呼ばれて急行したため、これ一枚しか撮ってない。

2163.jpgイナゴ。

2162.jpg日本の南西諸島にいるフタイロヒバリHomoeoxipha lycoidesみたいなコオロギ。というよりフタイロヒバリそのものだろう。

スリランカにて。

2164.jpgマルズヤセバエ科Micropezidaeの一種。

葉上で、ダチョウ倶楽部のアレよろしく前脚を前方に伸ばしてひらひらやる。本当は全ての脚をゆったり伸ばしているのだが、ストロボにビビって身構えてしまう。何度やってもストロボに慣れず、こんな脚を縮めて警戒した姿しか撮れなかった。

2161.jpgアリグモ一種。

日本の奴と同じ属Myrmarachneかは知らない。かなり擬態の精度が高い種だが、こいつを見た傍でモデルらしきアリは一つとて見なかった。

スリランカにて。

2144.jpgツムギアリOecophylla smaragdinaがカイガラムシを守る。スリランカにて。

東南アジアの大概の国では、たとえ都市部でも緑地公園や大学構内に何種かツノゼミが生息するものである。そしてそれらは、ほぼ例外なくツムギアリをはべらせているため、ツムギアリさえ見つければツノゼミを手堅く得られるというのがセオリー。
しかし、スリランカの大学は想定以上に環境の人為かく乱がひどく、また空気も非常に悪いため、ツノゼミのニッチは9割方がカイガラムシによって席巻されていた。排ガスで弱った街路樹は、カイガラムシにとって格好の標的。

2165.jpg先日、所用で出かけたスリランカ、コロンボの大学。

部屋仕事がメインだったため、あまり虫探しはできなかった。それ以前に、都市開発の程度がすさまじく、虫などろくずっぽ見なかった。スリランカは国土のほとんどが開拓されつくしているため、よほど厳重に保全されているような自然保護区にでも行かない限り、虫探しは至難である。
ハリルリアリやらサソリクワガタなど夢のまた夢だった。

2159.jpgそれでも、あまり近隣のアジア諸国では見慣れないものは散見された。このシジミなど、いつものマレーやタイなどで似た雰囲気のものを見た覚えがない。

2060.jpgメクラチビゴミムシの一種。

九州のごく限られた地域の地下空隙に生息。相当深い粘土層の隙間におり、採集困難。

いずれメクラチビゴミムシも、シカクフジユウコガタハイキブツリクセイロッキャクセッソクドウブツ(視覚不自由小型廃棄物陸生六脚節足動物)と呼ばねばならなくなるのだろうか。

2142.jpgたぶんオキナワイトアメンボHydrometra okinawana。西日本にて。

沼の岸辺の薄暗い所にいて、野外ではすこぶる体色が黒っぽく見える。これに似たヒメイトアメンボは明るい場所におり、体色も明るい。

2158.jpgやっと見つけた精霊の新女王。しかし、写りが悪く使い物にならない写真。これ一枚撮った直後にロストし、戻らなかった。
始末が悪いことに、精霊は近年侵入した外来種と一見して瓜二つの風貌を呈しており、よく見ないと区別できない。生殖階級の個体であれば、尻先が真っ黒いので一見して分かる(外来種は白い)。しかし、ワーカーだと精霊・外来種ともに尻が白いため、体色の濃淡くらいでしか判別しがたくなる。精霊は、黄色の部分にオレンジみを全く帯びず、色褪せたレモンイエローをしている。

精霊はものすごく生息密度が薄い。ある一地点で待ったが、一時間で新女王と貧弱なワーカーそれぞれ一つっきりしかこなかった。他のマルハナはわんさかいたのに。恐らく、あの半径2,3キロ以内にたった1コロニーしかないのだろう。
ワーカーは何とか撮ったが、この種を象徴づける外見上の特徴は生殖階級の個体にしか出ない。新女王をちゃんと写さなければ、意味がないのだ。

あくまでも、本来自分に課せられた用務の合間に来たため、精霊攻略に割ける時間は一時間のみ。それでいて、奴は一時間に一回、ほんの一瞬しか出現しないため、実質落とすチャンスは一度きり。それを逃した。
また来シーズン、どうにか時間を作ってあそこまで出向くしかない。

2129.jpg日本最東端の岬でたまたま見つけてしまった。特定外来生物セイヨウオオマルハナバチBombus terrestrisの新女王。バス停のすぐ脇の草むらで、吸蜜していた。根室半島には2007年辺りには侵入していたらしいが、まさか先端部ギリギリで見るとは思わなかった。

ハウス栽培作物の受粉目的でヨーロッパから日本に導入されたが、逃げ出して野生化した。北海道での本種の野生化は顕著で、場所によっては在来マルハナバチより多い有様になっている。
営巣場所や餌を奪う、交雑して遺伝子汚染をもたらすなどにより、在来マルハナバチを絶滅に追いやる危険性を持つ。また、現地に生育する植物の中には在来マルハナバチが花粉を運ばないと受粉できないものが多数存在する。在来マルハナバチ減少に伴う在来植物群落の減少・壊滅により、その土地の生態系の成り立ちそのものを破壊する可能性を秘めている。現在、北海道では各地で官民一体となり駆除が行われているものの、あまりにも旺盛な繁殖力ゆえ駆除が追いついていない現実がある。

新女王なので、かなり大型だった。新女王が外勤していたということは、まだ巣を一匹で創設している段階であろう。これから彼女の巣内では、ワーカーが大量に生産されることになる。見かけたのはこの一匹だけ。いわばこの地域における先遣隊で、放っておけばこの種のこの土地での定着を盤石なものにする。

写真が雑なのは、撮影もそこそこにこいつを殺さねばならなかったから。別に外来種駆除の目的で来たわけではないが、場所が場所だけに、こんなものを見つけておいてむざむざ見逃すのは倫理上問題がある。新女王は、美しい毛皮に覆われた愛くるしい生き物だった。それを殺すのは可哀想だが、やらなければいずれ本来ここにあるべき八百万の生き物たちがもっと可哀想な事になる。人がやった事の落とし前は、人がつけねばならない。

今年のアルバムから。
2128.jpgエゾナガマルハナバチBombus yezoensis。北海道にて。

本州中部山岳にいるナガマルハナバチB. consobrinusに近縁で、同種と見なす向きもあるらしい。少なくとも根室の岬周辺の在来マルハナバチ類では、最優占種。右見ても左見ても、こればっかりいる。これ9割、残り1割がシュレンクとハイイロ系、エゾオオマル。そこにわずかに精霊が捻じ込まれる時もあるという程度。
もしかしたら、精霊がここまで少ない理由の一つが、こいつとの競合にあるんじゃないかと思った。

馬面で、舌がとても長い。本州中部にいるナガマルと体型やサイズは同じだが、体色はまるきり違う。どちらかと言えば、目的の精霊に近い色調ゆえ、ものすごく紛らわしくて困った。

今年のアルバムから。
2127.jpgハイイロマルハナバチBombus deuteronymusかニセハイイロマルハナバチB. pseudobaicalensisのどっちか。北海道にて。

野外で生きたワーカーを見て区別するのは至難。ただし、頻度的にはニセのほうがよく見かけるらしい。

今年のアルバムから。
2126.jpgシュレンクマルハナバチBombus schrencki。北海道にて。

日本では北海道の道東に分布が限られる。これに酷似したミヤママルハナバチとは、基本的に分布域が重ならない。これとミヤマは、全体的に毛足が長く、体型がマルハナバチの中でも特に丸っこくて愛らしい。

初夏に北海道へ調査で渡った際、足を伸ばして根室の岬周辺まで出向いた。ここにしかいない精霊を見るためなのだが、それは至難を極めた。精霊はもともと数が少ない上、近年ここに定着しつつある外来種に生息基盤を崩されかけており、非常に危機的な状況にある。その外来種は精霊のみならず、シュレンクをはじめとする在来種マルハナバチ類の生息、さらにそれらに受粉を依存してきた在来野草類の生息をも脅かそうとしている。

2082.jpgコバネアオイトトンボLestes japonicus。山口にて。

小雨の降りしきる中、恐らく既知産地でない場所で見つけた。かなり珍しいが、本当はコレなんかより遥かに希少で美しい体長2mmの精霊を見たかったのである。全くいなかった。

今年のアルバムから。
2027.jpgコシビロザトウムシ一種Parabeloniscus sp.。屋久島で馬に食わすほどの数見たが、屋久島でこんな生物の記録はない。

2026.jpgコシビロザトウムシ属は、国内では3種のみ知られており、紀伊半島、沖縄本島(とごく近接する島嶼)、久米島のそれぞれから1種ずつ知られる。屋久島からは知られていない。最初、コアカザトウムシのちょっと大きめの奴かと思ったが、ちょっとどころではない程の大きさだし、体形が完全にコシビロのそれだ。
ケツから槍が突き出た個体とそうでない個体が同所的に見られ、恐らく突き出ているのがオス。沖縄本島にいるオヒキコシビロP. caudatusに似ているが、それよりも槍の突き出しが長い。そして、第4歩脚タイ節内側に1本トゲがある。オヒキは2本あるようだが・・。いずれにしても、地域固有性の高いものゆえ、これは未知の新種であろう。新種だったところで、別に俺はザトウムシの専門家ではないので記載もできないのだが。誰か記載しないかな。

コシビロザトウムシは地下性傾向が顕著なグループで、広めの地下空隙や洞窟に生息する。屋久島には洞窟らしい洞窟などないし、ガレ場のある場所も限られる。洞窟もガレ場もない場所にこの手の生物が住むとしたら、あの環境しかないだろうな・・と予想していた、まさにそこから多数出てきた。

今年のアルバムから。
2024.jpgオオスナハラゴミムシDiplocheila zeelandica。屋久島にて。

砂原というから乾いた河川敷にいるものだと思っていたが、湿った薄暗い森でいくつも見た。大形で重厚な種。顎が強靱で、なおかつ左右非対称の形態をしている。陸貝を食うための適応と思われるが、この仲間の生態の詳細はよくわからない。

2023.jpgかなりかっこいい甲虫だが、本当はオオではなく無印の奴を見たいのである。近年、採った人間がいるんだろうか。オオに比べて異常に希少らしく、確実にそれであると信用できる生態写真がネット上に一つも存在しない。