1380.jpg下甑、手打の水田地帯。かつて精霊が「現界」した地。稲作できるような平坦な場所は、海辺に程近いごく狭い範囲のみ。すぐ背後に急峻な山がそびえる。

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一般に下甑島はひなびた田舎のように見なされているが、環境は部分的に相当人為改変されている。少なくともこの手打集落の場合、水田地帯を流れる川は、例外なく全部コンクリ三面張りになっているし、上流にはダムが作られている。さらにその上にある山の源流域まで行けばようやく自然の沢になるが、おそらくそこで探しても精霊はいない。
ツノマユブユの仲間は、生息環境として平坦な土地を流れる、極力護岸されていない緩流を好む。一番生息に適した立地のここで生息する気配が一切ないので、サツマツノマユの生息は絶望的である。ウチダツノマユは、例外的に護岸河川でも問題なく生存できる強い種なので、日本中あちこちに普通に見られる。

俺は条件反射的に「衛生害虫の生息調査は、各地で徹底的になされている」と思っている。しかし、高岡(1976)以後少なくとも下甑のブユ生息調査に関して、一般人が手に取れるような論文・報告書は出ているのだろうか。正直なところ、近年どの程度あの島内で徹底的に調査がなされた上で、あの精霊がいなくなったことにされているのかを知りたい。

なお、沢の源流とくればメクラチビゴミムシがいるに違いないと思って土木作業をしたが、何も出なかった。地面が花崗岩地質でサラサラしすぎてて、そういうものがいそうな気配がなかった。花崗岩地質の土地は、地下浅層に餌となる有機物が溜まりにくいらしく、地下性生物の種組成が著しく貧弱であると言われている。

同じ場所でアリの巣の居候も探すし、ブユも探すし、メクラチビゴミムシも探す。全然違ういろんなものに興味を持っていれば、同じフィールドを同時に2度も3度も楽しむことが出来る。そのぶん成果が何もなかった場合、2倍3倍余計にダメージを受けることになるが。

高岡宏行 (1976) 南西諸島におけるブユ科の研究 : I. ツノマユブユ亜属の種類について。衞生動物 27(2), 163-180

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