デカアタマオン

2713.jpgツシマオオズナガゴミムシPterostichus opacipennis

オオズナガゴミムシは、日本で見られる地下性昆虫としては一大勢力の一つ。各地から10数種近く知られるが、まだ新種が相当数眠っていると見られ、最終的な種数はまだわからない。山間部のガレ場など、湿潤な地下空隙の奥に生息しており、捕まえるのがとにかく容易でない。
種により黒っぽい奴と赤っぽい奴がおり、赤い種ほどより地下深くにいて採集至難な傾向にある。対馬固有のこの種は、地表に近い辺りに生息する黒いタイプ。雨が降って地面が湿るとしばしば表を出歩くため、この仲間としては採集がかなり楽な部類に入る。とはいえ、首尾よく採れるか否かは運によるところがかなり大きい。
完全な漆黒ではなく、うっすらオレンジの星が翅に浮き出ていたりと、なかなか意匠を凝らしたデザインではある。

2720.jpgオオズナガゴミムシは名前の通り頭がでかく、キバが巨大でカッコイイ。妙なことに、キバは左右で長さも形も違う。雌雄ともこうなっているため、オス同士の争いみたいに片方の性にとって必須の理由ゆえではない。獲物を捕らえるために有利となるような、雌雄必須の何らかの適応の結果と思われる。
ゴミムシの仲間にはキバが左右非対称の種が少なからずいて、大抵それらは地上で陸生巻貝を専門に食っていると相場が決まっている。形の違うキバを缶切りのように使ってカタツムリの巻いた殻を破壊し、中身を食うのに都合いい形をしているわけだ。しかし、オオズナガゴミの住む地下空隙の深部に、大型のカタツムリなどいない。かなり大型の甲虫なので、それなりに大きな生き物を捕食しているのは間違いないが、この虫と同じ環境から出てくるそこそこ大きな生き物といったら、ガロアムシ程度しかいない。
だから、多くの虫マニアはこの甲虫が野生下ではガロアムシを専門に食っているのだと予想している。あの形のキバは、ガロアムシ捕獲にどのように役に立っているのだろうか。そもそも、本当にガロアムシを狩るのかという問題もあるが・・

そういえばニンテンドー64「時空戦士テュロック」で、ゲーム全クリ後にゲーム内での設定を自由に変更できる暗号「チートコード」が開示される。その中で、入力オンにすると敵キャラクターの頭部を意味もなく巨大に表示できる「デカアタマ」というのがあった。巨頭にしたところで敵の強さ弱さは一切変わらず、ただ頭でかくて変な格好だね、というそれだけの暗号なのだが・・。オオズナガゴミ類は、神の作ったチートコードで常時デカアタマオンにされているのだろうか。

ツシマオオズは、この仲間としては一番採集が楽なので、多くの虫マニアが見つけて採集しているはずなのだが、なぜかネット上に生きた姿の写真がほぼ存在しない。これはオオズナガゴミ類全般に言えることで、画像検索すると出てくる画像の大半は既に死んでタトウの上に並べられたか、ピンを刺された標本ばかり。※
せっかく魅力あふれる生き物なのに、「野生下で」、「美しく撮った」、「生きている」この虫の写真が、本当に少ない。皆、見つけた時点で写真など二の次で捕まえて毒瓶に放り込むからなのだろう。見る者に一切の思考を停止させるほどの魔力が、この虫にはある。


※そもそも一部の種を除き見つけ捕り自体がほぼできない仲間であるのも、生態写真が少ない理由の一つだろう。この仲間は基本的に、地下深くにトラップをかけて捕獲する。トラップは一度かけたら数週間もしくは2-3か月は埋めておかねばかからない。しかし、それでかかる個体は大抵1-2匹のみ、しかもいつかかるかわからない。トラップを回収しに行く頃には、既にだいぶ前にかかって中で死んでいることが多く、生きたままの状態で回収するのは、よほど絶妙なタイミングで行かない限り無理だ。

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