2465.jpgサスライアリDorylus sp.。ケニアにて。

2466.jpg今回の主要目的の一つだが、この森ではかなり遭遇頻度の少ない相手だった。場所とコロニーにより、居候の密度に著しい差が見られ、一時間行列脇に座っていても何も行列をよぎらないことも。
人間の皮膚を容易くえぐり取る強力なキバを持ち、なおかつ観察者が行列脇で起こすわずかな空気の乱れ(吐息など)に怒ってすぐ襲いかかってくるため、観察はやっかいなことこの上ない。

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2467.jpgもう一つやっかいなのは、ときどき行列をよぎる共生者がとにかく揃いも揃って見づらい容姿をしていること。アリと瓜二つの背格好をしている。もしくは、体長1-2mmの極小かつ棒のように細い体をしている。加えて、動きが風のように素早い。アリも動きが素早く、そのアリ共の集団を縫うように一瞬で通り過ぎてしまうため、採集も撮影も並の人間には不可能だ。
これだけでもいっぱいいっぱいなのに、仕上げにこのアリの行列は、体の大きなソルジャーが行列の両サイドをガッチリ護衛する。薄暗い場所ないし時間帯ならば、このガードは比較的薄い。しかし、明るくなるとアリ共は警戒心が強くなり、より多くのソルジャーを動員してガードを次第に分厚くしていく。終いにはこのガードが完全に行列表面を覆ってしまい、内部の様子がまったく見えなくなってしまう。これでは居候の観察はできない。かといって下手にアリを刺激すると一斉に怒って放射状に散らばり、こちらに襲いかかってくるため、なおさら観察どころではなくなってしまう。
どうにかして、このガードを払って行列をむき出しにできないものかと、さんざ無い知恵を絞って試行錯誤した。その結果、ある方法を使うと不可能ではないことが分かってきた。

あるコロニーの行列を観察していた時、あまりにも居候がやってこないので退屈をこじらせ、ガードのソルジャーにちょっかいを出して遊んだ。その際、近くに落ちていた細い木の枝を手に取り、ソルジャーの頭を勢いよく引っ叩いてみた。当然、アリは怒って枝に噛みついてきた。俺はサスライアリはとにかく凶暴だから、ソルジャーは頭に触れるものには何彼構わず噛みつくのだと思っていた。そこで、今度は枝をゆっくりソルジャーの頭に下ろし、先端でそっとアゴに触れてみた。当然また噛みついてくるものだと思ったが、驚いたことにソルジャーは無反応だった。
枯れた植物片でアリの頭をいきなり叩くと怒るが、そっと撫でるとアリは撫でられていることに気づかないのである。また、いきなり叩いて怒らせ植物片に噛みついた場合でも、そのまま植物片を動かさずにそっとしておくとアリは数秒で我に返り、離してしまう。肉、油分を含む新鮮な植物しか食わないサスライアリは、枯れた植物の存在に無関心らしい。この習性を利用しない手はない。

ガードを固めるソルジャー同士の間にできた僅かな隙間に、細くて丈夫な枯れ枝をゆっくり差し込み、それから横に払うように動かしてみた。10秒間に1cm位のゆっくりしたスピードで、ソルジャーを横にずらしていく。アリは怒らず、こちらのなすがままにずらされていく。ソルジャー達は脚を絡ませあっているため、一匹ずらすと芋づる式に全部のアリが塊となって横へずれていくが、怒り出す個体はおらず、最終的に見事行列脇にガードフリーな風穴を開けることが出来たのだった。

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