2691.jpgヒメアギトアリAnochetus shohki。石垣島にて。

最新の環境省レッドデータブックによれば「石垣島の固有種」とされている絶滅危惧種(準絶滅危惧カテゴリ)。加えてつい最近、石垣市希少野生動植物・要注意種なるものに指定された。しかし、実のところこのアリは石垣島の平野部を中心に、いたる所に普通にいる。サトウキビ畑の縁や海岸林など、乾燥して荒れた環境でしゃがむと、視界の脇にすぐ入るようなものであって、絶滅の危機とはあまりに程遠い存在だ。
これが多産する環境は、アシナガキアリやブギ(ナンヨウテンコク)オオズアリしかいないようなクッソつまらない環境で、他の虫もろくに生息しない。だから、豊富な虫を求めて「いい環境」しか見てない虫マニアは、一匹も見つけられない。単に偏った視点でしか見てないから、皆珍しいように思いこんでるだけ。俺は南西諸島でアシナガキアリしか探さないから、同所的にいるこれを佃煮にするほどの数見ている。

また、最新レッドデータブック昆虫版では何故か無視しているが、かなり前から宮古島にも生息するのが判明しており(※)、もはや石垣島固有種という肩書きすら瓦解している。にも関わらず、第一次レッドリストの頃からこのアリは延々載せられ続けている。こんなものさっさとレッドから降ろして、代わりにイバリアリを載せ直してほしいと常々思う。あっちの方は今どうにかしないと、本当にまずい。

1991年に始まった環境省の第一次レッドリスト昆虫版を見ると、何せ初めての試みだった故、今となってはどうしてこんなド普通種載せてやがんだ、というようなのがザラザラ載っている。文献上の採集記録が極端に少ない種の他、ある島にしかいない固有種は、とりあえず何でも載せていた。
しかし、当然ながら固有種=絶滅危惧種とは限らないため、そうした手合いは後の改定の中で大分削られていった。世界で対馬にしかいないが、対馬ではうじゃうじゃいるツシマフトギスなど、最新の改定でようやく降ろされている。しかし、ヒメアギトのように今なお惰性で載せ続けているとしか思えないようなのはまだ残っている。
やはり、ここにこれこれこういう虫がいた、そんなに言うほど珍しくもねーぞという記録は、小さな事でもコツコツ文献として後世に残していかないと、レッドを作るお偉方等には伝わらないらしい。まあ、上述の通り俺は残しても無視されたわけですが。

最近、幾つかの自治体が、環境省レッドに載った種は、ランクに構わず何かれ全部採集禁止にしてしまう横暴じみた条例を作っている。基本的に日本の役人は生き物や自然に対して知識もなければ関心もないから、レッドリストに載った生物はヒメアギトアリもイリオモテヤマネコも同程度に絶滅しそうだと思いこんで、こういう真似に走る。
本当に直近の絶滅危機に面した種ならいざ知らず、情報不足種まで採集禁止にしたら、それこそ情報が集まらないではないか。役人の業績作りと言われても致し方ないやり口。もちろん、そんな役人が作った条例ならば禁止は採集だけで、産地にメガソーラーやら作るのはザルであろう。

地味な絶滅危惧種を日々贔屓する身としては、ハナクソサイズの希少昆虫に光が当たるのは嬉しいものだが、一方で上記のような様が各地で横行しだすのは、また別の問題を産むように思え、危惧している。動か静かの二者択一のみで、中庸をとる能がまるでないのは、この国最大の欠点にして汚点。

(※)Komatsu T. 2009. New localities of two ant species in the Nansei islands, southeastern Japan. Ari, 32: 5-7.

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