2408.jpgハネナシコオロギGoniogryllus sexspinosus。福岡にて。

西日本で見られる小型種。翅がそぎ落としたようになく、飛ぶことも鳴くこともできない。移動能力に乏しいため、局所的に多産して他では一匹も見かけない向きが顕著。鬱蒼とした森林地帯の地面におり、石の下に小さな部屋を作ってそこにいることが多い。
翅はないものの、一切の発音行為をしないかは検討の余地がある。体をモノに打ち付ける等して、絶対に仲間同士で交信していると思っているのだが。

本日より、魔境に突入。向こうで睡魔リリエールとか睡魔サッキュバスとかに魅了されなければ、3週間弱で現世に戻る模様。

緊縛プレイ

2412.jpg
2413.jpgカニグモ一種Xysticus sp.の交接。福岡にて。

たぶんヤミイロかオオヤミイロあたりなのだろうが、この仲間を生殖器形態の精査なしに種同定するのは刑法で禁止レベルの禁忌。

カニグモの仲間は、交接の際にオスがメスを糸で縛り付けることで著名である。昔は、オスがメスに食われないように拘束するのだとか言われていたと思う。しかし、メスは別段抵抗するそぶりも見せぬまま縛られるようだし、この拘束自体もちょっと動けば比較的たやすく解ける。単に儀式的な行動のようである。

2409.jpgハマベミズギワゴミムシかアオミズギワゴミムシのどっちか。九州にて。

精霊を探すつもりで苦労して出かけて、現地では精霊だと思って夢中で撮影したのに、家に帰って調べたら偽物らしいことがわかり、FXで有り金全部溶かす人の顔になった。

とある川の河口から数kmまでの範囲は、岸辺が芦原となっており、塩性湿地の様相を呈する。ここで10数年前、余所では発見しがたい精霊複数名が出現した記録が残されている。それらは、潮が引いた水際の藍藻類が堆積したようなところを素早く走り回っているらしい。なので、行けば簡単に仕留められるかと思って出向いたのだが、考えが甘かった。
その川縁は地面が泥質なのだが、この泥がすさまじく柔らかいため、入ると膝どころか腰まではまってしまう。水際まで近づけないのである。かなり頑張ってどうにか水際までの到達を試み、その過程で上の奴が目の前に現れた。泥の上で見たから絶対精霊だと思ったのに。偽物は砂質の所にしか居ないんじゃなかったのか。

目的の精霊は、体が金属光沢を帯びる緑で、翅が多少ともオレンジ。上の奴と、全く同じサイズとカラーリングと体型をしているため、野外で区別することがほぼ不可能である。いや、野外どころか標本を見比べても何が何だか分からない。どうやって区別するんだこれ?図鑑を見ても、まるで要領を得ない事しか書いてない。

精霊は、かつて塩が塩田で作られていた頃、そこに沢山いたらしい。しかし、今は塩の製造方法が変わり、塩田というもの自体が無くなってしまったため、見られる場所が日本のどこからもなくなってしまった。ネットで調べても、「少し前までは塩田跡地に多かったが、つい最近埋め立てられて壊滅した」みたいなことが、既知産地全てにおいて書かれている。実にクソである。

既知産地(もうたぶん滅びているが)はどこも居住区から著しく遠く、件の河口はなんとか近場と呼べる範囲にある場所で、どうしてもここで見つけたかったのだが。もう一度行って、もう少し海に近い辺りで探してみるか。しかし、海に近くなるほど、あの川は水際に寄れなくなる。どうしたものか。

2406.jpgブチサンショウウオHynobius naevius。福岡にて。

九州で初めて山椒魚を見たかもしれない。長野でさんざ見慣れた黒、飛騨、箱根のどれとも似ていなくて、じつに新鮮。

捕食箱

2384.jpg
アオサギArdea cinerea。福岡にて。

都市公園の池のほとりに、石のように動かずたたずんでいた。あまりにも人怖じせず動かないので、置物の可能性を本気で疑ったほど。この生き物に手指と尾さえあれば、現存する脊椎動物の中で一番ラプトルに似るのに、と常日頃思っている。

その気になれば触れそうなくらいまで寄れそうだったが、やめといた。サギは脅威となる大形生物が近寄ってくると、反射的にその眼を串刺しにする場合がある。まるで蛇のように長い首を突然ビャッと伸ばし、あの鋭い嘴を相手の眼球に突き刺すのだ。ケガをした野鳥を保護する手引きの本を読むと、丸腰でサギと触れあうのが如何に危険かが書かれている。

大昔、とある地方動物園で飼育係の真似事をしたことがあるが、その時園内で飼われていたサンカノゴイがとにかく攻撃的で恐ろしい奴だった。ケガをして拾われ保護飼育されていた奴だったが、あまりに危険なため俺はそれが飼育されているケージ内に入ることさえ許されなかった。同じ園内で飼われていたトビやらオオタカやらの大型猛禽の方が、まだ話せば通じるレベルだった。
飼育係の長に聞いたところ、奴は最初段ボール箱に入れられた状態で園に運び込まれてきた。箱の蓋を開けた途端、眼を狙って飛びかかってきたらしい。サギと何かを分かち合えるとは思わない方が良い。

存在の消えゆくごみむし

2307.jpg美しき至高の地下性生物。

九州の限られたエリアの地下空隙に特産する。この手の生物としては異例だが、そのエリアには同所的に2種のこれが共存する。

メクラチビゴミムシの名は、世間ではもはや忌み名として扱われているようで、テレビやラジオなどの媒体で話題に登ることはまずない。新聞や博物館などの展示においても、しばしば「メクラ」部分を削除した名で出ている。ひどいのになると、チビさえ抜かれた名で書かれることさえある。もはやただのゴミムシではないか。じきにゴミとムシすら抜かれるのではなかろうか。
恐らく、出版社や主催者サイドの諸々の自主規制規則に基づいて、こういう措置はなされるのであろう。しかし、生物の和名というのは、それ自体が一つの固有名詞なのであって、特定個人の裁量によって勝手に都合よく文字を抜き差ししていい性質のものではないと思う。

オンタケメクラチビゴミムシKurasawatrechus tanakaiという虫がいる。もし、何かの展示やらで「客の心象を害するから」と言って、オンタケチビゴミムシの名で紹介したとする。しかし、この虫とは別にオンタケチビゴミムシTrechus vicariusという全然分類群の違う虫が、既にいるのである。これでは、知らない人が見た場合混乱の元にしかならない。言ってみるなら、モグラをゾウの名で紹介しているようなものである。
分類学に明るくない人が勝手に生き物の名から都合の悪いワードを抜くと、予想もしない場面でこういう変なことが起きかねない。だから、俺はメクラチビゴミムシからメクラを抜いて紹介するようなやり方が嫌いである。

俺はこれまで博物館等の展示でこの虫のことを紹介する際、当たり前だが堂々とメクラチビゴミムシの名を使ってきた。この先、正式な合意を経てメクラはやめましょうということになって改名でもされない限り、死ぬまで使い続ける所存。

2369.jpgイワサキクサゼミMogannia minuta

春先にサトウキビ畑で発生する、日本最小のセミ。頭から翅端まで含めても、小指の第一関節くらいの長さしかない。日中、ジャーーー・・と気怠く鳴き続けるが、日が陰ると黙る。

2370.jpg
サトウキビに産卵する。基本的に現地では害虫。

八重山にて。

2362.jpg
サキシマキノボリトカゲJapalura polygonata ishigakiensis。八重山にて。

隠れてないが、隠れたつもりでいる。

2352.jpgヤエヤマサナエAsiagomphus yayeyamensis

2367.jpg本土では見ない雰囲気のカゲロウ。

脅かすと飛んで近隣の草葉に止まり、そこで体を完全に横倒しにし、影を消してしまう。八重山にて。




翌週、ものすごく遠いうえに筆舌に尽くしがたく危険な場所へ遠足に行くことになった。今までさんざ「死ぬ死ぬ詐欺」をしてきたが、今回ばかりは本当にあっさり死ねるような場所。しかし、こちらも多くの人々の支えを受け、大いなる期待を背負う身。この首そうやすやすとくれてやるつもりはない。

2353.jpgオオミイデラゴミムシPheropsophus javanus。夜間、水田地帯にすさまじい数が出てくる。

2355.jpgコキベリアオゴミムシChlaenius circumdatus。オオミイデラゴミムシより遥かに少ない。

2356.jpgヒメキベリアオゴミムシChlaenius inops。コキベリアオゴミムシより遥かに少ない。

八重山の水田地帯では、これら以外で目に付く大きさのゴミムシなどまず発見できない。
あとオオスナハラゴミ。

2344.jpgハラクロコモリグモっぽい奴。八重山にも分布するのか。

2368.jpg
ツツゲホウグモPoltys columnaris

日中、目視での発見はまず不可能。

八重山にて。

2343.jpgオキナワトフシアリSolenopsis tipuna。八重山にて。

荒れ地の石下でしばしば見かける。本土のトフシアリの巣内には、ハネカクシやらハチやらの居候が生息するのだが、これの巣には悲しいほど何もいない。

2360.jpgキボシセンチコガネBolbochromus ryukyuensis。八重山にて。

糞転がしだが、糞には決して来ない。この21世紀にもなって、たまたま飛んでいるのを叩き落とす以外に採る術を誰一人開発できない生物。夕方、地表すれすれを素早く飛ぶが、それ以外の時どこで何をしているのかが一切不明。地中深くに生えるキノコを食う食わないという噂あり。

日没時、畑の脇の土手で地面をほじくっているのを見た。執拗にそこをほじっており、同じ場所にキイロオオシワアリも数匹関心を示していた。しばらく見ていたが、ある時おりからの強風にあおられ、下にコロンと転がり落ちてしまった。しばらく頭を掻いてばつの悪いそぶりを示していたが、元の現場へ復帰せず飛び去ってしまった。
10分後、手鍬を持ってそこへ戻ると、ほじり跡にはチビシデムシが来ていた。何かそこに埋まっているのかと思い、慎重に10数cm掘り下げたが、硬い岩盤がすぐ出てきてしまい、何も出なかった。

2349.jpgアカダルマコガネPanelus rufulus。八重山にて。

日本に150種前後いる糞転がしの中で、いわゆるスカラベのようにちゃんと逆立ちして糞玉を転がす習性を持つのは、マメダルマコガネ属に含まれるたった4種きりしかいない。どれもミジンコサイズの微小種で、ハナクソ転がしと呼んだほうが相応しい。そのうちの一種がこれ。ミジンコサイズとは言っても、姿かたちは日本産糞転がし中一番スカラベのそれに似ているから面白い。

石を起こしていると、しばしば出てくる。鳥獣の糞が落ちていれば、夜間転がすところを見られる。日本の内地にいるマメダルマコガネよりは生息密度が濃いため、転がす現場には遭遇しやすい。俺は見なかったが。

マメダルマコガネの仲間は、東南アジアにも広く分布する。しかし、それらは糞を転がさず、軒並みアリの巣内のゴミ溜め部屋に住む。

2350.jpgウリミバエBactrocera cucurbitae

現在、与那国以外でも不妊虫放飼しているとは知らなかった。

2364.jpgヒメシュモクバエSphyracephala detrahens

沢沿いの石の上にいるが、いる場所は割と限られる。

八重山にて。

2361.jpgリュウキュウダエンマルトゲムシChelonarium ohbayshii

夜間灯火に来た。生態は一切不明。これと見た目遜色変わらないものを、地球の真反対でも見た。

2358.jpgクロカタゾウムシPachyrhynchus infernalis

某マンガによれば、ゴキブリと相性がいいらしい。信じがたいほど硬い。

八重山にて。

裏切り者の名を受けて

2366.jpgスミナガシDichorragia nesimachusの幼虫。八重山にて。

どう見ても悪魔。

2351.jpgオオミドリサルハムシPlatycorynus japonicus。八重山にて。

すさまじく美しい。そして、写真では見たままの色を再現できない。

2359.jpgマサキウラナミジャノメYpthima masakii

環境省の絶滅危惧種ではあるが、現地ではいたって普通。ただ、いる場所にかなりムラがあり、見るからにいそうな場所で全く見ない事も多い。

2346.jpgシロオビヒカゲLethe europa

薄暗い竹林に住み、かつてはかなりの珍種と謳われた。今でも場所を選ばないと、一つもこれを見られない。環境省レッドには載らないが、載っているマサキウラナミなぞよりは遥かに希少。

八重山にて。

2363.jpgサキシマヌマガエルFejervarya sakishimensis。八重山にて。

日本の内地ではカエルの合唱をゲコゲコだのゲロゲロだのと表現するが、八重山ではガークリャー、ガークリャーと表現する。沖縄の飛行機の機内誌に、八重山のカエルにまつわる昔話が書いてあり、そこにそう書いてあった。ずいぶん変わった聞き方に思えるが、実際に南西諸島のカエルの合唱を聞くと納得する。根本的に鳴き方が、内地のそれと違う。

リュリュリュリューイというリュウキュウカジカ、ゲタゲタゲタというヒメアマガエル、ギャウンギャウンというサキシマヌマガエルからなる三つ巴の合唱を表現するのに、ガークリャー以外の適切な擬音などあるか。

紳士服の

2354.jpgコナカハグロトンボEuphaea yayeyamana。八重山にて。

名前のコナカって何のことだと思ったら、何のことはない。台湾にこれの近似種ナカハグロトンボE. formosaというのがいて、それより小さいという意味でしかなかった。

2347.jpgシロスジメダカハンミョウTherates alboobliquatus。八重山にて。

森林内に住み、人が近寄ると足下からハエのように飛び立つ。東南アジアにいる奴のイメージから、人の気配にすさまじく敏感なものを想定していた。しかし、本種はさほど敏感ではなく、そっと動作すればすぐ逃げ去ることはない。

2348.jpgイリオモテモリバッタTraulia ornata。八重山にて。

派手な色彩。毒があるんではなかろうか。

2345.jpgヤエヤマイチモンジAthyma selenophora。八重山にて。少し前の写真。

歩く剣山。見るからに危険そうに見えるが、見かけ倒し。毒はないし、存外柔らかい。