881.jpgギフチョウLuehdorfia japonica

見た目が綺麗なうえ、全国各地で絶滅しそうだと言われているため、手厚く手厚く保護されがちな虫の筆頭。警戒心が強く、飛翔は素早い。世の中の写真家は、よくこんなのが飛んでいるさまを至近で撮影できると思う。


日本には、国・都道府県レベルの別なく、レッドリストに載せられている虫がたくさんいる。いずれも、数が減ったり最近の発見例が途絶えたりなどしており、多少とも絶滅の危険が差し迫っていると判断される種がリストアップされるのだが、それに載ったからと言ってそれらの虫が平等に保護されたり注目される訳ではない。
ハエやカや取るに足らなそうな羽虫の中にだって、ギフチョウやゲンジボタル以上に希少なものはいくらでもいるのだが、そうしたものどもは別段人々に顧みられることもなく、ただ「レッドリストに載せられたまま」一般に特に周知されることもなく、保護も何もされずに予後を過ごす。自然保護や動物愛護などというものは、結局は人間側の色眼鏡に過ぎないというのがよくわかる。

昆虫版レッドリストをよく見れば、ヨナグニウォレスブユだのハネダピソンだの、名前だけ聞いたのではどんな物体かも想像つかない、本当にその筋の専門家しか知らないようなマイナー種もリストアップされている。しかし、よほどそれらに顕著な特徴かつ保全上重要な意義が見出されない限り、大抵は保護対策どころか、実際にそれがそこに生息しているのか確かめようなどという試み自体が行われない。
ただでさえ発見困難なのに加え、本職の研究者には研究しても金がとれないので無視され、一般の虫マニアには集めても面白みがないので無視され、結局「レッドリストに載せられたまま」誰からも無視されて、生態の解明どころか現在の消息が全くつかめない虫は多い。ケカゲロウなど、まさにその典型だろう。
そういう虫に関する生態情報の蓄積は、結局のところごくまれに日本に出現する「どういう訳か限りある私費を投じてまでそんなつまらない虫を探し出す行為に、異様な快感を覚える奇人変人」の活躍によるほかない。

俺はそんな奇人変人の筆頭として、名乗りを上げたい。「凡人共が無視する目立たない命にまで気を配る俺tueee」という中二じみた自尊心を手堅く満たすのに最適であるし、究極的にはその虫の保護や保全に関して多かれ少なかれ役に立つ知見も得られるなら、一石二鳥である。
それに、いくらちっぽけな小虫の類であろうと、それがそこにしかいない珍しいものだというのなら、むざむざ知らない間に生息環境を破壊して滅ぼしてしまうのはもったいないことだと思う。生き物というのは、何か知らないが今そこに適当にいるわけではない。過去に起きた地理的・気候的なイベント、他の生き物との競争、様々な歴史が複合的に絡んだ結果、今そこに生息している。言わば、その土地の歴史を背負った「生ける古文書」と言っても過言ではない。

それが美麗なチョウだろうと小汚いハエだろうと、今その生き物が、その場所にいるべくしているという事実は、もっと大切にされてしかるべきである。しかし今の日本は、そこに住んでいることが既に分かっている天然記念物の魚の生息地さえ、当然のように潰してサッカー場を作ろうなどと意味不明なことを平然とやる、下衆な国に成り下がってしまった。黙っていれば、いるかどうかも分からない小虫の生息地なんて瞬く間に消滅してしまうだろう。

それまで存在の知られていなかった新種の虫を見つけることは意義深い。しかし、長年にわたり発見されていない虫が今もその場で生き続けていることを定期的・継続的に示し続けることも、同等に意義深いはずである。だから、これからは長年記録の途絶えた地味な虫を、一種類でも多く黄泉の国から現世に呼び戻すことを人生のライフワークとしたい。




882.jpgそういう訳で、所詮人間の色眼鏡でちやほやされている生き物はとても気にくわないので、日常的にギフチョウやゲンジボタルのことをディスるように心がけている。それでも生きた現物を目の前にしてしまえば、やっぱりその美しさに見とれてしまう。

北陸にて。

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