2306.jpgカリュウ(カリウ)ホラヒメグモNesticus karyuensis

世界で九州の極めて限られた石灰岩地帯にのみ特産する、地下性クモ。現在封鎖されて侵入不可のとある鍾乳洞が模式産地だが、ほんの5-6km離れた場所でも見つかっている。上の個体は、そのエリアで見られたもの。
その産地は、かつてとある絶滅昆虫の唯一の産地だった採石工事現場に大きく被っている。そのため、過去このクモの記録があった洞窟のいくつかは既に消滅しているし、将来的に採掘範囲の拡大とともに周縁の産地もほぼ全て壊滅することが決定している。これによって種そのものの絶滅には繋がらないだろうが、ただでさえ狭いこの種の分布域の大半が失われることとなる。
生息地を含む県が定めた希少種ということになっているものの、基本的に生息地が種々の利権の絡む地域のため、壊滅は黙認される模様。人々の生活と、金を生む訳でもない小虫の生き死にのどちらが大事かという話。

2305.jpg生死を問わず、このクモの姿を写した写真は、ここをおいてネット上には一つも存在しない。過去の文献を漁っても、俺が確認した限りではこの産地を包含する市の古い市誌に白黒写真が一つ載っているのみ。今は破壊されて存在しない、人工トンネル内で撮影された個体だった。
洞窟に入る以外の方法でこの生物を発見するには、向こう4日間は全身筋肉痛で他のことが一切できなくなる程の、過酷な肉体労働を強いられる。今日び辺鄙な九州の山奥くんだりまで、大量の重たい瓦礫を退かしてまでこんなキモい動物の生き死にをわざわざ確認しに行く人間などいないので、これがここのカリュウホラヒメグモ個体群を撮影した史上最後の写真となるだろう。
現在、採掘工事の手が及ばなそうなエリアでの新産地探索を個人的に行っているのだが…

明らかに国レベルの絶滅危惧種なのだが、環境省レッドリストには一向に載る気配はない。メクラチビゴミムシもそうだが、大形ホラヒメグモ類は言ってしまえば全種が分布域の限られた(そして土建開発業により絶滅の差し迫った)希少種であるため、あれもこれも載せだしたらキリがないという理屈は分かる。しかしそれでも、同じドングリの背比べ共の中でレッドリストに載せてもらえる種とそうでない種とがいるのに、何か作為的なものを感じてしまうのは、単に俺の性根がねじ曲がっているせいだけか。
もっとも、仮に国のレッドリストに載ったところで、その後のそれらの未来がさほど明るくないであろうことは、今既に国のレッドリストに載っている大半種のメクラチビゴミムシとホラヒメグモの世間での扱われ方を見れば、言うまでもない。

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