去年のアルバムから。
2169.jpgヨナグニアカアシカタゾウムシMetapocyrtus yonagunianus。与那国にて。

世界一硬い虫カタゾウムシに近いが、少し違う仲間。似た仲間は東南アジアにいるが、この種は与那国特産。道端のセンダングサの上で見つかる。

去年のアルバムから。
2177.jpg多分ウスチャツブゲンゴロウLaccophilus chinensis。与那国にて。

休耕田など、水深のごく浅い止水域に住む。うねうねした複雑な模様が美しいが、米粒サイズなので一部の奇特な人間以外は傍にいてもかえりみないことが多い。

これとシャープなんとかは、どこがどう違うんか未だよくわからない。

1312.jpgトゲオオハリアリDiacamma sp.。沖縄にて。

大型で、強力な毒針を持つ。市街地でも生息するが、なぜか生息域は非常に限られている。吸虫管で吸うと、獣臭さを感じる。アリは種により、吸ったときの匂いと味が違う。トビイロケアリが一番甘酸っぱくて美味なのを知る者は少ない。
巣内は比較的広く、居候の住み着く余地があるため、暴けば高率でアリヅカコオロギを採らせてくれる優等生。ただし、これ特有に寄生する好蟻性生物は明らかに存在しない。トビムシ、ワラジムシ等どんな種のアリにも寄生できるジェネラリストの「駆け込み寺」でしかない。

1322.jpgトゲオオハリアリの脚にしがみつくアリノストビムシ一種 Cyphoderus sp.。この仲間は、しばしばアリの体表に乗って移動する。移動性の強い熱帯のアリで顕著に見られるが、日本本土でも気をつけていれば年に1回くらいは見られる。
アリノストビムシ類は何種がいるが、1種の分布域がしばしばかなりの広域に及ぶ。アリにくっついて容易に移動分散できることが、彼らの異常な広域分布の様を説明するかも知れない。

1313.jpgシワヒメアリMonomorium latinode。久米島にて。

体長2mmがデフォルトのヒメアリ属の中にあって破格の超巨大種で、なんと3-4mmもある。荒れた場所で見かけるが、基本的に多くない。一見、危険な毒アリ・ファイヤーアント(アカヒアリ)に似ていなくもない。
ただでさえ生息密度が低い上、コロニー規模も小さいので、当然アリヅカコオロギを捕らせてくれない。ただ、もしかしたら当たりくじを隠している可能性がある。

沖縄本島の那覇のヒメアリ類の巣から、キボシアリシミLepisma albomaculataという謎の好蟻性昆虫が一度きり見つかっている。一般的にアリシミと呼ばれているメナシシミ科ではなく、人家に侵入するセイヨウシミと同属の、ちゃんとしたシミである。ただし体長2mmほどの極小種のため、仮にいてもトビムシの類と勘違いして認知していない可能性がある。
恐らく、ヒメアリに限らずあらゆるアリ種の巣にいる可能性が高い。しかし、近年の記録は一切ない。那覇の公園ではかなり執拗にあらゆる種のアリを調べているが、いまだに箸にも棒にもかからない。

2180.jpgいわゆるクメジマミズフナムシ。久米島にて。

久米島の、特定の石灰岩洞窟周辺に固有。未記載種らしく、正式な種名を未だ聞かない。フナムシと言えば海っ傍が世の摂理だが、これがいる洞窟は海岸からかなり離れた内陸にある。
大昔、恐らく洞窟が海と通じていた時期があり、その時にやって来た者たちがやがて封じ込められ、独自に分化したんだろうか。

写真にするとうまく色が出ないが、薄い青色の地に黄色いスポットを走らせた、爽やかな色彩。眼もクリクリしてて可愛らしい。しかし、日中は石灰岩に開いた深い穴ぼこや裂け目のかなり奥に潜んでおり、一匹とてこれを見ることができない。

去年のアルバムから。
2194.jpgたぶんチビコツブゲンゴロウNeohydrocoptus subvittulus。久米島にて。

似た種が多い仲間。ゴマ粒より小さい。一般的なゲンゴロウに比べてあまり泳ぐのに適した姿をしておらず、ガムシのようにバタバタ泳ぐ。

去年のアルバムから。
1311.jpgアシナガキアリAnoplolepis gracilipes。沖縄にて。

ヒゲナガアメイロアリParatrechina longicornisの死骸を運ぶ。既に死んだものを拾ったのか、自分で戦って殺したのかは知らない。このアリは、何度撮影し直しても上手く撮れた気がしないものの一つ。アシナガキアリもヒゲナガアメイロアリも、脅かされたときのめまぐるしく不規則な動きから、ともにクレイジーアントの名で愛されていない。
映画「アントマン」に出てくるパラトレキナ・ロンギコルニスは、明らかにヒゲナガアメイロアリではなくアシナガキアリ。両方とも俗称がクレイジーアントだから、制作側は区別しなかったのだろう。あれだけ作り込んだ内容なのに、その辺疎かにしちゃイクナイ。

侵略的外来種として悪名高い害虫だが、少なくともアリヅカコオロギだけは必ず採らせてくれる使える子。俺はこの国で、最もこのアリを愛する者を自称している。

去年のアルバムから。
1310.jpgナンヨウテンコクオオズアリ(ブギオオズアリ)Pheidole parva。沖縄にて。

荒れた場所にはたいていいるド普通種。東南アジアの広域にわたり分布すると言われていたが、それらの中にはどうも外見で区別しがたい数種が混ざっているらしい。土中に営巣するが、巣内の坑道が小さすぎてアリヅカコオロギがほとんど入らず、無駄に多いわりに使えないアリ。

去年のアルバムから。
2183.jpgウデナガ(ヒナ)マシラグモMasirana longipalpis。未熟個体の、恐らくメス。

沖縄本島を中心とした、南西諸島の石灰岩洞窟に分布する洞窟性クモ。住宅地すぐ脇の防空壕にも生息する。岩の隙間に目の細かいシート状の網を張り、その裏側に張り付いて獲物を待つ。
ガラス細工のように半透明で、繊細な体をしている。また、ストロボ光を浴びせる角度により、脚は妖しい燐光を返す。洞窟性の傾向が強いマシラグモ科にあって、富士山の地下風穴に固有のフジマシラグモに次いで特に形態的特化の程度が激しい種。眼は退化傾向にあり、また個体によってその程度が異なる。

狭い岩同士の隙間に網を張るため、レンズをねじ込むのが難しく、撮影は厄介。レンズのこばを岩にガンと当てた震動で、クモがびびって奥の隙間に逃げ込んでしまい、そのまま30分くらいは機嫌を直さない。
しかも、このクモの網はものすごく繊細かつ軽い。完全無風で空気の流通がない洞窟に張られるため、風で破けることをまったく想定しない造りをしている。こちらが傍でちょっと身動きしただけで起きる空気の流れにより、台風に煽られるかのごとくブルンブルン網が揺さぶられてしまい、クモの機嫌がなお悪くなる。

2185.jpgこのクモの形態的特化の真骨頂は、オスにある。メスよりもさらに繊細な姿をしている。その上、口元から生える触肢の長さ。くの字に曲げているが、まっすぐ伸ばせば体長の倍近くに及ぶ。国内で体長に対し触肢がこんなに長いクモは、マシラグモ科はおろか他分類群のクモを探してもいないんじゃなかろうか。
近年国内外で見たクモの中でも、一二を争う程俺を感激せしめた者。あらかじめ記載文のスケッチを見て、どんな姿をしているかは知っていた。しかし実際対峙したとき、思わず溜息をついてしまった。

2184.jpg日本には、まだまだ不思議で面白い生き物が沢山いる。しかし、その大半は一般市民の手に取れる図鑑には載らない。一部の研究者だけしか入手できないような学術論文に、バラバラに解剖された種同定に必要最小限のパーツのスケッチが載っているだけだ。もちろん、テレビの自然・動物番組にも映されない。
一般市民にとってそういう生き物が存在することを認知するための、そういう生き物の生きたままの姿を見るための機会が尽くない。「アリの巣の生き物図鑑」が出版されたのも、そして今精霊図鑑を作ろうとしているのも、日本の自然科学普及における上記のようなざまに小石をぶん投げることを意図してのことだ。

天才ナントカ動物園も、ナントカが来たも、犬猫猿や象ライオンはもういいから、足元にいるこういうのをもっと取り上げましょうよ。

去年のアルバムから。
1314.jpgコブナナフシDatames mouhoti。沖縄にて。

普通にいる割りに、居場所が決まっていないので偶然以外で見つけられないものの筆頭。擬態で有名なコノハムシの仲間として長らく扱われていたが、最近その見方が否定されたらしい。

クーバー

1354.jpg沖縄の蜘蛛。

一見どこにでもいる雰囲気で何の有り難みもないように見えるが、常人の想像を超えたとんでもない環境にのみ特異的に住むもの。本当はコレと同所的に住むもっと珍しい奴を探していたのだが、こいつばかりが無駄に見つかって大層面白くなかった。とはいえ、こいつも全国的には相当珍しいであろう。

しゃがんで地面ばかり見ていたら、頭上すぐ近くを大きな影が低空でさっとよぎった。ふと見上げたら、足と首が長くて全身白い巨鳥が、首を前方にまっすぐ伸ばして飛んでいった。嘴は黒くて長くて先端が無駄に幅広かった。変な鳥もいるものだ。

去年のアルバムから。
2181.jpgオチバゾウムシ一種Otibazo sp.。沖縄にて。

土壌性の微小種。飛べないため、各地で種分化しているらしい。眼はあるのかないのか分からないほど退化している。ゾウムシ界のメクラチビゴミムシみたいな奴だが、洞窟にいるわけではない。海外には、まさにメクラチビゾウムシと呼ぶにふさわしい洞窟性種が数多いる。

メクラチビで思い出したが、何年か前にイザリウオという魚の名が差別的だと言って、カエルアンコウに変えられる出来事があった。当時、テレビでやっていた「どうぶつ奇想天外」で、イザリウオを特集する番組が放送された直後(その時はイザリウオの名で放送していた)のことだった。それから半年も経たないうちに、同番組でまたイザリウオの特集をやったのだが、その時には完全にカエルアンコウとしか呼んでいなかった。改名の経緯には一切触れず。
番組は、おそらく魚の学会がそう決めたのに従っているだけな訳だが、それでもまったく同じ番組内でたった半年前に違う名前で呼んでいたそれを、なんの経緯説明もなくもともとカエルアンコウという魚がいたかのようにイザリウオを呼んでいる様を見ていて、なんかすっきりしなかったのを覚えている。

去年のアルバムから。
2182.jpgカドヒメアリMonomorium sechellense。沖縄にて。

公園などで石を裏返すと、しばしば小規模な巣や坑道が形成されているのを見る。日本産ヒメアリ属としては珍しく、胸部の後ろ(前伸腹節背縁後方)は丸まらずに角張る。南方系の極小種。

去年のアルバムから。
2193.jpgシナコガシラミズムシPeltodytes sinensis。沖縄にて。

南西諸島の池にいる。同所的に酷似した種がいるが、顔に麻呂眉みたいな黒点がある方が本種。だったはず。ゲンゴロウの親戚筋にあたるコガシラミズムシ科は、少なくとも日本産種はみな米粒サイズのちっこい虫。ゲンゴロウに比べれば遥かにマイナーだがとびきり美しい水生昆虫。模様と彫刻が神がかっている。

しかし、日本産の名前が付いているコガシラミズムシ約10種のうち、既に半分近くが環境省の絶滅危惧種入りしている。彼らの生活に必須たる、水深が浅くて水草の多い池や湿地が日本中から急速になくなっているからだ。道路拡張工事やら水田の畑作転換やら、流行のメガソーラー建設やらのせいだ。

善吉

2205.jpg先日、ココノツノクニの某所まで行った。ある精霊の潜む隣界に入る許可をとるため。

その現場は街からはるか遠く離れた山奥にある洞窟なのだが、いろんな理由から勝手に入ることが厳重に禁じられている。だが、そこに行かない限り絶対に仲間に出来ない精霊が二人いるため、泊まりがけで場所を管轄する関係省庁へ単身挨拶回りに出向いたのだ。
いつまで居られるか分からないココノツノクニ在住中、いつか必ず行かねばならないと思ってた場所。今を逃したら、もう一生あんな場所に行く機会は作れない。

結論からいえば、許可は取れた。ただし、行く前に地元警察署に出頭し、断りを入れる条件付き。近いうち、ラタトスクのクルーを募って、現場へ行く。何しろ、霊波反応の強いその洞窟は、筆舌に尽くし難いほど危険な場所だ。日本の既知洞窟中でも有数の総延長を誇るそこは、全く観光整備されてない自然の場所。
複雑な立体構造をしており、僅か幅30cm未満の隙間を、泥とコウモリのクソまみれになって這い進まねばならない。今なお先行きを知らぬ通路が幾つかあるらしく、下手に入ると遭難する恐れがある。さらに、内部には底無し地底湖が何箇所も口を開けている。中には縁が高さ5m近くのなめらかな粘土傾斜になっているという、巨大アリ地獄のような地底湖もある。はまったら、自力では絶対に這い出せないのだ。
今までそこそこあちこちの洞窟に入ったクチだが、今回の場所は「戦争」史上最も過酷な作戦になるだろう。そこまでの思いをしてでも、あの紅い奴と白い奴には会わねばならないのだ。

ペイヴァーシュヘレヴ

2099.jpg
マオウカレハカマキリParablepharis kuhlii。タイにて。

極めて稀。野外で生きた個体をみた日本人が、史上何人いるだろうか。この個体も、自力で発見したものではない。前々から本の写真で見て、いつか実物を見たいと思っていたもの。巨大な生物を想像していたが、意外と小型だった。

2100.jpg
頭の角、強靭な鎌、その内側の毒々しい色彩、まさに魔王の風格。この生物は、ほっとくと枝の裏側にぶら下がった体制で定位する。逆さまの状態が本来の姿なので、ここに示した図は一番上の以外は上下”反転”。

2098.jpg
「消えた消えた、ようやく消えた!私を惑わす奸佞邪智の人間が!」

2094.jpgタイの水溜り。宿舎のそばにある。

夜間はヘビやカエル、フチトリもどきゲンゴロウにアオヘリオガサワラもどきアオゴミどもが運動会。朝になると、それらはかき消すようにいなくなり、トンボとカトリバエと狂三くらいしかいなくなる。夜間のほうが、生き物の気配がだんぜん濃い。如何に熱帯では、夜のフィールド調査が欠かせないかが分かる。

この宿舎の近くには、もっと広大な池とそれを取り巻く湿地帯があるが、宿舎からかなり歩かないといけない。最近、近辺でゾウが出没して人が踏み殺されたため、行政命令により夜間は遠出が禁じられてしまい、行きたかったのに行けず。オオヒラタトックリゴミムシを採る夢が絶たれた。

2147.jpgカトリバエ一種Lispe sp.。タイにて。

とても種数が多く、互いに酷似していて同定困難な仲間。日本にも沢山いる。湿った土や藍藻類で覆われた地面が少しでもあれば、都市部にも多い。
凶暴で残忍な性格。水たまりの周囲を素早く徘徊し、羽化してくるユスリカなどを血眼で探して回る。獲物を見つけると一直線に走り寄り、言い訳も聞かずにいきなり太い口吻を突き刺して殺す。骨の髄まで中身を吸い尽くし、亡骸は無造作にその辺にうち捨てる。

あまり特殊な外見をしていないが、捕殺能力の高い優秀なハンター。

2120.jpgキイロサシガメの近縁種。タイにて。

夜間、湿ったぬかるみに現れる。一見してサイズと色調が同所的にいるミイデラゴミムシの仲間そっくりで、おそらく擬態している。ゴミムシと違って屁はこかないが、鋭い口で刺す。

2146.jpgたぶんオキナワスジゲンゴロウ。タイにて。

浅い水たまりに、佃煮にする程いた。オキナワスジは東南アジアに広くいて、日本では南西諸島で見られる。日本では近年生息環境が悪化しており、以前よりかなり減ったが、まだそこそこいる。東南アジアでは、浅い止水域さえあればいくらでも見られるド普通種。

オキナワスジと書いてしまったが、普通のスジゲンゴロウも東南アジアでは地域によりこういう模様になるらしく、正直なところ上の個体がどちらかはよく分からない。タダスジゲンは日本からは絶滅したとされており、日本ではもう見ることが叶わない(本当は西方の辺鄙な島のため池に、少しはいると信じている)。どうしても見たいので、東南アジアの水辺に行くたびにいつも探しているが、少なくとも日本にかつていた個体群のような模様の個体にはまだ遭遇できない。



本日、とても遠い国からはるばる日本に帰国。すごく素晴らしかったが、いかんせん愛の国ガンダーラ並みに、余りにも遠過ぎた。しばらくはもういいかな。