二兎を追って二兎を得ん

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ガガンボモドキ。ケニアにて。

夜行性。灯火にやってきて、同じく飛来した弱小な虫を長い脚で絡めとり捕殺する。

灯火以外でも、夜間サバナをライトで照らして徘徊すると、至る所で見る。しかしどうしたことか、どの個体も逆立ちするような体制で地べたを羽ばたきながら這いずり回っているのだ。闇の中強いライトを当てたせいでおかしくなったのか、これが彼らの本来の振る舞いかは不明。

婚姻贈呈は観察できず。

2545.jpgアオゴミムシの類。ケニアにて。

今回意外に思ったのは、アフリカには日本のそれと大差ない外観のアオゴミが沢山いること。
2546.jpgコキベリ奴。

2547.jpgハイパーアオヘリ奴。横幅が広く、より青みが強い大形美麗種。

これらは皆、河原の水際やサバナのオアシス周辺にいる。

2580.jpgまさか、灼熱の風吹き荒れるサバナに、水生昆虫のガムシがいるなど想像もしなかった。

サバナと言っても、局所的にオアシス様の小さな水場は常時ある。また、雨季になると一転、大洪水がサバナを洗い流してしまうらしい。こういう時期に一斉にワッと地上に現れ、それ以外の時期は地下に隠れるかオアシスで雌伏の時を過ごすのだろう。

帆柱に朝日が昇る けれど

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ウスバカゲロウ。ケニアにて。

大型かつ重厚な種で、脚には獣のように毛が密生する。まるでガンバの冒険EDの後ろで出てくる、ノロイ様の顔面アップを連想させる。事実凶暴で、一緒に灯火に来たヤガを力づくで取り押さえ、頭からバリバリ食う。もはや薄ら馬鹿などと呼ばせない。
現地で灯火採集中、原住民らに強制的に撮らされたものだが、これは撮らされて本当に良かった。

ガンバの冒険EDの最後の一枚絵で、ノロイ様の周りを囲む数匹の手下イタチが、目つきが悪鬼の如き凶悪さなのに耳がまんまるくて可愛らしいのは、ギャップ萌えのハシリであろう。

一度交えしえにしなら ときもそらまも超えたとて

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2576.jpg原住民が、わざわざ持ってきたその辺の虫。ケニアにて。

マリガットでの調査中、しばしば我々の周りにものすごい数の原住民が集まってきた。日本人などそうそう来ない場所だし、それが路傍でクソほどの価値もないようなアリだのシロアリだのをほじくっているのだから、当然といえば当然である。
我々が虫を探しているということが分かると、彼らは我々の所にそこらから採ってきた虫をわざわざ持ってきた。特に、虫の写真を撮っている俺の所には、次々に虫が運ばれてきた。我々のためによかれと思って採ってきてくれる訳だが、実のところ彼らが持ってくる虫のほぼ全ては、別に我々が欲している種ではない。それに適当に引っ掴んで持ってくるため、それら虫はたいてい潰れているか、触角や脚が千切れており、撮影用にも用をなさない。
正直ありがた迷惑であったが、くれたものはちゃんと笑顔で受け取り、彼らの前で写真を撮って見せた。そうして撮影したのが上の写真という訳である。本来いるべき場所にいる姿でもなし、ボロボロの姿の虫の写真など持っていても、この先図鑑にも本にも使い道がない。しかし、原住民と心を交わす上では、今回撮影したどんな学術的に貴重な写真よりも役に立っている。

僻地での遠征において、現地の人間との関係構築は重要なことだが、考え方や言語の違いなど様々な理由により、それは順風満帆に行くとは限らない。今回サバナのある場所で夜間灯火をたき、その周辺を歩いて好蟻性類を探したのだが、その目的はろくに達成出来なかった。確かに虫は灯りに大量に集まって来たが、同時に虫と同じ位の数の近隣の原住民まで集まってきてしまい、初めから終いまで妨害されてしまったから。
好奇心の強い彼等は、我々のやることなすこと全部が気になって仕方ない。見通しのよい夜の平原で強い灯りをつけると、遠くから一人また一人と様子を見に来て、ついには目視で灯りを認識できる範囲の原住民全員が集結してくる。それだけならいいが、彼等はやがて虫を集める我々の周りをウロウロし始め、その過程でせっかく灯火に飛来した目的のサンプルたる種を踏み潰してしまう。やっかいなのは子供らで、こちらが少しフェードアウトして暗がりで神経質な夜行性アリの行列を観察していると、すかさず察知して大挙して襲来してくる。彼等は群れで外国人の周囲を360度ぐるりと囲む習性があるため、必ず誰か一人がアリの行列を踏んでしまい、もう観察どころではなくなってしまう。
また、彼等の過度なお節介はここでも遺憾なく発揮される。こちらが行動を観察するため追跡している虫を勝手に横から捕まえて、嬉々として手渡してくれる。どうしても手が離せない状況で、お前のために凄い虫を見つけたから早く来い今すぐ来いと、どこにでもいる普通種の所まで案内される。終いには、あの虫の写真を撮って俺に見せろ、と原住民専属カメラマンにされてしまい、せっかく滅多に見られない研究上重要な種がそばにいるのにどうでもいい虫の写真ばかり撮らされ、ついには研究材料を全く得られないというパタンになる。
これじゃ仕事になんねえよ、と同行者は愚痴っていた。俺も当座は正しく同じ意見だった。一ヶ月や一年スパンの長期滞在ならば、彼等と交流を深めつつのんびり仕事をすることもできるだろう。しかし、我々はほんの数日しかない滞在期間中、目的を果たすべく尽力せねばならない。まして、この旅は多くの人々から得た支援金によって実現したものである。貴重な時間と調査機会を、こういう形で奪われるのは、けっこう困る。

しかし一方で、我々は彼等の土地に踏み込み、そこで仕事をさせて貰っている。それも、また事実である。彼等は決して悪意があるわけではなく、純粋な好奇心ゆえのこと。そして、可能ならば我々の力になりたいと思ってくれている。親切心の方向が、こちらの想定と少し違うだけなのだ。
だから、彼等の意向を無下には出来ないと思い、我々はどんなに研究材料を踏まれても、貴重な虫の行動を撮影し損ねても、彼等の前では絶対に顔には出さず、彼等の望むように努めて振舞った。もっとも、原住民の中には薬物中毒なのか、明らかに様子が正常でない(そして我々に対して挑戦的な態度の)者が一定数おり、下手に先方の意に沿わない言動を取ればこちらの生命の安全が担保されないから、という事情もあったのだが。ケニアでは、シンナー等を常習的に摂取する者が少なくないという話を聞く。

大槻ケンヂ

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人間とは、薄馬鹿下郎のようなものだー!

夜のサバナで灯りをたくと、すさまじい数と種類が飛来する。

利根川幸雄

2573.jpgウマアリCataglyphis sp.。ケニアにて。

ヨーロッパ、アフリカの乾燥地帯を象徴する、やたら足長のアリ。地中に営巣し、地表で採餌するのだが…
このアリは、肉眼で目視するのが困難なほどのスピードで、灼熱の地表を疾走する。今まで世界中でいろんなアリを見たが、こいつは紛れもなく最高速。巣口で見ていると、地中で掘った土砂をくわえて穴から出て来て、10cm離れた所まで行ってそれを捨て、また穴に戻るという作業を、1秒未満のうちに終える、と言えば、どれほどの速さか想像がつくだろう。基本的に、動作が止まる瞬間がない。それくらい地表面が暑いのだ。

しかし、辛抱強く巣口で見ていると、奴らは高頻度である決まった場合を踏んでから外へ出かけるのに気づく。そこで、その場所にあらかじめ置きピンしながらカメラを構え続け、来たと思った瞬間反射的にシャッターを切るやり方を使い、それなりに撮れた。
というより、それ以外にあれの生きた姿を野外で撮影する方法などない。

この方法は、撮影者の体力と精神をみるみるうちに削る、非常に危険なやり方だ。アリも立ち止まらない灼熱の地べたで、直射日光のもと10分位身動きせず這いつくばるのだから。身の安全を考えると、リアル焼き土下座は一日一回が限度の荒業。
また悪い事に、このアリの巣は炎天下の下にしかない。採餌ワーカーも見るからに暑がってるくせに、日陰では決して行動しないのだ。いっそ夜ならば動きが鈍って撮影しやすいかと思ったら、なんと奴らは日中しか活動しない。夜は巣口を閉じて完全に寝てしまう。よって、このアリの観察手段は炎天下での焼き土下座のみ。

ただ、午後の最強に灼熱な時間になると、さすがのアリもあまり地表に見られなくなる。巣内で休むのだ。
我々は、炎天下の午後でも虫を探してサバナを彷徨い続けた。同行者の一人が、アリでさえ働かないサバナで働いてる我々人間て、すごく馬鹿ですね、と乾いた心に染み入る哲学的名言を残した。

アントリオワーム

2561.jpg薄馬鹿下郎の幼虫。吸血を好む。

乾燥したサバナは、蟻地獄の天下。至る所に巣がある。しかも、日本みたいに縁の下みたいな影になった所のみならず、普通に雨ざらし青天井の場所に無造作にある。

2562.jpg巣はどれも非常に傾斜がきつく、深い。逆さにしたとんがりコーン並。地表面がとにかく暑いので、少しでも深く潜りたいのか。獲物が得難い過酷な環境ゆえ、かかった獲物を逃がさないためか。

2537.jpg大形コモリグモ。ケニアにて。

日本のイソコモリくらいある巨大種。気性が荒く、ピンセットを近づけるとすぐ飛びついて攻撃してくる。一般的にコモリグモ類は対人毒性を持たないが、何せ砂漠のクモなので下手に手を出さないでおいた。

2515.jpg見るからにヤバそうなサソリ。ケニアにて。

サバナで石を裏返すと、10個に1個は当たる。サイズは数cmほどのちっこい奴だが、体格の割りに尾がやたら太い。
よく言われる話だが、体が小さくハサミが軟弱な反面尾が太いサソリは、猛毒種が多い。この手のサソリは、たいてい砂漠地帯に生息する。餌が少なく過酷な砂漠では、見つけた獲物を確実に仕留めねば生きていけない。だから、砂漠のサソリやクモは猛毒を持つのだと言われる。
イトグモ科のシカリウスSicariusという、しょぼい見た目の砂漠グモも、噛まれると非常に危険なことで有名。

石をめくるたび殺人サソリがわらわら出てくるなんて危険だろ、と大抵の人間は思うらしいが、サバナの野外調査においてサソリなぞ大した脅威ではない。直接触らない限り何も仕掛けてこないし、飛びかかってくるでもない。ガバッと石を開けるとその場で放心状態のまま固まっている。石をそっ閉じすればいいだけだ。
恐ろしいのは毒蛇。このサバナにはガボンアダー(ガブーンバイパー)が生息するらしく、石の下によくいるから気をつけろと現地人に言われた。石を起こした瞬間ビャッと攻撃してくるため、当たりの石を引いてしまうとなす術がない。しかしこちらも仕事柄、石があったら起こさない訳にはいかない。手前に向けて石をめくらないように気を付けた。幸い、毒蛇以前にそもそも蛇を石下から出すことは、滞在期間中一度もなかった。

ガボンアダーは、遺伝子操作でマムシとツチノコを混ぜたような巨大毒蛇で、胴体が丸太のように太い。よって普段の動きは非常に鈍いのだが、攻撃のみ雷のように素早い。毒牙は大型個体だと、太さも長さも人の小指くらいになるらしい。しかも、普通の毒蛇と違って一度噛み付くと離さず、大量の毒液を滝のように流し込む。僻地で噛まれたら必ず死ぬことにはなるが、この類のヘビの毒はとてつもなく廻りが遅いらしい。組織を激烈に破壊する血液毒なので、丸一日か丸二日地獄の苦痛にもだえ苦しみながら死ぬようである。

ロバ選手(エチオピア代表)

2565.jpgアフリカでは、至る所でロバを見た。食う目的もあるのだろうが、基本的に労働力として使役されるもののようだ。力持ちで粗食に耐えるロバは、たまに発狂したおっさん風の声で鳴くのに目をつぶりさえすれば、砂漠地帯で最も優秀な家畜。
成長しても馬に比べてずっと小さく、すぐそばまで来られても馬ほど恐怖感はない。また、体の割に頭がでかい不釣り合いなプロポーションが愛らしい。ロバが背中に黒い十字を負っているのを、今回初めて知った。

2566.jpg日本や東南アジアでロバなどほぼ見る機会がないため、ロバがいる所ではじっくり観察した。家畜は基本的に好かないのだが、ロバは意外に好きかもしれない。

ロバと言えば、幼い頃にロバと老人と餓鬼の3人が旅に出る昔話を聞いた。詳細はうろ覚えだが、たしか最初3人でドラクエのパーティよろしく並んで歩いていると、周りの奴が「あいつらロバいるのにロバに乗らずに歩くとかバカじゃねw」と陰口を叩く。それを気にして、老人がロバに乗って歩くと、今度は周りの奴が「幼い子供を歩かせて自分は楽して、何てひどいジジイだ」と陰口を叩く。それを気にして、今度は餓鬼をロバに乗せて歩くと、今度は別の奴が「老人を歩かせて自分は楽して、何てひどいガキだ」と陰口を叩く。それを気にして、今度は二人でロバに乗って歩くと、今度は別の奴が「可愛いロバに二人も乗って歩かせて、何てひどいジジイと餓鬼だ」て陰口を叩く・・。
周りからの批判や文句を気にして言う通りにすると、別の奴等から別の文句を言われ、永遠にキリがない。周りの言う事にいちいち振り回されるな、という教訓じみた内容だった。

昨今、阿呆じみたクレーマーの文句にすぐ折れて言いなりの企業、行政に1垓3千京回読ませたい昔話。

2462.jpgハネナガウンカ。ケニアにて。

2469.jpgチリグモ。ケニアにて。

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2567.jpg建物の隙間などに、ハリフキダシのような形の巣を作る。ケニアの建物では、チリグモはどこでも数多く見られた。一方、カメルーンの建物でイヤと言うほど見たカヤシマグモは、なぜか一匹とて見なかった。

2461.jpgマルカメムシ。ケニアにて。

日本の奴と大差ない風貌。ただし、せな毛が濃い。

2458.jpgトゲトゲ。日本にも似たものが普通にいる。ケニアにて。

2459.jpgケシタマムシ。ケニアにて。

3mmあるかないかの極小種。明るい草地のイネ科植物に少なくない。

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オンブバッタ。毒を持っていそう。そもそもオンブバッタという仲間自体が有毒のように思える。ケニアにて。

2452.jpgツヤホソバエ。どこにでも大量にいる。ケニアにて。

2451.jpgジョウカイ。3mmくらいの小型種で、大量にいる。ケニアにて。

2450.jpgグンバイ。世界中どこに行っても、この仲間は撮影する。アクセサリのようで美しい。ケニアにて。

2449.jpgへんなウンカ。ケニアにて。

2448.jpgアフリカっぽい雰囲気のカミキリ。ケニアにて。

2446.jpgキノコバエかクロバネキノコバエのどっちか。とても多い。ケニアにて。

フントニヒシャケテケツカルァ

2447.jpg救いようのない状況の幼虫。ケニアにて。

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2441.jpgアシナガシジミ臭のする、風変わりなシジミ。草の茂みの奥に、並々ならぬ執着を見せる。ケニアにて。

2559.jpgへんな蛾。これでもまったく問題なく飛ぶ。ケニアにて。

2430.jpgシンジュタテハの仲間らしい。翅表は深い紫だが、裏は小汚い色。たまたま前翅の片側が大きく破れていたため、表が見えている。牛のクソによくくる。

ケニアにて。

2423.jpgミドリイエバエ系。
2424.jpg日本のクロオビハナバエみたい奴。アフリカは道端中が牛のクソだらけなので、都市・郊外の別なくハエは多い。

2422.jpgものすごく小さいセミ。2cmない。ケニアにて。

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2421.jpgベニボタル。ケニアにて。

カメルーンほど多く種類を見なかった。