1719.jpgヒラスベザトウムシLeiobunum manubriatum。長野にて。

本州以北、北海道まで分布するド普通種で、山間地に多い。基本的に全身オレンジ色の体色をしているが、多少の色彩変異があるようだ。この個体は、白馬岳の猿倉荘すぐ上のブナ林で見られた。この仲間はとても種数が多く、外見で種判別は難しい。解剖して生殖器を見るのが確実だが(アルコールで〆ると、解剖するまでもなく生殖器を突き出したまま事切れる場合が多いが)、オスならば口元に付いているlabrumという突起の形状でもある程度は同定可能。
ヒラスベのオスのlabrumはL字方で、まるで理科実験室のガス元栓コックを思わせる。日本産の近似種で、こういう形状の種は他にほとんどいない。

1720.jpg白馬岳で同所的に生息するとされる固有種シロウマスベザトウムシは、labrumが短い突起状であり、ヒラスベとは容易に区別できる。しかし、猿倉から森林限界下部の間で、目線の高さの樹幹や下草上に見られたオレンジ色のザトウムシは、全部ヒラスベだった。かつてその筋の専門家が集中的に探索したようだが、その時もヒラスベ以外発見できなかったらしい。もしかしたら、普通のヒラスベとは全く異なる微環境に生息するものなのではないかと考えられている(Tsurusaki 1985)。
それを踏まえ、一般的なスベザトウがまずいないような倒木下、湿った石垣の狭い隙間などもみたが、そういう場所には関係ない別分類群のザトウムシがいてだめだった。残る候補ハビタットと言ったら、高さ数メートル以上の林冠部くらいしかない。比較的小型種らしいので、軽量な体を生かして樹上の高所で生活している可能性も考えられる。
ゼフを採集するような長竿網で山中の木をなぎ払っていけば採れるかもしれないが、あそこでそれをやるには相応の許可が必要となる。

シロウマスベザトウムシは、1960年代を最後に記録がない。環境省の絶滅危惧種に指定されている(情報不足カテゴリ、2012年版)。きっと夏に5回くらい白馬へ通えば、すぐ再発見できると思うのだが・・・。今の俺にはあまりにも遠い場所になってしまった。かの地に在住中、こんな不思議な生き物に興味を持っていなかったのを、今更後悔している。



Tsurusaki, N. (1985). Taxonomic revision of the Leiobunum curvipalpe-group (Arachnida, Opiliones, Phalangiidae). I. hikocola-, hiasai-, kohyai-, and platypenis-subgroups. J. Fac. Sci. Hokkaido Univ., Ser. VI, Zool, 25, 1-42.

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ザトウムシの寄り目、意味があるのでしょうねェ、
ボタンの様な目、やはり複眼ですか?
「スベ」とは?
ザトウムシはドロンちび丸を想い出します、
彼の地、遠きにありて想うもの、でしょうか、
信州は神々の座の山々を有するパラダイスです!
瓜豆|2015.09.11/16:06
体のどこかが、スベスベしてるんでしょうかね? あの小さな眼で世界がどう見えているのか、気になります。長野は、心の故郷です。
-|2015.09.12/21:58

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