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シリアゲアリの巣。ケニアにて。

直径50-60cmある大きなもの。最初テングシロアリの巣だと思ったが、アリのだった。樹幹の高い場所に付着しており、採り辛い。しかも、刺激すると中から夥しい数のアリどもが湧き出てきて、こちらに総力戦を挑んでくる。

2498.jpg大形のハナムグリ。ケニアにて。

アフリカは、東南アジアや南米に比べるとクワガタやカブトの種数が多くなく、またどれも大騒ぎするほどは格好良くない。一方で、カナブンやハナムグリの多様性はすさまじく、ゴライアスオオツノハナムグリのようにカブトムシサイズの巨大種も存在する。
カカメガの森にはゴライアスがいるらしいが、姿を見ることはなかった。見るには相応の努力をしないとならないらしい。

2555.jpg精霊。絶滅危惧種。

オオウラギンの場所で意図せず見つけたが、環境からしてコレがいるのは当然であった。ものすごく警戒心が強く、撮影目的で至近まで寄るのは非常に難しい。最後は半ば反則業でデレさせたが、これをまっとうにカメラのフレーム内に納めるのに、半日以上を要した。

地中に穴を掘って営巣するのだが、他の普通にいる近似種と違って開けた裸地ではなく、草が入り組んだ場所を営巣場所に選びたがる。そのため目視での巣の発見がかなり難しく、草原で耳を澄ませて彼らが土を掘るとき発する「ビーッビーッ」という声を頼りに探さねばならない。
巣を首尾良く発見しても、観察には細心の注意を要する。こちらが傍で少しでも妙な真似をすると、すぐに営巣行動をやめて逃げてしまい、もう戻らない。まさか、既に深さ数㎝くらいまで掘り下げている状態で、巣の周りにある邪魔な草をちょっとどかした程度のことで巣を捨てるとは思わなかった。


明日から急遽、北欧の国ギムレーまでアブソリュートソーの調査に出ることになった。滞在期間が短い割に、達成せねばならない目的が多い。

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ツマグロカマキリモドキClimaciella quadrituberculata。本州にて。
※現在、本種の属名はClimaciellaからAustroclimaciellaに変更されたようです。ご教示下さった方、ありがとうございます。

オオウラギンの草原で、オオウラギンを追っかけている時にたまたま見つけた。西日本に分布する珍種で、滅多に見られない。前々から見たかったものだが、こいつに出会うにはあと10年くらいは要すると思っていた。あまりの嬉しさに途中からオオウラギンなどどうでもよくなり、ただでさえ本数が少なく乗り過ごすと致命的なバスの時刻もそっちのけで撮影しまくった。
カマキリモドキの仲間は、どれも色彩が多少なりともハチじみたものになっているが、本種は日本産種としては究極にハチ擬態した部類に入る。色彩ばかりか、くびれた腰など体型までハチに似せているのだ。

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特に背面から見た時のハチさ加減は神がかっており、翅を半開きにすると、これがアシナガバチでなくて何なのだと誰もが思う。ただ惜しむらくは、こいつと似たサイズと色彩のアシナガバチは、日本の本土にはいないのである。てっきりオオカマキリモドキくらいでかいのかと思ったが、キカマキリよりもまだ小さいほどだった。たまたまそういう小さい個体だったのだろうか。
しかし、別に特定のモデルたる種のハチがいてそれに微に入り細に入り似せなくても、ぱっと見で「ハチだ!」と敵に思わせ萎縮させることさえ出来れば、それがこいつにとっての勝利なのだろう。

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これの幼虫期の生態は、今なお誰も解明できない。成虫は夏に突発的に発見されるが、どうも草原など比較的オープンな環境で見つかることが多いようだ。草原に存在する何かを利用して生きている可能性が高い。

きくまさ

アフリカの写真は休憩。

2550.jpgオオウラギンヒョウモンFabriciana nerippe。本州にて。まあ、場所はあそこな訳だが。

せっかく西日本にいるんだし、今がちょうど発生時期だし、このタイミングで見に行かねば一生見る機会がないような気がして、慌てて週末に見に行った。普段ゴミみたいな希少昆虫ばかり見ていると、こういうでかくてチャラい虫を見たくなるのだ。そして、こういうでかくてチャラい虫を見ると、またゴミみたいな希少昆虫を見たくなるのだ。

草原性チョウ類の一種であるオオウラギンは、かつては青森以南の日本各地にごく普通にいたというウソが図鑑に書いてある。しかし、時代の流れにともない日本各地から同時多発的に草原環境が消滅していき、現在では九州と本州の本当にピンポイントの狭い範囲にしか見られなくなってしまった。
日本産チョウ類の中でも特筆して絶滅が危ぶまれる種の一つ。基本的に、北海道と沖縄以外のほぼ全ての都道府県版レッドに名前だけは載っている。そして、書いてある内容はほぼ一貫して「1970~80年代以後、姿を消した」。あの土着チョウ種数が全都道府県中最多を誇る長野県でさえだ。これとヒョウモンモドキとタガメを県内から一匹残らず消したのは、長野県政始まって以後最大の失態であり恥である。

チョウを見るにはまず花を探さねばと思い広大な草原をひたすら彷徨ったが、意外にもあの草原はどこもかしこも花が咲いているわけではなかった。とにかく広すぎるため、この高温多湿の気候の下で右も左も分からず歩くのはケニア並の苦行であった。小一時間かかってようやく花が多い場所を見つけ、そこで標的にエンカウントした。
ちょうどメスの新成虫が出る時期だったようで、スレてない綺麗な個体がいた。噂には聞いていたが恐ろしく巨大で、あまりのでかさに我が目を疑った。これは本当にヒョウモンの仲間なのか。オオムラサキの親戚ではないのか。翅の模様は長野で見慣れたタダウラギンのそれと大差ないのだが、後翅縁に並ぶハートマークが味。

2549.jpg近くに黒いあれもいた。クロオオアリが非常に多い区画で、立ち止まると足下から沢山のアリが這い上ってきて、吹き出る汗を舐めまくっていた。

2551.jpgキハダカノコが沢山いた。普通のカノコガと違って、広域な草原環境が維持された環境でしか見られない。

2548.jpg足下から突然飛び立ったので一瞬まさかと思ったが、想定した種ではなかったのでがっかりした。
この草原のどこかには、これに似た雰囲気でここにしかいない蛾がいる。それの生きたのをどうしても見たいと思っているのだが、あれは夜間灯火をたかないと見られないのと、そもそもその場所が灯火をたいてはならない規則のある場所なのとで、限りなく実現不可能な情勢である。

2427.jpgニセクワガタカミキリ。ケニアにて。

世界中に広く分布する仲間で、なおかつどこの国のものも外見がまるで変わり映えしない。石の下にいた。

アフリカのクッソ地味なチョウ。2438.jpg
2437.jpgウラナミジャノメとかチャバネセセリみたいのとか、日本にもいるような奴。

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アフリカテングチョウLibythea labdaca。日向で汗だくになってシロアリの巣を掘ると、体にまとわりついてくる。テングチョウの仲間は、世界中本当にどこにでも現れる。相当に起源の古い分類群であることが伺える。

ケニアにて。

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2429.jpgアフリカのチョウ。タテハチョウ、ホソチョウ等。

アフリカのチョウは、とにかく地味でぱっとしない外見のものが多い。白か黄色か茶色か黒の奴ばっかり。赤茶けたアフリカの大地に馴染む色彩をしている。

2483.jpgカカメガでは、遮るものの一切ない草原地帯でひたすらシロアリの巣を掘った。40℃以上ある高温、強烈な紫外線を直に浴びつつの作業を連日行い、すっかり疲弊してしまった。

炎天下の草原で元気がいいのは、一部のチョウとトンボくらいなもの。

ケニアにて。

2456.jpgシロアリの塚。Cubitermesのものらしい。

草原地帯にぽつぽつ出来ている。高さ60cm前後の、さほど大きくないもの。しかし恐ろしく硬く、破壊するのは難儀する。

2428.jpgハカマカイガラ。ケニアにて。

雑草にしばしば高密度でたかる。日本にも似たものが見られるが、草に付いている種と土中から見つかる種がいるようだ。

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ナガツツハムシ。ケニアにて。

産卵中。生み出した卵を後脚で挟み、自分のクソでカモフラージュしてから落とす。

2426.jpg銀毛カノコガ。ケニアにて。

日本のキハダカノコを白黒にした雰囲気で、かっこいい。触角が糸状でなくクシ状なのも好印象。アジア界隈で黄色が一切入ってないカノコって存在しただろうか。

2474.jpg牛肉の原料。ケニアにて。

ケニアは至る所が牛の通り道になっている。そのため、どこもかしこも牛のクソだらけで、これを目当てに多種多様な糞転がしが集まってくる。

ケニアでの料理に出てくる牛肉は、恐ろしく固い。まるでタイヤか何かを噛んでいるような気分。こっちの地域では、老いぼれて用済みになった奴から潰して肉にするため、日本で当たり前に食うような柔らかい牛肉にはそうそうありつけないのだ。
カカメガ滞在初日くらいの夕食に、ひときわ固い肉のシチューが出た。固い上にでかい塊で肉が入っており、とにかく食いづらい。やみくもに肉に咬みついていたら、牛肉ばかりか人間の新鮮なタンまで思いっきり咬んでしまい、周囲に気取られないように悶絶した。おかげで盛大な口内炎を舌の裏にこしらえてしまい、アフリカ滞在中ひたすら物を食うのが苦痛であった。

今回ケニアで俺を流血させたのは、ナイロビに潜む強盗ゴロツキテロリストの類ではなく、牛肉だった。

2471.jpg茶畑。ケニアにて。

カカメガでは、森林保護区の周囲をぐるりと取り巻くように、茶畑が作られていた。これは国の政策で行われているもので、違法伐採の重機が森林に突入してこないように防護壁として作らせているものらしい。コーヒーやら茶の栽培は、熱帯の森林破壊の元凶のように思っていたが、必ずしもその限りではないことを知った。

2472.jpgカカメガは基本的に森林地帯からなる場所だが、一部ギャップ的に草原地帯となっているエリアもある。これはかつて山火事で燃えた跡のようで、今では牛の放牧地帯となっている。


まったく関係ないことだが、某アニメの放送が始まった。前々から知っていたとはいえ、出てくる背景の既視感が半端ない。あの石垣の土台の根本が、あの界隈で唯一オオシワアリが盤石に営巣している所だとか、あの海岸の岩場にイソジョウカイがいることなど俺以外知るはずもない等、そういうことばかり気になってしまい、肝心の内容が一切頭に入ってこない。

2477.jpgまさかアフリカに、それもケニアにモグラがいるなんて予想だにしなかった。

ある日の夕方、宿の前の芝生に出たところ、目の前に土盛りができていた。明らかにさっきまではなかったもので、誰かがどっかから土でも持ってきて捨てたのかと思った。そしたら、次の瞬間その土盛りがモコモコッと動くではないか。慌てて反射的に蹴っ飛ばしてやったが、蹴っ飛ばせたのは土だけ。本体は地下深くから姿を見せず、土木工事で出た残土のみをトコロテン式に地表に押し出しているだけなのだ。
蹴っ飛ばした土盛りからは、モグラのトンネルが顔を出した。しばらく経つとこの穴はまた土で塞がれていた。何回ここに風穴を開けても必ず塞がったので、定期的にモグラが巡回しているトンネルらしかった。しかし、どうあがいてもモグラを捕らえることはできなかった。

熱帯には、基本的にモグラのような地下性食虫類(食虫類って用語も今や死語だが・・)はいない。熱帯の痩せた土壌中には、ミミズなど彼らの餌になる生き物がきわめて少ない。一日に自分の体重並みの餌を食わないと餓死する彼らにとっては、非常に苛酷な環境なのだ。だから、マレーシアの平地のジャングルで見かけるモグラ系の食虫類は、ジネズミのように地中ではなく地表で餌を捕るものが中心となる。少なくとも俺はそう思っていた。
しかし、今回モグラを見た場所はケニアでもかなり標高の高いエリアとなる。マレーシアでも、標高の高い涼しい場所ではモグラが生息するらしいので、もしかしたらケニアの高所にスポット的に生息しているものなのかもしれない。

まあ、そもそも姿をちゃんと確認しているわけではないため、本当にこれが日本にもいるモグラと同類の生物の仕業なのかはわからない。しかし、俺も中学高校の時に日本でさんざモグラを追い回して生け捕りにしたクチなので、あの土盛りの押し出し方と雰囲気は絶対にネズミとかではないことくらいはわかる。ましてキンモグラでもない。

2470.jpgカカメガの朝。

森が近いため、いろんな鳥が鳴いてにぎやか。サイチョウも飛んでくる。サイチョウは鳴き声のやかましさはもとより、羽音がとんでもない。風を切る音が、猛獣の唸りにそっくり。ジャングルの中で知らずに聞いたら、小便ちびるレベル。

この森では、多分カッコウとかの仲間だろうが、尻下がりに規則正しく三回区切って鳴く鳥がいた。ペッペッポー、ペッペッポーと、昼でも夜でもそれが鳴くのだ。日本では「聞きなし」といって、鳥の声を人間にとって意味のある文句に置き換えて聞く遊びがある。ウグイスを「法、法華経」とか、ホオジロを「一筆啓つかまつり候」みたいに表現する、アレだ。
面白いことに、ケニアでも鳥の声の聞きなしがあって、例のペッペッポー鳥は「I can do! I can do!」と表現するらしい。日本のコノハズクの「仏法僧」に相通じる臭いがある。他にもヨタカの一種で、寒いから早く家に帰りたいみたいなものすごく複雑な聞きなしがあるのを現地人から教えてもらったが、もう忘れた。ヨタカでそんな難しい鳴き方する奴いるのか。

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クロバエ科の奴。ケニアにて。

宿舎の便所に多い。タタリ神の構成員。

2480.jpg田舎町「カカメガ」の宿。ナイロビから車で8時間近くもかかる遠い場所で、今回の調査拠点の一つ。

洗面台はあるが水道はない、電気が通っておらず夜間の3時間くらいのみ発電機を回してつける、夕食中の部屋に糞転がしが突撃してくる等、不便なところが多い。日本人観光客がこんな宿に泊まった日には、ネットの宿泊地レビューサイトにとうとうと酷評を並べるに違いない。しかし、我々フィールド研究者にとっては、屋根の下で雨風夜露がしのげて布団の上で寝られるだけで上等だ。
ゲストハウスはそれなりに近代的建物だが、管理人などの住む離れは茅葺きの土壁。

2479.jpg便所とシャワー室。右端がシャワー室、真ん中が水洗、右端がボットン。僻地ながら、シャワーは湯が出る。すぐ脇に竈があり、ここで薪を燃やして湯を沸かしているのだ。ものすごく熱くて、下手するとやけどする。しかし、冷水のレバーをひねると一瞬にして熱湯シャワーが冷水シャワーになってしまい、中庸がとれない。ウドンやソバの気持ちになりたい人用。

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便所は、水洗のほうは一回流してしまうと内部のタンクに水がたまるのにすさまじく時間がかかり、ブツを流せない。だから、誰かが使用した後すぐに入ってしまうと、個室から出るに出られない状況に追い込まれる。よって、何も考えずにスッと入ってスッと出られるボットンの使用が、男なら推奨される。
ボットンは、ちょっと傾斜が付いているだけの、文字通りただの穴。和式便器のような「金隠し」すらない。個室のドアを開け、夥しい数のチョウバエとハエとヤブカを追い出してから中に立てこもる。

ある日の夜、発電機が切れて完全に闇となった後、ヘッドライトを付けて便所に行った。その時ふとボットンの便槽の底がどうなっているのか気になり、放尿がてらライトでボットンの底を照らしてみた。すさまじい光景が目に飛び込んできた。言葉では言い尽くせない大いなる存在が、便槽の底一面をびっしり覆いつくし、一斉にうごめいていた。タタリ神そのものがそこにいた。
このタタリ神は、毎日上から降ってくる糞尿にすぐさまたかって即刻食いつくし、分解しているのだ。そのため、このボットンは糞尿が直に積み重なっている割には悪臭が思いのほか強くない。ある意味、究極のエコトイレと言えるだろう。

なお、未消化コーン等をちりばめた荘厳なるタタリ神の全貌写真は、ちゃんと高画質で撮影しておいた。だが、その神をこんなネットの海に晒すなどという不敬極まる真似、俺には畏れ多くてできない。家のパソコンの壁紙にする程度の使用にとどめ、大切に保管しておきたい。

2416.jpgナイロビから車で移動中通過した、大地峡帯。すさまじくだだっ広い景色が眼下に広がっていた。今まで生きてて、こんなに広い空間を見たことはない。写真では、その凄さをまったく表現できない。

2415.jpg見晴らし台の所にあった看板。アフリカの動物のうち、ライオン、ゾウ、バッファロー、サイ、ヒョウの5種は「ビッグ5」と呼ばれ、多くの国外観光客に崇められている。元々この5種は、ゲームハンティングで撃ち殺すのが難しい動物というくくりだったらしいが・・。
もちろん、誰も知らないし話題になった歴史もないが、好蟻性ビッグ5も存在する。今回これらのうち一つでも多くのものを、この広大な大地のどこかから見つけ出すことが、旅の主要目的である。

・サスライアリ共生者・・・言わずと知れた一番の標的。ただし、カメルーンに比べて東アフリカでのサスライアリ種多様性は低く、どれほど多数の居候が見つかるかは未知数。

・アリアカシア共生者・・・サバナに生育するアカシア類の中には、肥大した中空のトゲをもつ種がいて、その中に特定種のシリアゲアリを養う。攻撃的なアリを住まわせることで、葉を食い荒らす害虫から守ってもらう木なのだが、この木にはそのアリの攻撃を巧みにかわして利益のみ貪る特殊な虫が多数いる。トゲ内部にアリと共に住む、電球のような姿のハムシ。腹部がアカシアのトゲ状に膨らんだ姿で、近寄ってくるアリを次々捕らえるカマキリなど。

・アフリカツムギアリ・・・樹木の葉を紡ぎ合わせて、大きな巣を作る。これの巣には、東南アジアのツムギアリに寄生するアリノスシジミの近縁属が住み着く。このチョウ、生態はすでに研究されているので、採ろうと思えば採れる虫のはずなのだが、なぜか幼虫の生きた姿をとらえた写真は世の中に一つも出回っていない。カメルーンではアリの方は多かったが、巣からは何も出なかった。

・ヒゲが太い甲虫・・・ヒゲブトオサムシ、オニミツギリゾウムシの仲間。恐ろしく珍奇な形態の甲虫で、しかもアリの巣にいる甲虫としては異例なほどでかい種が多い。これらは東南アジアにもいるが、筆舌に尽くしがたいほど生息密度が薄く、二週間の遠征を5回して1匹採れれば上等なレベル。アフリカでは打率は遥かに高いらしく、サバナ環境を中心として期待できる標的。

・オオキノコシロアリ・・・乾燥したサバナに、高さ3m近いアリ塚を作るシロアリの仲間で、しばしばテレビでも紹介される。巣内でキノコを育てて餌とする仲間だが、これの巣内には甲虫、ハエを中心とした多彩な居候が住み着いており、特にキノコを育てる菌園部屋で変わったものが見つかる確率が高い。シロアリを食うらしいハナムグリ、腹部が巨大化してシロアリじみた姿のハネカクシ、腹部が巨大化してシロアリの女王のような姿となったゴミムシなど。

2478.jpg先日、アフリカのケニアまで調査に出かけた。サスライアリをはじめ、種々の好蟻性類を仕留めるための遠征だったのだが、いろんな事がありすぎて何から書けばいいのかが分からない。

約二週間強の調査だった。数名の同行者とともに、フランス経由で気の遠くなる時間をかけて向かった先は、ケニアの首都ナイロビ。ナイロビは、とにかく治安の悪い場所として知られており、強盗殺人事件が日常茶飯事。最近も都市部の大学で銃撃戦が勃発するなど、極めて危険な街である。
一説では世界で二番か三番目に危険な都市とも称され、地球の歩き方などガイドブックを見ると、もう数行読んだだけで行く気が失せることしか書いてない。ケニア到着後、諸々あってその世紀末犯罪都市に二晩泊まることになった。

実際には、広い街の中でも本当にヤバい区画は限られており、そこに立ち入らない限りは即死ということは少ないらしい(皆無ではないのがポイント)。ナイロビ在住の面倒見役の人も、我々が泊まったエリアは安全だと言っていた。確かに、日中はいろんな国の人々が行きかう、普通の先進的な都市の様相だった。ナイロビは、アフリカの中では最も近代的な都市の一つなのだ。

写真 2 (8)
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しかし、ここでいう安全と、我々日本人にとっての安全というのは、全く異なる概念である。周囲の建物全ての出入口を覆う堅牢な鉄柵、日没後に建物全ての出入口前に居座る屈強な用心棒達の姿が、それを如実に物語っていた。ホテルの内部にさえ、複数の鉄柵が設置されていた。
安全というエリアでも、日没後は露骨に通行人の数が減り、路上には用心棒ばかり目立つようになる。日付けをまたぐ深夜になれば、用心棒すら建物内に引っ込み、文字通りゴーストタウンと化す。

写真 3 (1)
街灯の薄明かりに照らされた通りは、ガラァーンとしている。マイケルジャクソンが、ゾンビを引き連れて影から出てきそうなレベル。マイケルは出なかったが、カーテンの隙間から覗くと時折、見るからにまともではなさそうな集団がやってきて、物を蹴ったり喚いたりしている。これが話に聞く世紀末都市。

怯えるように二夜を過ごし、翌朝早々にナイロビを離脱。8時間近く車に揺られ、田舎へ行く。

2306.jpgカリュウ(カリウ)ホラヒメグモNesticus karyuensis

世界で九州の極めて限られた石灰岩地帯にのみ特産する、地下性クモ。現在封鎖されて侵入不可のとある鍾乳洞が模式産地だが、ほんの5-6km離れた場所でも見つかっている。上の個体は、そのエリアで見られたもの。
その産地は、かつてとある絶滅昆虫の唯一の産地だった採石工事現場に大きく被っている。そのため、過去このクモの記録があった洞窟のいくつかは既に消滅しているし、将来的に採掘範囲の拡大とともに周縁の産地もほぼ全て壊滅することが決定している。これによって種そのものの絶滅には繋がらないだろうが、ただでさえ狭いこの種の分布域の大半が失われることとなる。
生息地を含む県が定めた希少種ということになっているものの、基本的に生息地が種々の利権の絡む地域のため、壊滅は黙認される模様。人々の生活と、金を生む訳でもない小虫の生き死にのどちらが大事かという話。

2305.jpg生死を問わず、このクモの姿を写した写真は、ここをおいてネット上には一つも存在しない。過去の文献を漁っても、俺が確認した限りではこの産地を包含する市の古い市誌に白黒写真が一つ載っているのみ。今は破壊されて存在しない、人工トンネル内で撮影された個体だった。
洞窟に入る以外の方法でこの生物を発見するには、向こう4日間は全身筋肉痛で他のことが一切できなくなる程の、過酷な肉体労働を強いられる。今日び辺鄙な九州の山奥くんだりまで、大量の重たい瓦礫を退かしてまでこんなキモい動物の生き死にをわざわざ確認しに行く人間などいないので、これがここのカリュウホラヒメグモ個体群を撮影した史上最後の写真となるだろう。
現在、採掘工事の手が及ばなそうなエリアでの新産地探索を個人的に行っているのだが…

明らかに国レベルの絶滅危惧種なのだが、環境省レッドリストには一向に載る気配はない。メクラチビゴミムシもそうだが、大形ホラヒメグモ類は言ってしまえば全種が分布域の限られた(そして土建開発業により絶滅の差し迫った)希少種であるため、あれもこれも載せだしたらキリがないという理屈は分かる。しかしそれでも、同じドングリの背比べ共の中でレッドリストに載せてもらえる種とそうでない種とがいるのに、何か作為的なものを感じてしまうのは、単に俺の性根がねじ曲がっているせいだけか。
もっとも、仮に国のレッドリストに載ったところで、その後のそれらの未来がさほど明るくないであろうことは、今既に国のレッドリストに載っている大半種のメクラチビゴミムシとホラヒメグモの世間での扱われ方を見れば、言うまでもない。