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2702.jpg精霊。水面に浮いており、ほぼ一円玉サイズ。


与那国島の、内陸に入ったジャングルを夜中歩いていたとき。鬱蒼とした茂みの中に、直径6-7mの円状にフェンスで囲まれた区画があるのに気づいた。何かと思って近づき、気軽に中を覗き込んだ俺の目に飛び込んできたのは、およそこの世のものとは思えない、禍々しい光景だった。

フェンスの内側は落差5-6mの垂直な縦穴で、下は底が全く知れない深さの水をたたえた深淵になっていた。その真っ黒な水面近くを、見たこともない奇怪な魚が何匹も泳ぎ回っていたのだ。
水が黒くて魚影も黒かったので姿を見づらかったが、明らかに淡水魚ではなかった。しかもそれらはたかだか15cm程度なのだが、こちらが照らすヘッドラの灯りを反射して、煌々とオレンジに輝く巨大な眼を持っていた。最初テナガエビの眼が光ってるのかと思ったが、泳いでるし明らかに魚だし違うことにすぐ気づいた。俺もそこそこ魚は見てきたつもりだが、日本の淡水魚であんなに眼がでかく、しかも光る奴なんてどこでも見た試しがない(海水魚でだってそうそう見たことない)。ああいう環境にいがちなユゴイではない。その後近くの川でユゴイにライトを当てたが、あんなではなかった。
イメージ的には、部屋の蛍光灯を消したときに光るあのオレンジの豆電球と、色もサイズも同じ。あの豆電球が二つ一組になって、いくつも深淵を右往左往していたのだ。まるで、地獄の門を守る門番の悪鬼か獄卒どもにも似た異様さをたたえていた。

俺が今持ち得る魚類知識を持ってすれば、あれに一番近い姿の魚は海水魚のエビスダイかアカマツカサしかない。あの深淵は、絶対に地下深部で海底と繋がっている海水池としか思えない。しかし、俺はあの魚の正体は確かめなかった。慎重に穴の壁面を伝って下に降りれば、すぐ傍まで寄って確認できたのだが、あまりにも恐ろしく不気味すぎて、出来るわけがなかった。身の危険を感じた。こういう、野外において本能的に身の危険を感じる時というのは、本当に危険である。

研究者の分際でこんなこと言ったら身もフタもないが(分からないことを分かりたいとか本の帯でほざいた奴もどっかにいたしな)、世の中には知らなくて良いこと、明らかにしないでいいことというのが、確かに存在する。俺はあの深淵の謎に、もうこれ以上近づいてはならないのだ。
自然を恐れ畏れる謙虚さを忘れた人間が、如何に悲惨で惨めで無様な末路を辿るかは、歴史がイヤと言うほど証明している。俺は今後一生涯、あの深淵に関する興味関心を放棄する。

今後与那国に行く機会がある者は、ジャングルでフェンスで囲われた深淵を見つけても、即刻引き返し、二度と近寄らないこと。この警告を無視した者に如何なる事態が生じようと、俺の知ったことではない。

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ヘッドラ
あのーー、全然門外漢なのですが、以前、戸隠地質資料館から、こちらに来て、あまりの美しい虫群に、ずっと見ています^^虫は、美しい!! 信毎の連載も楽しみに読みました。で、私は岩登りが好きなので、ヘッドランプを、ずっと、ヘッデン、と言っていました。ヘッドラ、んんーー、新しい^^
長野市在住なので、近辺の岩場で、(冠着)ザトウムシを見たときはビックリしました。ルドンが描く、蜘蛛みたいな??変な虫が目の前にいるので@@
あれが、「ザトウムシ」と、分かって、良かったです!! 
ケロ|2016.10.30/19:20
もう一度
知らなくていい、というのは、とても重要なスタンスだと思います。でも、知りたい、このスタンスの矛盾が。美学、なんだなあ、と、このブログを読む時、いつも、「美学」って、私の解釈のなかでは、思うのです^^
ケロ|2016.10.30/19:54
どうもです。某連載、ご愛顧頂きまして誠にありがとうございました。ヘッドライト、一般的に略称はヘッドラじゃなかったんですね^^;
いかなる時も、自然に対しては常に謙虚でありたいものですね。
-|2016.10.30/22:20

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