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シロマダラDinodon orientale。福岡にて。

分布は広いが生息密度は極めて薄く、夜行性なのも手伝って本土産ヘビ類では一番出会うのが難しい。車に轢かれたやつはしばしば見るが、生きたやつを見たのは上の個体が人生でまだ3度目。マダラヘビ属は本来熱帯系だが、本種は日本の北海道まで分布しており、一番北まで分布している部類に入るだろう。そして、日本にしかいない。

人生で一番最初に出遭ったのは長野であった。かの地に移り住んで間もない頃、まだ開拓し始めたばかりの裏山を真っ昼間に歩いていたとき、目の前に伸びていた。夜行性で数少ないこれが、白昼堂々見つけてくれと言わんばかりにわざわざ俺の前に現れたことに運命を感じ、森の女神の思し召しと思ってこれを連れ帰り育てることにした。

訳あって「ユキさん」と名付けた彼女は、驚くことに今も家にいて元気に生きている。13年間、近所からトカゲを捕まえてきて食わせ続けた。このヘビは自分より小さい爬虫類しか食わない狭食性の種で、餌の調達の難しさからかつては上野動物園さえ飼育を断念したほどらしい(実際は、鶏肉などでどうにか飼えないこともないらしい)。
でも、俺にとって近所でトカゲを採って来ることなど造作もなかったので、月に2,3匹トカゲを採ってきては与え、10月を過ぎたら寝かしつけ、3月末に叩き起こすというサイクルをずっと続けたら、何だかうまくいった。マニアの間でも、シロマダラを10年以上飼育下で生かすのは難しいとされているらしいが、特に問題なく生きている。乾燥ぎみにして、あまり不必要に構わないのがいいようだ。

1144.jpg本種のような変温動物食ヘビは、カロリーの低い餌を常時多量に食うことで生命を維持している。だから、同じく変温動物食でカエルが主食のヒバカリなどは、ほんの数日餌をやらないだけで骨と皮みたいに痩せこけてしまう。でも、シロマダラは1ヶ月程度餌を切らしてもそうそう痩せない。カエルほど一箇所に高密度でおらず、捕獲が難しいトカゲを専門に食う本種は、しばらく狩りが成功しなくても飢えないような体のつくりになっているのだろう。

変温動物食ヘビは、代謝が異常に早い。恒温動物食の青大将などは、飼育すると半年に一回程度脱皮をするが、シロマダラはほぼ月1か二ヶ月に1回のペースで頻繁に脱皮する。もともと食欲旺盛ではあるが、脱皮後は失った体力を取り戻すため、ことさらに食欲が増す。
生きた餌を調達するのは大変だし、何より餌動物が可愛そうだから、市販の肉などの代用品を餌にするという人もいる。しかし、こういう野生動物を本来自然状態で食っていなかった人工餌で飼育するのは、点滴で栄養を流し込んで生かしているだけの状態と何も変わらなく思う。自然からさらってきた以上、せめて自然にいた時と同じものを食わせるのが礼儀だと思い、生きた餌しか与えないことにしている。

実のところ、あの僻地から南国に移住する際、よほどユキさんを手放そうかと悩んだ。新天地でどれほど餌を確保できるか分からなかったし、連れ回すのも気の毒だから。しかし、13年も人の手元に置いたものをいきなり野生に放るのは、それはそれでいろいろ問題があるだろうし、何せ引越しの時期がまだ雪の残る3月だった。裏山に放ったら確実に死ぬと思い、結局連れてくることにした。
幸い、トカゲが多い地域だったので、ユキさんに餌の不自由をさせることなく過ごせている。口のあるものを手元に置くのは、大変である。

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