2752.jpgサモアオヨギユスリカPontomyia natans。喜界にて。

昆虫に関して一般人から出される疑問でしばしば見受けられるものに、「海に昆虫は住まないのか」というのがある。実のところ、波打ち際の陸地に住む種はかなり多いのだが、海洋上や海中で活動できるものは非常に少なく、だいたいウミアメンボやウミユスリカ、オヨギユスリカ辺りがその数少ない例として挙げられる。
そんな風に虫マニアならば名前くらいはすぐ出せるオヨギユスリカだが、生きたそれの現物を見たことのある奴など、昆虫学者だって滅多にいない。俺も前々から探してはいたが、見たのは初めて。

2753.jpg日本の昆虫としては屈指の、神妙不可思議にて胡散臭い姿。まるでグライダーの骨組みだけみたいな奴。翅は短く退化して、とても飛翔できそうにない。代わりに、恐らく高速でこれを震わせて推進装置とし、水面を滑るように滑走するのだろうか(もしかしたら、あの長い脚をオールのように使って前進するのかもしれないが、よくわからない)。
写真で大写しにすればこそこうだが、実物は1mmちょっとしかない超ミニサイズ。しかもべらぼうに素早い。知った上でよほど注意してなければ、絶対に存在を認知できない。水面に浮いた毛ぼこりが、風で飛ばされているようにしか見えない。なお、この姿をしたものは全部オス。メスは翅も脚もない棒状の姿という、カの成虫としてはありえない姿をしている。大潮の夜、浅い海底に固着していた蛹から羽化したメスは、水面へと浮上する。それをオスが水面で捕獲して、交尾に至るらしい。成虫の寿命はすこぶる短く、羽化後は2,3時間でとっとと死ぬようだ。
メスが見られるかと思って1時間くらい監視していたが、それっぽいものは現れなかった。

オヨギユスリカ属は、世界中の温暖な海域を中心に分布するが、分布の広さの割に地球上でたった4種しか知られていない。日本ではセトオヨギP. pacificaとサモアオヨギの2種が見出されており、オスの腹端の付属器の形で区別できる。本当は九州本土でこの仲間を見つけたかったのだが。

トラックバック

http://sangetuki.blog.fc2.com/tb.php/2295-cfab73a3

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する