1249.jpgナガコガネグモArgiope bruennichiの卵嚢。熊本にて。

不思議な洋梨型の卵嚢。晩秋にメスのクモが作り上げる芸術作品。外側はセメントのようにカチカチに硬いが、内部にはワタのように柔らかい糸のクッションが詰まっており、卵塊を包み込む。先に蓋に相当する上側を作り、その裏側に卵塊をぶら下げるように生み出してくっつけ、その周りを糸でくるんで包むうちにこういう形になる。
卵嚢の作成はメスのクモにとって著しく体力を消耗する一世一代の大仕事。完了すると、遅かれ早かれそのまま死ぬ。

ファーブルの住んでいたフランスにもこのクモは分布するため、かの有名な昆虫記にも登場している。しかしその内容を見ると、およそ事実とは異なるメチャクチャな話が書かれているのには驚かされる。
「ナガコガネグモの卵嚢は外皮が硬くて小グモは自力で外へ出られない。しかし、春になって気温が上がると卵嚢内部の空気が膨張することで卵嚢の蓋が破裂して吹っ飛び、小グモが外へ出られる」といった趣旨の話が書いてある。しかし今のところ、このクモの卵嚢が気温上昇に伴い破裂する事実は確認されていない。また、卵嚢の作り方に関しても、実際の手順とはほぼ真逆の内容が昆虫記には記載されている(洋梨を先に完成させてから、上からペースト状の卵塊を流し込んで蓋をするという趣旨)。本当に観察したのであれば、絶対に書けるはずのないことがしれっと書いてある。

他にも狩人蜂の項目で、芋虫を毒バリで刺すときの手順をごまかして書いていたりなど、昆虫記の中にはファーブルの見間違いなのか、あるいは話を盛ってわざとウソを書いているとしか思えない箇所がかなり多い。ファーブルは言うまでもなく類い希なる観察者ではあるのだが、その文章を読む際には十分に注意を要する。昆虫記はあくまで文学作品であり、昆虫を知らない人(特に大人)が昆虫を知る教科書として読むべき本ではないかもしれない。
幼い頃、あれだけ克明に虫の研究をしたファーブルがなぜ世間で「学者、科学者」として扱われていないのか、なぜ学校の理科の資料集に名前が出ていないのか、不思議に思っていた。その理由が、それであった。

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ファーブル
ファーブルの話、結構鵜呑みにしてました!
ここが嘘だよ、ファーブル君みたいな本があるといいですね。
くぼやま|2014.11.21/12:42
くぼやまさま、たしかにそうですね。本当のこと大半の中に、ときどき間違ったことが混ざって書いてあるので、なおたちが悪いです。とはいえ、あの時代にここまで虫の事を書けたファーブルは、やはり凄いですね。
-|2014.11.21/15:56

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