1254.jpgヨコバイを捕らえた瞬間のヨコバイバチ。長野にて。

この仲間は標本がなければ種まで同定できないのだが、おそらくシワヨコバイバチPsen exaratusだと思っている。草原を低空で飛び回り、ヨモギなどに付くヨコバイを狩る。巣は日陰の朽木を穿って作り、そこへヨコバイを数匹溜め込む。
狩りの仕方はギングチとほぼ同じ。茎についた獲物を見つけるとしばらくホバリングして狙いを定め、一気に突撃する。攻撃が成功すると、たいていそのまま獲物とともに落下してしまい、下草にまぎれてしまう。もしくは、すぐさま獲物を抱えて空中に飛び上がり、空中で毒針を刺すため、麻酔行動を撮影するのが筆舌に尽くしがたいほど至難を極める。

13年前、長野に移り住んだその年に、裏山ではじめてこのハチが狩り終えた獲物を運ぶ姿を見て以来、なんとかして麻酔する瞬間を撮ってやろうと散々努力してきた。しかし、このハチはとにかく野外では数が少なく、遭遇自体が困難である。被写体たるこのハチを、ひたすら歩いて草原の中から見つけ出すまでの段階で、すでに疲弊してしまう。くわえて、たかだか1cmしかないこの黒いハチを真夏の炎天下の中、草ぼうぼうで足場が悪い山の斜面の草原で、背後1mの距離を保ちつつ30分も40分も追い続けるのは容易なことではない。
この背後1mというのは、長年小型の狩人蜂を野外で追い続けた経験上はじき出された黄金比である。これより離れると、こちらがハチを見失ってしまう。これより近づくと、ハチが嫌がって姿を消してしまう。必ず相手からこの距離を保って歩かねばならない。しかし、気をつけるべきことはまだある。

フィールドでこういう動きの早い小さい飛ぶ虫を追うときには、標的そのものを見つめてはならない。一点のみ見つめ続けると、ふと視線から標的が大きく外れたときに簡単に見失うから。目に見えている視界そのものを全部うすぼんやりと見て、その中で動いている標的を常にその視界の内側に何となく入れ続けるようにして追うと、決して見失わない。
さらに、足場を踏み外したり障害物に足を引っ掛けてこけたら一巻の終わりなので、流れ行く視界の中でこれから足を踏み出して次に置く場所も的確に判断しながら歩かねばならない。一個でも失敗すると全てがだめになる複数の事柄を同時に処理する能力、さらにそれを標的が行動を起こすまで永遠に続ける根気がないと、草原にすむ小型の狩人蜂の麻酔行動は絶対に観察できない。

それほどの苦労を重ねて、ようやく撮影した一枚が上のやつ。偶然、獲物を捕まえた後下草に落ちたり、空中に飛び上がらなかった、非常に稀なシチュ。彼女との最初の出会いから、実に8年かかってようやく撮ることを許してくれたカット。

1255.jpg一番最初に出会った年に、当時持っていた200万画素のオモチャデジカメで撮影した彼女。まさかこれをデレさせるのに8年かかるとは、この時知るよしもなかった。このハチは獲物を運ぶ際、なぜか中脚だけでしか獲物を掴まない。

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「野外観察における視線のもって行き方」参考になりました。
kiokuima|2014.11.09/08:14
ありがとうございます・・・
richoo|2014.11.09/20:38

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