2016/06/21|Category:双

オドリバエ一種。長野にて。
婚姻贈呈の最中。雑木林の入口で、大規模な群飛が見られた。大きなガガンボやカゲロウを捕らえてメスに渡すオスが多く見られたため、これは比較的ジェネラリストの気がある種らしい。一方で、オドリバエの中にはクモしか捕らないとか、別種のあるオドリバエしか捕らないなど、獲物に対しある程度特異性を示す種もいる。
オドリバエは種により、交尾の最中必ずモノに止まる種と、延々飛び続ける種とがおり、後者の撮影はとにかく至難。
メスの脚を見ると、オスにはないすさまじい剛毛が生えている。飛行中、この毛だらけの脚をピッタリ腹部脇に付けて飛ぶため、遠目にはとても腹が巨大に見える。種によっては、メスの腹部に風船状の袋が付いており、飛ぶときだけそれを広げるというものもいる。こうしたメスのオドリバエだけに見られる珍奇な形態に関しては、特にここには書かないが非常に面白い仮説が提唱されている。
そのことと関連するのかもしれないが、オドリバエの交尾においては、どうやらオスに主導権があるように思える。数分間見ていると、いずれ交尾の体勢が解かれて雌雄が乖離するのだが、その時明らかにオスはメスに一度渡したはずのプレゼントをもう一度奪い取ってから逃げる。
この手のオドリバエのメスは、肉は食べるのだが自分で肉を狩る能力が一切無いため、オスからプレゼントとして受け取らない限りは肉にありつけない。肉にありつけなければ当然産卵に必要なタンパクも得られない事になる。一方、オスは狩りの能力はあるものの、それには大変なコストがかかる。獲物を探すのも大変だし、獲物から反撃されて殺されるリスクも負っている。オスは複数のメスと何度も交尾せねばならないため、その度にいちいち狩りをして新しく獲物を捕まえてくるのでは身が持たない。だから、一つの獲物を可能な限り使い回す。婚約指輪の使い回しみたいなものだ。