天皇蝶

1117.jpgミカドアゲハGraphium doson。福岡にて。いるのは知っていたが、ちゃんとお会いしたのは初めて。

南方系の蝶で、いっけんド普通種のアオスジアゲハに似る。飛んでいるものは、意識しなければアオスジと区別しがたい。この夏の間、きっとそこらを歩いているときにアオスジだと思って相当数とすれ違っていたであろう。もったいない。
南西諸島では見たことがあったが、本土では初めて見る蝶。アオスジにちょっと模様が増えた程度の蝶なのに、高級感がすさまじい。

近所の道端を歩いていたら、路上でじたばたしているのを見つけた。翅がひしゃげて飛べなくなっていた。おりしも強風で、羽化したところを風で落とされてしまい、そのまま体が固まってしまったらしい。残念だが、もう後は食われて死ぬだけ。いっそ持ち帰って標本にしようとも思ったが、ちょうど今年の引越しやらで標本箱をすべて実家にやってしまっていた。今回は、鳥かアリに譲ることにした。

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この蝶の幼虫は、とてつもなくかわいらしい顔(本当は顔ではないが)をしている。それをどうしても見たくて仕方がなく、近隣に生えている台湾オガタマを徹底的に見ているのだが、まだ発見できない。
オガタマは神社などに植えられることが多く、必然的に蝶のほうも神社界隈で見かけることが多いという。神聖なイメージがあるせいか知らないが、かつてミカドアゲハは2度も切手のイラストになったことがある。なお、ミカドアゲハの帝は明治天皇のことを指す。

ミカドアゲハは近年分布拡大が顕著だと言うが、オガタマやタイサンボクに絶対的に依存するため、言うほどどこでも普通には見られない。かつては高知県の高知市が国内の分布北限とされていたため、この土地のミカドアゲハは国レベルの特別天然記念物にまで指定され、現在もそれは継続している。しかし、今やミカドアゲハは近畿あたりまで入ってしまっているため、高知のものを特別天然記念物として今も保護し続けているのはもはや意味がない、と多くの虫マニアに批判されている。

俺も一虫マニアとして、本当に絶滅が差し迫ったメクラチビゴミムシやらヤツシロハマダラカが捨て置かれる一方で、もうそんなにちやほやする必要もなくなった蝶が後生ちやほやされ続けている状況に対して、言いたいことがなくもない。しかし一方で、きっとそこの地元の人々にとって、ミカドアゲハは昔から見守り続けてきた大切なものなのであって、今更北限じゃなくなったからもう保護をやめろと言われて到底納得のできることではないはずだ。例えるなら、伝承してきた地域の行事が、もはや価値がないからもうやめろと余所者に言われるような感覚だろう。
どうせ高知でなくてもミカドアゲハは採れるので、高知のミカドアゲハはずっと特別天然記念物のままでいいとも思う。

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