1248.jpgアリノタカラEumyrmococcus smithiをくわえるミツバアリAcropyga sauteriの新女王。熊本にて。

文献上では本州以南の分布になっているが、南西諸島以外でこのアリを見つけるのは、アンチョコなしに神岸あかりを攻略する以上に不可能に近い。本土で見たという人間を、身近でほぼ聞かない。
雨上がりの秋の終わりの曇天日に、道脇ですごい蚊柱みたいなのが立ち上がっており、よく見たらコレの結婚飛行だった。こんな時期にやるのか。こんな日に限って、大してムシなんかいないと思ってカメラを持ってきていない。本当はコレの交尾を撮りたかったのだが叶わず、脱翅した女王を家まで連れて帰った。

ミツバアリは、カイガラムシの一種アリノタカラと絶対的共生関係を築いている。結婚飛行時、翅の生えた新女王は出身巣から必ず一匹のアリノタカラを口にくわえてから飛び立つ。まるで、先祖代々秘伝のぬか床を抱えて嫁ぎに行く花嫁のごとく。
交尾を終えて地上に降りた女王は、すみやかに敵の目を避けて地面の隙間などに潜り込む。そこでさらに地中を掘り進んで営巣し、コロニーを構築していくものと思われる。アリノタカラは単為生殖で、一匹だけでどんどん増える。

アリノタカラは他種のアリではだめで、絶対にミツバアリの世話を受けなければ死ぬ。ミツバアリも、餌源を100%アリノタカラの出す甘露に依存すると言われているため、アリノタカラを紛失することは新女王にとってそのまま死に直結する。
だから新女王は、外へ飛び出してから交尾を終えて地面の隙間に潜り込むまでの間、文字通り死んでもアリノタカラを放さない。アルコール標本にされても、アリノタカラをくわえたまま事切れる。

今更ながら、東海大学出版会「アリの巣の生きもの図鑑」には、ミツバアリのほか同属のイツツバアリ、ヒラセヨツバアリなど、これまで撮影されたことがほとんどないアリおよびそれと絶対共生するシズクアリノタカラ、キノムラアリノタカラの姿を堪能できます。堪能しましょう。

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40年前、5月の連休に学校をサボって行った千葉の千倉の畑のヘリを少し崩したら発見しました。
この当時は岩手の片田舎では情報は少なかったのですが、すぐにミツバアリとわかりました。
あれ以来南房総でアリは探していませんし、場所も忘れましたが、探せばいるのでしょう。

なお、
6月だったと思います。埼玉の自宅の塀の上に非常に小さな羽蟻がいたのを発見して、よく見たらなんとコツノアリの女王でした。
そこはかなり前に駐車場で、そこを宅地にして建った家の塀です。その塀の下は北側で夏だけ少し日の当たる場所です。塀の下部はだいぶ腐ってきていたのでそこにいたのかも知れません。
高さ1.5mまで登ってきたことやまさかそんなところにいたなんて驚きでした。
いるまえかわ|2014.11.20/21:40
千葉にコレがいるとは驚きです。一番いそうな伊豆あたりでここ10年近く、しつこく探していますがかすりもしません。広い範囲に、パッチ状に分布してるんでしょうか。
日本でこれの結婚飛行がいつ頃行われるかって、あまりよく分かってませんよね。湿度と気温のタイミングが合えば、かなり長期間にわたってダラダラやるのかもしれませんね。
richoo|2014.11.20/21:53
こういう記事を書くときに図鑑を宣伝しないでどうする。
丸山宗利|2014.11.22/01:46
そうでした、迂闊でした・・・
richoo|2014.11.22/07:14

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