兇魔天帝

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とある観光洞でたまたま見た、冬眠中のキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinum

内部にいくつもの照明器具が並び、煌々と点灯している年中無休のこの小さな観光洞は、ひっきりなしに大勢の観光客が往来する。そんな場所で、このコウモリは昏々と眠りについていた。

普通、冬眠中のコウモリは人間のディスターブに弱く、邪魔されると死んでしまう。だから、冬眠中のコウモリに明かりを当てたり、大きな音を聞かせてはならないとされる(そもそも、本来は冬にコウモリのいる洞窟に入るべきではない)。
ところが、ここでは初めから明るくやかましい洞窟に、コウモリの方がすすんで入り、冬眠しているのだった。この近辺に、冬眠に適した洞窟が他になくて、やむを得ずここで毎年冬眠している「慣れた個体」なのかもしれない。

見たところ体中に水滴がつき、ここで冬眠に入ってからかなり久しい雰囲気だが、いくら周りの観光客が面白がって騒いでも、写メをとられても、もうそういう刺激に慣れてしまってその程度じゃ起きないらしい。それがいいことなのかどうかは分からないが、この個体は安心して冬眠を続けているようだった。
ここではない別の地域の観光洞でも、人がバンバン行き交う洞内通路のすぐ手が届く壁面で、コキクガシラコウモリが冬眠しているのを見たことがある。コウモリが安心して冬眠できる洞窟は全国的に年々減り、コウモリも数を減らしていると言われるが、一部の個体は妥協して観光洞で冬眠するように適応し始めているのかもしれない。

人間も人間で、写メは撮ってもコウモリを直につついたりいじったりする者は、離れたところでしばらく見ていた限り誰もいなかった。いい意味で、人と野生動物が互いに干渉しないようにしている雰囲気で、好感が持てた(みんな単に、コウモリなんて不気味で不潔そうなもの直に触りたくないだけかもしれないが)。

せっかくなので、俺も一枚だけストロボ弱めに撮影した。よく見ると、翼の縁の内側に寄生性のコウモリバエだかクモバエだかがいるのに気付いた。それの写真も本当は撮りたかったのだが、これ以上もう何もせず去ることにした。寄生バエの写真を撮りたい以上に、このコウモリに無事冬を越して欲しかったから。

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