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精霊

4451.jpg雑木林内に転がっている、水気を吸ってグズグズになった倒木を裏返して樹皮をめくると見つかる奴。

体長3mmしかないため、関連文献においては大抵「あまりにも微少すぎるので極めて発見困難」と書いてある。だが所詮、3mmサイズのアリの巣の中にアリと共に紛れている、3mm以下の居候生物を探す鍛錬を長年積み続けてきた俺の敵ではなかった。

4449.jpgオオマルクビゴミムシNebria macrogona。茨城にて。

夜間、河川敷にいた。カワチ以外のマルクビが突然目の前に現れると、心臓に悪い。

4450.jpgヒトスジシマカAedes albopictus。茨城にて。

寒くても意外にしぶとく残っている。普段この手のカは種名を確定させないのだが、画素数の高いカメラと高倍率のレンズがあるので、これとは別に胸部を拡大して撮影し後で確認した。翅の付け根の白鱗が幅広の純白であることが確認できたので、ヒトスジとする。
恐らく昨今ネットで画像検索して出てくる、背中に一筋の白線がある蚊をヒトスジシマカの名で載せているサイトは、そこまで調べたうえで種名を確定してはおるまい。

精霊

4452.jpg日没後、砂中から穴をあけて這い出す瞬間を見た。

ほらな、昼間いくら石裏っ返したって見つかんねーわけだ。

精霊

4446.jpg居住区から近い(というほど近くもない)所に、奇跡的に二つ紋の奴が生き残っている場所がある。何年か前に歴史的大水害に見舞われたので、もう場がダメになったかと思ったが、からくもまだ少数が残っていた。
河川敷の水際近くを生息の場とするが、サラサラしたきめ細かな砂地が広がっていること、汚染されていない伏流水が滲み出していることなど、生息のための条件がとてもうるさい。そうした条件を満たす河川敷が国内からほとんどなくなってしまったのを受け、この精霊の生息地も全国でもう数えるほどしか残っていない。それでも、確実に生息してて会いに行ける場所があるだけ、頭の黒いアレよりはまだ救いがある。

日没後、石ころ一つ落ちていない砂地上に突然何匹も現れる。背中には砂を被っている個体が多いため、日中は砂の中にランダムに潜って隠れていることが伺える。石の下に隠れている個体もいるにはいるが、大多数は砂中に潜む。よって、日中いくら生息地で石起こしして探しても、そこに生息する個体のうちほんの僅かしか発見できない。明るいうちに探しても無駄な生物だ。

しかし、この生息地を歩いていて、砂地の上にものすごい数のタイヤ跡が出来ているのが気にかかった。日中オフロード車が相当乗り入れているらしい。これにより、少なからぬ数のこの絶滅危惧種が踏み潰されたであろうことを思うと、怒りを禁じえない。
件の疫病騒ぎの中、人の多い市街地を嫌がり、普段行き慣れない野山へレジャーに出かける人間が多い。それに伴い、自然との触れ合い方やフィールドマナーを何も知らない都会の連中が、好き放題に自然をメチャメチャに荒らして帰る事例を頻繁に見聞きするようになった。また、家の中で時間を潰すためにアクアリウムに凝る人間が増えてきたのを受け、飼育用に野生の淡水魚や両生類を無尽蔵に乱獲してネットオークションで売り飛ばす輩も増え、問題になっている。
つくづく日本人は、自然に厳しい民族だ。

4448.jpgよくわからないゴモク。この寒い中、こいつばかりが畑に出てきている。青みのかかった金属光沢が美しい。ツヤアオか。

茨城にて。

4447_20201118213858fd1.jpgタマナヤガAgrotis ipsilon。茨城にて。

農家の大敵。夜間、畑の作物に登っていた。

4454.jpg夥しい数のカワチに混ざって、一匹だけいたもの。寒冷期にはどこかへ引っ込んで寝ているはずだが、間違って出てきてしまったのか。

4455.jpg寒冷期の河川敷をうろついても、結局出てくるのはコレしかいないのでコレばかり撮影して帰ることになる。

俺が今熱烈に求めてやまない、あの頭が黒い奴は、過去のある一定時期までは全国どこにでもいたらしく、文献記録にも普通に出てくる。だが、その直近の近縁種であるところのカワチは著しく色彩変異があり、また頭の黒い奴の方も色彩変異がそれなりに出るらしい。それでいて両者ともフォルムが酷似しているため、これら2種はかつて容易に混同され、同定間違いされていた疑惑が指摘されている。わざわざ例を挙げないが、実際に甲虫研究の専門家が過去に出した記録にさえ後に同定間違いが発覚し、訂正された事例もあるほど。
よって、過去に出された頭の黒い奴の採集記録は、証拠の現物写真を載せるなり、同定に至った根拠を明確に示すなり、それが真の頭の黒い奴であるということを客観的に証明した情報の付随なしには、信用できないし信用するべきではない現実がある。そして、そのようなきちんとした記録があまりにも少なすぎることが、今日における本種の探索を著しく困難なものにしている。いくら普通種(というのは捏造された事実だと信じて疑わない)だったからといって、皆あまりにも記録をおざなりにしすぎたのではないか。

4443.jpgたぶんホシオビキリガ。茨城にて。
※カシワオビキリガとのご指摘がありました。情報を下さった方、誠にありがとうございます。

夜間、糖蜜を仕掛けたら飛来した。

4442.jpgオオトビモンシャチホコPhalerodonta manleyi。茨城にて。

晩秋、雑木林に現れる。

4444.jpgツチイナゴPatanga japonica。茨城にて。

夜間、草むらの根際で見つけた。これから越冬に入る。

4441.jpgカワチマルクビゴミムシNebria lewisi。茨城にて。

寒風吹きすさぶ夜の河川敷に、夥しい数が出てきていた。交尾しているペアも複数見たが、灯りに敏感で照らすとすぐ乖離して遁走してしまう。思えば春先にこいつらが交尾しているのを、一度も見たことがない。今時期交尾を済ませて越冬し、翌年は産卵だけして終わりなのか。

これを見た河川敷は、ウン10年前に二つ紋がある奴と頭が黒い奴の記録が出ている場所。もしこの記録の同定を手放しに信用するのであれば、虎キチクルーネックのダスティーバグ三兄弟が一挙に揃い踏みしていたことになる。当然、現在は見る影もない。
当時はどうだったか知らんが、今ここの岸辺は広域にわたって砂利の間にドロが詰まって固まっており、少なくとも二つ紋の生息など到底望むべくもない。頭が黒い奴ならばイケるのではないかと、水際から乾いた草地に至るまで探したが、なおさらいるわけがなかった。あの記録出したヒト、あなたが見たのはほんとに頭の黒い奴でしたか? 実のところカワチの見間違いじゃないですか?

この仲間の面々は、どうも晩秋から初冬にかけてのやたら寒い時期ほど、表で活動している疑惑があるため、それを探すためにはわざわざそんな時期の夜中に河川敷や用水路周辺をウロウロせねばならない。それだけに、ド普通種のカワチ以外何も見つからなかった時の辛さは温暖期のヌルどころの話ではない。

4425.jpg夏に一旦控えていた無限井戸漕ぎを近頃再開したが、新たに4匹採れた。本当に、世の穢れを何も知らない顔してやがる。

この個体は、自分で採ったのではない。件の井戸ポンプには、水の注ぎ口の真下に備え付けのバケツが置いてあり、墓参りに来た人間が大抵そこにある程度の水をためて帰る。ある日、いつものように井戸漕ぎをしようとしてふとバケツの中を見た時、水のたまったそのバケツの中に数匹のメクラヨコエビとともにこいつが3匹も泳いでいたので、ぶったまげた。今年上半期、これを汲み出すために連日ここに通って3万回くらいポンプを漕いでやっと2匹出したものが、一度に3匹もそこにいたのだから無理もない。

体に色素のない地下性生物は、長時間紫外線を浴びると死ぬと言われる。特にこんなヘロヘロしたような生き物など、なんの遮るもののない直射日光の下で放置されているバケツの中で、半日も生きていそうにない。俺が井戸まで出かけてこいつらを見つけたのは昼過ぎだったので、間違いなく当日の午前中に汲み出されたものに違いない。加えて、ここの墓地は普段墓参りの人なんて来ない。よくて一日一人か二人がいいところだ。その墓参りの人も、俺みたいに一度に1000回もポンプを押して水を汲むとは思えず、せいぜい十数回しか押してないはずだ。
つまり、この日の午前中にこの墓地に来た御仁は、俺が2-3か月かけて3万回ポンプを押して出したよりも多い個体を、たった一日来て十数回押しただけで出したということになる。どれほどの強運の持ち主なのか。あやかりたい。そして関西の井戸に連れていきたい。

4440.jpgコホソクビゴミムシBrachinus stenoderus。茨城にて。

砂っぽい水際には大抵いる。小型ながら、爆発音は相当なもの。幼虫はどこにいるやら。

4439.jpg林内で座っていたら、大型のモスキートが襲来。ヤマトと思ったが、模様が全然違った。

茨城にて。

4438.jpgアブクマメクラチビゴミムシKurasawatrechus quadraticollis

関東北部から東北南部にかけて分布するらしき者。外見上あいつとどこが違うのかさっぱり分からないくらい似ている。事実、互いに近縁。これら種を含むアブクマメクラチビゴミムシ群は、背面から見てほぼ真四角の胸部が特徴でありチャームポイントの仲間たち。
メクラチビゴミムシには、(特に同属近縁なもの同士であるほど)一か所に複数種が混在しない原則がある。俺の居住区は恐ろしく広域にわたるあいつの分布域の只中にあるため、そこから脱出して別の種を採りに行くのに一苦労する。

本種を地上へ引きずり出すのは、あいつの時よりも遥かに苦戦した。生息地の洞窟付近に、掘って出せそうな場所が容易に見つからなかったから。多分、洞窟内に入ればもっと楽に採れたのだろうが、時世柄それはやらないと決めていたので、敢えて時間も労力もかかる方法でやっと一匹だけ捕らえた次第。

昨今の疫病騒動に関連して、国際自然保護連合等の団体が、研究者に対して「当面の間コウモリと接触する可能性のある全ての野外調査活動を自粛せよ」との声明を出している。コロナがコウモリ由来のウイルスであることが分かっているゆえの声明だが、これは人間がコウモリから余計なウイルスを貰うリスクというよりも、一度人間社会で蔓延し、その中で変異したコロナウイルスが再びコウモリに感染し、コウモリを殺してしまう危険性を考慮したものである。今、人間の間で流行っているウイルスは、コウモリが元々持っていたものとは既に別物に変異しているため、これをコウモリに返してしまうと今度はコウモリの方が病気になってしまう可能性が現時点では否定できないのだ。
コウモリは害虫を大量に捕食したり、植物の受粉を助けるなど生態系のバランス維持に多大な貢献をしている生物であり、なおかつ多くの種が絶滅の危機に瀕している。そんなコウモリ達の間で病気を蔓延させて大量死させてしまうと、将来的に我々にとっても取り返しのつかない事態になりかねない。だから、いまコウモリの住む洞窟には入りたくても入ることができない。

今の日本の政府は、疫病の封じ込め、根絶を完全に放棄した。それどころか、人の往来を促進するキャンペーンまでやり出す始末。これら一連の政府の対応を、大概の国民は(諦観を交えつつ)それなりに評価しているのだろう。一応それで経済が動いているし、収益を上げて喜んでいる人も少なくないからこそ、このような政策が行われ続けているのだ。
だが、俺は今の政策を全く評価しない。洞窟の生き物達との、掛け替えのない触れあいの時間を無期限で俺から奪ったことを、心から恨み憎んでいる。コウモリにウイルスを返してしまう危険性をなくすためには、コロナの国内根絶・ゼロリスクの世であって貰わなければ困る。
洞窟をフィールドワークの場とする生態学者は、皆そう思っているはずだ。

4445.jpgオサムシモドキCraspedonotus tibialis

海岸や河川敷の、きめ細かな砂地が広がる環境にだけ見られる大型甲虫。いる場所にはそこそこ多いが、生息環境が限られるため、各地で希少種扱いされている。見つけると嬉しいものである。

4436.jpgツマグロアオカスミカメApolygus spinolae。茨城にて。

似た種が多くて識別困難だが、たぶんツマグロ。各種野菜の害虫。

4434.jpgオオカワメクラチビゴミムシKurasawatrechus ohkawai

物凄く久々に、掘りでこの手の奴を出せた。ここ4-5年、メクラチビを出せた試しがなかったので嬉しかった。モノが採れたことより、九州で培ったはずの「出る場所」の目測が鈍っていなかったことが嬉しかったのだ。

4437.jpgネギアザミウマThrips tabaci。茨城にて。

ネギの害虫。葉の表面に特徴的な食痕を残す。今年の初夏くらいに苗を何本か植え、先ごろ最初の一本を収穫して食った。市販のネギとは比べ物にならない程辛みが強かったが、その一方で甘みも強かった。自分の畑で取れたという贔屓目を差し引いても、これは美味い。ただの付け合わせの薬味で使い果たすには惜しい逸材だ。

半年近くも畑で面倒を見て、肥料をやり害虫を殲滅し、水をまき、こうしてようやく野菜は収穫できるようになるのだ。それを考えると、農家の苦労というのは本当に計り知れない。たかだか週末農業ではあるが、野菜を始めてからというもの、つくづく食い物のありがたみがよくわかるようになった。同時に、時々ニュースで取り沙汰される旬の野菜・果物ドロとかいう連中は、他人の苦労の上澄みだけかっさらっていく、正に思いつく限り原始的かつ野蛮な手段(車刑、股裂き、爆発四散等)で処刑すべき極悪人であることを再認識した。

4433.jpgタバコガかオオタバコガのどっちか。茨城にて。

ピーマンの中に食い入っていた。野菜の内部を食い荒らすので、これを愛玩する者はいない。人気絵本の「はらぺこあおむし」とやってる事は何も変わらないのだが。

4432.jpgナスの葉裏にたかっていたアブラムシ。茨城にて。

たぶんワタアブラムシ。

4431.jpgニセダイコンアブラムシLipaphis erysimi。茨城にて。

少し前に植えた、30日大根の葉裏にたかっていた。

4428.jpgオオキマダラケシキスイSoronia fracta。茨城にて。

もう寒いのに、まだ樹液に多数の個体がたむろしていた。

4427.jpgネギハモグリバエの幼虫の食跡に産卵管をぶっ刺す寄生蜂。茨城にて。

一本のネギの食跡上に、外見の明瞭に異なる複数種のハチが襲来していた。害虫も楽に生きてない。

4424.jpgネギハモグリバエLiriomyza chinensis。茨城にて。

ネギの害虫。葉の表面に点々と産卵し、幼虫は葉肉に潜りこんで中から食い荒らす。

4426.jpgダイコンハムシPhaedon brassicae。茨城にて。

大根の葉に、知らぬうちに相当数がたかっていた。粛清しないとよろしくなさそう。

4430.jpgメクラミズムシ一種。

大雨の続いたある日、いつもより奮発して一度に1500回ほど井戸ポンプを漕ぎまくったら、一匹だけ出た。今年の頭から、もうかれこれ通算で5万回か6万回は漕いだポンプだが、こいつが出たのは初めて。いつもは大量のヨコエビしか出ないのに。まあ、絶対ここには生息していると思ってはいたので、驚きはないが・・。
半透明のガラスのような体を持つ美しい甲殻類で、眼を完全に欠く。地下水性のミズムシ類は、国内だけでも相当種数が知られており、種毎にある程度の地域固有性を示す。大半の種はたかだか数mm程度の微少なものだが、中には2-3cmもある化け物サイズの奴もいる。

つくづく地下水生物というのは、同じ井戸ポンプでも漕ぐ季節やその時の気象条件(大雨だったり、ぎゃくに渇水だったり)によって、出てくるものの顔ぶれがかなり変化するものなのだと思い知らされる。よって、たかが一、二度きり一つの井戸ポンプを1-2万回ぽっち漕いだだけで、「ここの井戸は良い悪い」と評価するのは極めて軽率であり、危うい。

4423.jpgヨコヅナトゲアリヅカムシBatrisodellus palpalis。茨城にて。

大型のアリヅカムシで、山間部のハヤシクロヤマアリの巣から出た。こんな奴、信州のクソ田舎に住んでいた頃には近所でいくらでも見られたものだが、すっかり遠い存在になってしまった。

今から数年前、「アリの巣の生きもの図鑑」を世に出した頃、こんなアリの巣の中にいる微小なゴミサイズのムシを好き好んで撮影(ここで言う撮影というのは、ただシャッターを切って目の前のムシを写し取るという意味ではない。その種本来のあるがままに振る舞う姿を、警戒させずに極力野生下で撮影するということを言っているのだ)する人間など、日本で俺やその周辺の仲間くらいしかいなかった。だからこそ出版当時この本は話題となったし、俺自身も珍しがられて得意な気分になっていた。自分こそがこの「好蟻性生物撮影のパイオニアだ」という自負があったから。
しかし今や、微小昆虫撮影の機材も技術も、当時とは段違いに敷居が低くなった。そしてそれらを駆使し、しかも各種昆虫の生態を完全に熟知した若手の撮影者が次々に現れ、信じがたいような写真をネット上に次々と出している。好蟻性生物とて例外ではない。もはや「アリの巣の・・図鑑」に載っているような写真など、はっきり言って今じゃそこらの凡人でさえ撮れると断言する。このような中、果たして俺のオリジナリティとアイデンティティは一体どこにあるというのだろうか。現状に甘んじていては、その他大勢の中に埋もれるのは必至である。
最近、映画「カーズ・クロスロード」を見た。自分が老いさらばえていき、若輩にかつての自分の居場所を追われる立場になった時に、どう身の振り方を考えるか。とても重たいテーマの映画であった。