2046.jpgサスライアリが攻め込んでくると、それまで地面の倒木や落ち葉下に隠れていた全ての生物が慌てて地上へ這い出して逃げ出し、辺りは阿鼻叫喚の様相を呈する。アリは逃げ遅れた生き物に片っ端から噛みついて取り押さえる。動けなくなったところに後続のアリがどんどん取り付いて獲物の肉体を切り裂き、引きちぎる。ケラが襲われているが、もはや外からは何が襲われているのか分からない。この程度の獲物なら、ほんの数分で原型がなくなる。

2047.jpg脊椎動物も、容赦なく殺す。レインボーアガマが八つ裂きにされた。切断された手足が運ばれていく。アリを比較的好んで食べるトカゲだが、そのアリに億単位で攻め込まれたらなすすべがない。撮影者も容赦なく襲われる。しかし、この絨毯爆撃下でしか出現しない好蟻性生物がいるので、特攻するしかない。

2042.jpg肉だけでなく、油分を含む植物質も好む。腐って落ちたアボカドの実に集まる。こうして2-3時間の殺戮ののち、アリは再び整然とした隊列を組む。ズタズタになった生物の破片をベルトコンベア状にビバークまで運びつつ撤退する。しかし、これだけの殺戮が行われた後だというのに、アリなき後には意外にも多くの生物の姿があるのだ。

しばしばテレビや蘊蓄本の類で「軍隊アリが去った後には全ての生物が殺し尽くされ、完全無生物状態の沈黙の森になる」などと見てきたようなウソ八百を面白おかしく並べていることがあるが、事実ではない。百戦錬磨のサスライアリと言えど、毒を持つバッタや匂いを持たないナナフシなど、襲わない生物は少なからずいる。襲われる生物にしてもかなり多くのものがアリの進軍を事前に察知し、余所へ逃げ延びてしまっている。アリがいなくなった後、彼らは遅かれ早かれ再びそこへ戻ってくるのだ。確かにアリが攻め込んできた後は、くる前に比べればその場の生物は減る。しかし、アリによってその場の生物が完全無になる瞬間など一秒とて存在し得ない。

また、アリが一番殺すのは、そのエリアで一番個体数が多く優占する種である。優占種がそこから除かれることでニッチに「空き」が生じ、普段優占種に押さえ込まれている種がその空きに入り込みやすくなる。サスライアリは、ただ一方的に奪い尽くすわけではなく、ジャングル内の生物相を一度リセットして多数種の生物種が(あくまで結果としてではあるが)そこに生息する余地を作る役割を担っている。

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小松さんの写真いつもすごいですが、説得力のある文にも惹かれます。大きく見ると生物がちゃんと循環しているということなんでしょうか。すごいです!
Yuumi|2015.11.24/22:35
ありがとうございます。少しでも多くの人々に、生き物のありのままの姿を見せられたらとささやかに活動しております。
richoo|2015.11.25/18:58

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