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3093.jpgたぶんナガレカタビロアメンボ。対馬にて。

河川上流の岸に沢山いた。この手の仲間としてはかなり大型だが、それでも2mm内外サイズ。水面に堕ちた他の虫に、ピラニアの如く群れで襲いかかる。寄ってたかって針状の口吻を突き刺し、中身を吸い殺す。
こいつらの中に僅かに紛れている、菱形のあの精霊を見つけ出すのに小一時間を要した。

3097.jpgニホンミツバチApis cerana japonica。対馬にて。

対馬は養蜂が盛んだが、この遠征時には本当に見かける機会がなかった。島中の道路沿いに巣箱はいくらでも並んで置いてあるのに、どれも中身がカラでハチが出入りしていないのだ。島の南端でかろうじて2つほどアクティブな巣箱を見た。

3096.jpgヤツメカミキリEutetrapha ocelota。対馬にて。

トホシ系では一番みる機会が多い。サクラの木に付いていた。

3095.jpgゴイシシジミTaraka hamada。対馬にて。

夏は異様に少ない印象。

3092.jpgベーツヒラタカミキリEurypoda batesi。対馬にて。

暖地性の種で、照葉樹林帯を象徴する生物。夜間、樹幹を徘徊する。真っ赤で平べったい身体は、暗闇でもライトを当てるとよく目立つ。オスはキバが発達し、なんとなくクワガタじみているのでカッコいい。人生初めて見た個体だが、初見は普通のウスバカミキリのテネラルかと思ってしまった。

3090.jpgツシマフトギスParatlanticus tsushimensis。対馬にて。

大型のキリギリスで、オスは翅が短いがよく鳴く。世界で対馬にしかいない。しかし、その対馬の中にあってはド普通種で、島の全域に渡り広く見られる。

ツシマフトギスは、分布が世界的に見て非常に限られるというだけの理由で、別に絶滅に瀕している訳でもないのに長らく環境省レッドに載せられ続けていた。第一次の時から延々とリスト入りしていたが、最新の改定でようやく外されている。
「レッドリストはあくまでも絶滅しそうなもんリストなのであって、珍しいもんリストとは違う」ことを人に説明する上で、ツシマフトギスは分かりやすい例になってくれる。

ド普通種とはいえ、大きくてなかなかカッコいい魅力的な生物だ。道端にたまたま出て来た個体を見つけて、すぐ取り押さえた。そのまま掴んで、車に轢かれないよう近くの草地に運んで置いた所、いきなりその場でシリシリシリ…と鳴き始めた。
キリギリスやコオロギで、人間に掴まれるほどのディスターブを受けた直後に鳴くというのは、かなり異例に思える。この個体がたまたま神経の図太い奴だったのか、この種自体がそういう性質のもの故なのか。

※東南アジアなどにいる大型キリギリスの中には、敵に掴まれると威嚇のため鳴くものがいる。でも上記の例は、掴まれている間は鳴かず、解放された後鳴いたので、威嚇とは考えにくい。

3091.jpgニッポンモモブトコバネカミキリMerionoed formosana。対馬にて。

珍妙な姿。クズ葉裏で何匹か見た。実際の食草は照葉樹らしい。

3089.jpgツシマヒサゴゴミムシダマシMisolampidius tsushimanus。対馬にて。

鬱蒼とした杉の植林地で、倒木下にいた。外見のよく似た別種ツシマトゲヒサゴゴミムシダマシM. adachii というのもいる。どちらも対馬の固有種。この仲間は飛べないため、地域により種が分かれる傾向が強い。

3088.jpgキボシアオゴミムシChlaenius posticalis。対馬にて。

森林の地面に、夜間現れる。湿地性のケが強いアオゴミ類の中では、かなり乾いた環境を好む部類。これに外見も名前も似通った近似種がやたらたくさんいるため、慣れないと種判別は厄介である。
美しい種ではあるものの、悲しいほどド普通種なので見つけても有り難みがない。

3084.jpgヤノトガリハナバチCoelioxys yanonis。茨城にて。

ミツバチと大して変わらないサイズだが、他の単独性ハナバチ類の巣に押し入って乗っ取りを仕掛ける、物騒な習性の持ち主。

3083.jpgササグモOxyopes sertatus。茨城にて。

すね毛が痛そうな奴。姑息な罠を使わず、体一つで直接獲物と格闘して仕留める。

3086.jpgトラマルハナバチBombus diversus。茨城にて。

平地に普通。多くの日本産マルハナが滅びへの道を歩む昨今、こいつとコマルだけは何とかやって行けているように思える。

3085.jpg精霊。

広大な砂地にしか住まない。本来は海岸の砂浜砂丘に生息するものだが、しばしば信じがたいほどの内陸にある、信じがたいほど人工的な敷地内で多数発生することがある。

3087.jpgヒメアカタテハVanessa cardui。茨城にて。

ド普通種。移動性が強く、日本中どこでも見かける。日本どころか海外にも広く分布しており、南極以外の全大陸で見つかっているという。しかし、話としては聞いたことがあっても、日本にいるものと外見が何も変わらぬこれをケニアで見た時は、さすがに我が目を疑った。

3082.jpg
ニイニイゼミPlatypleura kaempferi。茨城にて。

当然ニイニイヤドリガは、意識して探しているのだが。

3081.jpgアメリカシロヒトリHyphantria cunea。茨城にて。

ものすごい数が大発生して、公園の木を丸坊主にしていた。こいつの勢力もとい精力を、ゴマベニシタとマエアカに分けてやれたらいいのに。

3068.jpgトゲヒシバッタCriotettix japonicus。千葉にて。

湿地ではおなじみ。長い翅をもち、よく飛ぶので目立つ。体の両脇から出たトゲがかっこいい。

3080.jpgミズギワゴミのよく飛ぶ系のやつ。茨城にて。

小さい、早い、すぐ飛びやがるのとで、ろくに撮影できない。

3078.jpgヨツボシゴミムシPanagaeus japonicus。茨城にて。

河川敷や湿原など、湿り気のある開放的な草原環境に特異的にいる感じの奴。生息環境を選ぶ種なので、探そうと思って探さないと見つからない。
派手な色彩なのもあり、見つけると結構嬉しいものである。欲を言えば、これに一見似てうんと首が長いのがいれば、なお嬉しいのだが。

シャボン玉せっけん

3072.jpg宙を舞うサボン程度の写真も撮れずして、飛んでいる虫の写真など撮れない。そう思っていたが、実のところ飛んでいる虫よりも撮影が困難であった。

3073.jpgオオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum。茨城にて。

この写真に隠されたインチキに気づく者は、そう多くはあるまい。

※普通に分かりますね。

3074.jpgセスジイトトンボParacercion hieroglyphicum。茨城にて。

3075.jpgウスグモスズUsugumona genji幼虫。茨城にて。

外来種と言われている樹上性の小型コオロギ。オスも発音器を欠くので鳴かない。とはいえ、この手のだんまり直翅というのは脚や体を物に打ち付けるなどして、大抵鳴けないなりに発音努力をするものと相場が決まっている。
こいつも何かそういうことをやるのではないかと思っているのだが、まだ確認できていない。関東一円の市街地に相当普通にいる種なのだから、誰かが観察しているに違いないはずだが、ネット上で調べてもこいつの求愛行動に関して詳しい記述は見あたらない。

3076.jpgクルマバッタモドキOedaleus infernalis。茨城にて。

実にどこにでもいる。普通見かけるのは全身褐色の小汚い奴ばかりだが、たまに緑の奴がいる。足下からこれの群れが次々飛び立つたび、一匹くらい下翅の赤いのが混ざっててもいいのにと思ってしまう。

3077.jpgアメンボAquarius paludum。茨城にて。

短翅型の奴が多かった。昔、「アメンボは水面の面積が広い場所で育った場合、当面干上がる心配のない大きな池と判断して飛ぶ必要のない短翅になる。水面の面積が狭い場所で育った場合、すぐ干上がって暮らせなくなる小さな池と判断して余所へ飛んでいける長翅になる」という話を何かの本で読んだ気がする。
しかし今改めて調べてみると、話はそんなに単純なものではなく、日長などが絡んだ複雑なメカニズムがあるようだ。

3071.jpg精霊。

平地の水田やヨシ原など、湿っていて開けた環境に特異的に現界する。最初、関西地方から見出されたらしいが、その後盤石な産地は関東平野くらいである。
やっとのことで見つけた。この手の仲間の中では際立って美麗なので、虫マニアの間では有名。これ見たさに、かなりあちこち時間と金をかけて探し回ったものだった。実のところ、思いのほか足元にいた。灯台下暗しとはこのこと。そこそこ数もいるようなので、定期的に顔出しに行こう。

多くの虫マニアは、普通これを夏ではなく冬に探す。この手の虫は、夏は各個体が散り散りになって活動するので見つけにくい。さらに、その生息地たるヨシ原などの湿地は夏に草ぼうぼうとなるため、地面の虫を探すのが極めて難しい状況となる。が、冬になると水田脇の土手の土中でしばしば多数個体が集まって越冬するため、運よく掘り当てれば一度に効率よく集められるのだ。しかし、このやり方はたまたま同じ場所で越冬している多くの無関係の生き物まで、寒空の下に引きずり出し放置することになるため、倫理上多大に問題がある。
また、越冬環境に対し不可逆的なダメージを与えるので、翌年以降その場での虫の生息状況に、著しい悪影響を成しかねない。一度にごっそり採れてしまうので、みだりな乱獲にもつながる。かつてこの手の仲間の有名産地だった、某県のメールサーペントレイクも、明らかに先人どものそうした行為により、もはや湿地性種が比較的環境的負荷に強く普通種のコキべリとヒメキベリとオオトックリしかいない世界になってしまった(自然の成り行きだけが原因で、あそこまで普通種ばかり生き残り、人気種のみ特異的にいなくなる状況は考えにくい)。
だから、俺は極力産地の環境を温存したいのと、後世の虫マニアから老害扱いされないように、あえて活動期の見つけにくい個体を目視で探す方法にこだわっている。虫様に、こちらから逃げ延びる余地を与える採集法を心がけている。

ゴミムシの仲間は、甲虫としてはものすごくマニアが多い人気の分類群である。加えてこの仲間は、上述のように一度に効率よく多数個体をごっそり採り尽くす方法がいくつかあるため、非常に乱獲しやすい。そのため、上の種のようにそこそこ美麗かつ珍しい種となると、多くのゴミムシマニアは自分の知っている産地を秘匿し、口外しない傾向が顕著だ。他の奴に来られて場を荒らされるのが嫌だし、自分以外の人間がそれの標本を持っているのが気にくわないのだ。
こうした事情により、ゴミムシの珍種に関しては、虫マニア同好会誌を漁っても「これがここで採れる」などという情報が(特に最新のもの程)そう簡単には得られず、初心者にはとても探索の敷居が高い。ただでさえ産地開拓には苦労しているので、なおさらゴミムシマニアは苦労して自力で発見した産地を他人には教えたがらない。環境省レッドには、かれこれウン十年も発見例が公式に報じられていないゴミムシが数種リストアップされているが、実際には最近も見つけている者は見つけているらしいとの噂は常々聞く。彼らが公的な紙面上でそれを記録として発表しないので、見つかっていないものとして扱うほかないのである。

そうした人間らの轍を踏むように、俺もこの場所を秘匿するわけである。しかし、生息情報を公表しなければ他のマニアに場を荒らされることはないかも知れないが、その代わりそんな珍しい絶滅危惧種がそこに生息しているなどつゆ知らぬ行政などの手で、場所が潰されてメガソーラーやら道路やらになってしまった、という事になりやすい。
珍しい生き物の生息地を最初に知ってしまった者は、必ず情報の公開か秘匿かの板挟みに苛まれることになる。

3070.jpgたぶんウヅキコモリグモ。茨城にて。

ウヅキコモリグモは、古い図鑑ではウヅキドクグモの名で載せられていた。咬まれると毒で疼くのかと思っていた。

3069.jpgタンボコオロギModicogryllus siamensis。茨城にて。

水田に生息し、初夏から鳴きだす気の早いコオロギで、暖かい地方ほど多い。ジッジッジッ・・・と、あまり美声とは言い難い声で鳴く。何となく、同じ時期に同じく水田で合唱するアマガエルの声に似た感じがする。
このコオロギの声は、静かな場所で聞けば全然アマガエルの声とは似ても似つかない。しかし、あまり注意関心を向けていない耳で聞いた時、アマガエルの声に混ざっている「G」とか「Z」みたいな感じの音が、このコオロギの声に混ざっているそれと非常に似通って聞こえるのだ。

寒冷な長野県の、特に松本地方にはかつてほとんど分布していなかったらしいが、2000年以後急速に広まって普通種になったという。大学時代、カエルを見に夜の水田に出かけた時にはお馴染みの虫だった。そういえば、信州のクソ田舎にいた頃、地元の自然愛好家の一人が「タンボコオロギはアマガエルに、声で擬態しているんだ!」と言い張っていたのを思い出した。
発想としては面白いが、それはない。コオロギが、自分の天敵であるカエルを手元に呼び寄せてどうするんだ。似てさえいれば、何でもかんでも擬態ではない。

野生のエリザ

3079.jpgエリザハンミョウCylindera elisae。茨城にて。

背格好はトウキョウヒメハンミョウっぽいが、より自然度が高くてより湿ったところの砂地で見かける。これを採ると、御禁制オガサワラハンミョウを採った気になれる。

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ツノトンボHybris subjacens。茨城にて。

この仲間では一番の普通種らしいのだが、俺の中では一番珍しい。今まで生きてて、3回くらいしか遭遇したことがない。