黄帯戦隊ドッペルゲンガー

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キオビシリアゲアリCrematogaster inflata。マレー半島やボルネオの森で見かける顕著なアリで、多くの個体が樹幹を上り下りしているのですぐ見つかる。。黄色く目立つ胸部が特徴だが、これは毒のあるサイン。このアリは毒アリで、敵に捕まるとこの黄色い胸から毒を出して身を守る。

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胸部後方に穴が空いているが、ここから白い毒液がでる。とても粘着性が強く、致命的ではないがかなり不味い味らしい。毒を出している所を撮影したくて何度か試みたが、うまくいかない。アリをピンセットでつまむと、つまんだときには出すのだが、暫くすると出した毒液を引っ込めてしまうのだ。毒液は少量なので、無駄遣いしたくないらしい。

ともあれ、森の捕食動物の多くはこの不味い毒アリを好きこのんで食べようとしない。こんな顕著に目立つ色彩、さらに個体数の多い有毒動物が存在すれば、それに似せることで身を守る別の生物が現れるというのは熱帯ではよくあること。実は、この毒アリに常に寄り添って生きている驚くべき擬態生物がいる。



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オオアリ一種Camponotus sp.。未記載なので種名はまだない。色彩、体サイズともに毒アリそっくりなこの無毒アリは、単独で見かけることはない。必ず、キオビシリアゲアリの行列周辺で見つかる。数は少なく、毒アリ50匹の中に1匹混ざっているかいないかくらいの頻度。よくよく見れば黄色い部位が違うので別物だと分かるが、野外ではしばらく見つけるのに時間を要する。

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本物と偽物が偶然交錯する瞬間。基本的に双方はあまり仲がよくなく、餌を分け与えあうことも原則ない。しかし、シリアゲアリは積極的にオオアリを追い払うことはせず、オオアリの方もつかず離れずシリアゲアリの居住区を拠点にして生活している。なんとも不思議な関係。ちなみに、この2者の関係はベイツ型擬態であることが実験的に確かめられている。

毒アリがいて、それに擬態したアリがいれば、絶対近くに「ヤツ」がいるはずだと思い、探してみた。

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やっぱりいた。好蟻性ハネカクシの一種Drusilla inflata。これは幹にはあまり登らず、キオビシリアゲアリの巣くう木の根本の地面に多い。力尽きて上から落ちてくるアリを捕らえて食い殺すようだ。恐らく、この毒アリを自発的に食う唯一の敵かも知れない。

毒アリがいて、それにそっくりなアリと好蟻性生物が存在するという現在の状態になるまでに、どんな進化的なイベントを経たのだろうか。どれだけの年月がかかったのだろうか。

マレーにて。

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