逆せかいいちのはなし

大きくそびえ立つ、クヌギの大木。

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その大木の幹にこびりついた、小さな地衣類。

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その小さな地衣類の影に隠れて越冬する、珍種コケオニグモAraneus seminiger
体長5mm程度の、とても小さな幼体。薄いミントグリーンの美麗種で、地衣類そっくりな色をしている。蛾の類と違って、このクモは間違いなく地衣類を認識しているようで、地衣類上に定位する性質が強い。
この個体は典型的なコケオニグモとは模様が違うが、毎年いる場所で見たし、雰囲気から見ても普通のオニグモA. ventricosusの色彩変異個体ではないと思う。


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そのとても小さいクモの背中に食いついた、さらに小さい寄生性クモヒメバチの幼虫。コケオニグモにこの類のハチが付くという話を聞いたことがないが、普通のオニグモに寄生するものがたまたま寄生しただけだと思う。


小学校の国語で読まされた「せかいいちのはなし」(北彰介、1974)という昔話がある。自分が世界一巨大で勇ましいと自負していた大鷲が、それを世界中に自慢するための旅に出るが、道の途中で自分より遥かに巨大なエビに出会う。負けを認めた鷲の「やっぱりあんたが世界一」の言葉におだてられて気を良くしたエビは、鷲に代わって自慢の旅を引き継ぐ。ところが今度はそのエビが旅の途で、それを遙かに凌駕する巨大海亀に出会う。負けを認めたエビは、亀に「やっぱりあんたが世界一」と言うが、亀は自分など世界一でも何でもないという。実は、その亀が乗っていた場所はそのまた遙かに巨大な鯨の背中で、その鯨でさえまだ子供だという。しかもその子鯨の親ですら、鯨仲間の間では全然小兵だった。
大きな者の上にはさらに大きな者が無限に存在するという壮大な内容で、人間の思い上がりと慢心を戒める物語であった。

その逆もまたしかりだと思う。小さなクモの背中に乗った極小のクモヒメバチだが、もしかしたらこれの体内にさらに別の寄生虫が住んでいるかも知れない(そんなもの記録されていないとは思うが、絶対にこの世に存在しないなんて誰が断言できよう)。また、昆虫体内には往々にしてその種の昆虫にしか見られない共生細菌が生息しているから、その寄生虫の体内にさらに別のミクロの生物が生息しているかもしれない。
小さなものの中には、さらに小さなもの、そのまた小さなものたちによって作り出される宇宙が無限大に広がっている。世の中は我々が思っている以上に広いことを、たかだか2mmのウジ虫に諭されて、思わず森で腰を抜かした。八甲田山の大鷲にも、教えてやらにゃあなるまいて。

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victim珍種コケオニグモに薩摩守のクモヒメグモの子、
網の中のクモに如何にして卵を産みつけるのか?
幼体のクモは脱皮の前に喰い殺されるのか?
我々の宇宙が、別の大きな宇宙のブラックホールの中に、
入れ子構造状態に為っている・・!?
小さな虫の世界、この惑星の原子心母、
八甲田山の天狗子は如何に思し召すでしょう・・。
瓜豆|2014.02.19/21:36
この寄生蜂も、ただでさえ数少ないクモの5mmそこそこしかない幼体を、よくも広大な森の中から見つけ出して寄生できたものだと思います。人間には計り知れない虫の能力もまた、無限大の可能性を秘めています。
richoo|2014.02.19/22:26

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