1114.jpgオオアリマキヤドリバチProtaphidius nawaiiにマミー化させられたクヌギクチナガオオアブラムシStomaphis japonicaを守るフシボソクサアリLasius nipponensisの元に襲い来るコバチ。とても状況が複雑な上、登場人物の名前が揃って無駄に長いので、説明が厄介。

アブラバチ科のハチは、アブラムシの体内に寄生して内部から食い殺す寄生蜂である。このハチにやられたアブラムシは、必ず体がいずれカラカラに乾燥したミイラに変貌し、その状態をマミーと呼ぶ。クチナガオオアブラムシ属は世界最大級のアブラムシだが、これにはやはり大形のアブラバチであるオオアリマキヤドリバチというのが専門に寄生する。
クチナガオオアブラムシはアリと関係が深く、常時多量のアリによって護衛されている。そのため、オオアリマキヤドリバチは腹部を潜望鏡のように伸ばして、アリに気付かれないよう遠くからアブラムシに卵を産み付ける。

寄生されたアブラムシは当然いつかマミー化してしまうのだが、そこで不思議なことが起きる。周囲のアリがマミーの外皮を全て囓り取り、内部に入ったハチの繭をむき出しの状態にしてしまう。そればかりか、アリはもはやアブラムシですらないこの物体を、なぜかそのまま集団で守り続けるのである。生きたクチナガオオアブラムシと同じ匂いを、ハチの幼虫が繭の内部から作って放っているとしか思えないのだが、誰も調べやしないので詳細はまったく謎。

メカニズムはさておき、なぜハチの繭はアリを誘引して周囲に取り巻かせているのか。それは、このハチの繭に二次寄生しようとたくらむコバチがいて、アリにそいつの攻撃から守ってもらいたいからである。このコバチは種類は一切不明だが、おそらくオオアリマキヤドリバチの繭を攻撃するスペシャリストである。
コバチは化学擬態のような、アリの防衛を強行突破する術を一切持たないため、アリに一匹繭のそばに居られるだけで攻撃ができない。だから、オオアリマキヤドリバチの繭にとってアリに居てもらうことはとても重要なのである。

この13年間というもの、俺はこのアリとアブラムシとハチの攻防を徹底的に野外で観察してきた。試しにマミーを守っているアリを追っ払ってマミーに近づけなくしてやると、すぐにコバチが来てマミーに産卵を開始する。しかし、今のところ自然状況下でコバチがマミーに寄生成功した場面を、一度でも見たことがない。
マミーには常時アリが粘着しており、空くことがない。でも、何らかの隙をうかがって、どうにかして寄生しているのである。そのタイミングがいつなのか結局分からないまま、かの地を出て行かざるを得なかった。

長野にて。


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昨日、北九州市小倉のGALLERY SOAPで行われた「蟲展」のオープニングトークには、大勢の方にご来場いただきました。厚く御礼申し上げます。

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