2014/11/07|Category:膜

昔コンデジで撮ったやつ。本当は一眼で撮り直したいのだが、撮り直そうと思って出来るシーンではないので、恐らく相当年数がかかる。
昔から、狩人蜂が獲物を捕らえて毒バリで仕留める瞬間を写真に納めるのが趣味なのだが、しかしそれは非常に困難を極める。狩人蜂はとにかく人間を嫌がり、傍に人間が居ると本来の自然なままの行動を頑なにとろうとしないから。特に小型アナバチ類は筆舌に尽くしがたいほど観察が難しい。警戒心の強さに、行動の素早さとサイズの小ささが加わる。観察しやすい要素が何一つない。
さらに小型アナバチ類では、大型種で使える狩りのヤラセ(獲物を仕留め終えて運搬している時に獲物をピンセットで動かし、まだ麻酔が効いてないと勘違いさせてもう一度獲物を刺させる)が原則通用しない。狩りの瞬間が見たければ、自分の足と眼で広大なフィールドを歩き回り、自然状態で偶然それをやっているところに出くわす以外にないのだ。
それだけに、何日も裏山へ足繁く通ってようやくその場面に遭遇し、あまつさえ撮影まで出来たときの嬉しさたるや、感無量だ。全てをかなぐり捨てて真にハチに全てを捧げた者だけに、森の女神が見せてくれる至宝以外の何だというのか。いくら画素数の荒い写真だったとて、俺はこの写真を見るだけであの日の暑い日差し、むせかえるような草いきれ、撮影中容赦なくゴム草履の足を刺すアブの痛みを、昨日のことのように思い出せる。
ヒメツチスガリはゾウムシを狩るとネットには書かれているが、この場所では13年間、草本に付く小型のサルハムシを狩る姿以外見ていない。