2229.jpgテナガカミキリAcroinus longimanus。フレンチギアナにて。

2230.jpg超巨大種で、男の夢。実のところ体長はさほどでかくないが、オスはとにかく前脚が長いため、目に入るサイズは凄まじく見える。宿舎そばの伐採地に倒れた倒木に、いつも何匹も来ていることが分かった。
掴むと激しくギシギシギシと言い、すぐ空高く飛んでってしまう。しかし、一時間ほど経って伐採地に行くと、明らかに同一個体が戻って来ているのだった。

2228.jpg模様がほんとに美しい。まさに南米の道化師。

伐採されて横倒しになった大木は、完全に地べたに倒れておらず、浮いた状態になっていた。大木の表に出ているカミキリを軽く脅かすと、その浮いた大木の地面側にまわって身を隠そうとした。結構下草やらが絡んで入り組んでいるゴミゴミした場所で、こんな腕の長い格好じゃ狭いところに入りづらいだろうにと思ったが、それは杞憂だった。
彼らはまるで脇を締めるような体勢で、長い腕を胴体の横に折りたたみ、狭い隙間に難なく直行したのだった。つまり、こいつらは中脚と後脚の4本で自発的かつ軽快に歩ける。

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2284.jpgカノコガの類。フレンチギアナにて。

アジア界隈では似たり寄ったりな雰囲気のものが多いカノコガ類だが、南米ではすさまじく多彩な色彩や姿をしている。そして、多少ともハチに似せた外見の種が目立つ。いくつかの種の擬態は神がかっており、ピンポイントでモデルのハチの種を特定できるレベル。

白面の者

2287.jpgアシナガバチ。フレンチギアナにて。

夜間灯火に多数飛来し、顔面を直撃したり服の襟から入ったりするので、それなりに危険。日中はまったく見かけないので、恐らく夜行性の種。どこまでも腹白い、正直者。

2281.jpgダエンマルトゲムシ。フレンチギアナにて。

夜間灯火をたくと、イヤと言うほど飛来するクソザコ虫。米粒ほどのサイズで、立派なツノもキバもない。ただ黒いだけの奴なので、甲虫マニアすら白布にたかるこれを自動的に視界から外すような手合い。
しかし、これが本来どこでどんな生活をしているかを、基本的に人類は未だ知り得ていない。こういうクソザコ虫に限って、信じがたいめくるめく生態を持っているに違いないのである。なお、過去にアリの巣で採れたという噂がある。

ダエンマルトゲムシ科Chelonariidaeは世界的に分布は広いが、種数はきわめて少ない。

2242.jpg全身緑の美しいアブ。フレンチギアナにて。

夜間灯火をたくとみだりに飛来するため、とても鬱陶しい。まあ、彼らに言わせれば夜中わざわざジャングルに分け入って煌々と灯りをたく奇行に走る人間共のほうが、よほど鬱陶しいだろう。

日中は見かけず、どこで何をしているのか不明。

2260.jpgスジコガネモドキ。フレンチギアナにて。

スジコガネモドキ族は、見た目はただのコガネムシにしか見えないが、分類学上はカブトムシの範疇に含めるべき仲間。灯火にみだりに飛来する。
南米には、見た目だけでは何の仲間かよく分からないものが多い。

2282.jpgシャクガモドキMacrosoma sp.。フレンチギアナにて。

シャクガモドキ科は南米特有の分類群。どっからどう見ても蛾にしか見えないが、紆余曲折あって分類学上は蝶の範疇に含めることになっている。いずれの種も見た目は小汚いただの蛾で、夜間灯火をたくといくらでも飛来する。トンボのように細っこい胴体と、幅の狭い尖った翅が特徴。

古くは蛾と蝶の中間みたいだからガチョウという、今日び幼稚園児でも憚るようなセンスの名で呼ばれていた時期もあった。

オケランパ

2288.jpgケラ。フレンチギアナにて。

地球の裏側に行ったとて、ケラはケラの形をしている。

2286.jpgオビヤスデ。フレンチギアナにて。

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2290.jpg南米特有のカマキリMantoida sp.。フレンチギアナにて。

かなり異質な雰囲気。遠目にはカマキリよりもヒメバチの類に見える。夜間灯火に飛来するが、触角を高速震動させ、小刻みに立ち止まりつつ素早く走り回り、すぐどこかへ飛び去る。
見た瞬間、かの有名なカマキラズかと思った。このエリアでは、ついに一度もカマキラズを見なかった。ペルーでもエクアドルでも見なかったが、あいつは一体どこに行ったら見られるんだ?

バスコだ

2243.jpgヒキガエル。フレンチギアナにて。

日本のトノサマガエルほどの小型ガマで、全体的に目立ったイボがなく鮫肌状。雨の夜にジャングル内の水たまりに集結して、「クルルァーン、クルルァーン」と転がすような良く通る美声で歌う。ガマらしく、人が傍を往来しても怖じ気づかずに鳴き続けている。

嘆きの悪魔卵

2247.jpgカギバラバチ。フレンチギアナにて。

夜間灯火に来た。日本ではときどき見かけていた仲間だが、まさか地球の真裏にもこの仲間がいるとは思わなんだ。

カギバラバチ科Trigonalidaeは、非常に手の込んだ複雑な生態を持つ。メスは様々な植物に大量かつランダムに卵を生みつけまくる。その卵が偶然、近くを通りかかったイモムシ(ガやチョウの幼虫)に葉と一緒に齧られて飲み込まれた時のみ、そのイモムシ体内で孵化する。近くをイモムシが通りかからないままだった場合、卵はそのまま孵らず死ぬ。ここからの運命は、カギバラバチの種によって大きく異なる。

ある種の場合、そのイモムシ体内に既に寄生しているヤドリバエの幼虫に寄生する。ヤドリバエを体内に宿しているイモムシに食われないと、ハチの幼虫はもうそこで死ぬしかない。別の種の場合、そのイモムシがスズメバチに見つかって殺され、肉団子にされた際、その肉団子にまぎれてスズメバチの巣に運ばれ、スズメバチの幼虫に食われる形でこれに寄生する。自分がかりそめに寄生したイモムシがスズメバチに発見されず、そのまま無事に育ってしまったら、ハチの幼虫の命運は尽きる。

この個体は、そんな宝くじみたいな運任せの幼虫時代を、ラッキーマンの如く切り抜けてようやく成虫まで育った強運の持ち主である。その強運も、同行した虫のおじちゃんに摘まれて毒ビンに放り込まれる形で尽きたが。

2299.jpg南米糞転がし。おそらくCanthonであろう。フレンチギアナにて。

逆立ちして糞玉を転がす習性をもつ「いわゆるスカラベ」だが、ファーブル昆虫記に出てくる本当のスカラベとは大して近縁筋ではない。逆立ち糞玉転がしの習性は、莫大な種数を包含する食糞性コガネムシ類の中で複数回独立に進化している。

糞転がしは、普段は森の落ち葉や土の中に潜って隠れているが、大雨の直前には草葉の上に登って避難する。気圧の変化等を事前に感じ取ってそういう行動を取るのだと思われるが、不明。この21世紀の世にもなって、俺を含め誰一人この謎を本気で解明しようとしない。

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2297.jpgホタル・ベニボタル擬態蛾。フレンチギアナにて。

有毒な甲虫に似た色彩で、敵に標的にされないようにしている。上の2種のように、この手の色彩の蛾はだいたいヒトリガに多い。ヒトリガはおおむね有毒の者が多いから、この場合はミュラー型擬態になるだろうか。
この地域では、ベニボ擬態の蛾はそこそこ生息密度が高かったが、その割にモデルたるベニボはほとんど見かけなかった。意味ねーだろうに。

2234.jpgゴキじみた雰囲気の扁平ボタル。こういう形のホタルは、南米を象徴する虫の一つ。ゴキっぽいのは見た目だけで、ちゃんとした正式なホタルなので光る。

フレンチギアナにて。

天王石

2219.jpgハムシ一種。フレンチギアナにて。

タナトスの怪鳥

2258.jpgフクロウチョウCaligo sp.。フレンチギアナにて。

南米特有の禍々しき不気味な巨蝶で、弱き者は見ただけで死ぬと言われる。嘘。

胴体部分が凄まじくぶっとい。夕方、腐った果物に好んで飛来する。最大の特徴は、後翅裏の目玉。翅を広げ逆さまにするとフクロウの顔そのものになるため、この名がある。
しかし、自然下でこの蝶が翅を開き、なおかつ逆さまの状態で止まるなど決してあり得ない。だからきっと捕食者はこの蝶を、我々が予想しえない別の何かと見なしてるかもしれない。

一飲み

2206.jpgふと膝小僧を見たらいた。やたら大形で恰幅がいい種だったので、もしかして日本では滅びたかの有名なPulex irritansか?と思ったが、捕らえる間もなく吹っ飛んで消えた。

吸血性シリアゲムシの格好良さは、あまりにも過小評価されてはいまいか。下手なカブトクワガタなんぞより、ずっと魅力的な外形に見える。

フレンチギアナにて。

2224.jpgキヌゲキノコアリSericomyrmex sp。フレンチギアナにて。

ハキリアリの一種だが、青葉を切らない。落ち葉や枯れ枝、植食性昆虫の糞など、死んだ植物組織を集めて巣へ持ち帰り、餌であるキノコ栽培用の苗床にする。

いつかのペルーのジャングルでは、よくも勝手に道標を片して遭難させてくれたな。

アントリオワーム

2248.jpgウスバカゲロウの幼虫。吸血を好む。倒すと稀に地虫玉やイワノコムシ等のアイテムをドロップする。

フレンチギアナにて。

2235.jpgコカブトの一種。フレンチギアナにて。

体長15mmほどしかない極小種。コカブトの仲間は日本では1種ぽっちしかいないが、南米では非常に多様化している。こいつのように本当に小さい種もいれば、もはやオオカブトと呼ぶべきサイズのものも。

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2222.jpgクシヒゲのカマキリVates weyrauchi?。日本のハラビロカマキリサイズの中型種。南米では珍しくはないが、個性が光る。

フレンチギアナにて。

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2296.jpg撮影の至難な蛾。フレンチギアナにて。

何が至難かって、写真に撮ると肉眼で見たのと同じ色に絶対写らないのである。上の種の翅にある白い丸紋は、実際には白ではなく鏡のように周囲の全てを映しこむほどの銀だ。

哀愁の森に霧が降るのだ

2249.jpgロスチャイルドヤママユRothschildia sp.。フレンチギアナにて。

中南米を代表する美麗な大型蛾で、似た種がいくつかいる。ある霧降る夜に、灯火に飛来した個体。これまで現物を標本ですら見たことがなく、てっきり模様の雰囲気からヨナクニサンくらいでかいのかと思っていたが、せいぜいシンジュサンほどしかないのが残念。

モスラサイズのこれの翅の上で寝転んだら、さぞかしフカフカでよかろう。

リィ・ドリュアス

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コバネツツシンクイ。フレンチギアナにて。

木材穿孔性で、夜間灯火に飛来する。これに外見の似た、上翅の退化したツツシンクイは、世界中の熱帯地域で見られる。今回アジア大陸アフリカ大陸に続き、南米大陸でも発見に至った。

ロボティクス

2237.jpgメカじみたキジラミ。8mm近くもある巨大種で、最初見た瞬間、にわかには分類群が推測できなかった。フレンチギアナにて。

2214.jpgアツバコガネ。フレンチギアナにて。

夜間灯火によく飛来する。触ると、割と丸っこい形になる。シロアリの巣に侵入するマンマルコガネの仲間はアツバコガネに近いが、それをよく分からせてくれる存在。

2200.jpgコオイガエルColostethus sp.。フレンチギアナにて。

毒ゲェルだが、ほとんど対人毒性は持たない仲間とされる。とはいえ、素手で掴む気にはならない。警戒心が強く、人を見るとすぐ逃げていってしまうため観察は難しい。色彩もこの手の仲間としてはかなり地味。

2201.jpgジャングル内の小さな溜まり水に産卵し、親は定期的にその成長具合を見に来る。オタマが孵ると、親はそれを背中に乗せて、より広い水場まで運ぶ。そのためコオイガエルの名があるが、この習性はこの属に限らず中南米の毒ゲェル(ヤドクガエル科)全般が共有しているものである。

毒ゲェル

2210.jpgヤドクガエルの一種。フレンチギアナにて。

今回滞在したエリアで唯一見た、いかにもそれらしい毒ゲェル。種はよく分からない。毒ゲェルの仲間は種内でも色彩変異が恐ろしく多様で、よほど典型的な外見のものでもない限り素人にはまず種同定など不可能(と個人的に思っている)。
着生アナナスの葉の付け根に溜まった雨水で繁殖する種。警戒心が恐ろしく強く、人が寄るとすぐ茂みの中へ隠れてしまう。毒ゲェルの中でも極めて毒性の強い種などは、敵に食われるなどというイベントがまず発生しないため、日中平気で表をフラフラ出歩くらしい。しかし、こういう警戒心の強い種は、恐らく毒性がさほど強くなくて食われる危険に常時さらされているのだろう。だからといって素手で掴む勇気はないが。

毒ゲェルを素手で触るのは危険だ危険だと言われるが、実際にこの生物に素手で触れた結果、人体にいかなる事態が引き起こされるかについては、あまりにも報告されている実例が少なすぎてよく分からない。ただ、毒蛾に触った時みたいに、触れた箇所がかぶれて痒くなる程度の症状では済まないことは確からしい。

吸血死人

2202.jpgハリナシバチの多数飛来する伐採倒木に陣取るサシガメ。フレンチギアナにて。

全身をヤニに覆われており、間違ってヤニを取りに体に止まったハチを捕らえて食う。このハチしか食わないスペシャリスト捕食者である可能性が高い。サシガメの止まっている場所の真下には、こいつに殺害されたハチ共の屍が積み上がっていた。
全身を覆うヤニはカメムシ自身が体から出したものではなく、周りのヤニを掻き取って体に塗りつけたもの。実際に塗りつける瞬間を見たが、撮影できなかった。