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精霊

4151.jpg絶滅危惧種。

奇怪な風貌の生命体。まるで怪獣そのものだが、体長は最大でも2mm程しかない。この生物が属す「綱」の中では世界最小種とされる。これまでに本種の生態写真が掲載された文献は極めて少なく、特にここ20年くらいでこいつをまともに観察・撮影した人間などほとんど存在しないのではなかろうか。

日本固有種で、かつ地理的にまったく隔たった3都道府県でしか生息が確認されていない。生息環境がきわめて特殊で、「磯海岸とその背後に発達する海岸林との移行帯」にのみ住む。この「磯海岸とその背後に発達する海岸林との移行帯」という文章表現は、これまでに出版された本種に関し言及のある、わずか数編の和文文献中に見られるものである。それらのほぼ全てが、とある当該分類群の専門家ただ一人の手によって書かれているのだが、この「磯海岸とその背後に発達する海岸林との移行帯」という場所が一体どこからどこまでのエリアを指すのか、門外漢にはまるで皆目見当つかない。

俺はこの絶滅危惧種に一目会いたくて、これが確実に生息するとされる模式産地まで、過去5年間のなかではるばる10数回も足を運んだ。そして、その「磯海岸とその背後に発達する海岸林との移行帯」に該当するであろう環境を、とにかく探しまくったのだが、これが面白いほどまるで見つからない。何も考えず大雑把に「その環境」を探しても、見つかるのはこれに一見風貌の似た別のド普通種ばかり。肝心の種はどこにもいない。正直、あまりの見つからなさに、もう絶滅したのではないかと途中から思い始めたくらいだった。
探し始めてから5年目にして、俺はようやくこいつの生息環境を突き止めたのだが、それがまたとんでもなくピンポイントでごくごく狭いエリアだったのだ。その針の先ほどの狭いエリアから、ほんの数cm脇に逸れただけで、もう絶対発見できない。確かにそこは「磯海岸とその背後に発達する海岸林との移行帯」ではあるのだが、この表現を読んであの環境だと的確に見抜ける人間など、この文献を書いた専門家と俺以外、絶対にいない。あれは実に不親切なものの書き方だと思う。
この生物は、現状では隔たった3都道府県でしか発見されていないが、潜在的には間違いなく日本各地に生息地があり、適切な探し方をすることによって今後多くの新産地発見が期待されるはずのものである。しかし、専門家によるこういう不親切な文献の書き方のせいでそれが妨げられ、結果として調査が適切に行われず、その絶滅危惧種保全に寄与するであろう生息情報の蓄積も進まないという弊害は、もっと多くの研究者によって真剣に考えられねばならない案件だと思う。

あと、環境省レッドの最新版で本種に関する記述を見ると、生息上の脅威として特に根拠も示さず「マニアによる乱獲」とある。それはないでしょうに。こんなものがネットオークションで高値で売買されているの、執筆者は見たことあるのか? それ以前に、これの種名を画像検索したって一件すらヒットしない状況だぞ。そもそも、この生物が含まれる「綱」の生物分類群(特に国産の小型種)の愛好家や専門家自体がほとんどいない状況である。そんな中、将来この分類群の研究を背負うかもしれない愛好家を、根拠があるわけでもないのにさも悪者のように書き立てて牽制することが得策だと、俺には到底思えないのだが。

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