2015/11/18|Category:海外・アフリカ



しばしばテレビや蘊蓄本の類で「軍隊アリが去った後には全ての生物が殺し尽くされ、完全無生物状態の沈黙の森になる」などと見てきたようなウソ八百を面白おかしく並べていることがあるが、事実ではない。百戦錬磨のサスライアリと言えど、毒を持つバッタや匂いを持たないナナフシなど、襲わない生物は少なからずいる。襲われる生物にしてもかなり多くのものがアリの進軍を事前に察知し、余所へ逃げ延びてしまっている。アリがいなくなった後、彼らは遅かれ早かれ再びそこへ戻ってくるのだ。確かにアリが攻め込んできた後は、くる前に比べればその場の生物は減る。しかし、アリによってその場の生物が完全無になる瞬間など一秒とて存在し得ない。
また、アリが一番殺すのは、そのエリアで一番個体数が多く優占する種である。優占種がそこから除かれることでニッチに「空き」が生じ、普段優占種に押さえ込まれている種がその空きに入り込みやすくなる。サスライアリは、ただ一方的に奪い尽くすわけではなく、ジャングル内の生物相を一度リセットして多数種の生物種が(あくまで結果としてではあるが)そこに生息する余地を作る役割を担っている。