神威霊装・二番(ヨッド)

2253.jpgとある洞窟の最奥に住む精霊の作り出した、霊装。霊装は、霊力によって編まれた絶対の鎧にして城。

この精霊は俺にとって絶対に撮影せねばならないものだったのだが、とにかく一筋縄でいかなかった。その洞窟は高さ10数mの垂直な断崖の真下にあり、下るための道が一切ない。そこへ行くためには、鹿も通らないような足場の悪い崖を、撮影機材を担ぎつつ慎重に降りねばならない。崩れたら、即死。
たどり着くまでが大変なら、たどり着いてからはなおさら大変だ。極めて複雑に入り組んだ立体的な構造をした、天然の迷路。入ったら最後、二度と外へ脱出できない構造になっている底なし地底湖の部屋など、致死的なトラップがいくつも仕掛けられている。幅30cmほどしかない上、地面側が泥とコウモリのクソのカクテルになった汚水だまりの隙間に、顔面からヘッドスライディングをかまして滑り込み通過せねばならない場所もある。

何より大変なのは、そんな場所の奥までカメラを持って行かねばならないことである。虫本体だけ撮影したければ、体一つで奥まで入って虫だけ採って戻り、外で撮影すればいいだけ。しかし、俺は洞窟の壁面に固着したそれの巣を撮影したかったため、そういう手は使えない。何としてでも、カメラ自体を幅30cmのクソ水溜まりの隙間の向こうに通して運ばねばならないのだ。ない知恵を無理くり絞って、どうにか通した。そんな荒行を、行きと帰りの2回。朝入洞して、外へ出てきたのは夕方だった。
奥に行ったら行ったで、湿度がどんどん高くなるためカメラのレンズがあっという間に曇る。その湿気を抜くのにまた一苦労。上の汚らしい虫の巣の写真たった一枚撮影するために、それだけの労力と時間と命がかかっている。
なお、この精霊の霊装を撮影したことのある人間は、知る限り過去にたった一人しかいない。スマホも小型コンデジもない時代のこと、かの先人も全く同じ苦難の末にあそこへたどり着き、あの一枚を撮影したのだ。

しかし、あの洞窟は危険な場所だったが、同時に本当に楽しい場所でもあった。入口に「ネズミ返し」がある。入ってすぐの所に高さ4m弱の垂直な段差があり、ここを突破せねば入洞すること自体ができない。しかし、真横の壁に幾ばくかの溝と幾ばくかのコブが出ていて、これに上手く足をかけて手で握ると壁をよじ登って段差を超えられる。
この溝とコブは天然のパズルで、正しい組み合わせの溝とコブを選んで足と手をかけた者だけがよじ登れる仕組みになっている。正解以外の組み合わせの溝とコブを選ぶと、登る過程で必ず滑り落ちてしまう。俺は10分で正解が分かったが、同行者の中にはついに入口から先への侵入を断念した者もいた。

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